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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
番外編 第五部→第六部開始までのサイドストーリー
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番外編 第6話 ゴールデンウィークに精霊が現れた!


 ゴールデンウィークが始まり、日々、一流冒険者への勉強と鍛錬に励むダーツ魔法学園の生徒達もそれぞれの休みを過ごしていた。故郷へ帰省する者、ギルドクエストに挑戦しランクを上げる者、まったりと寄宿舎の自室で過ごす者……勇者イクトは今回はまったり派となった。

 同じ聖騎士団ギルドのメンバーであるマリアやアズサらが、ネオ関東の実家に帰省することになったからである。


 現在、ギルドメンバーで学校に残っているのは学園の規則で卒業までは親元へ帰ることができない勇者のイクトと聖女のミンティア、そしてイクトをお世話するために学園ギルドで働くメイドのミーコだけだ。

 女勇者レインも同じ勇者コースの生徒であるため、学園内にいるはずだが彼女は所属ギルドである星のギルドでのクエストに忙しいそうでしばらく顔を合わせていない。


 その気になれば、イクト、ミンティア、ミーコの3人でクエストをこなす事も可能なのだろう。が、他のギルドメンバーとレベルの差が付いてしまうと今後クエストがやりにくくなる。

 戦闘の要はアズサとアイラ、回復の要はマリア、サポート役はエリスに任せていたので、残ったメンバーだけで通常通りクエストを行えるかも謎である。


 思えば、ずいぶん優秀なメンバーがギルドチームに加わってくれたものだ。彼女達とは、前世からの縁という繋がりもあるが、実は親同士が冒険者仲間でしかも現在ともに任務中……という接点がより一層、メンバーとの縁を深いものにしていた。


 マリアらの母親は元一流冒険者で勇者イクトの父親と共に魔獣討伐の精鋭部隊として前線で戦っていたが、今回久しぶりに帰ってくるそうで娘の成長を確認したいらしい……。


 イクトは残念ながら、勇者という職業柄学園卒業まで帰省することは不可能である。校則とはいえ、こんな時は少し寂しいが少し我慢だ。卒業後はギルド寮に移るか、自分で家を借りてギルドに所属するか……どちらかだが、学生ではなくなるので自由の身だ。


 そんなわけで、イクトは自室でのんびりと読書を始めた。本は自分以外の勇者が主人公の小説……最近までは白紙で読めなかった例の小説。

 思い起こせば、この異世界で人生をやり直し始めてからというもの、魔法の訓練や剣の鍛錬が授業という環境だったので、地球時代のような読書をする機会が減っていた。


 中でも、いわゆる伝記物と呼ばれるジャンルの書物を読む機会は、あまりなかったので新鮮だ。本も分厚くずっしりとしていて、なかなか読み応えがありそうで、久々に読書欲が湧いてくる。たまには、インテリ気分に浸りながらまったりとした時間を過ごすのも良いだろう。


 パラパラとページをめくると文字が次々と浮かんでくる……不思議だ。魔法文字だろうか? 輝く金色の文字はまるで踊っているかのようだ。


 プルルルル……!

 イクトがちょうど小説の作者による前書き部分を読み終えたタイミングでスマホから着信音。

「電話? 誰からだろう……ミンティア?」

 幸いまだ本文を読んでいないので、いいけど……しばし読書は中断。

「ミンティア、どうしたの?」

「イクト君、あのね……実は図書館に精霊が現れたとかで……今、学園に残っている勇者と聖女に緊急任務がきたの……軽装備でいいから図書館に集合して精霊の目的を聞き出すようにって……」

「分かった、すぐ行くよ」


 まさかの緊急任務に焦るも、愛用の棍と魔力調整グローブを装備してすぐに図書館に駆けつける。外は青空、家にこもっていてはもったいない天気だ。日差しが強く女性なら日焼けや紫外線が気になるところだろうか? 


 ゴールデンウィーク特有の変化しやすい気候を考慮して着たパーカーが、少し暑く感じた。軽く走ったせいで、ダラダラとした流れるような汗というよりはジワジワとした、内側からいつの間にかにじむような雰囲気で発汗していき、まとわりつくように汗ばむ。


 図書館には、ざわざわと人だかり……学園内の生徒数はいつもより少ないはずだが、学園に残っている学生やギルド所属者がほとんど集まるとこんな感じなのか。だからと言って、一箇所にこれだけ集まるのも……と思ったが予定がないと暇で変わった情報があれば好奇心がくすぐられるのだろう、無理もないか。

 別に野次馬的な根性があるわけではないが、今日はなにも予定がなかったオレだってミンティアに呼び出された訳だし……。


 しかし、読書中に図書館へ駆り出されるとは……本の神様にあの本を読むのはまだ早いと言われているような気がした。いや、本の神様というより精霊なのか? その辺りの謎も実際の精霊の姿を見れば分かるはず。


「イクト君!」


 パートナー聖女ミンティアもグリーンのワンピースにベージュのシンプルなカーディガンと私服である。

 もしかしたら、魔法効果のあるワンピースなのかもしれないが、オレは女性もののファッションブランドには詳しくないので、今ミンティアが着用している服が、いざという時の戦闘に対応できるものなのか判断できなかった。手には召還武器のショートダガーを携えており、万が一のバトルに備えて召喚魔法を使えるようにしている様子。


「ミンティアお待たせ。図書館で精霊って……今、中はどんな感じだ?」

「それが……」


 せっかく来たのに、まだ立ち入り禁止のようだ……だが、なにやら声が聞こえる。

 立ち入り禁止の図書館から現れた精霊は、ミニスカニーソにエプロンを装備したちょっと萌え要素の高い本屋の店員という雰囲気。


 ブラウンの髪の毛をポニーテールに結び、大きな瞳をきらきらさせた美少女だ。想定外の可愛さにその場にいた男子生徒の視線が熱く注がれる……視線に気づき、明るくオレ達に挨拶してきた。


「みんな、おおきに! ゴールデンウィークエンジョイしてるか? ウチはみんなに本のプレゼントを届けにきたんや! 白紙の本を読めるようにしたのもウチやし……あっちょうど良いところに……君、イクト君やろ? 勇者の……みんなに本を配るの手伝ってほしいんやけど……」

「えっオレ?」


 ドサッと本を手渡され、まさかの書籍配布の手伝いだ。

「あっお代はちゃんと学費から引き落とされるから、気にしなくてええで」

 お代? どうやらこの本、新しいテキスト代わりみたいだ……よく見てみると、オレがさっきまで読んでいた本である。

「私も手伝います!」

 なぜか焦って、オレと精霊の間に入り手伝い始めるミンティア……もしかして、ヤキモチ焼いてくれてる?

「どうや? イクト君、自分以外の勇者のストーリーは?」

「これから、本編を読むところです……」

「そうかぁ、これからか……こういうのはみんなと同じ時期に読むのがええんや、ミンティアちゃん達と一緒にな」

 

 ミンティアにも本が手渡される。それは新しくて懐かしい、別の勇者のクロニクル……。

「えっと、イクト君……じゃあこの本、みんなで一緒に読もうね……マリアさんやアズサさん達が帰ってきてから、ちゃんとみんなが読んでから感想会だよ」


 どうやら、1人で読む予定だった新たな勇者の伝承はみんなで読むことになりそうだ。


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