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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第十部 異世界学園恋愛奇譚〜各ヒロイン攻略ルート〜

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イベントクエスト-autumn&winter- :猫耳メイドと楽しい日々を


 楽しかったハロウィンイベントも無事に終了し、早い所ではクリスマスの準備に取り掛かっている。異世界に移りゆく街並みをずっと見守っていられるように錯覚してしまうが、もうすぐこのスマホRPGはサービス終了を迎えてしまう。

 そのため、地球人であるオレ達ユーザーがアバター体を介して、このスマホRPG異世界で暮らせるのもあと僅かだ。最後のハロウィン、最後のクリスマス……年内には、この異世界とお別れしなくてはいけない。長かったお祭りが終わるように、少しずつ、少しずつ、心を慣らしながら終わりを迎えるのだ。


 さて、本来ならば猫耳メイドのミーコとハロウィンデートをする予定だったが、ミーコは売れっ子のメイドさん。ハロウィン期間中は、メイド喫茶の接客で忙しくオレとデートする時間は取れなかった。しかも、ハロウィン終了後の現在は、ボランティアで片付け作業を手伝う予定らしい。


「そうだ! イクトさんも、ミーコさんと一緒にハロウィンイベントのお片づけ作業をお手伝いしたらどうでしょう? きっとミーコさんもお喜びになりますよ。ボランティアクエスト経由で、参加申し込みが出来ますので……」


 ククリの提案で、ミーコのボランティア活動を手伝うことになったオレ。次の日……ボランティア申し込みが無事に受理されて、ミーコと同じエリアの片付け作業に参加出来ることになった。


「イベントの片付け作業を手伝うのは初めてだけど、役に立てるように頑張るよ! あれっ……一応、デートクエストの扱いで、ミーコのプロフィールデータが送られてきたな。どれどれ……」


 スマホ画面を確認すると、タイミングよくミーコのプロフィールが追加されていた。今回登録された猫耳メイドミーコのパーソナルデータは以下の通りである。



【猫耳メイドミーコ/猫耳族】

 本名:ミーコ

 年齢:成猫なのにゃ!

 誕生日:夏頃に生まれているのにゃ。

 身長:157センチ(猫耳含む)

 体重:40キロ

 バスト:Aカップ

 血液型:A型

 趣味:お茶を淹れること、日向ぼっこ、狩り

 好きな食べ物:お魚も好きだけど、チーズも好きにゃ。

 苦手な食べ物:酸っぱいものは苦手なのにゃ。

 特技:ティータイムの準備はおまかせにゃん。

 得意料理:メイド喫茶特製オムライスを召し上がれ!


(備考)

 またもやプロフィールというよりも、インタビューのような内容になってしまったにゃ。


(アドバイス)

 本来は種族の違いから攻略対象には出来ないはずだが、飼い主と飼い猫、ご主人様とメイドという関係性から特別にデートが受理されたのにゃ! ボランティアの後は、ご褒美にお魚かチーズを用意すればバッチリにゃん。



「特別に受理されたデートか……。メイドさんとして頑張っているけど、元は黒猫だし心配だよな。オレがミーコを支えないと」


 地球ではごく普通の黒猫であるミーコの正体は、オレが雨の日に拾って育てた我が家の飼い猫だ。元飼い主としても、ミーコの負担を少しでも減らしてあげたい。


 さっそくボランティアに参加するために、テキパキと動きやすい格好に着替えると、守護天使エステルがデートクエストの予定を代わりに立ててくれる。


「うん! 素敵な意気込みだね。きっと、ミーコちゃんも喜ぶよ。一応、ボランティア終了後は2人でご飯デートくらいは出来るように、プランを練っておくから。じゃあ、無理しすぎないように……行ってらっしゃい」



 * * *



 とある日曜日の朝。パーカー、ジーパン、スニーカーの軽作業向き装備でイベント跡地へと向かう。すでに、現場にはボランティアの人達が集まっていて、本人確認を終えたものから作業に取り掛かるという流れになっていた。


「みゃみゃっ! イクト、よくきてくれましたにゃん。私達は、このカボチャの置物を倉庫に片付ける係ですにゃ」


 ミニスカ黒メイド服がよく似合うミーコは、相変わらずスタイル抜群のスリムボディ。小柄ながらもスラリと伸びる白ニーソからの美脚に、見惚れる者もチラホラ。一見すると普通の美少女に見えるが、彼女の猫耳と尻尾は正真正銘の本物で、猫耳族の証である。


「ミーコ! 悪いな、すでに作業始めてたんだ。うわっ……それにしてもこのカボチャ数が多いな」

「カボチャさん達は、アバター安眠室の建設現場のお隣にある倉庫で管理してますにゃ。案内するにゃ」


 これでもかっというほど、無数に転がるカボチャの置物は、オレの身長くらいのサイズから、通常のランタンサイズまで。おそらく、街中で飾られていたカボチャの置物が集結しているのだろう。


 ミーコの的確な案内で倉庫へ……カートに乗せてゴロゴロとカボチャを倉庫に運び、箱入れ作業。倉庫の隣には『アバター安眠部屋』という大きな館を建設中で、地球人の魂が抜けた後のアバターを地球で天に召されてアバター体に戻るまで保護するつもりらしい。オレ達ユーザーのアバターは、小さな人形ほどのサイズに縮小されて、眠るという。


「ふう……この異世界では、スマホRPGとの連結が終わってからも同じようにハロウィンやるんだろうな。なんだか、寂しいけど仕方がない……カボチャ達は来年も頑張れよ」


 なんとなくカボチャに話しかけるも、返事はない。当たり前か……ハロウィンが終わると魂が抜けてしまうのだから。おそらくオレ達のアバター体も、サービス終了とともに抜け殻となって『アバター安眠部屋』で眠るのだろう。


「ミーコ先輩! ちょっとこちらの作業を手伝って欲しいのにゃ。クリスマスマーケットの飾りを増やしたいとかで」

「みゃあ、今行くにゃん」


 途中、ミーコは後輩のメイドさんに呼ばれて抜けたりと、兎に角忙しそうである。彼女はもう、この異世界で永住するのだろうか? 地球における猫としての寿命を考えると、人間並みかそれ以上に長寿でいられる異世界の方が幸せなのだろう。


 カボチャの片付けが終わると、お弁当タイムを経てクリスマスの飾り付け。モミの木に飾り付け、クリスマスリースやサンタクロースとトナカイの置物を設置。すっかり、このエリアはハロウィンからクリスマスムードに変化した。ボランティアが終わるといつしか、夕刻になっていた。


「みゃあ……もうすっかり日が暮れるのにゃ。でも、イクトと一緒に作業できて嬉しかったのにゃ。イクトとアタシが過ごせる時間もあとわずかなのにゃ」

「ミーコ……」

「ごめんにゃ。アタシは猫寿命の関係で、地球には帰れないのにゃ。だから、この異世界でメイドさんとして頑張るのにゃ。いつか、イクトが地球でのお役目を終えてアバター体に帰ってきたら、またご主人様になってにゃん」


 やはりミーコはこの異世界に留まるつもりのようだ。気がつくと、いつもは明るいミーコの瞳が涙で潤んでいた。そういうオレも涙で、ピコピコ動くミーコの可愛らしい猫耳がきちんと見れない。

 何から会話を続けていいか分からずに、言葉を詰まらせているとスマホから電話。


「はい……エステル? えっ……ミーコと一緒にうちで、鳥すき焼き?」

「みゃみゃっ! 鳥すき焼き大好きなのにゃ。早く行くのにゃっ」

「ああっ。今夜は楽しもう!」


 設置したてのイルミネーションが輝くクリスマスマーケットを抜けて、異世界の拠点であるマイルームへ。そうだ……あと少しで終わる夢だとしても、最後まで楽しもう。部屋のドアを開けると、守護天使とリス型精霊がオレ達を温かな光で迎え入れてくれた。


 ――サービス終了まであと1カ月半、変わらぬ日々を過ごし最後まで走りきるために。


最終章は2019年12月15日頃から更新を予定しております。この作品は2019年12月中に完結予定です。

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