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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第七部 ハーレム勇者認定試験-後期編-
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第七部 第21話 ハロウィンライフと作戦会議


 無事、ミンティアのカボチャランタンとリンクしたオレは、魂の本体を竜宮城に留めたままランタンを介して学園内の様子を見て回れることになった。一応、オレの設定はミンティアの召還魔法により浮遊したり話すことが出来るカボチャランタンの精霊、というものになっている。


「ふう、授業終わったね。じゃあ、今日も委員会に行こうか」

「オレもついてっていいの?」

「うん、みんなランタン君のこと気に入っているみたいだし。マスコットキャラとして頑張ってね」


 今日もミンティアの隣でふわふわ浮かびながら、学園内の様子を見て回るオレ。授業が終わり、イベント実行委員会の本部へと向かう途中の中庭で、よく見知った姿。猫耳メイドミーコが、初等科の生徒たちにキャンディーやクッキーのお菓子を配る姿を発見する。

 午後の日差しを浴びて微笑むミーコは、ハロウィンの猫というより猫耳天使といった清らかな風貌だ。メイド服の裾を掴まれてもいやな顔ひとつせず、せっせと働く姿は美しい。


「トリックオアトリート! ミーコちゃん、お菓子ちょうだい」

「にゃあ、順番なのにゃ……はい、猫印キャンディにゃ。いい子にするにゃん!」

「わぁい、ミーコちゃんありがとう」


 ぱたぱたぱた……。

 ミーコにお菓子をもらってご満悦な初等部の生徒たち数人とすれ違うと、風がぴゅっとオレのランタンボディにぶつかる。幸い壊れたりはしていないが、不安ではある……。


「ふう、この小さな体だと何かと不安定だな」

「もう少し、浮遊する位置を高くした方がいいのかもね。あとで、魔力調整しよう」


 ランタンの浮遊ポイントは、ちょうどミンティアの肩ほどの高さだ。

 ミンティアの身長は1メートル60センチくらいだから、彼女の肩の辺りだとちょうど元気盛りの初等部所属の四年から五年生たちの身長ほどの高さで、危険きわまりない。



「あっミンティアとカボチャランタン精霊だにゃ。ランタン君、お菓子あげるにゃん」

「ミーコさん、アリガト!」

「ふふっ良かったね、ランタン君。ミーコちゃんも手伝ってくれてありがとう」

「にゃあ、お安いご用なのにゃ。猫耳族の本領発揮なのにゃ……ご主人様のイクトがいない間も頑張るにゃん。それが、イクトへのご主人様愛を貫くことなのにゃ」

 普段は明るいミーコの表情が憂いを秘めていて、見ているだけで心がチクリとした。猫耳もシュンと下がっていて、しっぽも元気がなさそうだ。


「! ミーコさんの気持ち、きっと、イクトさんに伝わっていますよ……」

「ランタン君、やさしいのにゃ……じゃあ、アタシは次の場所でお菓子を配ってくるにゃ」


 ミーコに、このランタン精霊の中身が勇者イクト本人なんだと伝えたかったが、ぐっとこらえて、あくまでもランタン精霊としてミーコを励ました。


 実は、オレの魂がこのランタンと仮状態でリンクしていることは、オレとミンティア、そして魂を保管している竜宮管理室メンバーの数人しか知らない。せっかくみんなと会話するチャンスが出来たと思っていたのに……と思っていたが、召還契約というものは契約者と召還される側の個別契約であるため守秘義務があるそうだ。

 もどかしい気もするが、正体がばれると再び魂が不安定になるらしく、仕方がないらしい。


「ランタン君……優しいね。全部、元に戻ったらミーコちゃんたちとも一緒にクエスト出来るよ」

「ああ、ありがとな。ミンティア」


 ランタン越しに見る学園は、イベント実行委員による飾り付け満載のにぎやかなハロウィンムードで、うらやましいような安心したような不思議な気持ちだ。



 イベント委員会の拠点となっている視聴覚室内にも、カボチャの置物やコウモリの飾りが配置されている。予備の飾りも段ボール箱にぎっしりと詰められており、まだまだ仕事がありそうだ。

「お待たせ! あっ今日はまだキオ副委員長だけなんだね」

「ミンティア先輩、今日も委員会のお仕事頑張りましょう! あっランタン君、そのリボン似合うね。ミンティア先輩とお揃いのカラーだ」


 委員会副会長のキオに、ランタンの持ち手部分に装備中のミントカラーのリボンを指摘される。リボンの結び目に小さなオレンジの魔石がついていて、なかなかお洒落である。今のオレの容姿に合わせた緑とオレンジで、カボチャっぽい配色だ。


「うん、他のランタンと見分けがつくように装備してもらったんだ。守備力を上げたり、魔法から身を守る効果もあるの」

「へえ、ミンティア先輩さすがですね。ランタンといえば、ルーン会長も今日からランタン精霊を連れてくるんですよ。見分けがつくから良かったです……去年も一緒だったんですけど……あっルーン会長! 萌子先輩!」



 カチャリ……と、背後から扉が開く音。

 現れたのは、金髪をまとめ髪にしたメガネの美少女賢者ルーン会長と、栗色の髪をツーサイドアップに結んだ可憐な美少女勇者……オレの女版アバター萌子だ。

 ルーン会長の手にはオレと同じくらいのサイズのカボチャランタンの姿が……何故かランタンなのにメガネをかけている。メガネは飾りなのかもしれないが、不思議と頭が良さそうに見える。


「はははっ待たせたな諸君! ちょっと支度に手間取ってしまってね。萌子さんにランタン兄さんのメンテナンスを手伝ってもらったんだよ」

「ランタン兄さんってメガネを介して魂が宿るんだって。召還士以外でもこんな形でランタン精霊とお友達になれるんだって、感心しちゃった」

「ふふっランタン兄さんが特別なんだよ。普通だったら召還魔法を使わなければとてもじゃないけれど……おや、ランタン兄さんどうかしましたか?」


 インテリっぽいメガネランタンがオレの方をじっと見つめて、何か言いたげだ。やはり、ランタン同士、思うところがあるのだろうか? キオの話によるとランタン兄さんはここの古株っぽいし、オレの方から挨拶するか……。


「あのっ初めまして。ボク、ミンティアさんの召還精霊ランタン君です。よろしくです」

 オレが新人っぽく挨拶すると、ランタン兄さんは満足げにふわりとこちらに向かってきて……。


「やあ、キミが新人のランタン君か……妹のルーンが世話になっているそうだね。短い間だが、よろしく頼むよ……キミ召還されるのは今回が初めてかい?」

「はっはい。他のランタンと話す機会がなかったので、ちょっと緊張しています」

「そっか……実はね、このランタン業界にはジャックっていう親分がいるんだ。ジャックは何年かに一回別のランタンにチェンジするんだけど、ジャックに就任したらしばらく自由行動は出来なくなる」

「ジャック……そういえば、ジャックオランタンって名称ですものね……カボチャランタンって」

「うん。だから、みんなジャックに選ばれる前に自分に合うアバター体を探すんだ。もっとも、元からアバターを所有していた場合は別の儀式が必要だけど。図書館の番人が守る扉の向こうで……ね」



 ジャックか……それに選ばれる前に図書館の番人を倒さないとな。

 あれっ、そういえばランタン兄さん……妹のルーンって言わなかったか。ランタン兄さんの正体って……まさか。



「はは、ランタン兄さん、新人君が戸惑っているよ。もうその辺で……さあ、今日はハロウィン本番に行われる【図書館の番人攻略】の作戦会議も兼ねてミーティングだっ」


 カボチャランタンにも防御魔法を使ったりとバトルで役割があるらしく、貢献出来そうでホッとした。


 長く会議は続き、気がつくと窓の向こうは月明かり。

 ハロウィン本番は……これから。


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