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3-14(91) 戦った

国境警備に就いているいる人たちに挨拶して、国境線を越える。

僕はとらさんの霊獣に、葵ちゃんはの霊獣に、は一人で乗っている。

虎さんのは虎だけど、玲衣亜のは象で、伊左美のはパンダ。

象……大きくて強そう。

パンダ……伊左美は顔と合わせて可愛い系を選んでいるのかな? ふざけてんな。

で、国境を越えてまだ着替えてもいないうちに危険が迫ってきた。

アオが警戒を促す。

「前方からすごい勢いで仙道が来るよッ。なんかブツブツ言ってるッ。」

まだ僕にはよく見えないけど、こういうことに関しちゃアオって凄いよね。

「人数はッ?」

虎さんが尋ねる。

「一人だよッ。」

「……このまま移動して迎え討つぞッ。」

虎さん、少し思案したのちに迎撃を決意。

僕たちは当初の目的どおり、着替えるために人気のない森や山といった場所をめざしながらも敵の仙道の襲撃に備える。

虎さんの身体と僕の身体を繋いだ命綱の状態をチェックッ。

命綱ヨシッ。

懐からバールと左官屋が使う鉄の盛り板を取り出す。

剣と楯みたいな?

ふん、伊左美より僕の方がふざけてるな。



いよいよ僕にも敵さんの姿が視認できるほどになる。

さらに間近に迫ったとき、「玲衣亜ッ」と虎さんが叫べば、それまで真っすぐに突進してきていた敵さんが大きくバランスを崩してよろめいた。

「やはり、趙泰君ちょうたいくんかッ。」

虎さんが忌々しげに呟く。

敵さんが体勢を整えている間に、僕たちは高度を上げて敵さんの遥か頭上に移動。

僕は振り落とされないように虎さんにしがみつく。

急激な高度上昇は風の圧迫感がキツイッすよ。

見れば、葵ちゃんも玲衣亜にしがみついている。

そりゃそうだよね。

荒っぽい移動も臨戦態勢下では仕方ない。

っていうか、おい、玲衣亜そこ代われよッ。

葵ちゃんと代わるのもいいんだけど、やっぱりしがみつくよりしがみつかれたいんだよなぁ……ってアホか僕はッ。

「趙泰君ッ。」

虎さんの大声が中空に響く。

「二年前、二人の仙道を無用に殺めたこと、覚えておろうッ。」

「ああッ? いちいち覚えとらんわッ。」

眼下の敵さんがこちらを見上げて答える。

三対一という状況で憮然とした態度。敵さんもなかなか腕に覚えがありそう。

「伊左美ッ、玲衣亜ッ。どんな手を使ってでもいいからアイツだけはこの場で討ち取るぞッ。アイツはこっちの仙道二人の仇だからッ。絶対に逃がすなッ。」

なんか虎さんがすっごい頼もしいんだけど。

ふだんとのギャップが大き過ぎて惚れそうになるわッ。

「上よッ。」

アオの叫び声に頭上を見れば、でかい化け物が迫ってきていたッ。

死んだッ。

目が回る感覚。

頭がシェイクされるッ。

と思ったら、まだ死んでないッ。

化け物の正体はドラゴンだったッ?

翼の生えた厚みのあるトカゲみたいなのがその大きさに似合わず地面スレスレを優雅に滑空している。

スィーってな感じ。



ズゴオォオンッッ……。



と思っていたら、轟音を響かせてドラゴンが地面に衝突したッ?

伊左美がドラゴンの傍にブっ飛んで行って、這いつくばったドラゴンの首根っこに噂のなんだって斬れる剣を突き立てたかと思うと、そのまま剣を引いてドラゴンの首を半ばまで切り裂いてしまった。ドラゴンは悲鳴を上げながら身体を激しく動かしていたが、やがて動かなくなる。

って眼下の様子を見ていたら、いつのまにか趙泰君は鎖で拘束されていた。

「後ろッ。後ろッ。」

アオの声で振り返れば、さっきのと同じようなドラゴンが迫ってきていたッ。

また縦横無尽に頭が揺すぶられる。

オロロロ……。

吐いちゃった。

虎さん操縦荒いっすよぉ。

「伊左美ッ、玲衣亜ッ。僕はもう手が出せないんだけど、二人でなんとかできるッ?」

ちょ、さっきと比べて格段に情けない指示なんですが。

ああ、いま敵を拘束してる鎖が虎さんの武器なのかな?

僕たちは襲ってきたドラゴンの背後を追いかける形で移動する。

ドラゴンが旋回すれば僕たちも旋回するといった感じで、ドラゴンが僕たちと相対するのを嫌いながら、上手くやっつけられる機会を窺っているって感じ。

「なんかこのデカイのと一緒に動いてたら、援軍とか来そう? 来そうじゃない?」

僕の一言に虎さんも同意を示す。

「玲衣亜ッ、多少無理してでもここであの化け物を始末しろッ。長々と一緒にいるのはまずいッ。」

「了解ッ。」

玲衣亜の返事とほぼ同時に、目の前に凄まじい風が上から下へ向けて突き抜けていく。ドラゴンがバランスを崩して高度を下げる。そのさらに下では森の木々がわさわさと揺れ、鳥たちが一斉に四方八方に飛び立ち始めている。

もうてんやわんやだわ。

ドラゴンが自己の動きを制御しきれないでいるその傍を伊左美とパンダが駆け抜けたかと思うと、ドラゴンの片方の翼がゆっくりと身体から離れていき、地面に墜落していった。

ドラゴン自身も片方の翼でふんばりながらも、弧を描くように高度を下げていき、やがて地面に衝突した。

僕たちもそれを追って着地し、伊左美がドラゴンにトドメを刺す。

虎さんの鎖で拘束されていた敵さんはいまも鎖に繋がれたまま、地面に転がっている。



命綱を解いて、虎さんが敵さんのもとに歩む。

「趙泰君。鄧珍とうちん桃里とうりの名を知っているだろう?」

虎さんが転がっている敵さんに問う。

「知らんな。」

息も絶え々々に答える敵さん。

「そうか、あの世で思い出し、二人に詫びるがいい。伊左美、刎ねて。」

伊左美が敵さんの傍に行き、例のなんだって斬れる剣を敵さんの首に押し当てる。

敵さんの喉仏が大きく上下したかと思うと、次の瞬間には首がほぼ千切れかけている状態に。血溜りに横たわる首をさらにかッ切って、胴体から外す。

伊左美の剣、なかなか恐ろしい切れ味だ。

虎さん、その首を伊左美から受け取ると、家に置いてくると言って葵ちゃんとともに転移した。

相当急いだのか、ものの数秒で虎さんと葵ちゃんは戻ってきた。

そして、僕たちは着替える前にこの場を離れる。

いまのドタバタを、アオみたいな妖精が捉えていないともかぎらないからね。



ちなみに僕は戦闘中に剣と楯を落っことしてしまいました。

恥ずかしいから言わないけど。

それにあの戦闘を見たあとじゃ、バールや盛板が役立つとも思えない。

作戦への影響微塵もないし、オッケーだねッ。

っていうか、もう敵に襲われてるとかやっぱりこの作戦にも無理があるんじゃないッ?

発案者は伊左美だから、伊左美への罰ゲームも考えておかないとッ。

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