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終了

 長野久子は考えていた。なぜ中谷という彼は、自ら死を選んだのか。一体何に気づいたというのか。

 そして自身の記憶を呼び起こそうと奮起した。

 最初の少年はルールを説明され、急に饒舌に、三十をコールすると言った。二人目の気味の悪い男は、久子たちが話をし、引き伸ばしを行っているうちに「裏切り者」を名乗った。

 二つ目は、すぐに理由がわかった。

 四人のうちただ一人だけが「裏切り者」ならば、その人が引き伸ばしを行うのには頷ける。しかし先程のように、「裏切り者」以外の人間が引き伸ばしに付き合い無駄話をする必要はない。「裏切り者」が名乗り出れば、自分は死ななくて済む。限られた五分を、「裏切り者」の足掻きに付き合って消費する理由はない。松木という男はそれに気付いたのだろう。「裏切り者」である自分が黙秘を続けているにも関わらずほかの三人が意味のない話をする、その不可解な状況に。

 中谷も、その不自然に気づいたものと思われる。

 しかし、それと、自らが「負け」ることの因果関係がまだわからない。


「最後の試験は、シンプルなものです。相手の同意を得た上で、相手を殺害してください」


 牧田が久子の顔を見た。苦渋に満ちている。彼は少なからず二回目の試験の違和感について、気づいているのだろうか。久子にはそれを掴めなかった。

 部屋の中央に置かれたナイフを挟み、一定の距離を持って彼女たちは座った。

 ゲームについて考える。一つ目は数取り。三十を言ったら「終わり」。後の人間は次の部屋へ。二つ目は裏切り者が名乗り出たら「終わり」。このとき、全員が裏切り者のカードを手にしていた。そして先程は選挙ゲーム。自分に投票できる状況で、支持率ゼロの人間が、「終わり」……。

 そして今回、相手の同意を得た上で、相手を殺害。


 久子は、ようやくにして共通点に気が付いた。そして、項垂れる牧田に対し、

「私を殺してください」

 そう言った。

 当然牧田は驚いた。

「何を言っているんだ?」

「そうしないと終わりません、いいのです。刺してください」

 牧田はこのとき、思考停止状態にあった。目の前で人が三人も死んだのだ。当たり前の反応と言っていい。頭が破裂し、またはポロリと落ち、そして全身から血。自分をここに閉じ込めた人間は、何をどうしたかはわからないがとにかく狂っている。ゲーム感覚で人を殺す、異常者だ。

 当然彼は死にたくなどない。しかしかと言って、女を刺すなど。

「殺してください、早く」

 躊躇う手を取られ、ナイフを握らされ、明確に今、牧田は人を刺した。何度も、彼女の身体を。いつから、自分の意志で刺していたのか、わからない。


「試験は終わりです。お疲れ様でした。長野久子は、現時点で試験終了です。牧田洋二郎は次の部屋へ進んでください」


 その声で我に返り、もう動かない長野久子を見下ろした。自分が生きるためとはいえ、人を、直接この手で殺してしまうなど。

 しかしこれで終わりだ。

 自分だけは生き残ることが出来た。四人の犠牲を払って、自分だけは――。

 扉をくぐるが、しかし、そこは果てのない暗闇だった。

 振り返る間もなく、扉が閉まった。

 そして、声が聞こえる。


「牧田洋二郎。自己犠牲を指標にした転生試験に於いて最下位となった為、次回転生まで、六十年となります」




――


「太陽は中途失聴者なんです。それなのに、私と喧嘩して飛び出して――」

 刑事は、ひとつ唸った。

 そして煙草を吹かしながら、

「管轄内で一日に五件もあるなんてね、今日は不運だ」

 そっと呟いた。

この空間にいる五人は情報/記憶の存在であり、自己犠牲の精神を持ち「終わ」ることにより分解され、次の人間への転生準備に入る。そのため死に方に差異がある……、などなど、色々設定を考えてはいたんですが「語り過ぎないように語り過ぎないように」と書いていたら全体的にぼやぼやしたまま終わってしまいました。ので今書きました。ずるいですね。というかださいです。

あと、残念ながら飽きてしまいました。ごめんなさい。ふたを開けたら「短期集中連載」ではなく「打ち切り」っぽい感じですね。

閉鎖空間で人を殺さねばならない状況、普通ならば「生きたい」はずが「殺して欲しい」と願う人間がいる、という話を書きたいと思ったのが始点ですが、うーん、しばらくは短編で精進します。長いのを飽きずに書きたいです。

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