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6-1(150) 終了です

え~。

しばらく風邪で熱が出てたんですね。

今回の内容はおそらく余熱のせいです。


今回は説明回です。といっても、中身はほぼゼロです。

勝手ながら主要キャラの年齢マイナス6歳させていただきました。ここでそういう話を挿入するので、これまでの話に登場する年齢を変更するかどうかは未定です。変更をかけてしまうと、読み方次第でマイナス12歳にもなりえるので。


あ、この前書きを読むと本編を読む必要ないかもです(汗)。

 とあるお菓子屋の厨房。

 ゴシゴシと洗いモノをしている一人の男。

 お菓子屋の終業時刻も近いとあって、男の後ろ姿にも疲労の色が滲んでいる。

 


 あ、こっち見た。

 あ、あっち向いた。



 こっちに気づいていない?

 何度かチラチラとこちらを窺っているから、彼は気づいているのだ。

 なのに、気づいていない振りをしている。

 愚かなり、やすし

 せっかくの出番だというのに、知らんぷりとは!

 

 

 ここでもっと彼に近寄ってみる。

 だが、ダメ!

 近寄っても振り向いてくれない。



 間近で観察すると、彼も歳を取ったのだと判る。

(靖、キミはいま何歳になったのだ?)

 瞬間、彼がこちらに睨むような視線を向ける。

「声は聞こえども姿は見えず、か。」

(さっきからなんで機嫌が悪いんだい?)

「妙な気配の接近と、脳内に直接響くような出鱈目な声のせい、だね。」

(なあ、こっちを見なよ。)

「……。一々反応すると周りからおかしな奴だと思われちまうからね。できれば、放っておいてほしいんだ。」

(そのことなら気にしなくても大丈夫。いまこの空間にはキミしかいない。)

「は? ここは厨房だよ。人の出入りもある。そうだ、鼻歌交じりに話せばイケるかな? フフ~ン、早く~、どっか行けよ~♪ クソ鬱陶しいんだよぉ~♪」

(靖……、キミは変わったね。)

「それって“今日は天気がいいね”っていうのと同じくらい意味のない言葉だよね。」

(そんなものかな?)

「第一、パンを焼いたりしてるのを見てなにか楽しいわけ? 僕も伊左美も玲衣亜も変わらずお菓子屋で修業していて、それなりにできるようになったけど、暮らし振りは概ね落ち着いてるし、大した浮き沈みもなく、事件があるわけでもなくってね。そんなわけだから、ストーリーテラーは余所に振った方がいいんじゃない?」

(そこは心配いらないよ。お鉢が回ると不思議と事件が起こるものさ。)

「いや、だからそれが余計なんだよッ。」



 ここで話題を戻す。

(それより、キミ。いま何歳になった?)

「もう数えてないよ。」

(もう! 相変わらずいい加減なんだから。キミはいま、確か、三〇歳だ!) 

「ぶッ。ああッ、ふ、封印されし記憶がぁッ。」

(なに言ってんだよ? 生年月日と暦があれば解ける封印なんて、馬鹿々々しいにも程があるな。)

「ま、別にいいんだけど。そうだよ、三〇歳ですがなにか?」

(ふ、いつのまにかおっさんになってしまったね。)

「なんなの? 暇なの? 構ってほしいの? それとも殴られたいの?」

(残念だけど、実体を持たない私を傷つけることなんてできないよ。)

「……。」

(って、え? トレイを片すのはあとでもいいからさぁ。)

「……。」

(え、もしかして無視してる?)

「……。」

(こっち見て、靖く~ん……、いい加減にしないと怒るよ!)

「僕ん中ではもうキミ殺したから。そういうことですよ。」

(ほほう、実際に私を傷つけなくても、そういう殺し方もあると? まあ、いいでしょう。それよりキミに一つ提案があるんですが、キミ、若返りたくはありませんか?)

「そうやってまた意味のない質問を繰り返すんだ? 答えは“知らん”だ。」

(答えが“ノー”でないなら、勝手に若返らせるよ。いいかい? ここは剣と魔法の世界だ。若返りくらい朝飯前よ!)

「え? 剣と魔法の世界?」

(不思議な♪ 魔法で♪ 若返る~! 赤ガエル、青ガエル、若ガエル~! 若大将~! ド~ン!)

「な、なんかしたの?」

(メインキャラの年齢を過去に遡って一律▲六歳しました。)

「過去に遡って?」

(つまり、キミが初めてリリス市を訪れたのは二十三歳のときではなくて、一七歳のときということになる。)

「じゃあ、一七のときに伊左美と酒飲んで酔い潰れてたってことになるわけ?」

(そういうことです。)

「メインキャラって聞こえたけど、ほかに誰がッ?」

セント・ラルリーグのメインキャラが対象になっているよ。)

「ずいぶんザックリしてんな。」

(元々年齢不詳キャラが多いからね。そのくせキャラの高齢化に歯止めがかからないから、ちょっとカンフル剤をブチ込んだ感じ。)

「強引だけど、ま、別にいいわ。じゃ、僕はいま六引いて二十四歳か。」

「そういうこと。」

「んで、葵ちゃんが十九歳で、伊左美と玲衣亜が一〇〇飛んでちょいって……二人は大差ないねッ。」

(年齢不詳キャラの年齢なんてどうでもいいです。)

「でも一応、二人には伝えておいた方がいいよね? 割と大切なことだし。特に玲衣亜には。」

(その必要はないよ。キミ以外は若返ったと認識していないから。もし伝えたとしても、キミが奇異の目で見られることになる。)

「そ、そうすか。」



「ついでにさぁ、僕の顔を恰好良い設定にしておくれよ。」

(無理です。)

「いや、魔法でチョチョイとさ。」

(だから、無理です。)

「なんで? 若がえらせることはできるのに?」

(魔法を以ってしてもできないことはあるのだよ。)

「ケチッ。」



 儚い望みを断わられ、的外れな文句を言う靖。そのとき、厨房のドアを乱暴に開けて入ってくる男が一人。彼は入ってくるなり言った。

「靖さん、事件だッ。」



(ほら、事件が起きましたよ。靖くん、そろそろ代わりましょう。)


「……。」



 身振りでこっちへ来いと合図する靖。先程厨房に入ってきた男はそんな靖の動きを見て首を傾げているが、靖はそんな彼には一瞥もくれずに店の裏手の方に出る。



(違う、違う。事件は店の裏手で起こってるんじゃない。店の表で起こってるんだよ。)

「そんなのどうでもいいんだよぉッ。ほらッじゃねえよ。わざとだろッ?っていうか、お前が事件起こしたんだろッ?」

(言いがかりはよしてよ。事件が起きたのはたまたまで、たまたまそのときキミが事件現場の近辺にいたっていうだけさ。)

「とにかく、僕ぁ知らねえよ?」

(まあまあ、いつもどおり一人称で語り始めてね。)

「僕ぁ知らねえよ?」

(か、語り始めてください。)

「もう知らねえべ。」

(語り始めてくださいよぉ。)

「ときには三人称で語ってみてもいいんじゃない?」

(うわッ、まさかの職場放棄!? 仕方ないですね。)



 な、なぜ僕は店の裏手になんているんだ? と、正気に戻った靖は、同僚の言葉を思い出し、すぐさま事件現場へ向かう。


 ……。


 正気に戻った靖は、同僚の言葉を思い出して脇目も振らずに事件現場へ向かう。


 ……。


 靖は事件現場へ向かう。


 ……。


 靖くん、事件現場へ急行してください。


 ……。

 

 靖くん、応答願います。聞こえますか? 早く事件現場へ行けよ。


 ……。


 もしも~し、靖ッ。靖ッ。聞こえますかッ?


 ……。


 や、靖くんがグレた。



 第六章……完

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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