the 5th dimention
地球の重力場を測定すると
どう計算しても、3次元的な空間では
計算が合わない事が知られているが
つまり、この僕の居る場所は
多次元空間が存在している、そう僕は考えた。
何らかの理由で、僕の思考は
時空を飛び越えて
この、かすみ草の話す時空とつながったのだろう。
その世界では、彼女たちは語り合っているのだろう。
いや、今、この瞬間も語り合っているのだろう。
何らかの理由で、彼女は僕と会話ができる。
その理由を推察したとしても、3次元的な
僕の思考では理解できないに違いないから
話せる事を僕は、単純に喜ぶ事にした。
「君のこと、なんて呼んだらいいかな」
花の声は、ちょっと楽しげな声で「かすみ、でいいわ」
僕は、あまりに単純な答え、ストレートさに微笑んだ。
「ヘンかしら」と、かすみはそういう。
僕は、かすみを身近に感じた。
「バイトさんは、お家に帰らないの?」
僕はふと、壁の丸い時計を見る。
もう深夜だ。
「そうだね、帰るよ」と、僕は身支度をして店の灯りを落とした。
「待って」かすみは、少しテンションのある声でそういうので
僕はどきりとした。
振り返ると...かすみは。
「わたしを連れていってください」