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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第八部 学園卒業試験-迷宮攻略編-
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第八部 第15話 中間層の古代神殿都市


「小妖精シュシュの封印も解けたし、鉱石博物館も見学できたし……そろそろ次の場所へ行くか。卑弥呼さん、埴輪さん、お世話になりました」


 虹色鉱石の封印を解くという目的を達成したオレたちは、休憩を兼ねた鉱石博物館見学を済ませ、再び旅を進める事にした。

 二日間お世話になった館長の卑弥呼さんと、炭鉱からここまで付き添って切れた埴輪さんに挨拶。


「イクトさん、みなさん、迷宮攻略頑張って下さいね! 応援していますわ。ところで、シュシュさん。この虹色の鉱石のかけら……私達もいただいてよろしいのですか?」


 卑弥呼さんと埴輪さんの手には、小妖精シュシュが封印されていた虹色鉱石のかけらが握られている。高い魔力を秘めているそうで、シュシュが封印から解放されてからも、今もなお輝き続けている。


「うん! 卑弥呼さんに封印を解いてもらったお礼だよ。博物館に飾る分と、卑弥呼さん達がお守りにする分! 私やイクトス達の分は、あとでココアちゃんに装備品として錬金してもらうから」

「ワン! 卑弥呼さんと埴輪さんの分は、先にチャームとして使えるように細工しておいたワン」 

「ふふっきれい。ありがとう、ココアちゃん」

「ふむ、新人の錬金術師という話ですが、なかなか筋がいいハニね。ココアさんは良い錬金術師になるハニよ。さっそく装備するハニ。ありがとハニ」



 卑弥呼さんが館長をつとめる鉱石研究所兼博物館を後にしたオレたちは、いよいよ中間層を代表する古代神殿都市であるオイセ町に足を踏み入れた。



 和風の建築物が建ち並び、うどんや餅などの名物料理を扱う飲食店が多い。敢えて地下らしい箇所を挙げるとすれば、通路の天井が低く、地下なので当たり前だが青空を見ることが出来ない点だろうか。



【ようこそ、地下迷宮中間層へ。オイセ町はこちら】



 オイセ地域の名産品である真珠や大型海老のキャラクターイラスト付きの看板が、旅人の道しるべとなるべく飾られている。思わず地下迷宮の通路であることを忘れて仕舞いそうだ。だが親しみやすい看板は、観光客に向けてアピールしているような気がしなくもない。


「なんて言うか、難易度の高い虹レア迷宮ってわりには、観光地としてもうまくやっているよな」

 すれ違う人達の姿も、オレたちと同じ冒険者風のグループも見かけるものの、ガイドさんに連れられた観光客もちらほら。


「炭鉱も見学ツアー客向けのコースがあったものね。もしかしたら、今時の迷宮は観光地としてもやっていくところが多いのかも」

「この真上には超パワースポットとして名高いオイセ町と神殿があるんですよね。地下もこうして観光地として頑張っているんですよ。きっと!」


 オレの率直な意見に、明るく答えるミンティアとマリア。特にマリアは観光気分なのか、無料配布の観光マップを片手に楽しそうだ。


 思えば地下迷宮に足を踏み入れた当初は、難易度の高いバトルの連続で攻略できるか不安だった。だが、炭鉱で発掘とアルバイトというルートに切り替えたおかげでトロッコを乗り継いで中間層まで来れたのだ。さらに、発掘した鉱石から新たな旅の仲間である小妖精のシュシュとも出会えたわけだし、良しとしよう。


「でも、古代ナーラと古代オイセ町ってお隣の県だったんだね。普段意識しないから気づかなかった」

「修学旅行だと古代ナーラは古都経由で観光する人が多いんだろうけど、たまにはいいんじゃないか?」

 バトル時は積極的に動いてくれていたシフォンとアズサも、ほっと出来ているのか警戒を解いて、観光モードだ。


 アースプラネットは、現実世界地球と町の名称や地図もそっくりな鏡のような異世界である。おそらく、地球で言うところの奈良地域から伊勢地域に移動したという事なのだろう。俗に言う中京地方に足を踏み入れたことになる。


 地球では、あまり縁がなかった地域なので異世界でそっくりな地域に訪問するのも不思議な心境だ。


 伊勢にあたるオイセ町はあくまでも中間地点だという話だが、この迷宮のゴールはいったい何処なのだろう? あいにく、手持ちの地図は中間層までだ。


 途中、飲食店に立ち寄り、空腹を満たす。それぞれ、好みに合わせてうどんや丼物などから好きなメニューをチョイス。

 オレ・マリア・ミンティアはオイセ名物のうどん。アズサ・ココア・シフォンは地上からの新鮮な魚介類たっぷりの海鮮丼だ。


 オイセ特有の食べやすいうどんは、疲労した身体にも優しい柔らかめのもの。ぶっかけタイプのものでだしが効いており、トッピングのめかぶがぬるりと口の中で踊っている。


「探索役は初めてなので緊張しましたが……最初の目的地まで無事到着できて嬉しいですワン」

「超難関クエストって噂だったし、最初はモンスターがものすごく強かったから心配だったけど、良かったね。海鮮丼もなかなか美味しくて、ラッキーだし」

「ふふっ。炭鉱にイクトス達が来てくれたおかげで私も久しぶりに外に出られたし……。このフルーツ美味しい!」


 美味しい食事に舌鼓を打っているのは、小妖精シュシュも同じで、小皿に赤い実を盛ってもらい満足そうだ。


「あとは、地下オイセ町のギルドに挨拶に行って、ダーツ魔法学園とつながるゲートを魔法で設置すればここでのクエストは終了か。ゴール地点がいまいち不明瞭だし、ゲートが完成したら地上と連絡が取れるしメンバーチェンジも出来る。この先の目処が立つだろう」

 

 会計を済ませて、再び商店が建ち並ぶ道を歩く。そろそろ、ギルドに着くはずだ。


「オイセの地下迷宮ギルドに着いたらクエスト報告をして、ゲート設置の手続きをして……と、シフォンの卒業試験は中間層までなんだっけ?」

「うん。一応、そういうことになっているけど……。あっもしかしたら、イクト君の卒業試験も、この中間層で認定されるかもよ。さすがに、この先の難関ダンジョンは学生の私たちには厳しいと思うんだ」


 卒業試験は、迷宮攻略の達成度ポイントの合計数が到達すれば合格である。

 運良く炭鉱で虹レア鉱石を発掘しているし、もしかしたらシフォンの言うとおり、この中間層までのポイントで達成できるのかもしれないが……。

 そんなことを話しながら、歩いていくといつの間にかギルド前。


「さっそく、手続きをしよう!」

 

 ギルドの建物には珍しい瓦屋根、『迷宮ギルド・オイセ支店』に到着。着物姿の受付嬢に冒険者スマホを預けて、ギルドポイントを算出。


「勇者イクト様! 実は、鉱石研究所での封印を解いたという小妖精のデータが不足しておりまして……。でも、虹レア鉱石なので、かなり高ポイントなのは確実ですよ! おめでとうございます。卒業試験合格確定です!」


「えっ合格?」


「正確なポイントが確定するのは、明日以降になります。それまで、宿屋で滞在されて下さい。迷宮クエスト続行の場合は、改めてフリークエストとして受理し直します。一旦、冒険者スマホはお返ししますね」


 手渡された宿のパンフレットには、ゆったり気分で温泉を……という温泉旅館の紹介。


「イクト君、合格点だったんだね! 良かった。続きのクエストを受けるかはまだ分からないけど……取り敢えずお祝いだね!」

「イクト、合格確定おめでとう! さっき学園とのゲートが繋がって……エリス達が、特別クエスト扱いで遊びに来るってさ!」

 

 合格点が確定し、クエストが一区切り。

 久しぶりのギルドメンバー全員集合、心配性の守護天使エステルやククリも来訪。


「お兄ちゃん、卒業確定おめでとう! 萌子お姉ちゃんも、昨日卒業確定したんだよ。お姉ちゃんは、まだ地下でフリークエストを受けるんだって!」

「イクト様、合格確定おめでとうございますわ。中間層は、様々なランクの迷宮と繋がっているんだとか。もしかしたら、フリークエストで萌子さんと合流出来るかも知れませんわね」


 学園ギルドで待機してくれていたアイラとエリスから双子の姉萌子の卒業確定情報も得られた。


「ううっこのククリ……リス冥利に尽きます!」

「ふふっククリったら、ずっとイクト君のこと寄宿舎で心配していたんだよ!」

「ありがとう、みんな」


 気の良い仲間たちと冒険の毎日。きっとこれからも、こんな生活が続くのだろう。


 でも何故か、胸騒ぎがする。



 その日の深夜、地上の合戦上跡地にて戦神いくさがみの古代霊が復活。

 戦神による魔法力解放の影響は地上にとどまらず、地下にも降り注いだ。偶然、メンバーほぼ全員が揃ったのも束の間。それから約一週間、足止めになるとは想像もしなかった。


次回最新話更新は、来週日曜日(2018年2月4日)を予定しております。

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