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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第九部 魔獣と夜空の召喚士編
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第九部 第9話 次の目標は秋の訪れとともに


 勇者イクト達の前に現れた竜族の美少女リーメイ。外見上はごく普通の人間と変わらない容姿であるリーメイの登場に、困惑する人物が一人。聖女ミンティアの心の中にいる夜空の召還士ミンティアラこと、村巫女ティアラだ。


 ティアラは、今回のクエストから時折ミンティアと魂を入れ替わって召還を行ったり結界を張ったり……とサポートに徹してきた。

 古代の結界を作り、それとなくかつて契約していた召還獣たちにアピールを行うことで、ミンティアのチカラの増大を目指した。どのようなクエストにもミンティアが参加できる状態にすることで、イクトとミンティアの絆を深めていこうとしたのである。最終的に計画しているイクトの独占第一歩として……。


 だが実際に契約の紋様から現れた少女リーメイは、ティアラの思惑とは異なる人物だった。心の中でティアラはミンティアとともに、契約紋様についての話し合いを行う。


『どうしてなの……。漆黒のドラゴンサーペント・ヘイロンを召還できるように誘導したつもりだったのに、実際にやってきたのは子孫の少女だったなんて。ミンティアがイクト君を独占しやすいようにするつもりが、かえってメンバーとなる女性を増やしてしまった……?』


 リーメイの登場が計算外だったのか、呆然としている様子のティアラ。なんとなく、このような状況になるのではないかと推測できていたミンティアが静かにティアラに語りかける。一つの肉体を共有している以上、もう一人の自分自身でもあるティアラに言い聞かせるように……。


『ねぇ、ティアラ。イクト君はね……伝説のハーレムを作る勇者の宿命を背負っているの。古代勇者イクトス様との決定的な違いは、そこかも知れない。でもね、私はイクト君のことが大好きだから……。どんなにイクト君が女の子達に囲まれていたとしても、彼の1番を諦められないの!』

『ミンティア……』



 * * *


 

 一旦、食堂の席に戻りゆっくりとリーメイたちと話をする事に。食事の途中だったミンティアとともにリーメイにも朝食をとって貰い、メンバー登録を行う。


「よろしくな、リーメイ。じゃあ、さっそく冒険者スマホにサポートメンバーとして登録するから……リーメイの本所属ギルドはどこになっているんだ?」

「本所属は、ここから数キロほどの距離にあるゲートから行き来可能な竜の里にある竜族専用のギルドですわ」

 冒険者スマホ同士で通信を行い、ステータスデータなどを送信してもらう。ピッピッピッ……とデータ送信画面が表示されて……登録完了。


 新メンバーとなるリーメイのステータスは以下の通り。



【追加メンバー】

 魔法剣士リーメイ 職業:魔法剣士 称号:竜族の剣士

 レベル45

 HP:2150

 MP:300


 攻撃武器種:剣・杖・飛び道具

 メイン装備武器:ドラゴンソード

 サブ装備武器:魔法の竜玉

 装備防具:ラベンダーワンピース・マジカルシューズ

 装飾品:黒き竜の守り・宝玉のピアス


 呪文:攻撃魔法、回復呪文中

 スキル:魔法剣の心得

 特殊モード:竜の化身

 メイン所属ギルド:竜の里ギルド協会


(備考)

 いにしえの召還ドラゴンであるサーペント・ヘイロン一族の末裔。現代の竜族の多くはほとんどが人間形態で暮らしており、リーメイもそのひとり。

 元々は魔法使いだったが、人間界の任務を単独でも遂行できるように上級職の魔法剣士に転職した。召還精霊としては登録しておらず、種族の代表として紋様を使用して人間界へとやってきている。

 そのため、召還士のショートダガーによる強制転移などは一切効かない。だが、召還士への魔力負担もかからないため、召還士から独立した頼れる仲間として認識するといいだろう。



 リーメイのデータを確認して、意外な情報に気づく。召還精霊として登録していないと、ショートダガーによる転移が効かない……。これは、どういう意味だろう?


「もしかして、リーメイって召還精霊として参加するわけじゃなくて、普通の竜族の魔法剣士のメンバーって事でいいのかな?」

「ええ。召還精霊を専門としている所属者は、出番待ちのためにギルドに所属している事もありますが。私の場合は召還精霊としてではなく、竜族の魔法剣士として登録しています。竜族も召還時にのみバトルに参加するのではなく、自由意志で動けた方がいいという上層部の考えです」


 一瞬、話をオレの隣で静かに聴いていたはずのミンティアの瞳が驚いたように見開いた気がした。そんなに、驚くような内容だったのだろうか?

 リーメイもミンティアの感情の変化に気づいたのか、笑顔で安心させるように続きを語る。


「ですから、召還士のミンティアさんの魔力を消耗しなくても大丈夫です。古代の召還士ミンティアラ様は、自らの魂を魔力変換して我々竜族を召還していたと伝えられています。そこまでの負担をかけるほどの魔力を持った竜族が、ほとんど残っていないのも事実ですが……。私自身の意思でバトルのお手伝いを行えますわ」

「えっああ、うん。心配してくれてありがとう」


「……精霊の間ではそんなギルドが存在していたんですか。でも数キロの距離って意外と近くに竜の里があるんですね!」

 マリアが、賢者専用の手帳にメモを取りながら率直な感想を述べる。

 偶然、魔法少女育成のギルドが研修用の土地を持っていたため訪れた場所だったが、竜の一族の住まいがそばにあるとは知らなかった。


「ここネオ山形は、竜神伝説がある土地のひとつ。ゲートも神域として継承されているのですわ。はるか古代時代には勇者イクトス様が、召還士ミンティアラ様を伴い、そのゲートから竜の里へと訪問されたことがあるとか。現代では里のオープン期間があって、観光やレベル上げのために冒険者の方も立ち寄られます」

「まぁ。機会があれば、私たちも訪問してみたいですわね!」

「ええ、大歓迎ですよ。オープン期間は秋なので、夏休み後に是非っ」


 いにしえの里に興味津々の様子のエリス。未定だったアイラのレベル上げスポットも決まりそうだ。それにイクトスとミンティアラのことも気になる。


 かつての古代勇者が訪れた場所……もしかしたら、今朝みた夢の内容がそうなのだろうか。

 万が一、オレが勇者イクトスの役割を継承しているのであれば、夢を通して昔の史実を見ることもあるのだろう。


 メンバー同士で簡単な挨拶などを済ませたのち、今回のクエストの主役であるアイラがリーメイに、クエスト概要を説明し始める。

「今日のクエストは、私の魔法少女転職の最終クエストなんだ。最後のテストだけは私一人で受けなくちゃいけないけど……」

「はい。アイラさんが最終エリアにたどり着くまで、バトルのお手伝いをしますね!」


 頼れるサポートメンバー竜族の魔法剣士リーメイを加えて、アイラの魔法少女最終テストだ。



 * * *



 最終テストのダンジョンは、いわゆる聖堂だった場所。目的地までの道のりは一本道となっている。


『ギュエエエエッ!』


 試練のために雇われている試験官役の魔法兵士や精霊達が、魔法・物理の両方の攻撃を次々と仕掛けてくる。


「なるべくアイラの体力を消耗させないように、手分けしながら左右と前方の敵を凪いでいこう! エリス……アイラのこと頼むぞ」

「任せてくださいな。守りの風よ……この者の盾となりて、守護の加護をあたえよ! 一切の魔法の砲撃を防ぎたまえっ」

 エリスが防御壁をアイラにかけてダメージの緩和をはかっている間に、オレが前列のメインの試験官である魔法兵士を魔法棍で激しく乱れ突く。

「この連続魔法棍の乱れ攻撃で、フィニッシュだっ」


 ドドドドドッ! ドゥンッ!


 魔法兵を取り巻いていた残りの精霊たちは、リーメイが攻撃。

「はぁっ! 竜の魔法剣……受けてみよっ!」

 グォオオオンッ! まるで、本物の竜がうなるような音が剣から鳴り響き、精霊の魔法攻撃を打ち破る。


「みなさん大丈夫ですか? 回復の白き精霊よ……傷を癒したまえっ!」

 賢者マリアはさすが元白魔法使いといった治癒力で、あっという間に仲間全員に出来た傷を癒した。


「あとは、あの門番だけだね……。我は汝の名を喚ぶ……いでよカーバンクル!」

 ミンティアが、召還精霊のなかでも強力な種族で有名なカーバンクルを喚びだし門番を一網打尽。無事、最終エリアまで到達できた。


 ようやく着いた最終エリアの入り口……ステンドグラスがはめ込まれた教会風の大きな扉。此処より先は、今回のテストを受けるアイラだけで向かう。


「はぁはぁ……オレたちは結構消耗しながら戦ったけど……。アイラはまだHPもMPも温存しているよな?」

「うん、おかげさまで……。ありがとう、お兄ちゃん、みんな。私……全力でぶつかってくるね!」

「アイラちゃん、しっかりね」

「無理しちゃだめですよ」


 装備や回復アイテム、筆記試験用のペンなどを再確認して、扉へと向かうアイラ。思わず不安になってもう一度アイラに声をかける。


「頑張れよアイラ。もし万が一、つらかったらギブアップしてもいいんだからな」

「もう! 大丈夫だよ、お兄ちゃん……筆記と実技の半々のテストだし。それに、今日のエリスさんの占いだって私の運勢、良かったもの」

「そうですわね。無理をせず慎重に……さすれば勝利に導かれる。そういう運勢でしたわ。きっと大丈夫……」


 大丈夫、大丈夫……アイラは、その言葉をかみしめながら試練の部屋へ。


 パタン……!


 カチ、コチ、カチ、コチ……。

 懐中時計を確認すると、アイラが最終テストを開始してから、2時間ほどが過ぎた。付き添いが待つための部屋にはゆったりとしたソファーやテーブル、お茶やお菓子なども用意してあり、居心地がよい環境のはずだが……。待たされるというのは、どうにも時間の進み方が遅く感じるというものだ。


「事前研修の報告書によると随分頑張っていたみたいだし、合格するとは思うけど……。最初のテストで、精霊達が最終テストはこんなものじゃないみたいなこと言っていただろう? なんか心配でさ」

「そういえば……そんなことを言っていたような……」


 その瞬間、扉の中からふわんッッ! と魔法力が解き放たれたような音がした。

 ゆっくりと扉が開くと……満足そうな笑顔のアイラ。手には、合格者のみ与えられる儀式用の魔法の杖が握られている。最終試験官役の魔女が、合格証を手渡し、ねぎらいの言葉をかけてくれた。


「アイラさん、おめでとうございます。レベル1からの再スタートですが頑張ってください。夏休みは新人合宿がありますが、その後は各自でレベル上げスポットを巡ることになります。レベル上げスポットの場所が分かれば、こちらから申し込みをしておきますが……」


 秋以降のレベル上げの場所ときいて、今朝の会話を思い出す。かつての勇者イクトスも訪れたというかの場所のことを……。


「実は、もう決めているところがあるんですけど……」



 無事に転職クエストに合格したアイラのレベル上げと、古代イクトスの軌跡を辿るために。秋の訪れとともに……竜の里へ!

 


次回第九部第10話(通算260話)更新は、2018年9月16日(日曜日)を予定しております。


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