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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
イベントクエスト-spring-
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ホワイトデー編4:モールでダブルデート


 スマホ異世界は、現実世界と時間軸が多少異なる。そのため、夜の間に数時間ログインしているだけでも充分なデートが出来るはずだ。


「じゃあ、私とイクト君、兄と萌子さんの組み合わせでダブルデートだね。ところで、デートは何処にしようか? 私、まだ初心者でこのスマホ異世界の様子がよく分からないんだけど。デートもクエストがらみで、討伐したり遠い何処かに行くんだよね?」


 まだよく分からないとか言う割に、既にデートプランを仕切り始めているアカリ。上級装備で固めているアカリが初心者だということに驚いたのか、イクトが意外そうにしつつも、説明し始める。


「そっか、アカリさんは初心者なのか。このスマホRPGは、ギルドに所属したらチームを組んで、特定の依頼をこなすんだ。まずは、アカリさんが何処のチームに所属するか決めて、その後は手続きが必要だけど……」

「うーん。まだキャラメイクが終わったばっかりなら、無理にクエストのチームに加入することないんじゃない? 私もイクトも、現状はログイン勢だし。本当の意味では、まだ私達も異世界に復帰していないよね?」


 取り敢えず、現状からポツポツと語るイクトと萌子ちゃん。


「そっか、ミンティアちゃんが休んでいる間は、イクトのチームは休眠状態なんだっけ? でも、そろそろクエストの準備しておかないと、いざ復帰の時に大変だぞ」

「うん。春休みになったら、クエストに復帰かな? どちらにしても、アカリさんはまだレベル1だろうから、怪我のリスクのあるクエストは避けた方が無難だよ。あとは、映画館で冒険物を鑑賞したり、無理に戦わなくても大丈夫。それに、いざとなったらオレが守ってあげるからさっ」


 どうやら、イクトは登録したてのうちの妹を、無理にクエストに連れまわす気は無いらしい。普段よりも、上級者ぶってカッコつけている気がしなくもないけど。

 魔獣討伐戦後は、平和になったとはいえ、反動でこの辺りは高レベルモンスターがうじゃうじゃしている。イクトの気遣いは、冒険慣れしている勇者なら当然だろう。


「ふふっいざとなったら守ってくれるなんて、イクト君って結構男らしいね。私初心者だし、いきなり討伐クエストデートとかは無理かも。でも、ここの施設って無茶苦茶広いから、デートの場所も多そう」

「うん! じゃあせっかくだから、ハロー神殿内の安全な施設で楽しみましょう。実は、ショッピングモールも併設されているのよ」

「へぇ……私、最近日本に帰国したばかりで、あんまり遊んでいないんだ。久しぶりに羽を伸ばそうかな?」

「ふふっ早速、モールの女性フロアに行ってみましょう。その後は、食事をして、映画鑑賞かな? イクトとマルスさんは荷物持ちをお願いね!」


 荷物持ちという男性特有の役割を言い渡されて、ショックを受けるが……まぁいいや。最初は、こんなもんだろう。


「あはは……分かったよ。何だかいつの間にか、萌子たちのお買い物に付き合う展開になっちゃってるけど……。マルス、いいか?」

「ああ、いろいろあった後だしな。デート出来るだけでも、進歩しているよ」



 * * *



「わぁ! ねぇねぇ、この杖! なんか伝統的アニメの魔法少女の武器って感じで可愛いっ。私、この装備にしちゃおうっかな? どう、似合う? あなたのハートを捕まえちゃうわよっ。なんて!」


 新しくオープンしたという女性向けショップの一つは、魔法少女の専門店。調子に乗ったアカリが、フリフリ衣装の全身コーディネートをお披露目。さらに、魔法少女特有の杖まで試着し始めた。我が妹ながら、阿呆っぽい……見た目は美人系のはずなのに。


「似合ってるけどさ……お前、一体どういうトレジャーハンターになりたいの? 今からならまだ間に合うかもしれないから、魔法少女に転職相談するといいぞ。悪いな……イクト、うちの妹が……ってあれっ?」

「うっ……か、可愛い……。魔法少女、黒髪、ロング、清楚ぉおおっ。あぁっ可愛すぎて……女アレルギーがぁ……ぐはぁああっ」



 嘘だろ、あの阿保っぽいアカリのウィンクに、そんな攻撃力があるとは思えないが。むしろ、強気キャラのアカリが謎のフリフリ装備を試着し始めてハラハラしてたのに。

 狭い空間で、のたうち回り始めた女アレルギー勇者イクト。せっかくのイケメンが台無しになるくらいの、苦しみ方に相変わらず不安を覚える。


「きゃああっイクト、しっかりして! 大変、アカリさんに可愛くウィンクされた衝撃で女アレルギーが発症したみたいなの。どうしよう?」

「えっ? ヤダ! 私のウィンクって、そんなに破壊力抜群な可愛さなんだ。本気で、魔法少女に転向しちゃおうかな?」


 まだこのスマホRPG異世界のスキル事情に詳しくないのか、アカリは自分の魅力系スキルのせいでイクトが倒れたと思い込んでいるようだ。まぁ……あながち間違ってはいないだろうが。イクトが倒れたのはアカリのスキルが発動したわけじゃなく、持病の発症だろう。


「おいっアカリ! イクトは本気で女アレルギー持ちなんだよ。からかうなって。おいっどうしよう……呼吸が止まってる?」

「えっ? そんなイクト君が私のせいで……。ゴメンね、責任持って今から人工呼吸で救助するから……いい? 行くよ!」

「はぁ! 魔法少女がオレに……人工呼吸をっ。か、可愛いすぎてめまいが……グハァ!」

「おいっアカリ、余計なことすんなよっ。イクト、しっかりしろっ。イクトォオオオ!」


 波乱に満ち溢れたホワイトデーのダブルデートは、一体どうなる?


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