もっと頑張れよ!
こういう感じのをたまにやりたくなります。
「次の大会は……大前。お前が出ろ。媛岡も、もしもに備えて頑張ってくれ」
「はい……」
「じゃあ大前、こっちで合奏練習始めるぞ──」
大前と言われた男子は、先生の後に続いて行った。
媛岡は、少しうつむいて歯を食いしばった──
二人は小学校からの付き合いで、中学に入った時、音楽が好きで吹奏楽部に入った。そこは大人数で、大会に出るには、試験に合格しなければならない。
大前は、練習しなくても大体吹ける。
しかし、媛岡は練習では上手く吹けるのに、本番で失敗してしまう。
そして今、中学最後の大会に出るための試験が行われ、媛岡は落ちてしまった──
「くそっ──!」
何で、何でアイツなんだ!
練習より休憩の方が長いアイツに、何で毎日休憩十分で頑張ってきたおれが落ちる?
そんなの……
「不公平だ……」
食いしばった歯の間から、息と一緒にこぼれた……
*
「媛、帰ろうぜ」
「うん……」
部室から出て、大前と媛岡は並んで歩く。
「大前、頑張れよ」
「え? うーん。今のところ出来ないとこないし、まあそれなりにやるよ」
「……?!」
「媛も出れたらよかっ──?!」
ガッと、大前に掴みかかった。
媛岡は我慢出来なかった。何気なく言った大前の言葉に──
「それなりって……なんだよ。もっと頑張れよ! いつも休憩の方が長いクセに、何でお前なんだよ……! おれの方が、いっぱい練習してきたのに! 考えろよ! 出たくても選ばれなかったヤツの気持ちぐらい! わかるだろ……?! なぁ!」
「媛……オレ……」
「もういい──」
媛岡は一方的に言って、大前から手を離し歩き出す。
とぼとぼと歩いていく媛岡に、大前は声をかけられなかった──
*
「最低だ──」
媛岡は廊下を歩きながら呟いた。
自分が失敗したのは、大前のせいじゃない。
それなのに、最後の大会に出られないからって、これじゃただの八つ当たりじゃないか──
それに、見てないとこで練習してるかもしれないのに……。
「はぁ……」
媛岡は不甲斐ない自分を情けなく思った……
*
「…………」
残された大前は、掴まれた所を直しながら、考えていた──
確かに、最後の大会なのにそれなりにとか……失礼だよな……
それに、あんなに怒った媛初めてだし。
てか……
「そんな風に思ってたのか──」
大前は怒りと諦めを混ぜたような媛岡の顔を思い出した──
*
「媛──」
「何……?」
次の日の部活終了後。大前は、帰ろうとしていた媛岡に声をかけた。
「昨日は……」
「ごめん、大前。昨日は言い過ぎた。ちょっと、悔しかったんだ。自分の実力不足なのに……。大前だって、頑張ってるんだもんな。勝手なこと言ってごめん──」
媛岡は頭を下げた。
「こっちこそ悪かった。最後なのにそれなりじゃダメだよな。オレ、本気でやるから。ホント、媛の分まで全力でやってくるから」
「大前……」
「だからさ、明日から練習付き合ってくれるか……?」
媛岡の顔を窺いながら、大前は訊く。
「もちろんだよ。休憩十分だけだからな」
「それキツくないか?!」
「大丈夫。おれができてるんだから──」
そして二人は顔を見合わせて笑った。
中学最後の大会は、今までにないくらい最高の演奏となった。
結果は金賞──二人にとって、もちろん吹奏楽部全員にとって、忘れられない日となった──
思いつきです。
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