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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第六部 ハーレム勇者認定試験-前期編-
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第六部 第13話 ガチャは諦めたらそこで終了なんだよ!


 エルフ剣士アズサに誘われてやってきた大型ゲームセンター。

 完全屋内型施設の、いわゆる『ゲーセン』は梅雨時デートにはもってこいだ。


 放課後の学生達に人気のぬいぐるみキャッチャーや写真シールマシン、臨場感溢れる体感型アクションゲームや大人世代にも嬉しいレトロタイプゲームコーナー、スロットマシンにダーツコーナー。ちょっとひと息したい時の休憩所にはドリンクやフード販売も用意されている。


 この施設、アミューズメントパークと呼んだ方が正しいだろう。想像していたよりもずっと広い。


「なっ? 結構スゴいだろ、ココ。実戦に近い剣のスキルが磨ける体感ゲームがあってさ、剣の修行も兼ねて密かに通ってたんだ。今、装備しているアタシの剣もここのゲームガチャで手にいれたんだぜ」


 アズサが小型の武器収納キューブから剣を取り出す。エルフ専用武器という珍しい装備でなかなかお目にかかれるものではない。てっきり、エルフ族の里から買い付けた装備なのかと思っていたのだ。


「見たことのない種類の剣だったけど、ガチャだったのか……。まさか、アズサは他の装備品もこのゲーセンのガチャで……」

「ああ、全部が全部ってわけにはいかないけど。意外なアイテムが手に入ったり、期間限定で良いものがラインナップされるから見逃せないんだ」

「へぇ……意外とゲーセンって凄いんだな。どうりで人が大勢いるわけだ」


 まさか、仲間が装備している優秀武器の入手ルートがガチャ排出だとは……そのゲームガチャ、期待できそうである。


「もちろん、イクトに合いそうな装備品も揃っているぜ。運良くこれまでに結構ギルドポイントが溜まっているし。しばらく、ガチャし放題!」

「そっか……せっかく良い条件も揃っているし、ギルドポイントをココのコインに交換だ」


 勢いづいたオレたちはズンズンと受付カウンターまで突き進む。もうそこに迷いの色はなかった。


「いらっしゃいませ。コインの交換ですね。ギルド情報アプリを立ち上げて、この装置にかざしてください」


 コイン交換コーナー受付で手続き。


 ギルド情報が登録されているスマホアプリを起動、軽快なサウンドと共に交換可能コイン数が表示。コインは現物以外にも、データとしてそのままスマホアプリ内で変更可能なので、じゃらじゃらとコインを運ばなくてもイイらしい……が。


「へぇ結構なコインの数になるな。ギルドポイントにこんな使い方があったとは……コインはデータと現物どっちにしよう?」


 オレが迷っているとアズサは、「今回のテーマはロマンだからな! 現物交換でずっしりとコインの重みを体感してから、ゲームとガチャに挑もうぜっ」と、ギルドポイントをワイルドに全部ゲームコインへと交換。RPGっぽさ漂う皮のふくろにじゃらりと入れてもらう。


「おっ、結構重い! ずっしりとコインの重みを体感……ガチャ依存を自制できていいのかも」


 すると、アズサがオレの腕を取り、「はは、アタシ達がガチャ依存なんかにかかるわけないけど、念のため気をつけよう……ゲームはあっちだよ。行こう」と、ガチャコーナーまで優しくリードしてくれる。


 ガチャ依存とは……欲しいアイテムが手に入るまで、ひたすらガチャをまわすというアースプラネットでの流行病。中級冒険者が主にかかりやすいとされており、不治の病とまで呼ばれている治療困難な病気だ。


 今日のアズサは清楚で美しいばかりではなく、自信に満ちた内側から発するエルフオーラを放っていた。金髪がさらに後光で輝いてる。颯爽とオレをガチャゲームコーナーに誘導する姿は、普段の数倍頼もしい。


 そんな素敵なエルフ剣士アズサが、ガチャ依存なんかにかかるハズないのだ。

 オレはアズサに連れられて、天に守られているかのような安心感を胸にガチャゲームコーナーに到着した。



 * * *



 実際に武器や素材が手に入る体感バトル型ガチャゲーム。巨大なボックスルームのドアを開け、コイン導入口のモニターでコースを選ぶ。


『体感型バトルゲームガチャへようこそ、コースを選んでコインを投入して下さい。ガチャ一回100コイン、11連ガチャ1000コイン、11連ガチャは星4レアが必ずひとつゲットできてお得です』


 モニター画面では、剣士や魔法使いのイラストとレア武器や素材の宣伝が音楽付きで流れる。


「どう考えても11連ガチャがお得だろ。なんせガチャ一回分得する上に、確実にレア4アイテムをゲット出来るなんて」

「ちょっと待って……排出パーセントを確認するから……。うん、この確率ならある程度回せば星5激レア装備も夢じゃないかも」


 今週の限定星5激レア武器ファンタジックソードがきらりと輝く。いかにもエルフ剣士に似合いそうな武器だ。


「星5激レアはファンタジックソードかぁ……アズサ、もちろん11連ガチャにするよな」

「ああ、討伐する敵の数も多いけど、その分お宝も豪華だし。剣士二人で登録完了……スタート!」


 グオン!

 効果音と共に目の前の景色がぐにゃりと歪み、気がつけば見たことのない森の中。さっきまで、カラオケルームのようなボックスの中にいたはずだが……?


「ヴァーチャルリアリティ……ってヤツだよ、イクト。ただ、普通のバーチャルと違って魔法で作られてるから、実際のバトルと同じように戦える……おっ、敵のお出ましだ……目指せ、レア装備!」


 ザシュッ!

 襲いかかるオークを手にした剣を使い、しなやかな動きで斬る。


「ギャウン!」


「よし、オレも……てりゃっ!」

 ザザザッ! キィイン!

「ギャアス!」


 ゲーム内でバトルを繰り返し、だいぶ剣の使い方に慣れてきたのか動きが軽く感じるようになってきた。


「やるじゃないか、イクト。このままなら、今日中に剣スキルをひとつ覚えられそうだな。どんどんやろうぜっ」

「おう! こいつがボスか、喰らえっうぉおおお!」


 見るからに体格の巨大なボスオークを連携スキルで倒す!


「ギュイイイン!」


 テレレレレレーン! ダダダーン!

 ファンファーレが鳴り響き、森から宇宙の景色に切り替わる。そして、まばゆい光と共に宝箱が現れた。


『ミッションクリア! おめでとうございます。11連ガチャスタートです』

 タララリラーン! 軽快なサウンドに心が躍る。


「やった、ついにガチャだぜ。イクト、この宝箱一緒に開けよう」

 柔らかく微笑むアズサ、真っ赤な宝箱のふたに二人で手を伸ばす。

「アズサ……なんだか嬉しいな……せーのっ」


 ガチャッ!

 流石、11連……宝箱を開けると一気に素晴らしいアイテムが次々と……。次々と……? 次々……。


【獲得アイテム一覧】

 星2……普通のはちまき

 星2……どこにでもあるローブ

 星2……普通の素材

 星3……やや上等なブレスレット

 星2……普通のはちまき

 星3……やや上等タイプの剣

 星3……やや上等な素材

 星2……普通の素材

 星3……やや上等なピアス

 星2……どこにでもあるローブ

 星4……11連目レア武器・クリスタルの杖


『ありがとうございました。またのご利用をお待ちしています』


「……」

「……」


 何故か星2と星3ばかりのガチャに疑問を抱きつつも、アイテムを受け取る。しかもアイテムの被りが多い。獲得ガチャアイテムは、自動で小型収納キューブに納められた。


 バトルの疲労だろうか……何故か声が出ない。お互い無言で目配せをし、休憩スペースに移動。ジャスミンティーを飲みながら、しばし無言でアイテムを確認するオレとアズサ。心なしか、アズサの目から輝きが失せ始めている。


「……ハズレだったか……いや、クリスタルの杖はマリアかエリスが装備できるはずだ。錬金してパワーアップだって可能……今回のガチャ、無駄じゃないさ……。あれっマリアって別の職業に転職しちゃうんだっけ……」

「アズサ……大丈夫だよ。エリスには、そろそろ攻撃補助に役立ちそうな装備品を持たせてあげたかったし」


 しかし、アズサには悪いがマリアは転職するらしいから、今後杖は装備しないかもしれない。エリスは後方支援タイプだから、めったにバトルには参加しない……。


「けど、エリスの役割って後ろの方で補助呪文か回復するのがメインだろ……。喜んでくれるかな。MP切れを防ぐために、何ターンか杖で敵と戦うとか? いや、けど備えあれば憂いなし……か」


 アズサも何となくこの杖に活躍の場が来るかどうか不安になったのか、ぶつぶつと独り言のように使い道を呟く。


「そ、そうだよ。備えあれば憂いなし……良い言葉だ。きっと喜ぶって!」


「……」

「……」


 沈黙の後、静かに立ち上がり再びガチャゲームへ。


 それからは、怒濤のガチャラッシュだった。激しく繰り返されるバトル……作業のようにこなされるガチャ……ひたすらループし……そして、何回目かの11連ガチャが終わった。


「アズサ……もう……そろそろ……」

 オレがガチャを辞めようとした時。

「ちきしょう、諦めたらそこでガチャは終了なんだよ!」


 と、青春ドラマのような台詞と共にエルフパワーで奇跡的に星5激レア武器をゲットするのは、この三日後である。


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