表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第十部 異世界学園恋愛奇譚〜各ヒロイン攻略ルート〜
293/355

第1章 2:気になる攻略プラン


 ぐんぐんと、オレのスマホアプリにアップデートされる新しいデータ。そして、ダウンロード終了とともに新たなオープニング映像が始まった。

 緩やかな流れの美しいサウンドは、これまでの冒険ものとは異なるテイストだ。これから始まる恋愛シミュレーション系の切ない展開を現しているのだろう。


「おっ……オープニングも終わって……主人公のデータ登録画面が出てきたな。あれっ? すでにオレのデータが登録されているみたいだ。何でだろう?」

「あぁ、一応これまでのRPGパートのユーザーデータを元に主人公のキャラ設定がされているの。イクト君の場合は、ほとんど変更点なくゲームをプレイ出来るはずだよ」


 表示されているアバターは、確かにスマホRPGパートのものと共通するものである。違いを挙げるとすれば、HPやMPなどのデータよりも身長や趣味などのデータに重点を置いているところだろう。


「へぇ……本当だ。データ登録完了しております。よろしければ、オーケーボタンを押してください……か」

「早速、恋愛シミュレーションバージョンのステータス画面を確認してみよう! せーのっステータスオープン!」



【プレイヤー:勇者イクト】

 名前:結崎ゆうざきイクト

 性別:男性

 誕生日:1月30日

 血液型:AB型

 身長:172センチ

 体重:53キロ

 趣味:スマホRPG、ネットサーフィン

 特技:マッサージ、合気道

 好きな食べ物:オムライス、ツナ

 苦手な食べ物:ワサビ(本当は苦手だが、初恋の人アオイのあだ名がワサビであることが判明したため、結構好きになった)

 得意料理:揚げ物(特に鳥の唐揚げ)


 備考:魔王イケメンコンテストで最終候補まで残ったことのあるイケメン勇者。自分自身がイケメンであることを自覚しているナルシストだが、女アレルギーという最大の弱点がある。かといってBL展開が来るわけではなく、美少女大好きな典型的ハーレム勇者だ。



「何だよこれっ! 人のことナルシストだの、典型的ハーレム勇者だの……オレのことそんなふうに思っていたのかよっ。このアプリ?」


 身長とか体重とかのデータはともかくとして、備考欄がなかなか酷い気がする。確かにナルシスト傾向にあるかも知れないけれど……そこまで酷くないぞ。


「まぁまぁ……こういうデータは、誇張していろいろ収集されるので、怒らない方がいいですよ。ところでイクトさんって合気道が特技だったんですね。どうりで異世界に転生しても普通に戦っていると思ったら……」


 話を逸らすためか、ククリが合気道について話題を振った。


「あぁ、合気道は小さな頃から習っていたからな。ほら、合気道って体術以外に棒術も習えるじゃん? だから、異世界での武器が棍なのは馴染みやすかったよ」

「知っているようで、知らない情報があったってことだね。実は、こういうプロフィールデータはこれから攻略する女の子たちの分もチェック出来るんだよ」


 得意げに語り始めるエステル、おそらくいろんな女の子のこういうデータがチェック出来ることが、今回の攻略ルートのウリなのだろう。


「へぇ……そういえば、RPGパートでは美少女ハーレムものをウリにしているわりに、HPとかMPとかのステータスしか分からなかったっけ。この恋愛シミュレーションパートを想定して、記載されていなかったのか?」

「かもね、美少女ハーレムの観点からすると、今回の攻略ルートがある意味で本編みたいなものだし。あっそれから、現在のイクト君が女の子たちを恋愛対象として攻略出来る可能性もチェック出来るよ!」


 可能性のチェックと言われても、RPGパートでかなり密着してフラグを立てた部分は、記憶から除去されているかもしれないのだ。また、改めて親しくならなければいけないのでは……?


「不安そうですね、イクトさん。そうだ! このククリ……ここは縁結びの女神らしくひと肌脱ぎましょう! 現在取得出来る攻略対象の数値を見せていただければ、縁結びのアドバイスを致しますので!」

「つまり、ククリのアドバイスを参考にデートなんかをすれば攻略対象の女の子たちと仲良くなりやすくなると……」

「まぁそういうことですね! と言っても、この手のゲームは基本メンバー以外はフラグを立てないとデートが出来ない仕組みになっています。まずは、初期から登録されている攻略対象をチェックしましょう」



 * * *



【勇者イクトの攻略対象実装済み一覧】


(ノーマルキャラ・10人)

 パートナー聖女『ミンティア』

 初恋の幼馴染で女性魔王『アオイ』

 清楚系賢者『マリア』

 おてんば系エルフ剣士『アズサ』

 神秘系星詠み神官『エリス』

 ボーイッシュ女勇者『レイン』

 ミニスカ猫耳メイド『ミーコ』

 妹の親友で魔法少女『なむら』

 友人マルスの妹『アカリ』

 双子の姉の友人『ルーン会長』


(運営からのアドバイス)

 ノーマルモードキャラを一定人数クリアすると、エクストラモードの攻略クエストが実装されます。さらにノーマルモードメンバーも追加される可能性も。



「へぇ……実装済みのノーマルキャラだけでも結構な人数がいるな。しかもさらに増えるのか……もしかしてノーマルメンバーってRPGモードでフラグを立てたメンバーのことかな。えっ……何気にルーン会長がいる……この運営、誰が人気キャラか分かってやがる。けしからんっ凄くいいぞっ!」


 まさか超難易度の高そうなルーン会長が、こんなに早く攻略対象としてリスト入りするとは……。未知のやる気が湧いてきたオレ、自分で言うのもなんだが、根本的にハーレム勇者の魂を受け継いでいるのだろう。


「たしかに、ルーン会長はお茶目な美人で一部の熱狂的な方々から支持されていますが。イクトさんって気が多い……ゲフっ。いえ、なんでも……ところでマルスさんの妹さんが既にノーマルメンバー扱いなのは意外ですね。ホワイトデーの時にデートクエストをした影響でしょう」

「アカリさんもマルスが美少女化したみたいな容姿で超可愛いからな……っていうか、ククリはホワイトデーの様子知ってたんだ」

「ええ。なんと言ってもハーレム勇者認定協会の任務ですからっ。さぁ確認出来る攻略対象から、数値を見てみましょう。まずは定番の幼馴染ですね」


 スマホ画面を確認すると、攻略対象一覧という項目がある。だが、ククリの言う通り名前の部分が隠されているキャラも多く、フラグを立てるまでは数値チェックはお預けのようだ。

 初期状態からアタック可能な人物としては……やはり、幼馴染が定番。オレの幼馴染というと、アオイかカノンだが一覧にはまだカノンの文字は見えない。


「ってことは……いきなり初恋の相手アオイからフラグ数値をチェックするのか。なんだか、緊張するなぁ……」

 オレのスマホを操作する手が止まると、守護天使であるエステルがそっと手を添えて操作を促す。

「うふふ……じゃあ、データを呼び出してみようね!」


 緊張すると言いつつも、すでにアオイとは両想い確定というナルシスト特有の自信がオレの心の奥底にはあった。いっそのこと、そのまま王道で幼馴染エンドを目指していきなりアオイでこの攻略ルートを完結しても……と思ったが……。


 ピッピッピッ、電子音とともに測定中の文字。


『幼馴染アオイさんの攻略数値、算出できました』


「えっと、魔族の姫君アオイを攻略するためには……まだ経験値が250万ポイント足りません……? 攻略難易度SSSランク!」


 アオイを攻略出来るようになるまでに必要とされる数値は想像以上に大きく、衝撃を受ける。


「なんじゃそりゃ? 最難関レベルじゃないかっ? アオイはオレに無茶苦茶好意的だし、そんな馬鹿なことって……。幼馴染が最難関って、一体……ククリ、原因はなんだか分かるか?」


 安全だと思われていた幼馴染ポジがまさかの高難易度で、動揺を隠しきれないオレ。


「えっ……? はいっ……えっと……あぁ! イクトさん、よく考えてみればおふたりはスマホRPG異世界における永遠のライバルポジション、勇者と魔王じゃないですかっ。いくら幼馴染でも職業の壁が厚すぎて最難関にもなりますよ。しかも、相手は魔族ですしね……種族の壁もあるかと」

「職業の壁と種族の壁……だと……! そうか、しかも勇者と魔王は永遠のライバルなのか……。こんなにアオイのこと好きなのに……」


「このククリの計算によると、普通感覚の女の子1人と絆が深まるまでにデートを重ねると大体10万ポイント経験値が貰えます。特に職業に壁のない女の子25人くらいと恋愛シミュレーションを重ねれば、アオイさんとも……あの、イクトさん?」

「25人? まだ、10人しか実装出来ていないのに25人? ってことは、アオイの攻略がラストバトルみたいなものなのかっ」


 職業の壁のない女の子たち25人もデートを重ねる自信なんかあるはずもなく……愕然とするオレ。



「イクト君、取り敢えずこの異世界アカデミーの入学式に出てみよう。知り合いの女の子たちも多数入学してくるはずだよ。ミンティアちゃんとかレインちゃんとか……ギルドメンバーのみんなもいるはずだし。難易度の優しい女の子と恋愛シミュレーションを重ねて、ラスボス攻略としてアオイちゃんとも……」


 傷心気味のオレのハートを慰めるために、エステルが学校の入学式で新たなフラグを構築することを提案し始めた。


「結局、アオイはどの世界でもラスボス的なポジションなのか……さすが、魔王様……」


 身近なはずの異世界の幼馴染との間に立ちはだかる分厚い壁を感じながら、オレは異世界アカデミーの入学式に挑むことになったのである。


 女の子たちとフラグを構築するために……!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ