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9-10(218) 警備員

すいません。

以下、タケシとタクヤがごっちゃになっていたので人物名を入れ換えました。


「どこのよ?」とタケシに聞き返しながら、タクヤが机の

「どこのよ?」とタクヤに聞き返しながら、タケシが机の

 オレをここまで連れてきた二人の男はタクヤとケンジといった。そして店に入って最初に紹介された男がタケシで、この集まりの長のようだった。



 タクヤはオレのことを使いたがっているようだったが、タケシはオレの信用について懐疑的だった。タクヤはオレが面倒を見るから大丈夫と言うと、タケシはオレになにをさせるつもりなのかとタクヤに問う。タクヤはしばらく思案したのちに「やっぱ警備員よのぉ?」とタケシに尋ねる。「どこのよ?」とタクヤに聞き返しながら、タケシが机の引き出しから取り出したのは警備を請け負っている場所のリストだった。



「ワシらが警備しょうるとこに甘い所とかないんで? 性質たちの悪いゴロツキなんかも相手にせんといけんのに、その兄さんがほどほどに腕が立つにしてもで? 人を殴ることができるんかいの?」



 タケシがタクヤに言う。



「ダニーなら人を殴るくらい朝飯前よ。ワシにゴッツイ石を投げてきたくらいじゃけえ。アレまともに喰らっとったら死んどったで。」



 タクヤの言葉にタケシが目を見張る。

「ほお、じゃあ、人も殺せるな?」

 タケシがオレの方を見た。

「人によっては……。」

 オレは正直に答えた。以前、リヴィエ一家の何人かを石でやっつけたからな。それにオレはタクヤのことも殺すつもりで石を投げたんだ。いや、タクヤのときはオレもおかしな環境下にあったから、まともな思考ができていなかっただけかもしれない。逃げきらなければ殺されると思ってたし。

「実際に殺したことは?」

 タケシがさらに質問してくる。

「……あります。」

 


 そうしてオレはタクヤとともに警備員として働くことになった。



 現場はフール町にあるカジノ。オレが通っていたケチな賭場とは違い、大型の箱にカード数種類にルーレットが用意されていて、それぞれのテーブルに人が集まって勝負していた。紳士淑女が出入りする場所だが、中には柄の悪いのが混じっていることがあるというので、諍いが起こらないように睨みを効かせたり、諍いを止めるのがオレたちの業務になる。



 カジノに配置されたのは四人で、それぞれ休憩を挟みながら現場に三人が常駐するという態勢。ちなみに炭坑の方は一〇人で回していたらしい。なんでも炭坑から下りてくるときにどのようなルートを辿ろうが絶対に通過するポイントというのいくつかあるらしく、その近辺を日夜見張っていたのだという。だから炭坑では見張りを見掛けなかったんだ。



 カジノの中でもタクヤとその仲間は鍔付きの帽子を被っていた。首から下は燕尾服で恰好を着けてるが、帽子も雰囲気は合わせたものを選んでいるとはいえ、さすがにいつもどこでも頭になにか被せてるとなると、さすがにこれは変だと思った。タクヤたちには共通して頭に秘密があるんじゃないかって。

 例えばみんな頭のてっぺんが禿げてるとか?

 実はつのが生えた鬼だったり?

 あんまりいつも隠されると、ついそういう想像をしてしまう。だけどこの帽子の秘密に関して尋ねることは憚られた。というのも、余計なことは詮索するなと事前に言われている。



「詮索は仲間への不信感の表われとして捉えるけえ。」



 とタケシは言っていた。



「ダニーがワシらへの不信感を示したら、それはそのままワシらのダニーへの不信感になって返ってくるぅ思うとけえよ。」



 その言葉こそ、自分たちは怪しい集団だということの表明だと思われたのだが、もちろんそんな感想、おくびにも出しはしなかった。



 自身の立場をかえりみれば、なにも言えることはないのだ。それに、ここでの扱いは炭坑に比べれば数段マシだった。

 タクヤはオレから搾取するつもりはないと言ってたし、一〇〇クランなんかあっという間に稼げるとも言っていた。



 カジノの警備員の日当が一人当り幾らで、月幾らになって、というような話もしてくれた。炭坑の連中の態度とは大違いだ。



「ダニーの日当を全部ダニーにやることはできんが、あの炭坑みたいにえげつない抜き方はせんけん。抜いて半額くらいかのぉ?」



 半額抜くというのが真っ当なのかどうか判らなかったが、炭坑と比べれば……って、マズイな。あの“ 一生タダ働き ”をモットーにしている炭坑が最低なだけであって、それと比べればほかのなにもかもがマシなんだから、炭坑を判断基準にするのは間違いの元なんじゃないか?



「その半額でワシらのいまやりょうる仕事の維持とか、新しい仕事の開拓とかしていくけえ、たぶん、半額っていうんもそがに大金抜きようるってわけじゃないんよ。そう、経費にする分じゃけえ。」



 こんなふうに細かく説明してくれたり、オレに理解させようと努めてくれるタクヤは悪い奴には見えなかった。それでも化物には違いないが。



「いま新しい商品も作りようるけえ、それを売り出したらまた儲かるで。」



「新しい商品?」



「ほうよ、また帰ったら見しちゃるわぁ。」



 こんな感じで、ときどきカジノの出入り口に二人で立って、お客様に頭を下げたりなんだりしながら、目立たないように話をした。



「どうない? 儲け話っちゅうんはしようって楽しかろう? 炭坑で愚痴零しょうるだけじゃつまらんかったじゃろうが。」



 確かに、儲け話はワクワクする。いままで関わり合いのなかった話だけに、オレがぁッ? みたいな感じ。



 買われた当初はどうなることかとヒヤヒヤしたが、案外、タクヤに買われてよかったかも。

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