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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
イベントクエスト-spring-
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ホワイトデー編3:あの娘と再会


 勢いで再びスマホ異世界へと転移してしまったオレ、丸須有吏まるすゆうりと妹の灯吏あかり


「わぉ! これが噂の異世界転移とか異世界転生ってやつかぁ。ねぇ兄貴、ところで私のアバター……まだ出来立てっぽい初期状態なんだけど」


 初めての異世界転移に驚きつつも、既にシステムに馴染みつつある妹に驚かされる。まぁ以前と違ってログアウトも簡単に出来るから、それほど恐怖心もないか。


「あぁ多分、まだレベル1の新人扱いだろうな。ここは、ハロー神殿の冒険者寄宿舎だと思う。ログイン勢は一度、集会所に集まるだろうからそこに行ってみるよ」

「ふぅん……じゃあ、私もそこのギルドの受付しながら兄貴の様子を監視しよう。萌子さんを見つけたら、ちゃんとデートに誘うように!」

「お、おぅ……。分かったよ。オレのコインと装備をやるから、それを元に整えてていいぞ!」


 一刻も早くオレに彼女を作らせて、BL疑惑から逃れたい様子の妹。急かされながら、所属ギルドの集会所コーナーに向かう。


「さぁて、どんな職業に登録しようかなぁ。じゃあ、兄貴また後でね!」

「あぁ分からないことがあったら、聞きにきていいからな」


 一旦、灯吏と離れて萌子ちゃんを探すことに。夜の9時台というログイン勢が集まりやすい時間帯だ。人も多く、見かけたことのある冒険者もチラホラ。

 異世界へ直接来訪している場合、ログイン勢はみんな一度は集会所でアイテムを貰わなくてはいけない。そのため、運が良ければ萌子ちゃんも集会所にいるはずだ。

 そして、運命の女神はオレをまだ見放していなかったのか、萌子ちゃんの姿もあった。


「えっと……萌子ちゃん、お久しぶりだね。元気だった? そ、そのぉ……あっほら、もうすぐホワイトデーじゃん! それでお返しを用意したいなーなんて思っているんだけど……」

「マルスさん! オフ会以来よね。そっか、ホワイトデーのお返しを考えてくれてたんだ……。それって、私が元婚約者だから? 婚約破棄したから、お詫びのしるしとか?」


 既に、警戒されてしまっているのか、つれない態度の萌子ちゃん。仕方がないか、婚約破棄なんて女の子にとってはかなりの心の傷のはず。

 刺さるような視線を感じて、ふと振り向くと後ろでブロックサインを送る妹の姿が……。どうやら、告白を促しているようだ。


「い、いやっ! 違うよっ。オレは純粋に萌子ちゃんのことが……好きだからっ。それで、ダメになった部分をやり直したいなぁって……」

 妹が後ろで監視……いや、様子を伺っている影響もあり、思い切って萌子ちゃんへの想いを告白する。


「マルスさん……気持ちは嬉しいけれど、私不安で。マルスさんには相棒のツカサさんがいるし、あんな綺麗な人と比べられたら私……」

「ツカサは男だし、それにあぁ見えてもツカサって、獣医志望で結構忙しいやつだし。そんな想像しているような関係じゃ全然ないから! 今流行りのジェンダーレス男子って風貌なんだよ」

「本当に? てっきり私だけ、マルスさんのこと好きで、騙されていたんだと思って。以前も、いつの間にか消えてしまったし……今更、ずるいよ」


 ずるいとかと言われて、先程ツカサから貰った惚れ薬が脳裏にチラつく。萌子ちゃんの指摘通り、やっぱりオレは、ずるい男なのだろうか。

 けど、自然と萌子ちゃんの口から『マルスさんのこと好き』というセリフが出てきたということは、記憶が消されていても気持ちは完全に消えていないようだ。

 興奮と緊張でバクバクと高鳴る心臓を抑えつつ、デートへと誘う。


「本当に、大丈夫だし。ずるい事もしないよ! ちゃんと正々堂々と萌子ちゃんに再アタックするって決めたんだ。だから、関係修復のデートをって……」

「マルスさん、ありがとう……」


 記憶が消されたことがよっぽどトラウマなのか、萌子ちゃんは今にも泣きそうだ。ミニスカートの裾をキュッと握って震えながら泣くのを我慢している。

 人の目さえなければ、抱きしめてキスをしてなかば強引にでも恋人関係に戻りたいくらいだ。

 すると、オレの邪な気持ちが神にキャッチされたのか、萌子ちゃんの双子の弟イクトがタイミングよく現れた。


「萌子、マルス! なんだ、破局したって聞いてたけどもう一度、付き合うことにしたのか。復縁か、はぁ……一時期は心配したけど良かったよ。悪いなマルス、萌子が迷惑かけてない?」

「もうっ! イクトったら。マルスさんと私は、まだ復縁していないわよ。ただ……そのデートに誘われただけで……」



「2人っきりで会うのが不安なら、以前みたいにダブルデートにしよう。妹が協力してくれるって言うから……」

「妹さん……? マルスさんって妹さんがいたんだ。知らなかった……あっもしかして、あの可愛い人……?」


 待ってましたとばかりに、妹が颯爽と現れる。しかも。先程の初期装備と違って結構いい感じのランクの高い装備に身を包んでいた。

 オレのデジタルコインや余っている装備品をあげたから、それなりには形になるだろう。銀色の上級装備品に合わせて赤のミニスカと黒のニーソが女性らしい。女性向け装備は買い換えたのか、錬金したのか?

 SSレアのアタリガチャキャラクター風に仕上がっている。


「初めまして! 兄がお世話になってます。トレジャーハンターのアカリですっ」

 灯吏のやつ、随分と猫を被っているなオイ。それとも、オレが知らないだけで外面は結構いい方なのか、うちの妹は。


「ふぁっ! マルスの妹? 超美人じゃないか……あっでもマルスが女の子ならこんな感じか。もしかして、ダブルデートの相手って……」


 ハーレム勇者のイクトが思わず顔を赤らめて、灯吏を見つめる。凄いぞオレの妹! あんなに美少女ばかりに囲まれているイケメンハーレム勇者を照れさせるとは……。


「うん……私がダブルデートの相手じゃ……イヤ?」

「いや……じゃ、ナイです。その……よろしくっ!」


 と、照れながら返事をするイクトは満更でもない様子で……。

 どうやら、意外なフラグとともに兄妹姉弟のダブルデートが展開されそうだ。


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