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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
イベントクエスト-spring-
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ひな祭り編3:桃の節句の女神様


「イクト内裏様っ……。イクト内裏様のお出ましだっ」

「あのお方が伝説のハーレム内裏様、なんと神々しい……」


 イクト内裏のイケメンオーラは、隣のステージに飾られているお雛様たちにも伝わるようで、場内がざわつき始めた。よその三人官女の中には、思わずイクト内裏に見惚れてしまう者も。


「初めまして、君が新入りのシフォン雛だね。まだ、君の持ち主はお内裏様のモデルになる異性が決まっていないようだ。はてさて……どうしたものか」


 このギルド内の桃の節句特別ステージ界隈を仕切るお内裏様こそが、伝説のハーレムお内裏イクトだ。

 女アレルギー勇者イクト君に容姿はそっくりだが、お雛様たちを侍らせているところを見ると、女アレルギーではない様子。


 いや、むしろかなりの女好きと言った方が良いだろう。しかも、オーラが半端なく誰もが魅了されるチートスキルが常時発生しているようだ。


「はっ初めまして、シフォン雛と申します。それにしてもびっくりするほど、イケメンですぅ。あなたが伝説のハーレムお内裏イクトさん? っていうか、伝説のハーレムお内裏とは一体……」


 シフォン雛が、突如湧いてきたハーレムひな祭り設定に困惑していると、マリア雛がストーリーテーラーのような語り口調で伝説について説明し始める。


「遥か昔の古代文明期……多種族と婚姻をすることで、世界を平和に導いたとされている伝説のハーレム勇者二代目イクトス。その彼が所有していたお内裏様の魂を継承されているのが、あのイクト内裏です!」

「ふぇえええっ? そんな古くからお雛様って歴史があるんですかっ。びっくりですぅ。けど、一夫多妻のハーレム雛人形なんて、ありなのでしょうか?」


 想像よりも、年季の入ったイクト内裏の設定に、シフォン雛は驚きの声をあげてしまう。見たところ、イクト内裏は若々しいお人形さんなので、継承されているのはあくまでも魂だけなのだろうが。

 さらに古代より続くハーレム設定を解説するために、エルフ雛が歴史について語り始めた。


「あぁ……むしろ、昔は偉い人が大奥を作って、正妻から側室までお嫁さんたちを生活させていたくらいだし。大きな戦とかがあった後では、当たり前なんじゃないかな」

「はぅううっ! 私の持ち主のシフォンちゃんは、地球の現代人なのでそういう感覚は持ち合わせていませんでしたが……。異世界は、魔獣との戦が終わったばかりですし、そういう風潮なのかも知れないですね。はい……」


 徐々に、イクト内裏の率いるハーレムひな祭り設定に、飲まれつつあるシフォン雛。


「やっぱり、ご縁があってイクト内裏様と知り合ったなら……。仮の契約として、シフォン雛さんもハーレムひな祭り隊の仲間入りを果たすべきなのでしょうか?」

「はわわっ? でも、私の持ち主のシフォンちゃんの気持ちを確認してからじゃないと……」


 もしかしたら、シフォンちゃんもイクト君のことを……と思ったが、雛人形である自分が決めていいことではない。


「じゃあ、さっそくシフォンさんに気持ちを確認してみてはいかがでしょう? この人形用ミニスマホから、連絡を……って、そういえば合宿中はスマホ禁止なんでしたっけ」

 神官雛がシフォン本人と連絡の取れない理由を思い出し、困り顔に。


「しかし、シフォン雛ちゃんだけお内裏様のモデルが未定っていうのも……」


『ぷるぷるぷる〜! 美味しそうな、においがするぷる〜』


 すると、桃の節句特設ステージから漂う甘酒やちらし寿司のにおいにつられて、雑魚モンスターぷるぷるが現れた。

 特設ステージを見学している人間のお客さんたちからすると、猫くらいのサイズの可愛らしいぷるぷるは、ペット感覚だ。


「ぷるぷるだ〜! 可愛いっ。ねぇうちで飼っていい」

「あのぷるぷるって野良? 私の家で保護しちゃおうっかなぁ」


 ほとんどのお客さんは、ぷるぷるがぽいんぽいんと雛人形たちの甘酒を狙うのを放置している。むしろ、ペットとして飼うのを検討しているようだ。


 だが……小さな雛人形たちからすると、雑魚モンスターぷるぷるは驚異的な存在。


「やめろっ! その甘酒は、エルフの里から送られてきた大切なもので……」

「あぁっちらし寿司まで!」

『ぷるぷるぷる〜。甘酒いただきまーす』


 状況を察した五人囃子たちが、BGMをバトル音楽に切り替えて場を盛り上げ始める……が。

 残念なことに、雛人形たちには特設ステージの上で飾られるという重要なお役目がある。そのため、勝手にバトルをしたり、ぷるぷるを討伐することは出来ない。


「くっ……本来ならば、あれくらいの魔物なんか魔法で追い払えるのに。お客さんたちが、追い払ってくれるのを待つしかないのか……。桃の節句の女神よ……我らを救いたまえっ」


 伝説のお内裏イクトが、桃の節句の女神様に祈りを捧げると……何処からともなく光が差し込み、優しい声が聞こえてきた。


『おお、伝説のお内裏イクトよ……あなたの声に応えて、救援部隊を送りましょう! しばしの、辛抱です』



 * * *



「にゃんにゃんにゃーん! ひな祭り特設ステージの見張り番を頼まれたのにゃっ」

「わんわーん! どんなステージなんでしょう? 楽しみですわん」


 桃の節句の女神様からご神託を受けた神官エリスに依頼されて、特設ステージの見張りを頼まれた猫耳メイドミーコと、犬耳錬金術師ココア。2人ともひな祭りらしい桃色のメイド服を装備しており、キュートである。


「みゃみゃっ! 大変ですにゃ。お客さんたちに紛れてぷるぷるが、ぽいんぽいん甘酒を狙ってますにゃ」

「さっそく、ケモ耳メイド部隊出動ですわん。ひな祭りは、私たちが守るのわん」


 ぷるぷるから甘酒を守るために、駆け出すミーコとココア。助けを求める雛人形達。


 のほほんとした会場内で、密やかにバトルが始まり……。


「にゃーっ! 甘酒飲んじゃダメなのにゃ」

「わんわんっ!」

『ぷる〜猫さんとワンさん……怖いぷる〜。愛好家の人に、保護してもらうぷる〜!』


 野良ぷるぷるは、愛好家の元へと逃げ出した! ミーコとココアは経験値を3ポイント獲得。お雛様たちのレベルが上がった!


「あれ? なんで雛人形である私たちのレベルが上がるんでしょう?」

「さぁ……そういう仕様なのでは」

「ヤッタァ! ありがとう、メイドさんたちっ」


 その後は、楽しくひな祭りが行われ……シフォン雛が箱の中に戻る3月4日の00時01分が、刻一刻と近づいているのであった。


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