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7-16(166) 本当の目的

あらすじ間違えてましたので、書き換え予定です。

やすしさんの目的ってなんだったんですか?」

 葵ちゃんの質問。すでに過去形にされているのがちょっとアレだけど。

 そうッ。僕には夢があるッ。

“異世界へ行って一攫千金!! からの~、夢のセミリタイア生活!!”

 いろんなことがありすぎてうっかりしてたけど、お菓子屋のオープンなんてその夢を実現するための一つの手段でしかないんだよね。危ない危ない、いつのまにかお菓子屋のオープンが目的になってた。いままでならそれもあながち間違いではなかったんだけど、いままさに状況が変わろうとしている。連邦の異世界への介入を受けて、セント・ラルリーグに異世界のことが公にされるかもしれないのだ。そののちに聖・ラルリーグの奴らが異世界に押し寄せて、いろんな知識や技術を学んで戻ってこられては、お菓子屋のオープンが大儲けに繋がらなくなってしまうッ。一等最初でなくてはならないんだッ。他に先んじなくては、お金にならない。ヤヤヤ、ヤバいヤバい。早急にこの衝撃の事実をたちに伝えないと、取り返しがつかなくなってしまうッ。ホント、すでに議会に異世界のことを伝えてたら、すみませんじゃ済ませませんよッ。



「はは、さすが靖さんって感じですね。」

 葵ちゃんが僕の回答に苦笑い。失礼なッ。ま、あまりに自己中心的な夢ではあるけれどね。

「でさぁ、葵ちゃんっていまは落ち着いてる感じ?」

 異世界でのいざこざも一段落したみたいだし。

「そうですねぇ、一週間後に仙人様の偉い人の告別式があるんですが、それ以外は、まあ、どうとでもなります。」

「ああ、蒼月そうげつさん……だよね。」

「ええ。」

「こんなときに、葵ちゃんにいろいろお願いするのはあまりよくないかな?」

「いえ、大丈夫です。一人でいるよりはマシですから。」

 マ、マシとかッ。ちょっとは言い方を考えてよぉ。

「れ、伊左美たちと会うのは問題ない?」

「なにを言ってるんですか? まったく問題ありませんよ。」

 そんなふうにあっさり答えられたから、とのことについては気にしないことにしよう。



 ちょっと勢い任せなところもあったけど、僕の夢の実現を目的に葵ちゃんの協力を得られることになった。金儲けはともかく、異世界のお菓子屋をこっちでオープンすることに関しては葵ちゃんにも異論はないみたいだし。連邦絡みのことで協力を頼むのは気が引けるけど、これなら伊左美たちも文句も言うまい。なにしろあの二人ときたら、変なとこで遠慮してるというか、葵ちゃんや小夜さんに進んで協力を要請したがらないんだから。ま、伊左美は一度、小夜さよさんに釘を刺されているというか、当てこすりされたのが効いてるのかもね。それで意地になってるっていうか。玲衣亜も葵ちゃんや小夜さんに術目的の付き合いと思われたくはないんだろう。



 五時前には爺さんチに転移してきたんだけど、まだとらさんと爺さんは戻ってきていなかった。う~む、ちゃんと異世界の話を判ってくれる人っているのかな? 少し心配しながら、椅子に座って二人で大人しく虎さんたちの帰りを待っていたとき。

「靖さぁん、お菓子作ってくださぁい。」

 なんの脈絡もなしに、なんか葵ちゃんが変な声出してそう言った。しかもこっち見てない。視線は相変わらず持参の小説の上に注がれている。

「は? あとなに? その声。」

「ええ? お菓子、作らないんですかぁ?」

 妙に高音で少し掠れ気味で甘ったるく囁くような、変な声。

「はッ、どっから声出しようん? あと、ここじゃお菓子なんか作れねえよ。」

「ケ~チ。」

 なにこれ? 葵ちゃんに幽霊的ななんかが乗り移った? いつもと雰囲気が全然違うッ。

「そしたら、バターピーナッツでいいですよぉ?」

「そしたらの意味が判らねえし。それよりその声なんなの?」

「別にぃ、ふつうですよぉ。」

「いや、ふつうじゃねえだろ? それ以上続けたらいい加減殴るよ。」

「なんか靖さんっていっつも靖さんですよねぇ。」

 もう、なんなのこれ?

「当たり前じゃん。明日んなって僕が葵ちゃんになってたら大事おおごとでしょ? まあ、そんなんなったらまず服を脱いでみるんだけど。」

 僕は僕でなに言ってんだ?

「ぷッ、はぁ~、楽し。」

 あ、葵ちゃんが元に戻った。って、楽しいってなんだよ?

「はあ? なんなん、なめてんの?」

「そんなことないですよ。やっぱり靖さんってすごいなぁって思って。」

「いや、そっちんが凄えわ。いろんな意味で。」

 ニコっと微笑む葵ちゃん。なんなの? からかわれたの? んで、僕ってば、からかわれたことにすら気付いてないの? なんなの? 怒った方がいいの? え、怒ってないのに? ヤバいっスわ。僕には葵ちゃんが判らない。

 そのとき、コンコンと玄関ドアを叩く音が響く。続いて「ごめんくださ~い」という声。葵ちゃんが「は~い」と応じて、ドアを開けると、そこには老人が立っていた。



 老人は爺さんに用があったようで、爺さんが不在だと判るとすぐに帰っていった。また明日の朝来るから、爺さんにその旨伝えておいて、と葵ちゃんに言伝を頼んだらしい。

「いまの人、靖さん知ってましたっけ?」

「いや、会ったことないよ。」

「あら、靖さんってどの仙人様と面識があるんですっけ?」

 ん? 誰と知り合いだろ? いつものメンバープラス虎さんの師匠、あ、よく考えたらさっきの人も連邦内で見たことはあるわ。話とかはしてないけど。あとは連邦側の仙道で名前忘れたけど、白旗掲げてきた人か。こう思うと仙道で知ってる人ってあまり多くないね。

「まあ、仙人様とは関わり合いのないのがふつうですもんね。」

「そうだよね。」

 って言ってる葵ちゃんも仙道じゃないにしてもレアな存在なんだけど。

「靖さん、ちょっとお願いしてもいいですか?」

「なに? できることならなんでもするよ。」

「私のボディガードになってほしいんです。」

 ん? なに言ってるのかな?

「は? ボディガードってなに? 人を守る奴?」

「そうです。異世界もなかなか物騒ですからね、向こうで動くときに私一人だとなにかと不安だったりするんです。なので、靖さんにボディガードしてもらえると、安心安全だなぁって。」

 なるほど、そういうことね。

「それって僕が仙道になれたら……の話だよね?」

 それを踏まえても、僕なんかをアテにするなんて半信半疑なんだけど。

「なれたらっていうか、たぶんもうなってるはずです。ま、もう少し様子見してもいいかもしれませんが。」

 葵ちゃんにはやっぱ確信があるみたいね。

「でも、仙道だからって強いとはかぎらないから、ちょっと答えは保留でいい?」

 僕にはなんの確信もないし。強くなるともかぎらないし。

「じゃあ、私も靖さんの“一攫千金ボロ儲け大作戦”への協力は一旦、保留します。」

 そうくるかぁッ。ま、そうだよね。

「うん。いい返事ができればいいんだけど。」

「ふふ、期待してますよ。」

 その会話のあと、まもなく葵ちゃんは転移の術でどこぞへと行ってしまった。僕への協力が中断されたから、とりあえず今日のところは引き上げるってさ。で、蒼月さんの告別式の翌日、七月十六日にまたあの山、僕と葵ちゃんが再会した場所で会おうって。どうやらそのころには僕も仙道としての力に気づくはずなんだってさ。ホントかな?



 その晩、午後七時ごろに虎さんと爺さんが帰ってきた。やっとだよッ。それから虎さんに状況を聞くと、とりあえずロアさんと小夜さんの屋敷にいる人たちには異世界に獣人が出没している話をしたみたいだった。最初は安全牌を選んだってところだね。最悪の事態は回避できて、一安心。

 これから僕は虎さんたちに事情を話して、それから蜘蛛の巣張ってる頭を何年か振りに掃除して、そんでもってフル回転させなきゃならんからな。

 どうすれば最速でお菓子屋をオープンさせることができるか?

 いや、どうすれば最速で儲けられるか?

 ふふふ、なんか元気が出てきたぞぉ~!! がんばろッ。

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