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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
イベントクエスト-spring-
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ひな祭り編2:たくさんの雛人形達と一緒に


 ギルドルームの桃の節句特別スペースに、可愛らしく飾られたシフォンの雛人形セット……。本来は、シフォンの持っている雛人形はシンプルな1段飾りのもの。

 だが、今回は他のギルド加入者の雛人形も一緒に数段飾りの一部分に飾られており、何だか賑やかだ。


 記念に……と許可が降りていたため写真を一枚撮って、地球へと帰還。スマホを確認すると、シフォンの雛人形の写真がバッチリと保存されていた。


(迷ったけど、エリスに雛人形の管理を頼んでおいて良かった。私のお雛様も、たくさんの雛人形達に囲まれて楽しそう……これで、安心して部活の合宿に行ける)


 合宿当日の早朝、スマホを預ける前に画像を確認してホッとする。電源を落として、いつでも預けられるように。


「絹絵ちゃん、そろそろバスが来るよ。早く行こう」

「うん、今行く!」


 同じ剣道部のメンバーに呼ばれて、合宿所へ向かうバスへと乗り込む。


 その頃、異世界では雛人形たちが年に一度の桃の節句パーティーを開始しているとも知らずに。



 * * *



「はわわ! このギルドのお雛様たち、たくさん、たくさん、いますです!」


 まだ、雛人形になりたてのフレッシュなシフォンのお雛様。ラベンダーカラーの髪色が特徴のピュアな彼女は、ちょっぴり天然の箱入り娘だ。

 なんせ、昨日飾られるまではきちんとケースの中に、仕舞われていたのだから。


 ちなみに顔立ちは、持ち主であるシフォンをかなり幼くした風貌だ。もしかすると、シフォンも育ち方次第では、このような天然仕様の少女に育っていたのかもしれない。


「あら……新入りのお雛様ね。御機嫌よう……私は聖女ミンティアの所有する聖女雛よ。ここの管理者はエリスさんということになっているけど、人形同士の間でのリーダーは私なの。よろしくね」


 清純派の美少女であるミンティアが所有する聖女雛は、意外なことに大人びた麗しい雛人形だ。ミントカラーの髪色はミンティアとお揃いだが、どちらかというと夜空の召喚士ミンティアラに似ているだろう。

 大人美女の登場に、緊張しつつも新人らしくキビキビ挨拶するシフォン雛。


「はうっ! 聖女雛さんですね。よろしくなのですっ。私の持ち主は魔法剣士のシフォンちゃんなのですが、合宿中なので今はエリスさんの預かりなのでありますっ」

「そ、そう……。何だか世間知らずっぽいけど、大人しく座っていれば大丈夫よ。パーティー、楽しんでね」

「ですっ! ありがとですっ」


 そういえば、お内裏様は何処にいるのだろうか……。と、シフォン雛がキョロキョロと辺りを見回していると、元気なお雛様が明るく話しかけてきた。


「いよぉ〜! 新入りか? アタシはエルフ剣士アズサの雛人形。その名も【エルフ雛ヤンキーアレンジ仕様】だっ。お前も剣士だろ? 何となく物腰でわかるぜっ。よろしくなっ」

「はうぅっ。確かに持ち主のシフォンちゃんは魔法剣士ですが、雛人形である私を見てそれを見抜くとは驚きですぅ」


 アズサ雛は、珍しいエルフ仕様の雛人形で髪色も持ち主と同じ金髪だ。基本はキュートなエルフ雛人形なのだろうが、ヤンキー風にアレンジされており着崩した着物が色っぽい。

 思わぬお色気ヤンキー雛の登場に緊張しつつも、グイグイと甘酒を勧められて思わず飲んでしまう。


「どうだ? この甘酒……美味しいだろ。これは、アタシの持ち主の故郷エルフの里の名物なんだっ」

「凄いです! こんなに美味しい飲み物がこの世の中にあるとは……箱の中から出てきて良かったですっ」

 ノンアルコールの甘酒だが、気持ちはふわふわと軽くなる。雰囲気に酔っているのだろうか。


「うふふ……ちらし寿司や雛あられもどうぞ。申し遅れました、私……このハロー神殿ギルドの管理者であるエリスの雛人形……神官雛ですわ」

「はわわ、お世話になっております! 本日はお日柄もよろしく……」


 設置してくれたエリスさんそっくりな銀髪のお雛様に話しかけられて、動揺するシフォン雛。


「緊張しなくても、大丈夫ですよ! 私は、白魔法使いマリアの持ち雛です。割とノーマルな雛人形なので、お仲間ですね」

「はい、マリア雛さんもよろしくお願いしますです。あの……ところで、お内裏様の姿がいつまでたっても見えないのですが……」


 お内裏様というワードに、他の雛人形たちの間に一気に緊張感が走る。何か、禁句でも言ったのだろうか……。


「私、ここの説明係のアイラ官女です。シフォン雛さんは、まだ赤い糸の儀式が済んでいないんだね。ここにいるほとんどのお雛様たちは、勇者イクトの婚約者たちだから、お内裏様はイクト内裏が1人で兼任しているのだけど……」


 まさかの失言かとシフォン雛が震えていると、フォローすべくツインテピンク髪の可愛らしい官女さんがここの仕組みを説明してくれた。ここにいるお雛様達の相手は、ほとんどがイクト君に似たお内裏様だという。


「シフォンちゃんは、婚約者のいないフリーな女の子なんです。その場合は、どうなるんですか?」

「えっと……一応、儀式をすると恋人になる可能性のある男性の顔に、お内裏様が変身する予定なんだけど……」


 しどろもどろのアイラ官女さん。すると、誰か偉いお人形さんがきたのか、五人囃子が笛太鼓を一心不乱に演奏し始めた。


 盛り上がる演奏の中、みんなの目線の先には……。女勇者レインちゃんにそっくりなお雛様と、魔族の姫君アオイさんにそっくりなお雛様を連れて、両手に花状態のイケメン内裏が現れた。


「はわわ……凄いイケメン。あなたは、一体?」

「初めまして、シフォン雛さん。伝説のハーレムお内裏……イクト内裏ですっ」


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