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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第六部 ハーレム勇者認定試験-前期編-
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第六部 第31話 竜宮パレスへ


『あの若者は……よし報告だ。竜宮パレスですか? はい、異世界転生者と思われる若者が、ビーチで銀髪の娘と……テントの中にいたのですが……ええ、任務了解……ターゲット確認』


 のそのそ……テント内のイクト見かけ、竜宮パレス本部にスマホで電話連絡をすませた亀。太陽の熱がビーチを突き刺す中、暑さに負けじとゆっくり、だが確実に接近する。


 現在、イクトとエリスはデート試験を兼ねてビーチのテント内で仲良くオイル塗り……その後、なぜか整体マッサージに発展し……。


 テント内の備品であるエアベッドで、うつ伏せに寝るエリスの背に手を伸ばすイクト。

「エリス……ここか?」

 イクトの指先がエリスのツボを優しく、的確に攻める。

「イクト様……そこは」

 指先のオイルがエリスの素肌に滑り、弧を描くようにマッサージ。

 イクトもツボが利いているらしいエリスを見て、ご満悦の表情だ。


「このツボ気持ちいいだろ? ここをもっと強く……」

「……イクト様……すごい、どこでこんなマッサージテクを? 整体師かマッサージ師になれますわ。あの、イクト様が大丈夫ならもう一回……」

「ああ、アレルギー改善のために前世でいろんなツボを勉強したからな……好みに合ってて良かったよ……もう1回行くぜっ」

 体勢を変えて、健康に良いツボを揉み揉みともっと攻める。

「そんなところにもツボが……」

「まだまだ、オレのマッサージテクはこんなもんじゃないぜ……おらぁっ」


 まるでプロの指圧師か、整体師のごとく、ツボを刺激するイクト。

 神官という職業柄か、全身がコリに凝っていたというエリス。


 意外なイクトのマッサージテクが披露されているテントの入り口に、一匹の亀がやってきた。


 マッサージで盛り上がるテント内のイクト達に聞こえるような大声で、

「では、任務遂行……あっカメさんがっ」

 と、自ら実況し始めた。

 平らな手で熱い砂を掘り起こし小さな穴を作りつつ、カメ自ら砂浜に埋まり、パタパタと手足を動かす。


「ああ、大変だ! 可愛いカメさんがビーチで穴にハマって困ってるよ」

 まるで、ビーチの誰かがカメの様子を実況しているように錯覚させるが、これらのせりふはすべてカメ自身によるものである。


「ちょっとビーチで遊ぶだけのつもりが、つい穴に……誰か、可愛いカメさんを助けてあげて……」

「こんな深い穴にハマったらカメさんが……異世界転生者しか助けられないんだよ……」

 無反応のイクト達に聞こえるように大声を上げつつ、もぐるカメ。

「……どんどん穴にカメさんが……」


 カメが砂浜に埋まり助けを求めるパフォーマンスをするも、テント内のイクト達の耳にはいっこうに届かないようだ。


 そのころのテント内。

「イクト様……もし勇者をお休みになられても、プロの指圧師になるコースがあって安心ですわね。でも私ばかり気持ちよくなってしまっては……次は私がイクト様に神官流ツボマッサージをしてさしあげますわっ」

「神官流……なんだかすごそうだな。お願いするよ……うっここにもツボがあったのか? やるなっ」



 一方、ビーチでは何となく二人が助けに来ないことを感じ始めたカメ。

 だが、孤独に助けを求め続ける。

 掘り進めてしばらく経つが、あまりの無反応さに手と実況を止めるカメ。


「はぁはぁ……なんだあの二人、まだ助けにこないな……かくなる上は横穴を掘り続けて、あのテントの中に……」

 穴の中で決意を表明するカメ、本当はまだ二人に助けに来て欲しいのかも知れない。


 やがて、本気を出したカメは横穴を掘っていき、テントの中を目指してトンネルを完成させるべく工事を行うのであった。

 自らのチカラを振り絞り、何度も試行錯誤を繰り返しながら高度なトンネルを掘り進め……。


「工事成功! あとは、周りを固定してトンネル完成だっ」

 トンネルの仕上げをたった一匹でこなす。

 もはや、一流のトンネルマスターと呼んでも過言ではないだろう。

「はぁ……疲れたな、だが不思議と心地の良い疲れだ。ふう、まだこれからひと仕事しないと……おや? ターゲットは……」



 カメがあたりを見渡すと、テントの内部。

 奥にはマッサージを終えて、エアベッドの上でまったりとスマホゲームRPGの協力プレイで遊ぶ若者と娘の姿。


「イクト様、マッサージもRPGも上手ですごいですわ

「エリスもなかなかじゃないか……オレも自分のマッサージテクを確認できて良かったよ。それにこのRPGは初期バージョンからこつこつやってるから慣れてるし」

「ふふっでもすっかり、女アレルギーよくなりましたわね」

「そういえば……こうしてだんだん女アレルギーを克服……」


 まだ、カメの存在に気づかず和んでいる二人の側に、のそのそテント内を移動して近づいていき……。


「こんにちは。あのぉ…お取り込み中のところ失礼します……私、竜宮パレス営業の亀山ともうします……」

「きゃあ!」

「わっ何だよ突然、驚くじゃないか?」

 突然の来客に、声をあげるイクトとエリス。


「ははは、実はあなた様に竜宮パレスから招待状が届いているのでございます。そちらの娘さんもご一緒に。慣例上、カメを助けなくては招待が難しいのですが……ここは一杯の天然水でどうでしょう? 私、のどが渇いてしまって……」

 サイドテーブルに置かれた『とてもよい天然水』という人気ペットボトルをじっと見つめるカメ。

 気のせいか疲労をため込んでいるような様子のカメに同情した二人は、顔を見合わせる。


「そうですわね、天然水ならここにまだ口を付けていないものが……いいですわよね、イクト様」

「えっまぁいいけど……竜宮パレス?」

「ありがたき幸せ……では、失敬」

 エリスから『とてもよい天然水』のペットボトルを一本受け取り、ゴクゴクと水分補給を行うカメ。

「はぁ、生き返りましたぞ。元気になったらこの穴からゲート魔法で出立しますので、装備やアイテムなどの準備をしておいて下さい」

 魔法が使えるらしいカメが、先ほど掘った穴の周辺に魔法陣を描き始める。光を帯び始めた魔法陣に動揺するイクトとエリス。


「準備って言われても。オレ浦島さんじゃないし……まぁいいか」

 そういいつつも、冒険者の本能なのか、好奇心か、流されるまま軽装備をする。

「海の中でも動きやすい装備にしないと」

「一応、ギルドに報告……緊急クエスト発生、調査に行ってきます……と」

 ピッピッと、冒険者用スマホでギルドにメールを送るイクト。

 ちなみに、今回のクエストメール送り先は、緊急クエストを担当する独立ギルドクオリアだ。


「準備ができたみたいですね……では、2名様竜宮パレスにご案内!」

 ふわっ。

 魔法陣の中心部分にある穴に吸い込まれる。

「えっ本当にこの穴から行くの……うわぁ」

「アトラクションみたいですわ」



 気が付けば海の中、周囲では魚達が楽しそうに泳いでいる。

 水中なのに不思議と苦しさがない。空気があるようだ。

 ブルーやオレンジ色の熱帯魚や赤い珊瑚礁が色鮮やかで可愛らしい。

 そして、目の前には城を守る巨大な門、入り口には警備スタイルのセクシー人魚と10歳くらいのミニスカ和装の美少女の姿。



「よく来たのう、竜宮パレスへ! わらわがここのあるじであるオト姫じゃ」



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