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プロ野球への天道  作者: 日下田 弘谷
第9章 勝負師たちの恩返し
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プロローグ

 開幕戦を勝ち星で飾った2年4組であったが、以降は他クラスとの実力の差は隠せなかった。対1組第2試合を先発本崎が打ち崩されて負けを喫すると、翌週の2組戦。初戦は最終回まで1点のリードも、最後の最後で立川が大谷に一発を浴びて逆転サヨナラ負け。2戦目は両チーム合わせて41安打と言う過激な打撃戦も、最後は4組が力尽きで競り負け。

 ここまで1勝3敗で3組と並んで3位タイとなっている。言わば全4チーム中下半分なわけだが、去年の今ごろと違って勝てそうな雰囲気を醸し出し、内1試合は勝っているのだから大成長である。

「およ~っす」

 そして3週目の火曜日。上機嫌ではないにせよ、悪くないテンションで休み明けの教室にやってきた宮島。ちょっとまだ早いだけあって来ていた人は少なかったが、それでもいないわけではない。教室後ろでは立川、天川、本崎の3人が月曜深夜のアニメのシナリオについて議論を交わしているし、その近くでは経営科の新橋が佐々木から野球用品購入の依頼を受け、目を『¥』マークにしてそろばんをはじいている所。割と活気はあるようで。

 彼はそうしたメンバーをスルーし、仲のいいある人物を見つける。

 宮島以上に朝早く来ていたのであろう神部。窓際の席に腰かけた彼女はよほど暇なのか、頬杖を突いた状態で呆然と外を眺めていた。

「神部、おはよ」

 どうせなのですぐ後ろの席を陣取った彼は、あいさつをしつつカバンを床に置いて椅子に座る。が、彼女は気付いていないのだろうか。まったく反応を見せず、微動だにしない。

「お~い、神部?」

「ひゃ、ひゃい?」

 気になった宮島が彼女の真正面に顔を出してみると、よほど驚いたようで後ろに倒れそうになる。

「おはよ」

「お、おはようございます」

「朝から上の空だけどなんかあった?」

「い、いえ。別に……」

 ただほんのり顔を赤らめて目線を逸らす。

「だったらいいか」

 ここで「風邪か?」と言って何かひとイベントあれば楽しいことになったのだろうが、あいにく宮島は経験があったためにそうはせず。1年前の試合。ピッチャーライナーを受けた新本の顔を見ていたところ、彼女の顔が紅潮し「顔をずっと見られると恥ずかしい」と言われた経験の事である。

 そうしてひとまずは気にしないでおいた宮島だが、どうも彼女の雰囲気に違和感を覚えていた。いつもなら「今日もストレッチとキャッチボール、一緒にしましょう」とか、「投球練習、付き合ってください」と嬉々として言う彼女が、今日は妙に静かであり、宮島としてもどことない寂しさを感じてしまうほどであった。

『(神部、何かあったのかな?)』

 職業柄、表情を読むのが上手い宮島は引き続き呆然と外をみつめる神部に疑問を持ちつつも、乙女の悩みであることも考慮して口を出さず。

『(まぁ、この手の事は同性の明菜にでも任せておくか)』

 こうして2年4組・神部友美の虚ろな1日は始まる。


前話のオマケ(複雑怪奇な珍プレー・解説)は

割り込み投稿でそのうち


因みにこれはいつもの次回予告(先行投稿)です

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