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蒼穹のエターナルブレイク-side イクトス-  作者: 星里有乃
第四部 運命の聖女編
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第四部 第19話 魔王と勇者と聖女の出会い

 

「次期魔王就任予定のアオイです! よろしくね!」


 超清楚な美少女オーラを漂わせながら、驚くような自己紹介を平然としてのける幼馴染みアオイ。

 このただならぬオーラ、飄々とした態度、さらにアイドルっぽい謎のラブリーな仕草と話し方……間違いない……前世魔王の真野山葵まのやまあおい君が完全復活している……!


「あ……このオーラは、まさか。魔王の……魔王の……っ。イクト君の幼なじみがまさか魔王だったなんて! 私、聖女としてどうしたらいいの?」

「おいっミンティア大丈夫か? 震えているぞ……おいっ」

「はっ……イクト君。ごめんね、せっかく大切な幼なじみを紹介してくれたのに。私、魔王っていう職業の人に会うのは初めてだからオーラの強さに驚いちゃって……」


 人間のオーラが見えるという聖女ミンティアは、すでに震えが止まらないようで青ざめた表情で、肩や腕を震わせている。アオイに会うのが楽しみと言っていたのに、これが一般聖女と次期魔王様との格の違いなのか?

 不安げなミンティアを落ち着かせるために、アオイが安全な魔王であることをオレの方から説明するが……。


「大丈夫だよ、アオイは魔王って言っても悪い魔王じゃないよ。なんていうか可愛くて謎の威圧感があるような……新しいタイプの魔王って感じ?」

「う、うん。新しいタイプの魔王ね。確かにアオイさんはびっくりするほど可愛いし綺麗だし……怖いイメージの魔王様とはちょっと違うかも。ただ、オーラが想像以上に強力で気に当てられたっていうのかな?」


 目眩を起こしかけてクラクラしているミンティアをキョトンとした表情で見つめるアオイ。よく考えてみれば、普通に挨拶しただけで相手が目眩を起こすなんて滅多にない。

 アオイの気に慣れている母さんやアイラは、ミンティアが夏の暑さで具合が悪くなったと思っているらしく「熱中症かしら? 大丈夫」「飲み物飲んで休みなよ」と倒れそうなミンティアをベンチに座らせていた。


「あれっ……ミンティアさん体調不良なのかな? ボク、魔王のオーラの出し方覚えたてでまだうまくコントロール出来ないから」


 口元にちょこんと手を添えて相変わらず可愛らしい仕草で困った表情のアオイ。困り顔まで異様に可愛らしく、アオイの顔が大好きなオレとしてはミンティアがなぜそこまでアオイに苦手意識を持つのか分からない部分もある。


「そういう事だったのかアオイ、けど今日から夏休み期間中ほとんど一緒に過ごすのに、こんな調子じゃ……」


 次期魔王アオイと聖女ミンティアの間に流れる微妙な空気を壊したのは、女勇者のレインだった。


「アオイさんってイクト君の幼馴染みってだけじゃなくて次期魔王だったんだ! イクト君ってエルフさんとお友達だったり、魔王様と幼馴染みだったり本当に勇者っぽいよね……羨ましいよ……アオイさん、女勇者レインです。 よろしくお願いします!」


(羨ましいだと……魔王の幼なじみがいると勇者キャラとしてポイントが高いのか?)


「そ、そのレイン……大丈夫なのか。オーラに当てられるとか……」

「大丈夫だよ、ちょっとオーラが強くても勇者としては対応しないと。イクト君は、小さな時からオーラ慣れしていて凄いね」


 レインは自分が勇者っぽいかどうかを気にしているようで、オレのことをよく羨ましがっている。アオイが次期魔王だと自己紹介しても、クールながらも爽やかに微笑み自ら握手を求めて手を差し出した。


(すごいぜ女勇者レイン……! あの元魔王オーラを前にしても動じないどころか、こんなに爽やかに対応する人物は前世でも見たことがない)


 アオイは女勇者レインの態度が意外だったのか、一瞬前世魔王様時代の鋭い目つきをしたものの、いつも通りニッコリと笑って「流石勇者様……これから仲良くしようね!」と、握手を交わした。

 

 レインは無事に挨拶が済んでホッとしたのか、アオイと握手を交わした後、胸を撫で下ろしていた。勇者の性質でオーラの強力な次期魔王様相手でも平然を装っていたようだが、やはり無理していたみたいだ。精神力回復のため、深呼吸をして息を整えている。


「自己紹介も終わったし、お昼ご飯にしようよ! アイラ、ネオ大阪名物の串カツが食べたいの!」


 おにーちゃん行こう! と妹アイラに促されて、ネオ大阪駅から徒歩数分の有名串カツ料理店へ。アオイのお付きの魔族執事さんは、先にネオ芦屋あしやにあるアオイの別荘まで荷物を運ぶという。ミンティアもだいぶ落ち着いたようで、オレに謝ってきた。

 

「さっきは本当にごめんね、イクト君。せっかくアオイさんを紹介してもらったのに、無言になっちゃって」

「えっああ、仕方がないよ。アオイだってオーラのコントロールに慣れていないって言ってたし」

「うん……そうなんだよね……なのに私だけ動揺して。私、アオイさんみたいな強力なオーラの持ち主、生まれて初めて会ったから緊張しちゃったのかな。それに、アオイさんって写真で見るより何倍も綺麗で可愛いし……」


 ミンティアも聖女という特殊な職業のはずだが、アオイの美貌とオーラは想定外だったようだ。


「確かに、アオイは小さな頃から無茶苦茶可愛い人だったけど、会っていない間に綺麗さが増した気がする……。予想より、綺麗でも仕方がないよ」

「そうだったんだ……私ね、写真でアオイさんを見た時に少し似ているってレインちゃんに褒められていたから。ちょっと勘違いしていたのかも……似てるなんて言ったら、自惚れているように思われちゃうね……。気をつけないと」


 これまで、ミンティアが自分自身の容姿をどう評価しているのかは不明であった。だが、容姿端麗が合格条件である聖女コースに所属しているのだから、それなりに容姿には自信があったはずだ。


「ははは……まぁ相手は時期魔王様だし、あんまり似てるとか気軽にいうべきじゃないのかもな。魔族の人たちだってこれからアオイのファンになる人も多いだろうし」


 オレとアオイが会うのは4ヶ月ぶりだが、会わないうちに美しさ、仕草、オーラの全てがパワーアップしているので写真よりも綺麗で可愛いのは当然だろう。年頃の少女というせいもあるだろうが、それ以上に魔王様として、本格的に目覚めはじめた証拠なのかもしれない。



 * * *



「いらっしゃいませ。奥の方の席が空いています」


「へぇ……落ち着く場所が残っていて良かった」

 先ほどのオーラ事件を気にしているのか、アオイはあまり他の人にオーラをさとられないようにしたい様子。


 入店した串カツ屋は、雑誌やテレビでも紹介されている有名店。店員さんに促されて、さっそく奥のテーブル席に座る。


「いろんなメニューがあるね、串カツ屋さんって言うからメニューもそれだけなんだと思っていたけど……」

「おっ本当だ。結構幅広いメニューが揃っている」


 隣の席のアイラとともにメニュー表を確認……串カツの他にもカツカレーやトンカツ、すき鍋などカツを中心に豊富。だが、オレはやはり名物である串カツセットを注文したい。


「ここはやっぱり、王道で串カツセットにするか。初めて食べるんだし、名物メニューを味わいたいから」

「じゃあボクも、イクト君と同じ串カツセットにしようかな? ふふっイクト君とお揃いっ」

 アオイも、オレと同じ串カツセットを注文するようだ。お揃いと宣言されて思わずドキッとする……やっぱりアオイは超可愛い。


 アオイに影響されたのか、ミンティアやレインも串カツセットを注文し、気がついたら母さんがステーキ丼を注文した以外は全員串カツセットだ。


「串カツセットです……ごゆっくりどうぞ!」


 運ばれてきた串カツセットは、串カツ8本にご飯、味噌汁、漬物、特製ソースのシンプルなセットである。串カツは見るからにカラッと揚がっていて、アツアツだ。初めて食べる名物料理……期待に胸が膨らむ。


「いただきまーす!」


 ネオ大阪名物串カツは、ソースを漬けるタイプと掛けるタイプの2種類があるそうだが、オレ達が注文したセットは掛けるタイプである。

「んっ……柔らかくて食べやすいな。タレも濃厚だけど、くど過ぎず……」

「おにーちゃん! この串カツすごく美味しいね。アイラもネオ大阪で暮らしたいなぁ」

「本当……掛けるタイプのソースだから分量を調整しやすいのもいいよね」


 みんなひと口食べただけで串カツのとりこになってしまったようだ。確かに、この串カツはすごく美味しい。

 しかし、掛けるタイプのタレとはいえ飛び散りやすいタレである事に変わりはない……そこで気になることがある。幼馴染みアオイは真っ白なワンピースを着ているが、万が一洋服にソースが付いてしまったら……。


「アオイさんすごい……! 串カツをあんなに美しく食べる人初めて見た」

 レインが、アオイの仕草を見て感嘆のため息をこぼす。

 アオイがオレ達の視線に気づいたのか笑って、「ボク、次期魔王になるために毎日マナー講座で、魔王にふさわしい食事の仕方を学んでいるんだ! だから串カツも……」驚いたことに、串カツのソースは絶対にアオイの洋服に跳ねないそうだ。


「……! すごい、あれが次期魔王の……いいえアオイさんの特別なオーラのスキル。私だって聖女コースでマナー講座を学んでいるのに……」

「ミンティア? そんなに気にしなくても、きっとアオイが特別なんだよ」

「う、うん……。気にしないようにする」


 魔王様特有の超絶オーラの影響で、ソースの方が遠慮してアオイの洋服を汚さないように避けるように出来ているらしい。が、要するにそういう魔法がアオイは使えるということだろうか?

 アオイはまるで豪華フルコースを高級店で食べるかのようなノリと美しい仕草で、串カツを完食し、残された串も礼儀正しく揃っていた。


「まぁ! アオイちゃんって食べた後のマナーまできちんとしているのね。ほら、アイラも見習いなさい」

「はーい、きちんと完食したよ」


「……アオイさん、何気ない仕草もすべてが眩しい……」


 ほのぼのとしたムードで、食事を終えた母さんとアイラ。母さんからすると、アオイはマナー講座で頑張って勉強する良い娘くらいにしか思ってなさそう。

 だが、一方でミンティアは何処と無くぎこちなく、アオイとの格の違いに驚きを隠せないようだ。そして、平然と格の違いを見せつける無邪気なアオイ。


「ふふっ今日からの合宿……楽しみだねっ。イクト君」

「えっああ、そうだなアオイ」


 次期魔王様であるアオイとの交流を深めるという特殊事例が学園に認められ、本来はおりる事のない特別外泊許可がおりた。アオイの別荘に泊まることになったオレ達は、忘れられない夏休みを過ごすことになる。


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