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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第十部 異世界学園恋愛奇譚〜各ヒロイン攻略ルート〜
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雨雫の女勇者編4:初めての調査クエスト


 勇者を育てる里にアバター転生した高凪レイラと高凪カイは、順調に勇者としての修行をこなしていった。やがて、女勇者レインと勇者ケインとして冒険者育成専門魔法学校として名高い【ダーツ魔法学園】に入学。


 ケインの強い願いが神に通じたのか、憧れの先輩である弥生さんとパートナーとして組めることになった。勇者ケインと聖女ヤヨイは、新人ながらダーツ魔法学園きってのエースコンビとして名を馳せていく。


(ケイン、凄いな。一緒に転生したはずなのに、ちゃんと好きな女の人とパートナーになって、任務も順調で……なのに私は)


 女勇者レインにも好きな人はいたが、残念なことに彼にはすでに婚約者がいた。


 レインの想い人の名は勇者イクト……伝説の勇者イクトスの魂を受け継いでいると噂されているが、詳細は分からない。ただ分かっていることは、イケメンである彼は女の子にモテモテで……そして誰にでも優しいということだ。

 イクトがモテ男なのは、彼に備わっているチートスキルモテチートのチカラだという説もあったが、そんなものなくてもおそらくレインはイクトに惹かれたであろう。


 そう、つまりレインに対しても彼は非常に優しく、そしてその優しさが時に残酷に感じることを気づいてさえくれなかった。


(イクト君……私がイクト君のこと好きだって、きっと気づいていないよね。ううん……気づかれる必要なんて無いんだ。けど、彼と接しているとどうしても期待しちゃう)


 しかも、婚約者候補は1人ではなくいずれ彼と組むことになるギルドメンバーのほとんどが婚約者候補だという噂。さらに、正妻になる予定の女性は絶世の美少女と謳われたグランディア姫縁戚である魔族の姫君アオイ姫だ。


 さらに、パートナー聖女のミンティアとは見るからにお似合いで、アオイとミンティアのどちらかとは確実に結婚することは世間から見ても明白だった。


(今は、恋愛のことで悩むのはよそう。今日は大切なギルドクエストデビューの日なんだから)



 * * *



 私が所属することになったギルドは、魔法使いを中心として結成された【星のギルド】である。ギルドマスターは、勇者コースの担任を務めている賢者ラナ先生だ。

 ほとんどの所属者が魔法攻撃を得意とする中、私のポジションは貴重な武器攻撃担当と言えるだろう。


 勇者コースの基本装備である青いマントを翻し、星のギルドの門をくぐる。初任務の今日は、ギルドマスター直々に任務が下されるそうだ。


 プラネタリウムのような天井のロビーを抜けて、ギルドマスターが待つ奥の部屋へ。


(毎日、剣も魔法も鍛錬してきたし、きっと大丈夫。せっかく女勇者を夢見てここまでやってきたんだ!)


 ノックをして扉を開けると、いつも教師風ファッションに魔法使いローブを羽織っているはずのラナ先生がセクシーなドレス風ローブで出迎えてくれた。

 大きく胸元が開いた赤いドレスはロング丈だが、ザックリと大きくスリットが入っている。妖艶かつ遣り手感溢れるオーラを放っていて流石はギルドマスターだ。おそらくこの姿が、【星のギルドマスター】としてのラナ先生なのだろう。


「ギルドデビューおめでとう、女勇者レインさん。星のギルドのエースを目指して頑張ってね。期待しているわよ。早速、任務が入っているのだけれどいいかしら?」

「はい。女勇者にしか出来ない特別な任務だと聞いています。具体的にはどのようなものなのでしょう」


 どうやら急ぎの任務らしく、すぐにでも出立しなくてはいけないらしい。しかも、女勇者しか適任者がいないという特別な任務だ。心してかからなくては……まずは詳しい任務内容を把握しないと。


「男勇者には出来なくて女勇者のみに出来るもの……いわゆる、偵察任務というものよ。魔族経営の妖しげなお店があってね。そこへ潜入してほしいのよ」

「潜入、ですか。やはり女勇者特有ということは、それなりに男性が立ち入りにくい場所へ?」


 偵察や潜入という秘密裏な任務に思わず身構えそうになるが、ここは敢えて余裕を見せたい。たとえ、ギルドマスターラナがいつも優しい担任のラナ先生であっても、甘えたところを見せたく無いのだ。


「ええ。まぁ本来なら性別関係なく、偵察出来そうなものだけれど。レインさんが察しの通り、調べたい場所が女性しか入れなさそうなところなのよ。正確には、アルバイトとして潜入して欲しいの。腕に覚えがありながら、そんな風には見えない雰囲気にしてもらうけど……今回は【普通の少女レイ】いう設定よ。すでに、仲介者を通してお仕事が決定しているから」


 偵察、任務、設定……しかも名前まで変更して潜入するとは。まぁレインとレイならほぼ同じような名前だけど、便宜上別人になりきることで偵察っぽさが出るだろう。


「ごく普通の少女レイとして、アルバイトとして潜入ですね。分かりました。して、その場所というのは……」


 私は聞き終わる前に、ギルドマスターラナがにっこりと笑って無言で一枚の紙を差し出した。



【萌え萌えなメイドさん募集中!】

 超有名魔族一族経営のメイド喫茶『魔族ラブニャンメイド天国』では、キュートなメイドさんを募集中です。今回はフレッシュがテーマですので、メイド未経験者の人間に限定して募集いたします。

 勤務場所は、伯爵の子孫である魔族の豪邸をリフォームした本格的な洋館! 本物の魔族伯爵の呪いの品も展示中です。話題のスポットで、思い出づくりしちゃおう!

 勤務期間は、2週間から1ヶ月ほどで原則住み込みとなります。

 注:なお、万が一呪い等にかかった場合は命の保証は御座いませんので、覚悟の上お申し込み下さい。



「こ、この募集要項は一体? 一見バカっぽいのに最後の注意書きだけ魔族っぽくて怖い……。これが、女勇者特有の任務?」

「ええ。実はね、勇者という職業は神からの祝福で、万が一呪われてもある程度大丈夫なように出来ているの。だから、普通の女の子が呪い死ぬシーンでも、レインさんなら鳥肌か花粉症程度の被害で収まるはずよ! メイド服も届いているから……」

「呪われても女勇者なら、鳥肌か花粉症で済むって……女勇者って一体。いや、でも他の子にこんな任務行かせられないし……」


 苦悩するポーズで思わず頭を抱えると、さらに追い討ちをかけるようなことを言い始める。


「それに、レインさんならスタイル抜群だから、あの萌え萌えな激ミニメイド服もクールにそつなく着こなせちゃうんじゃないかなぁって」


 想定外の任務内容に激しく動揺していると、ギルドマスターラナの助手の年齢不詳のロリ系ホビットさんがタイミングを見計らったように部屋へと入室してきた。


 スマホRPG特有の過剰に露出が高い萌え萌え仕様なメイド服がトルソー状態で運ばれてくる。しかも、黒いガーター付きのストッキング系ニーハイまで。

 助手さんが期待の眼差しで、いそいそとメイド服をトルソーから脱がせて、私に着せる準備をし始めた。


「さすがはレインさんですね! あの超露出度の高いメイド喫茶に受かってしまうなんて。我がギルドの自慢の女勇者ですよ! どんなコスプレでも似合いそうで、今から期待してます! ナチュラルにメイクもしちゃいましょうっ可愛くしますよっ」

「自慢の女勇者……どんなコスプレでも似合う……」


 棒立ち状態で途方にくれる私を、どんどん手際よく着替えさせる助手さん。すでに、女勇者というより着せ替え人形状態だ。


 そして、ギルドマスターラナが思い出したようにふと一言。


「あっ……ちなみにこの任務、同じ勇者コースのイクト君も後半からお客様として後で合流する予定よ。男勇者は潜入は出来ないけど、お客様としてサポートくらいなら出来るでしょう? イクト君が今行っている任務は、数日で終わるそうだから。それまでの間、偵察頑張って!」

「いずれイクト君に、見られるの? この超露出のメイド服を……? そんな、馬鹿な……」


 まさかのイクト君が合流予定との情報で、顔が赤くなる私。

 いきなり初任務でこの恥ずかしい姿を好きな人に見られるなんて……と、羞恥心でどうにかなりそうなのを必死に隠す。


 だが、着替えとヘアメイクが完成した自分のアバターを鏡で見て『あれっ? 私って結構メイド服も似合うじゃん!』と思ってしまったのはここだけの秘密である。


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