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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第十部 異世界学園恋愛奇譚〜各ヒロイン攻略ルート〜
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箱庭の聖女編4:勇者様のいないクエスト


 食事が終わり、カフェを出てミルルとともにゲートのある移動拠点を目指す。ゲートによる空間移動は、原則としてギルドクエスト時しか利用できない。

 もっとも、冒険者がスキル向上などの目的で素早い移動を必要とする場合には、許可が下りるが。


「山間の村の中にあるゲートは、モンスター達の巣窟と繋がってて使用出来ないから。隣の村のギルドゲートに出ることになるけど、大丈夫?」

「はい、その方法が今の時点では最短ルートになると思います。他のギルドメンバーの方々とも、そこで落ち合うんですよね」

「うん、すでに全員に通知が行っているから、現地集合できるはずだけど。取り敢えずは、現場の近くまで行ってそこで改めてミーティングをしよう」


 街中にさりげなく設置された移動拠点の扉は、ギルドから支給されている身分証明書をかざすことで開けることが出来る。今回は、聖女館の身分証明書で扉を開けることに……ガチャッと鍵が開く音が響く。


「すみません、緊急クエストで使用したいんですけど……」

 それほど広くないゲート空間には、管理の魔法使いと係員の姿。ギルドクエスト受理のパスコードを係員に見せる。


「はい、それではパスコードを確認します。聖女館所属のミンティアさんと依頼者のミルルさんですね。随分とランクの高いクエストですが、お2人で大丈夫ですか?」

「ええ、現地で他のギルドメンバーと落ち合う予定なので、やれると思います」

「そうですか、無理なさらないように。ではゲートを開きますね。ご武運を……!」



 魔法陣の上に立つとまばゆい光が足元を照らす。気がつくと、見知らぬ村のゲートエリアに到着した。どうやら、昔ながらのギルド形式のようで、飲食用のカウンターとテーブル席がいくつかある。


「おぉっ! ミルルじゃないかっ? ちゃんとギルド所属の聖女さんに依頼出来たようだな。初めまして、聖女さん。ワシの名はグレード、見ての通り筋肉だけが取り柄の老戦士でさぁ。隣村の状況だが、結界はあと2日といったところみたいだ」


 カウンターでお酒をチビチビと飲みながら待機していたのは、老戦士のグレード氏。見たところギルドとは名ばかりの人の少なさで、この辺りの過疎化が伺える。もしくは、今回の事件で若い戦士達は現場に行ったっきりなのか。


「初めましてグレードさん、聖女館のミンティアと申します。今日は、ミルルさんから依頼を受けて呪い解きの儀式を行いに来ました」

「あと2日……ですか。それまでの間に、呪い解きの儀式を完成させないと」


 思ったよりも、結界の寿命が近づいているのか青ざめていくミルル。


「もうすぐ、ギルドの仲間達も到着すると思うので。それからミーティングを行なって山間の村のモンスターを討伐したいと思います」

 なるべく、希望を持たせるようにクエストが成功する前提で話をしていく。


「まぁ……隣村の村長には言いづらいが、命が一番大事だ。若い人が大勢犠牲になるなら、隣村の閉鎖も視野に入れたほうが無難かも知れん。ヤバイと思ったら即撤退が、ワシからのアドバイスだよ。なんだったら、聖女さんは病人の治癒魔法だけしてくれればいいから」

「グレードさん……ですが」

「若いヤツが、無理してボロボロになるのを何度も見たからよぉ。お嬢さんみたいな将来のある人たちを、犠牲にすることはないと思ってるんだ」


 半ばもう、村を救うことは諦めているのか。それとも、老齢した戦士からのせめてものアドバイスなのか。哀愁漂うグレード氏の背中からは、すでに何人もの犠牲者が出たことが伝わってくる。


 しばらくするとギルドのゲートが輝き、次々と他のギルドメンバーも到着。今回のクエストを成功させるべく、ミーティングが始まるのであった。



 * * *



「よぉ待たせたなっミンティア」

「お待たせしちゃって、すみません。でも先に資料を読み込んでおいたので、大体の状況は把握していると思います」

「アズサさん、マリアさん! 良かったぁ……ちゃんと間に合ったんだね」


 私達ギルドメンバーは勇者イクトを中心にクエストをこなしている。だから、リーダーイクトが研修中の期間はそれぞれ副業に励んだり、休暇を取っていた。

 運良く、幅広い魔法の使い手である賢者のマリアと、剣士のアズサのスケジュールが空いていてラッキーだ。


「あれっ私がもしかして一番最後ですか? うぅ……ダーツ魔法学園の生徒会の名に恥じぬよう気をつけているのに」

「キオちゃん! ううん、わざわざよそのギルドから出張してもらっているんだもの。仕方がないよ」


 予約全員が揃い、テーブル席に座ってミーティング開始。まずは、食事中にはデータを取得できなかったステータスの確認だ。


「今回のクエストは、サポートメンバーで依頼者のミルルさんが参加してくれるの。一応、さっき取得が終わったステータスデータを確認してから作戦を練るけど、良い?」

「はいっ。足手まといにならないように頑張ります」

「じゃあ……ステータスオープン!」


 スマホのアプリを立ち上げて、クエスト前のステータスオープンを開始。ピピピッとサウンドが鳴って、私達のアバターとそれぞれの職業やスキルが表示される。

 そこには、依頼者ミルルの想像を超えるステータスが表示されていた。



【メンバー:1】

 聖女ミンティア 職業:聖女(サブ職業召還士)

 レベル:51

 HP:1957

 MP:342

 攻撃武器種:召還用にショートダガーのみ

 装備武器:銀のショートダガー

 装備防具:聖女館の制服上下・魔法のニーソックス・聖女館のショートブーツ

 装飾品:星屑のピアス・回復のお守り(毎ターンHP・MP回復)

 呪文:状態異常回復魔法、召還魔法各種



【メンバー:2】

 賢者マリア 職業:ギルド賢者(元白魔法使い)

 レベル:40

 HP:1860

 MP:330

 攻撃武器種:杖・鞭

 装備武器:賢者の杖

 装備防具:探索用魔法ワンピース・賢者のマント・ラッキーブーツ

 装飾品:琥珀の髪飾り・風水の馬蹄チャーム(幸運度アップ効果)

 呪文:回復魔法大、攻撃魔法各種


【メンバー:3】

 エルフ剣士アズサ 職業:ギルド剣士(サブ職業:調合士)

 レベル:53

 HP:2054

 MP:163

 攻撃武器種:剣・弓・短剣

 装備武器:ファンタジックソード(星5激レア武器)

 装備防具:精霊の胸当て・精霊のショートパンツ・スムーズシューズ

 装飾品:エルフのアミュレット・天然石のペンダント

 特技:調合で回復可能

 

【メンバー:4】

 魔法剣士キオ 職業:学園魔法剣士(元黒魔法使い)

 レベル:37

 HP:1550

 MP:134

 攻撃武器種:剣・杖

 装備武器:生徒会役員の剣・改

 装備防具:ダーツ魔法学園上級制服セット・魔法剣士の胸当て・剣士のブーツ

 装飾品:生徒会役員のバッジ・マジカルアミュレット

 魔法:黒魔法各種と補助呪文


【依頼者兼サポートメンバー】

 黒魔法使いミルル 職業:高等黒魔法使い(ハイランク)

 レベル:30

 HP:1400

 MP:200

 攻撃武器種:杖

 装備武器:秘められし杖

 装備防具:夢見のローブ・月夜の帽子・素早さのブーツ

 魔法:強力高等黒魔法を戦闘毎1回発動可能



 * * *



「高等黒魔法使い? ミルルさんって、かなり上級の魔法使いなんじゃないっ」

「ええっ凄いですよ。しかもその若さでっ。これなら、このクエストは大丈夫……って。あれ?」


 マリアが喜んだのも束の間、不思議と落ち込むミルルの様子に違和感を感じて黙る。よく考えてみれば、ミルルの黒魔法だけで解決出来ていれば、自分達に依頼は来ないだろう。

 すると、グレードさんが落ち込むミルルをフォローするように状況を説明し始めた。


「ミルルはなぁ……この辺りじゃ1番の黒魔法使いなんだよ。だが、勉強がメインで、戦闘に慣れているという訳じゃない。覚えているのはMPをほとんど使い切る魔法だから、長期戦だって不得手だ。あくまでも、強力な魔法が発動出来るってことで。だから……」

「グレードさん、ごめんなさい。私がもっと戦い慣れていれば、覚えた魔法ばかり強力で。実際はそれを役に立てることが出来なくて……」


 ポロポロと涙をこぼすミルルは、村を救えなかった責任を感じているようだ。ミーティングが始まるまでは、なるべく我慢していたのだろう。

 こんな時、イクト君だったら……きっとミルルを励ますはずだ。


「みんなで協力すれば、きっと大丈夫。だってそうやって、ギルドのみんなはクエストをこなしているんだからっ。行こう! 村のみんなを助けに……モンスターを倒しにっ」


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