表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第七部 ハーレム勇者認定試験-後期編-
190/355

第七部 第1話 早朝のギルドミーティング


 暑さもだいぶ過ぎ去り、秋の風が心地よくなりましたね。

 みなさん、お元気ですか? 異世界転生勇者の結崎イクトです。

 オレは相変わらず女アレルギーのくせに美少女ハーレム空間で勇者してます……って、まぁお手紙風にこの冒険記録を書いているわけだけど、早いものでこのオレの異世界転生冒険記録も第七部を迎えた。



 これまでの重要ポイントを要点だけ説明すると……。



 その1、スマホゲームとして展開されている『蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-』の舞台である異世界アースプラネットは、ノアの大洪水の時代に地球から逃れたネフィリムと呼ばれる天使と地球人のハーフの種族で構成されている星だということ。

 なお、一部の伝承にネフィリムは巨人という説があるが現代のネフィリム達には当てはまらない。大昔はそういう変身呪文を使えた者もいたそうだが、現代ではみんな普通の人間サイズだ。


 その2、オレをはじめとする異世界転生者は実はまだ地球での肉体も残っていて本体は仮死状態、今の異世界での肉体は本体そっくりに作られた疑似ネフィリム体というアバターのようなもの。


 その3、アースプラネットでの現在の時間軸は一年イコール地球ではたったの一時間……つまり、地球ではこのゲーム(蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-)をプレイし始めて二十四時間経っていない。

 そして、二十四時間を越えると疑似ネフィリム体に魂が完全に移行して地球では死んでしまったことになる……らしい。 


 その4、アバターである今の肉体からログアウトし元の身体に戻れる玉手箱をゲットしたものの、オレを含める数人の異世界転生者はまだこの異世界に未練があり、地球に戻る決心が出来ずにいた。ログアウトは失敗すると魂が迷子になってしまうらしいし……。


 その5、それに……オレがこの異世界を離れられないのは、愛する仲間達と離れることが出来ないから……というのも理由の一つである。



 今日はこれから所属する学園ギルドの早朝ミーティング、みんなで朝食をとったらダーツ魔法学園の始業式に出席、今日から中学三年生の二学期だ。

 地球では高校生だったオレだが、いつの間にか転生先のアースプラネットでも元の年齢に近づいてきている。



 ガサッ……部屋のロフトルームから物音、守護天使エステルが起きたようだ。

「イクト君、おはよう。何か書いていたの?」

「エステルおはよう、スマホでいろいろメモしてたんだ。今日から二学期だしさ」


 嘘ではない。

 さっきまでスマホでぽちぽち打っていた冒険記録は、不思議なことに現実世界地球に置いてきた自分のパソコンのメモ帳とリンクしているようで、以前から記録をデータとして送っている。


 いつか誰かに読んでもらう日が来るかもしれない、オレの異世界冒険記録……シリアスなシーンは極力少なめに、面白かったことや、楽しいと感じたことが中心の娯楽的なものだけど。

 


「ふぅん……あっもうすぐ朝の六時だよ。今日はギルドのミーティングでしょ、それに始業式と大忙しだから、そろそろ……」

 慌ててスマホをカバンにしまう。身支度よし、制服よし、鏡で前髪をチェック……今日もさらさらヘアーだ。

「支度も出来たし寄宿舎を出るか……行ってくるよ」

「気をつけてね、行ってらっしゃい」


 パタン……。



 外はすっかり秋晴れだ。最近まで夏特有の暑さがあったが、暦通り気温が推移するのか、九月に入り涼しくなった。


 青空を見上げると地球と変わらず澄んでいて、広い校庭の木々が風でそよいでいる。足早に学園の校庭を移動し所属する学園ギルドのある教会へ。教会のロビーはステンドグラスが光を集めて、きらきらと虹色に輝いている。

 お祈りへ向かう生徒達の姿がちらほら……新学期の平和を祈りにきたのだろうか? なんとなくいつもより人が多いが、まっすぐギルドのミーティングルームの扉を開ける。



「おはよう、みんな!」

 オレがミーティングルームに入ると、オレより早く室内で待機していた仲間達の姿。


「にゃあ! イクトおはようございますにゃん。新学期もご主人様のために一生懸命つくしますにゃん」

「ありがとなミーコ、二学期もよろしく」

 オレがミーコの頭をぽんぽんすると、嬉しいのか猫耳をぴんっとたてる。

「にゃあ……ごろごろしちゃうにゃん」

 黒髪にミニスカメイド衣装のキュートなミーコ、語尾が『にゃ』なのは、彼女が猫耳族という種族だからだ。一見、ごく普通の美少女だが猫耳と尻尾がついている。オレのことをご主人様として慕ってくれる専属メイドだ。


「はよっ! おっイクト今日もイケメンだな。新学期も気合い入れろよ!」

「うわっいつまでも子供扱いしないでくれよアズサ」

「っわりぃ。イクトを見てると、つい……」

 金髪エルフの姉御肌美人アズサがオレの髪をわさわさと軽くいじる。彼女はおとなしいイメージのエルフ族でありながら、快活な性格で凄腕の剣士だ。


「おはようございますイクトさん、朝食の準備出来ていますよ。今朝はここで食事をしながらミーティングですね」

「ああ、マリア。食事用意してくれたんだ。ありがとう」


 清楚で優しそうな黒髪ロングヘアの美少女、白魔法使いマリア。シスター衣装が似合っているが、そろそろ転職を決めなくてはいけないと上級職に向けて勉強中。

 

 どの席に着くか迷っていると銀髪美少女神官のエリスが長い髪をさらっとかきあげて、『窓際の席が幸運と出ています』とひとこと。彼女は、神官一族出身で占いや後方支援魔法が得意。


「今日の運勢は吉……ラッキーフードは目玉焼きですわ。おはようございますイクト様、さっこちらに……」

「おお、ありがとうエリス。そっかそれで今日は目玉焼きなのか……」

「ふふっメニューに迷ったら、即占いですわ」


 会議用のテーブルには既に朝食が並んでいる。焼きたてのパンに、ウィンナー、目玉焼き、ヨーグルト、ミニトマトとレタス……ドリンクはオレンジジュース。


 席に着くと妹アイラがピンクのツインテールを揺らしながら甘えるようにオレの隣に腰掛けた。大きなグリーンの瞳がくりっとしている。


「お兄ちゃん、おはよっ。今年の始業式無料で10連ガチャが引けるんだって! アイラ、レア小物が欲しいなぁ」

「アイラはガチャ好きだな、オレも好きだけど」

「いいものがあったら、交換してねっ」

「はは、分かったよ」



 コツコツコツ……廊下から、小気味よいリズムで足音が聞こえる。おそらく数は二人……。


「おはよう、イクト君、みんな! 今日は晴れて良かったね」

 一人はオレのパートナー聖女であるミンティア。ミントカラーの髪色が印象的な美少女で、オレの女アレルギーを緩和させることが出来るチートスキルの持ち主。ショートダガーで空間を開き召還獣を呼び出すことも出来る頼りになるパートナーだ。


「朝のボランティアで遅くなっちゃって……おはよう、新学期もよろしくね」

 もう一人の足音の主は女勇者レイン。黒髪ショートヘアがよく似合うボーイッシュな美少女である。彼女はオレと同じ地球からの異世界転生者で、現在『星のギルド』というお隣のギルドから助っ人としてクエストを手伝ってもらっている。



「よし、全員席に着いたな……。では、ミーティングを始めようか。学園ギルドでの秋の目標は上級ランク合格。上級に昇格すれば、禁猟区にも挑戦可能……ハイレベルな武器を練金出来る」

「それから、マリアさんの上級職の転職修行もありますわ」

「たくさんやることがあって、楽しみだね」


 パラパラと、今後攻略予定のクエストマップを配布。スキルや装備の検討など、現実世界地球ではスマホ片手に行っていた攻略プランをリアルな異世界で行う。まさに、夢にまで見たRPGさながらのギルドライフ。

 

 この異世界は居心地が良い。

 オレは今後、地球に還るのか……それとも……?


 答えはまだ、胸の奥で揺れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ