表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/283

3-4(81) わけが判らない

葵ちゃんの怒りの矛先がてんさんという人物からとらさんに移行するまで、そう時間はかからなかった。なにしろ謎の集団を異世界へ転移させるように指示したのは虎さんなのだから、だってさ。ちなみに葵ちゃん自身は謎の集団を実際に転移させた本人だからってんで、多少の責任を感じているみたい。“そもそも”っていう……。そもそも論嫌い。そもそも言い出されるとさ、虎さん以前にカードを抱えて帰宅した僕が悪者になっちゃうし、そもそも転移の術のカードを遺した相楽の一ちゃんが悪いんだしって、際限がないんだよね。あ~あ、虎さんも宥めるのに苦労してますわ。



葵ちゃんが落ち着きを取り戻したところで、僕たちはトーマスさんとアオを紹介された。トーマスさんが葵ちゃんと一緒にいる経緯も聞いたけど、僕には判らない人物や場所がたくさんあったんで完全に葵ちゃんの話を理解できたわけじゃないけれど、なんか変なことになってんなってことくらいは判った。なにしろセント・ラルリーグとしては異世界人を帰したいって思ってるくせに、拉致犯の手から異世界人を攫ってきたのが聖・ラルリーグの仙道で、そのうえ拉致犯に怒り心頭のはずの葵ちゃんが拉致された異世界人と一緒にいるんだから、わけが判らないよ。ま、聖・ラルリーグの仙道が一枚岩でないのはいまに始まったことじゃないしね。僕の隣にも変わり種がいるわけだし。

拉致犯の仲間であると邪推されるのを懸念して、トーマスさんには僕たちが異世界に行ってたことは話していない。

そして、肝心のトーマスさんは終始無言だった。



アオってのは妖精で……もうなんでもアリだな、この世界も。仙人様に妖精に、あと獣人さんを拝めれば、僕の中の未確認生物を大体コンプリートって感じ? アオは大人しく葵ちゃんの腿の上で寝そべっているらしい。悪戯好きなはずだけど、アオはあまり悪戯しないんだって。二人は主従の関係にあるらしいから、それも関係しているのかもしれないけど。



くっそ、もう頭がパンクしてきたわッ。



それから五時間。

もうすっかり夜も更けて、虫の鳴き声が耳に涼しく、また鬱陶しくもある。

葵ちゃんがテーブルに座ったまま寝ているから、僕も虎さんは話をすることなく、ただジッと爺さんの帰宅を待っていたんだ。

そこへ爺さんが帰宅してきた。

昨日の晩から丸一日、どこほっつき歩いてたのか知らないけれど、帰ってきてくれてよかったッ。いまの葵ちゃんを救えるのは爺さんだけだもの。

あ、爺さん葵ちゃんを起こしたのはいいけど、すぐにほかの部屋へ連行しちゃった?

え、僕らには帰れって?

布団がない?

そりゃ仕方ない……って、野宿推奨ですかッ?

結局、僕と虎さんは霊獣で虎さんの屋敷へ。

爺さんの家にはまた明日、九時ごろ行くことに。

そこで葵ちゃんも交えていろいろ話したいってさ。

爺さん、ちょっと尋常じゃないくらい疲れてたみたいだったから、心配だなぁ。

あ、あそこが虎さんの屋敷か?

わお、結構デカイじゃん。

もう一生虎さんにたかって生きようかしらん。

いや、マジで。



翌朝、爺さんチ。

そこで告げられた意外な事実ッ。

なんと天さんが体調を崩して寝込んでしまったらしい。

そこで爺さんから葵ちゃんに質問タイム。

会合のあとの出来事を話してくれと。

葵ちゃん、天さんと居蛇葛だかつ門戸もんどとの話し合いから蛇葛の宣戦布告、転移の術の使用、家の半壊、そしてまた転移の術の使用、という一連のくだりを一気に話した。

今度は葵ちゃんから虎さんに質問。

十二仙はちゃんと天さんと一緒に帰ったのか?

虎さん、一緒に帰ったと、特に天さんにおかしな様子はなかったと回答。

爺さん混乱。

どうやら天さんは蛇葛の宣戦布告のことも、葵ちゃんの転移の術使用のことも誰にも話していないらしい。

転移の術のことはまあ天さんの考えあってのことだろうから別にいいとして、開戦の件を話さないのはおかしいって。



というわけで、爺さんと葵ちゃんはお昼になる前に天さんの屋敷に行っちゃいました。

事の真偽を確認するのと、転移の術について秘匿していたことを謝罪するのが目的だってさ。あんまり大勢で押し掛けるのもおかしいので、僕と虎さんはお留守番。

なんだろ? 僕、この中で一番暇なんじゃない?

そうだ、出かけなきゃッ。

人のいるところにッ。



爺さんと葵ちゃんはお昼ちょっと過ぎに戻って来た。

そして爺さん開口一番不吉なことをおっしゃった。

神陽しんよう、明日議会を招集したから、予定があったらキャンセルしときな。」

だって。マズイ、マズイですぞこれはッ。

「ということは、やはり戦争が始まるわけですね?」

「ああ、間違いない。」

ああッ、やっぱりねッ。

もう異世界へ一時避難するしかないね、こりゃ。

お嬢さん、僕と一緒に安全な世界で愛を育みませんか? とか口説いて愛の逃避行とか実現する? しない? ああ、すぐ変なこと考えちゃうんだからッ。

あら、爺さんの後ろの葵ちゃん、目の周りが真っ赤っか。

相当泣き腫らしたみたい。

うん、爺さん怒ったら怖そうだもんね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ