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2-12(57)会議

目覚めてまもなく、昼休憩に入った。

午後からは真面目に聞いてなきゃ。

と思ったものの、おなかが満たされると眠気も襲ってくるわけで。

はい、また寝てしまいました。

もう日も傾いているのだろう、部屋が若干薄暗くなっている。

で、肝心の会議だけど、ちょうど黄さんが議論の総括を発表するところのようだった。

セーフッ、ギリッギリッ、セーッッッフ!

ああ、よかったッ。

頭もスッキリしてるし、却ってこれでよかったかもねッ。



結論としては、銃が異世界から来たものであると仮定し、①こちらの世界の誰かが異世界にアクセスして銃をもたらしたケース、②異世界の何者かがこちらの世界にアクセスして銃をこちらの世界に持ち込んだケース、以上の二通りのケースを念頭に捜査を開始するとのこと。

異世界には関わらない、という以前からのスタンスは固辞する。

①のケースの場合、犯人の出方により厳罰に処すか情状酌量の余地があるかを判断する。

なお、現時点では犯人の手掛かりは一切なし。

異世界へのアクセスについては、相楽さがらはじめがなにかしらの手段を遺したのではないかと思われるが、このほかに十二仙でも把握し切れていないコマツナ連邦在住の術師に転移の術の使い手がいる可能性もあるとして調査する。

調査しなければならないことは多々あるが、まず優先されるのは異世界への移動手段を突きとめること。

以上が今日の会議で決められた方針のようだ。

その方針に沿い、それぞれに捜査班が立ち上げられた。



①コマツナ連邦域内術師探索班


②転移の術に代わる方法調査班


③異世界からの侵入の痕跡調査班


④三班を統べる本部



各班には十二仙から三人ずつすでに抜擢されていて、これからさらに人員を各班に振り分けていくらしい。

総括の内容は以上のような感じ。



爺様、異世界のご意見番として参加したものの、やはり転移の術のカードについては話していないみたい。ま、ここで発表したら、先日天さんに嘘を吐いたのがバレちゃうもんね。



総括が終わると、皆それぞれに屋敷を辞してゆく。

中には久しぶりの再会を祝して、これから飲みに行く人たちもいるみたい。

ウチはウチで、やはり天さん、黄さんと夕飯を摂ることに。

私は爺様の世話役的な立場として、爺様にくっついていく。



ご飯を食べながら、私は大人しく言葉少なめに過ごしていたのだけれど、爺さん連中は溜め息交じりに空恐ろしい話をしていた。、「これから相手を疑ったりカマを掛け合ったりの応酬が始まるんかな」とかさ。なんか殺伐とした世の中になりそうで怖い。と思いながら聞き耳を立てていたのだけど、私としては、現状私がカマを掛けられているようで居心地が悪いったらありゃしなかった。

途中、黄さんに「異世界に興味はある?」と質問されたので、天国や地獄といったのと同じ程度に興味はある、と答えておいた。

その回答に黄さん「ふうん」と気のない返事。

それから黄さんは「大抵の人は異世界といってもピンとこないだろうし、自分とは縁がない世界ともなれば、仕方のないことかもしれないね」と天さんと爺様に話していた。

続いて、犯人捜査部隊の組織についての話になり、天さんと黄さんがぜひ爺様にも協力してほしいと懇願するも、爺様は終始一貫して参加を辞退し続け、一瞬、険悪なムードになるも大事には至らなかった。

「まあ、いいさ。この事件に関していえば、誰一人として蚊帳の外でいられる奴はいないんだ。それが判ったときにでもまた考えてみればいい。」

黄さんが知ったふうなことを言って、爺様は何度目かの謝罪の言葉を口にした。

ちょっと、なによいまの言い方ッ?

犯人は黄さんなんじゃないのッ?



夜も更け、私たちは天さんの屋敷をあとにする。



銃が発見された件に関して、当初は爺様自ら異世界の話題を持ち出したくらいだから、積極的に捜査に関わるものだと思っていた。だけど、捜査には非協力的だし、カードのこともついに公にしなかった。

爺様の異世界に対する考え方が判らない。

会議で決定されたことに、賛成の意を表したのはフェイクなんだろうか?

そのへんを聞いても、「年寄りには荷が勝ち過ぎる」といったことを言うばかり。

私としてはこの事態を早く収束させてほしいのだけれど、でも、爺様がこの問題から距離を置くなら、私としても安易に動けないから、しばらく異世界から遠ざかろう。



爺様が連絡もなく現われてからしばらくせわしなかったけれど、会議の日を境にまた音沙汰がなくなり数週間が過ぎた。以前と同じ状態に戻っただけなのに、会議の日の爺様との気不味い一幕が心にしこりを残すことになった。


梅雨のせいだろうか、溜め息の数が前より増えた気がする。

前より人恋しくなった。

ああ、そろそろ男の一人や二人、捕まえてみようかしら?

ふう。

知っている男の姿を二、三、思い浮かべてみるが、どうしても一緒にいたいとは思えない。面倒? 面倒なんだろうなぁ。

異世界にも遊びに行けないし。

ああ、つまんない、つまんない。

でも、ゴロゴロしててもなにも始まらない。

散歩でもしようかしら?

いい天気だし。

「おおっす、天気もいいし、ちょっと出かけるか?」

「そうね、晴れてるしね。って、えッ?」

ベッドから飛び起きると、そこには爺様がいた。

「おじいちゃん、いつからそこにいたの?」

「いや、ちょうどいま来たところよ。」

「それにしたって、家に入るときはノックとか挨拶の一つくらいあってもいいんじゃない?」

「挨拶ならいましたじゃないか。」

ああ、おおっすのことか。やれやれね。

「で、どこ行くの? 町の方まで歩いてみる?」

「ああ、リリスの街へ行こうか。」

「リリスッ?」

「知ってるだろ?」

「リリスってあのリリスのことよね?」

「そう。異世界の奴よ。」

「もしかして、酔ってる?」

「正気さ。昼間から酔う奴があるか。」

「でもまたなんで突然?」

「決まってるだろ?。散歩日和だからさッ。」

「あ、そう。」

本当の目的が別にあることは察せられるけど、問い詰めたりはしない。

だって、久しぶりの異世界だもの。

爺様の気分を害して御破算になったら目も当てられないからね。



今回は爺様と同伴するので、こちらに戻ってくるためのカードを所持していることを確認しておく。カードは長方形の厚紙に『転移』という判が押されただけのシンプルなデザインだった。

これに術と同じ効果があるっていうのが、俄かには信じられない。

一体、どういう仕組みになってるんだろう?

という疑問はひとまず置いておき、私の術でリリス市でも街外れにある閑村に転移する。



私にとっては数ヶ月ぶりだけど、爺様にとっては数百年振りの異世界だ。なのに「何百年か振りに来たけど、パっと見以前とあんまり変わってないな」だってさ。異世界といっても、田舎の方は時が止まってるのかしら。街の方へ行くと、何百年前どころか、数年前と比べても激変しているってのに。ま、案の定、街に行くと爺様、街の様子にびっくりしてたけどね。

「お金は?」ですって? 何年前から異世界に出入りしていると思ってるの? ある程度は持ってるわ。

「どうやって手に入れたのか?」ですって? そんなの、働いて稼ぐ以外にどういう方法があるっていうの?

「こっちに男を拵えているんじゃないだろうな?」ですって? ちょっと、馬鹿ばっかり言ってると殴るわよ?


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