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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第四部 運命の聖女編
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第四部 第25話 女アレルギーに効くお守り?

 

「イクト君! みんな、ただいまです!」

「エステルっ。なんだか随分と調子良さそうだな」

「エヘヘ……実はね、オーラがアップする天使の泉で水浴びしたり天使用の食事を毎日食べたり……すごくパワー・アップのプランを行ったの」

「へぇ、どうりで光り輝いていると思ったよ」


 教会のパイプオルガンの音楽と共にゲートをくぐり、天使界より帰って来たオレの守護天使エステル。ミンティアの守護天使リリカも一緒だ。

 最後に会った日よりも心なしか、白い翼がふんわり艶やかな雰囲気で、リフレッシュの里帰りだったことが伝わってくる。天使特有の光の輪に至っては、新品の明かりに取り替えたかのごとく輝いていて絶好調のよう。


「ミンティア、会いたかったですわ!」

「リリカ、私も。ねえ、リリカ……あなたももしかしてパワーが上がるプランに行ってきたの? ずいぶん天使としてのオーラが上がったみたい」

「ええ! エステルと一緒にたくさんリフレッシュしてきましたわ。おかげで、守護天使としてのスキルも増えましたのよ」

「本当? おめでとう、良かったね」


 守護天使達と離れていたのは合宿中の間だけだったが、何だかずいぶんの間離れていた気がする。感動の再会を果たしているのはオレやミンティアだけではない様子。ミサに参加していた他の人も、何人か自分の守護天使と嬉しそうに再会を喜び合っていた。


 そして、エステルと久しぶりの再会となった人物が3人……アイラ、アオイ、そして母さんだ。寄宿舎暮らしとなるオレについて行くために、一緒に実家を離れたエステル。本来ならば、オレだけではなく我が家そのものの守護天使であったはずだ。


「エステル久しぶり! 元気だった?」

「アイラちゃん、お久しぶりです。ちょっと大人っぽくなりましたね。きっと、将来はもっと美人さんになりますよ」

「本当? じゃあ、もっとお手入れ頑張っちゃおう!」


 アイラにとっても、担当の守護天使であったはずのエステル。数ヶ月ぶりに会うアイラの成長が嬉しいようで、機嫌良さそうに翼をパタパタはためかせている。

 そして、オレも幼なじみであるアオイとも再会。こちらも数ヶ月ぶりのはず。


「うふふ、エステルちゃん。お久しぶりだね!」

「アオイちゃん! なんだか今日はいつもより魔族っぽくないような……あぁっそれは制御装置……。そんな強力なの装備して大丈夫なの?」

「うん、人間族のみんなと仲良くなれるようにって、いろいろ考えたんだ」

「そっか……努力しているんだね。だけど、無理しちゃダメだよ! 下手したらアオイちゃんの魔力に影響が……」


 やはり、エステルから見てもアオイの魔力制御装置は無茶な試みのようだ。この合宿が終わったら、アオイには魔力を回復して欲しい。

 さらに、母さんからそれとなくオレが寄宿舎できちんと生活出来ているか遠回しにたずねる声。


「イクトのお世話しながら、自分に仕事もして大変でしょう? たまにはエステルちゃんもそうやってリフレッシュしないとね。寄宿舎での暮らしはどう……集団生活って大変じゃない?」

「うふふ、イクト君は寄宿舎に入ってからさらにしっかりしてきているので、そこまで大変じゃないですよ。それに、勇者コースは少人数制なので守護天使と2人暮らしの生徒が多いんです。みんないい子ばかりだし、安心してください!」

「あら……そうならいいんだけど。やっぱり離れているから心配で……ほら、この子の身体って……お医者様から……」

「そのことなら……ええ……」


 普段はあまり表に出さないが、実は母さんってオレの寄宿舎生活を心配していたんだ。母さんは、異世界でこの身体を産んでくれた人で地球での母親とは別人のはずだが、どことなく雰囲気が似ている。

 なんとなくだが、地球時代も何かの形で血縁者だったような……。もしかしたら、オレよりもずっと先にこの異世界に転生した親族の誰かのような気がしてならない。だが、前世についての質問は守護天使業界ではご法度らしく、教えてもらうことすら出来ない。

 そして、2人が込み入った話をしているのをなんとなく眺めているだけだった。


「そういえば、レインさんって守護天使と一緒じゃないよね。どうして?」


 ふと、アイラがこれまでオレやミンティアが聞きたくても聞けなかった質問をする。何かの事情があるのではないかと思って、敢えて聞かずに過ごしていたのだが……。


「私の守護天使は、地元に残っている従兄弟にいつも付いているの。私よりもひとつ年上なんだけど、まだ剣の修行をしたいからってダーツ魔法学園への入学を見送ったから……」

「へぇ……じゃあいずれその従兄さんもダーツに転向する予定なんだっ」

「うん、多分ね。アロー魔法剣士学園ってところの入学も検討していたみたいで、今は様子見だけど……。勇者コースがあるのはダーツだから勇者になるなら、多分うちの学校にくるんじゃないかなぁ」


 ただ単に、レインが守護天使と一緒ではない理由は、他の家族に付いているからというだけだった。まぁアイラだって普段は守護天使と一緒じゃないし、案外境遇が似ているのだろう。



 * * *



 ミサも終わり、教会の庭でしばしの間再会の時を過ごしたのち移動。教会はこの辺の地域では1番大きい教会だそうで、ショップや喫茶店なども施設内にあり、観光地としても有名なんだそうだ。


 観光マップ片手に、楽しそうに記念写真を撮る旅行者の人達の姿が見られる。


「お兄ちゃん。ネオ関東へのお土産、この教会ショップで買っていこうかな? 寄って行っていい?」


 明日にはネオ関東に戻るアイラは、小洒落た教会ショップに惹かれたようで、お土産をここで買うことにしたようだ。


「そうか、明日に向けてお土産買っていかないといけないし。じゃあ、みんなでショップに……」


 ショップの中には天使像や天使の絵、十字架やロザリオ、さまざまな種類の御メダイ、イラストとメダイ付きカード、聖なる水など所狭しと聖なるグッズが売られていた。


「わあ、キレイ! 私も何か買っていこうかな。そうだ、せっかくだし従兄弟にも何か送ろうかな?」

 レインも、自分用とさらに先ほど話題に上がった従兄弟に何かプレゼントを購入するつもりらしい。


「すごい、可愛いアクセサリーがたくさんあるね。あっこれオシャレなデザインだね……この花柄も捨てがたいし……うーんどうしよう? レインさんは何にするの?」

「うーん……自分用には普段からお守りに使えるものと……。プレゼントはメンズ用の何かを探そうかな?」


 御メダイはいわゆるペンダントチャームのようになっており、アクセサリーとしてチェーンをつけてペンダントにしたり、携帯ストラップにしたりするそうだ。

 しかも聖なるグッズということで、値段はほぼ仕入れ値で販売されており、安いものでは200円程でオシャレなメダイが売られている。


 アイラはハート型の御メダイペンダントが気に入ったようで、自分用と友人達へのお土産の分をたくさん買っていた。

 さらに、レインとともにメンズ用のコーナーへ……レインは従兄弟のためだとして、アイラは……と謎に思ったが、どうやらオレに何かを装備させたいらしい。


「ねぇお兄ちゃん、メンズコーナーに呪い除けの御メダイがあるんだって! 買っていく?」

「呪い除け……って、魔除けとかいろんなものに効きそうな……?」


 女アレルギーという呪われしアレルギー持ちの……と言ってもほとんどはグランディア姫に取り憑かれている所為だが……。オレにとっては、呪い除けのグッズそのものがすごく魅力的である。


「すみませーん、このメダイの在庫ありますか?」

「呪い除けのメダイですか? こちらですよ」

 さっそく教会の店員さんにコーナーに案内してもらい、呪い除けグッズを選び始める。


 注目の呪い除けの説明文を読むとオレのアレルギー症状にも合いそうな気がする文章が……。


【聖ベネディクトの御メダイ】

『有名な悪魔払い師ベネディクトのメダイです。御メダイには、ベネディクトのイラストと悪魔除けのお祈りが刻まれています。呪い除けのお守りにもオススメです!』


 聖ベネディクトの御メダイは見た目は丸型のコインのようで、男の自分にもアクセサリーとして装備しやすいデザインだ。基本的にはメンズ向けとして売られているようだが、女性でも装備可能……キーホルダーやストラップにアレンジしてもオシャレなデザインである。


「こんな便利なアイテムがこの世に存在していたなんて……!」

 前世から知っていれば、オレの女アレルギーも何割かマシだったかも知れないのに……。オレは藁にもすがる思いで、聖ベネディクトのペンダント御メダイ、キーホルダー、御メダイ付きパウチカード、御メダイ付きミニロザリオを購入した。


「随分と沢山買ったね、イクト君。でも、それくらい万全に策を練るくらいでちょうどいいのかも」

 エステルもオレの前世での女アレルギーによる波乱を振り返っているのか、納得しているようだ。


「聖品としてお使いになる場合は、神父様に祝別してもらって下さい」


 店員さんのアドバイスに従い、教会のロビーで休憩していた神父様にお願いして、御メダイを祝別……つまり聖品になるようにお祈りをしてもらい装備する。さっそく、銀色の御メダイが胸元にキラリと光る。


「どう? イクト君、女アレルギー治った?」

 ミンティアがオレの身を案じて状態を尋ねてくる。やはりオレの女アレルギーの症状が気になるらしい。

「うん……まだよく分からないけど……何となく身体が軽いような……」


 聖ベネディクトの御メダイペンダントを装備したオレは、わずかながら呪いに強くなった気がしたものの、その時はまだどれくらい効果があるのか気がつかなかった。

 実はこのお守りを装備したことにより、いつも取り付いていた幽霊のグランディア姫がオレに取り憑くことのできる時間が、大幅に減少するということに……。


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