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プロ野球への天道  作者: 日下田 弘谷
第6章 最下位争い
54/150

第1話 最終カード

 セットポジションに入った右腕は小村に向けて投球。なかなかに速いストレートがミットへと突き刺さる。

「いいボールやん。その調子やで」

「どうも」

 ブルペンで投球練習をしていたのは、意外にもキャッチャーの宮島。

 ここに宮島・小村の両名が来たことで、ぜひ受けてもらおうと思った投手陣。しかしお互いに頼みを断り、誰か先約がいたのだろうかと思えば、2人で投球練習を始めてしまったのである。

「何を思ったんだろ?」

「ピッチャーの気持ちを知る、とか?」

 長曽我部が受けてもらいたそうにつぶやくと、その横でネット相手に投げていた新本がそれっぽく返事。

「それはですね」

「あ、広川さん」

 と、そこに現れたのは広川。元野手と言う事であまり見ていなかった投手陣。彼らの調子を、ペナントレース佳境と言う事でチェックしに来たのだ。

「あれは、肩を強くする練習です」

「肩を強く? だったらわざわざブルペンに入らなくても、遠投とかすれば」

「実は遠投ってあまりよくないんですよ。と言うのも、実際、試合であれほど山なり送球をする事ってないんですよね」

 と言うのも、宮島ら投捕手を含む内野陣は、せいぜい送球距離は2、30メートル程度であり、そもそも遠くに投げる必要性がないのである。

「遠距離を投げる必要があるのは外野手くらいのものですけど、では外野手も山なり送球をするかと言うと?」

「しな~い」

「そうなんです。4組で強肩外野手と言われるのは、小崎くんと天川くんですね。ですがこの2人。時々ノーバン送球を見せるものの、基本は低めのワンバウンド送球なんです。山なり送球すると誰もカットできず、他のランナーに無駄な進塁をさせてしまう。そして、送球が逸れた際にも、中継できないので修正できないんです」

 小中学校では肩を強くするための遠投をやるが、あれは試合で役に立たないだけではなく、1つの問題を生む。遠くに投げるには上に向かって投げる必要があるのだが、上に投げようとすると肩が開いてしまい、ひいては投球・送球モーションの乱れ、そしてコントロールの乱れに繋がるのである。

「肩を強くしようと思うと、実際には低く速く投げるのがいいのです。遠いと思った時は、無理にノーバウンドで投げるよりは、ワンバン、ツーバンでもいいので、速く投げることを意識するといいですよ。私も、キャンプ中にブルペンに入って練習しましたよ」

 広川は昔をしみじみと思い出しながら簡易的講義。

「そう言えば、こう見るとかんぬ~って結構ボールはや~い。肩が弱いって言われてるのにぃ」

「あくまでも宮島くんの弱肩は、『キャッチャーとしては』ですからね。実際、盗塁阻止率は全捕手中最低ですし……」

 それは捕手宮島時の投球は低めが非常に多く、送球がしらいため、結果的に盗塁を許してしまうことにも起因する。が、仮に他捕手と同程度の配球傾向であっても、盗塁阻止率はそれほど変わらないであろう。

「それにしても、みなさん、やる気に満ち溢れていますね」

 宮島の投球練習に感化されたようで、他の投手陣も回転のいい球をネットに向かって放る。

「あと2ゲ~ム差~」

「そうですね。さすがに追い込まれた3組に全力で逃げられていますが、残る試合はあと10試合。2位はもうあり得ませんが、3位の可能性は未だ残ったままです」

 土佐野専は勝利第一主義ではなく、教育第一主義。あくまでも試合は実戦練習のようなものである。だが勝利から学べるものもあるのであれば、勝利を目指すのも教育主義の一環となる。

「さて、1時間くらいで良ければ、宮島くんや小村くんの代わりに私が受けましょう」

 肩から掛けていたカバンから、数か月前に買ったばかりの真新しいキャッチャーミットを取り出した。



「お前らここ以外に行くところはないのか」

「「「ない」」」

 ためしに聞いたみた宮島。長曽我部・神城・新本・秋原の4人曰く、宮島の部屋以外に行くところがない暇人らしい。少し前まで夜の練習をしていた宮島もここ最近の夜は体力回復に努めており、暇ではあるため人のことは言えないが。

 なお熱い戦いが続く9月中旬のとある夜。

「新本。援護たのむで」

「お任せあれ~」

「俺の援護も頼む」

「えぇ、テルテルの援護はめんど~」

 いつもの戦国モノではなく、珍しく携帯ゲームでFPSをしている神城・新本、に加えて長曽我部の3人。敵陣に突っ込んでいきそうな性格の新本は、これまた意外に狙撃手。神城はいくつかの銃を切り替えて戦う中近距離タイプらしく、長曽我部は爆弾魔だとか。

「楽しそうだなぁ。あいつら」

「かんちゃんもやれば?」

 秋原は今日、購買部で買ったばかりの雑誌を読みつつ、ネットサーフィン中の宮島へと問いかける。

「あまりあの手のゲームは得意じゃなくてなぁ。明菜は?」

「得意って言うか……ねぇ?」

 秋原が横目で3人を見てみると、それを聞いた3人が頷き返す。

 今3人がやっているゲームと同じものを立川が持っていたため、秋原が借りて3人と対戦したことがある。その時、神城・新本・長曽我部が裏で結託し「秋原をいじめてやろうぜ」と、好きな子に嫌がらせをする男子小学生のようなことをやり始めた。

 だが、むしろ秋原にいじめ返されたそうである。なんでも兄や従兄弟など親族に男の多い秋原は、特にその手のゲームには付き合わされとか。それによって、所詮はこの学校に入ってFPSを始めたFPS歴数か月の3人に対し、彼女はFPS歴6年とのこと。相手にならなかったのだ。

 その雰囲気の意味が分からない宮島は、

「まぁいいか」

 と、興味なさそうに話を切り上げてしまう。

「時に明菜。それ、面白い?」

雑誌(これ)? 面白いよ?」

 秋原が買ってきた雑誌と言うのは、『土佐野球月報』と言う土佐野専の情報誌。以前から似たようなものはあったのだが、雑誌と言うよりはパンフレットに近いものであったため、広告宣伝も兼ねて本格的にしたらしい。

「どんなこと書いてあるの?」

「ここ1ヶ月の土佐野専のリーグ戦の講評とか、先生たちの野球や勉強に関する話とか、趣味の話とか。広川先生はここ最近だとずっと釣りの話をしてるし、小牧先生はこの前まで変化球の投げ方を話してたけど、今月号は10月からの新アニメの話をしてるね」

「凄く混沌としてないか? それ?」

「どうだろう? でも、広川先生が60センチの大きい魚を釣ったとか、小牧先生が『今季のアニメは豊作』って書いてるのは面白いよ? 元プロの意外な一面って感じで」

「意外すぎるだろ」

 アニメ同好会の顧問をやっているのは知っているが、学校の情報誌にアニメの話を書きはじめるあたり、もうアニメオタクの世界に片足なり両足なり突っ込んでいると見ていいのではなかろうか。

「因みに講評ってどんな感じに?」

「う~ん。そうだねぇ。結果と一緒に出場選手個別の講評だとか、注目選手とかが書かれてる感じ? これ、学外にもネット販売してるみたいだから、むしろそっち向けかなぁ?」

「プロのスカウトとか、社会人や大学向けか」

「そう言う事」

 プロを目指すための学校・土佐野専とはいえ、皆が皆プロに行けるわけではない。行けなかった人は独立リーグなどだけでなく、社会人野球や、高卒認定取得後に推薦での大学進学も進路の候補に入ってくる。そうした企業や大学に向けたスカウティングレポートでもある。

 宮島はひとまずネットサーフィンを打ちきり、秋原の横に座って雑誌を覗き込む。彼女はマネージメント科教員・加賀田の医学コラムを開いていたが、自分は後でも読めると閉じて彼に手渡す。

「読む」

「読ませて」

 雑誌を受け取った宮島は、自分の腿を叩く秋原を見てそこへと寝転がる。すると彼女は空き缶風の入れ物に刺してあった耳かきを手にして、宮島の耳掃除を始めた。

「気持ちいい?」

「気持ちいいなぁ」

 秋原のひざまくら&耳かきによって、上機嫌で雑誌を読み始める。

「本当はあまり耳かきすると、外耳炎になって良くないんだけどね。耳って元々、勝手に掃除してくれる自浄作用あるし」

「気持ちいいし、いいんじゃない?」

「かんちゃんがそう言うならいいんだけど」

 痛くないよう、そして耳を傷つけないよう、焦らずのんびりと耳かき。そうすれば宮島もゆっくり秋原のひざまくらで雑誌が読めるわけで。

 彼は主に試合の講評を中心に、じっくり雑誌を熟読する。各クラス数人ずつまんべんなく注目選手を挙げているが、やはり絶賛なのが鶴見。もう少しストレートに磨きがかかればと言われているが、それ以外はかなりの高評価。

 他クラスで言えば、2組は強肩強打の捕手・西園寺や、中距離打者・村上。3組は主砲・バーナードと、

「ふ~ん。神部、か」

 女子球界最強投手。と言う見出しで神部も注目選手に挙げられている。15、6歳にしてストレートは120を越え、変化球も多彩な本格派投手。同年代の男子にも通用する投球を見せており、女子野球界期待の星としても見られる右腕。

「女子なのに。って言っちゃ悪いのかもしれないけどさ。あいつ凄いよな」

 リリース前の写真が大きく載っているのだが、やはり腕や肩関節の可動域が男子のそれとは明らかに違う。さらに力強く足を踏み出し、胸を張ってと言うのが写真からも分かる。制止画で見ればこそ良く分かる、女子らしからぬ力強いモーションだ。

「受けてるから分かるけど、球の出どころが見えにくいだけじゃなくて、リリースポイントも相当前だし、回転が滅茶苦茶いいからな。あれならかなり球速以上に見えるって」

「そうだねぇ。加賀田先生もコラムで書いてたもんね。『柔軟性の限界点』ってテーマで医学コラム」

「本当にプロで通用しちゃうかもなぁ。あいつ」

 片方の耳掃除が終わったため、向きを変えて残った方の耳掃除も始める。再び彼女にひざまくらしてもらった宮島は、次のページをめくる。

 そこに書かれていたのは4組の注目選手。1年生にして既にMAX151をマークする超速球派右腕・長曽我部。ただスピードが上がるにつれて、コントロールが荒れ始めた、クイックが下手など、課題も多く書かれている。そしてもう1人はもちろん神城――かと思いきや、ショートの前園。堅実守備が目立つ日本型野球の中で、ベアハンド上等、逆シングル上等な攻撃的守備に注目が集まっているようである。

「そっかぁ。僕もここに載れるように頑張らないとなぁ」

「頑張ってね。かんちゃん、ピッチャー陣からの信頼は厚いみたいだけど、目に見える結果が出てないから雑誌的には評価しづらいって」

「誰が?」

「経営科の新橋くん」

 野球科・マネージメント科の用品購入・価格交渉を代行することもある経営科。その中でも人気なのが、大手スポーツ用品会社の重役である父を持つ、1年4組・新橋。そのコネと得意の交渉術・経営術を生かし、表示価格の2割引きは当たり前と言った商売をする、1年経営科主席の生徒である。商売に目覚めたのは大阪が舞台の企業ドラマを見たためらしく、その主人公の「まいどおおきに」と言う口癖が彼の口癖でもあり、かなりベタベタな関西弁を話す。なお生まれも育ちも東京都な江戸っ子である。

「なんであいつが――って、経営科が商売に一枚噛んでるのも当たり前か」

「編集してるのは経営科の先生らしいけど、おそらくはその先生から聞いたんだろうね」

「1年前はプロを夢見た中学生じゃったのに、今となってはプロから注目される立場なんじゃなぁ。新本、車の陰に隠れろとるやつ」

「秘技、三段打ち。()ぇぇぇぇ」

 神城は新本の『三段打ち』と言う名の『一段打ち』で援護を受け敵陣を強襲しつつ、宮島・秋原の会話に入ってくるという器用な真似。長曽我部は視線を軽く向けてくるものの、そうした余裕はなく、新本は元々その気すらない。

「ほんと、よくよく考えたら、ウチってそういう化け物集団なんだよなぁ」

 150キロオーバーの速球や、大きく曲がる変化球を投げるピッチャーがいれば、「甘く入った」との理由だけで、それをスタンドに叩き込むバッターもいる。さらに日本の高校野球レベルでは屈指の実力を誇るキャッチャー陣から、しれっと盗塁を決める選手もいるし、そんな俊足相手に補殺を決める強肩・外野手だってたくさんいる。

 土佐野専教師陣の総意では、仮に1年生連合軍を編成した場合、『優勝は分からないが、甲子園で十分に戦える』とのこと。その中で戦っている選手たちには自覚がないが、それだけのエリート集団が土佐野球専門学校なのだ。

「でも、かんちゃんだって十分に化け物だよ。MLB注目投手に、女子野球界最強投手を筆頭に、いろんな人に信頼を受けているんだもん。最下位チームの8番バッターなのに一発もあるし」

「一発ねぇ」

 なお、公式戦通算ホームランは1本、非公式試合を含めてもわずか2本である。

「実力にそこまで大きな差なんてないよ。ファイトっ」



 流れで優勝できると判断した1組。選手の完全経験重視に切り替えたことで、少々負けが込み始めたが、それでも着実に勝ち星を重ねる。2組も無理に優勝を狙わず、完全経験重視への移行。こちらも負けが増え始めるも、ひとまず2位はほぼ確定的だろう。

 ただ3組と4組の最下位争いはなお続く。


「セーフ、ゲームセット」

 先発経験を他の選手に積ませるため、中継ぎに回った1組鶴見。3組戦の同点で迎えた最終回の裏、1アウト2・3塁でリリーフしたが、宮島にサヨナラ内野安打を打たれてゲームセット。

「まったく、宮島くんは。そう来るとは思わなかったよ」

「そう来るって、狙ったわけじゃなくて、ただの打ち損じなんだけどなぁ」

 宮島の打球は、ただの高く跳ね上がった内野ゴロであった。それで俊足・寺本がホームを突いて生還しただけの話。

「ただ、今日はナイスゲーム。3位目指して頑張ってね。もっとも」

「もっとも?」

「明日は負けないよ」


「ストライクバッターアウト」

 3組のセットアッパー・神部。先発の安藤が作ったノーアウト満塁の大ピンチを、3番の村上をホームゲッツー、4番の西園寺を空振り三振に打ち取り切り抜ける。

「ナイスピッチ、カンベ。グッジョブ」

「そんな無理して英語使わなくても」

「たまにはいいかなって」

 まさかあのピンチを無失点に切り抜けるとは思わなかったナイン。神部を祝福する中で、日本在住歴12年のバーナードに不自然な英語で賞賛され、指摘してみると、日本人のそれと何も変わらない、きれいな日本語で返してくる。

「で、次は林さんでしょうか? 多分、私は次の攻撃で代打なんで、後はお任せします」

「맡겨라‼」

「林さんも、そこまで無理に韓国語を使わなくても……そもそもなんて言ってるんですか?」

「『任せろ』だよ……多分」

「た、多分?」

「ネットで検索して。いかんせん、日本に住んで14年なもんで……」

 韓国居住歴1年の林泯台。しかも住んでいたのは0~1歳の時。ほぼ韓国語は話せない。

 安藤―神部―林―斉藤―備中―三崎の6人をつぎ込む継投策で3組、勝利。さらに翌日も河嶋―築田―備中―三崎の継投で勝利をもぎ取り2連勝。一進一退の攻防は佳境へと向かう。

 10月に入って最初の土曜日。52試合を消化し、残り2ゲーム。

 この時点で既に1組は1位を確定。2組も2位を確定させていたが、3組と4組のみは順位を確定させていなかった。


3位 3組 21勝31敗

4位 4組 19勝31敗2分 ゲーム差1


 4組の最終カードは3組との試合。3組は1勝でもすれば、厳密には1分でもいい。2連敗しなければ3位が確定する。つまり4組は2連勝しなければ最下位脱出ができない状況にある。

 そんな背水の陣とも言える空気が漂う試合前、ベンチ前に選手全員を集めた広川。総力戦の構えを見せる4組は、登板予定のない友田もベンチ入りしている。

「みなさん。ここまでよく頑張りました。思えば開幕以降の大型連敗。落ちこぼれのレッテルを貼られ、プロからほど遠いと思われたほどのクラスでした。ですが今となっては上位クラスの3組を追い詰め、順位こそ上で確定しましたが、1、2組も非常に苦しめました」

 彼の静かな口調に、野球科生およびマネージメント科生も声を上げずに耳を傾ける。

「宮島くん、長曽我部くん、神城くん、新本さん。そして秋原さん。以前、このような話をしたことを覚えてしますか? 失敗は長所や短所と言った『自分』をみつめ直すきっかけになる」

「はい、覚えてます」

 宮島の返事に長曽我部や神城、新本、秋原も頷く。

 あれは3組の神部が伸び悩んでいた時、広川がしてくれた助言である。

「では、今、この学校で最も失敗を知るのはどこのクラスでしょうか? それは紛れもなく最下位、4組です。つまり君たちは他クラスの人よりも『自分』を知る機会を得ていたのです。そして自分を知っていることは、自分らしく成長できることを意味します。高く飛ぶには一度しゃがむ必要があるのです」

 広川は全員を見渡す。

「1年4組最後の対戦カード。2年4組としてのリスタートに繋がるように、自分らしく戦ってきなさい。そして、これまで失敗を糧に自分らしく成長してきなさい。みなさんはこれより、土佐野専2期生、最強クラスへの道を突き進みます。今こそ跳躍の時」

『ただいまより、学内リーグ第53試合。3組対4組の試合を開始いたします』

 ウグイス嬢による試合開始のアナウンス。それに合わせて彼は息を吸い込み、戦場の総大将のように右手を前に振りだす。

「1年4組、出陣です」

「「「おぉぉぉぉぉぉ」」」

 今までの試合ではゆっくり歩いて、急いでいる人でも軽い駆け足で守備位置に向かっていたが、今日の守備陣はほとんどがベンチから全力疾走で飛び出す。

「行くぜ、神主」

「ごめん。今日の先発捕手は……やで?」

「なぁぁ、そうだったぁぁぁ」

 先発の長曽我部は歩いて、小村は駆け足で。

 本日の先発オーダーは、


《先攻・1年3組》

1番 ライト 村井

2番 ショート 中山

3番 レフト 太田

4番 キャッチャー 和田部

5番 センター 加村

6番 セカンド 酒々井

7番 ファースト 山県

8番 サード 大関

9番 ピッチャー 安藤


《後攻・1年4組》

1番 センター 寺本

2番 ライト 天川

3番 ファースト 大川

4番 キャッチャー 小村

5番 サード 三満

6番 レフト 大野

7番 セカンド 横川

8番 ショート 富山

9番 ピッチャー 長曽我部


 お互いに準主力級を用いての試合。レギュラークラスはベンチに温存する構えである。勝たなくてはいけないはずの試合でこの余裕。しかしこれには理由があった。


「勝つことも必要ですが、勝ちを追い求めていただけでは高校野球と何も変わりません」

      1年4組監督 広川博

「選手を飼い殺しにするくらいなら、勝利なんてプレゼントしてあげるよ」

      1年3組監督 田端雅也


 高校野球ではない。一方でプロ野球でもない。

 本当に勝利など二の次である、プロ野球選手養成学校。教育最優先ゆえの選択肢。仮に勝利を目指すことがあっても、その優先順位は変わらない。

『(確かに君たちはレギュラー級とは言えない選手たち。ですが、その実力は遠く及ばない存在なんかではありません)』

 絶対に飼い殺しにはしない。必ず連続する2試合のうち1試合では見せ場を作る。経験させる。それが監督の使命である。

『(これが私たち4組、今日最強の布陣です)』

『(3組が組むのは常にベストオーダー)』

『(勝ちますよ。みなさん)』『(勝つよ。みんな)』

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