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プロ野球への天道  作者: 日下田 弘谷
第6章 最下位争い
63/150

最終話 今年の味方は来年の敵

 1週間以上にも及んだ休暇も明けた日の朝。

 朝会のために4組生が教室に集まり先生を待っていた。

「なんか休んだ気しないなぁ。むしろ中途半端に休んでだらけた気がする」

「かんちゃん、毎日のように自主トレしてたもんね」

 机に伏せた宮島の背を秋原が撫でる。

「しかも輝義はまだ来てねぇし」

「寝坊したんじゃろぉ」

「寝坊助~」

 神城と新本の2人はいつも通りの元気。

 くだらない雑談を交わしていると、広川がいつものように教室に入ってくる。

「みなさん。おはようございます。朝会を始めますよ」

「先生」

「秋原さん。どうかしましたか?」

 早速、朝会を始めようとする広川を秋原が挙手をして止める。

「長曽我部くんがまだ来てないです」

 普段であれば来ていない生徒に電話を掛けるであろう。しかし今日の彼はそうせず、教卓に手をついて身を乗り出す。

「そのことですが、皆さんにお伝えしたいことがあります」

 予想だにしなかった切り返しに、長曽我部の不在など気にも掛けなかったメンバーたちも広川へと視線を集める。

「実は5日前。クラス間移籍テストがあったのですが、それによって、長曽我部くんの他クラス移籍が決定したしました」

「は?」

 伏せていた宮島も起き上がった。

「とりあえず私も彼に直接、確認してみました。しかしその意思は変わらないと」

 さらに広川に食ってかかりそうな勢いで立ち上がる。隣に座る秋原がなだめようとしたが、彼はまったくその感情を抑え込まない。

「先生。あいつ、どうしてそんなことを」

 長曽我部とはかれこれあった。時に(一方的に)殴り合うこともあったし、宮島にとってはこの学校に来て初めての友達。誰よりも感情を高ぶらせるのもまた当然の事であろう。そんな彼に、広川は言いにくそうにも思い切って言ってしまう。

「長曽我部くんは言っていました。4組にはタイトルこそ取れないが、自分が今まで組んできた中で一番の優秀なキャッチャーがいる。でもそこに居続けては、自分が成長できないと思った。だから、そいつのいない場所で、自分の本当の実力を試したい。と。彼の言葉そのままです」

「あんのバカが」

 宮島は大きな音を立ててその場に座る。

 彼は最初の友達たる長曽我部に、相棒としてかれこれ力を尽くしてきた。縦スラの伝授や、長曽我部へカーブを教えてくれるよう、新本に頼みもした。試合では彼が投げやすいよう、要望通りの球種でピッチングを組み立て、腕を振りきれるよう、後ろに逸らさないキャッチングも身に着けた。そうした努力の結果がこれである。

 全力で支えてきたからこそ、彼の力の及ばない場所で自分の力を試したいと旅立ってしまったのだ。

「仲間との別れ。辛いかもしれません。ですがプロはこれが日常なんです。トレードにFA、戦力外通告、引退。これから慣れていかないとダメな事です」

 広川は長曽我部の急な移籍に動揺するクラスをなだめる。

「ただ、何も別れだけではありません。新たな出会いも多いのがプロです。入ってきてください」

 広川がそう合図して教室前方のドアと目を向ける。

 そのタイミングを見計らってゆっくりと開いていき、そこから長曽我部とのトレード対象生が入ってくる。

 冬服ブレザーを羽織ったその生徒は、スカート(・・・・)の裾を揺らしながら教卓の横へ。

「えっと、皆さんも知っている人はいるでしょう。今年のリーグ戦でも度々対戦しましたし。では紹介します」

「1年3組から移籍してきました。神部友美です。よろしくお願いします」

 頭を深く下げてのお辞儀。上げた顔は男子とは違う明るい笑み。男子一同は野郎の退場&彼女の移籍に盛り上がるが、唯一、宮島は額に手を当ててため息。

「長曽我部より面倒な奴が来やがった……」


1年目(リーグ戦)終了です

ここからの予定ですが、

秋季キャンプ突入です

野球描写は作る予定ですが、

練習&オフがメインになると思います

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