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第51.5話  遅すぎた初恋 side春馬



 どこでボタンを掛け違えてしまったのか……

 思い返しても、そういうことの原因っていうのは分からないものなんだと思う。


「俺の初恋は陽だったんだよ――?」


 学祭の買い出し係に陽と行くことになった時は、まさかこんな話をすることになるなんて全然想像もしてなかった。

 買い出しを終えてファミレスで小学校の同級生の話になって、陽の初恋が小学生の時だと聞いてしまって、なぜか胸がトクトクと歪な音をたて始めた。

 水族館で真剣にスケッチする陽の後姿に見とれたのも。陽が転校していって寂しく思ったのも。中学の時、陽とクラスメイトだったら……と思ったことも、ぜんぶ全部本当で。ただ、それが恋だと気付いていなかった。

 初恋は陽だ――っていうことに、俺はこの時初めて、自分で言った言葉で気がついたんだ。

 皮肉だよな――

 好きだって気づいた時に自分は違う子と付き合っていて、好きな子も違う奴と付き合っていて。しかも自分が付き合うように薦めたとか、馬鹿すぎる。

 ずっと陽のことは大事だと思っていた。それは親友としてだと思っていたのに、今頃それが恋だって気づくなんて……


「そんなふうに、簡単に好きだったとか言ったらダメだよ。そういう気持ちはもっとちゃんと大事に……っ」


 瞬きもせず綺麗な瞳から涙をポロポロ流して、まっすぐ俺を見据えて言った陽の声はかすかに震えていて。

 悲しげな声が俺の心をついた。

 一瞬、俺を見つめる瞳が熱っぽい光を帯びて、切なげに霞んでいく。それを見て。

 もしかして陽は――……

 その仮定に、俺はもうそれ以上、陽への気持ちを口にすることは出来なかった。

 杏樹へ不信感を持ち、別れる決意をして、だからって陽と付き合いたいとかそういうことじゃないんだ。

 ただ、初めて気づいた自分の気持ちに、気がついたら想いが溢れていた。

 陽は非難するような口調で杏樹と付き合っているのにそういうことを言ってはいけないと諭すように言い、いつもの陽の笑顔で「友達だから相談に乗る」と言って笑った。

 だから俺も「友達」の顔で陽に笑いかけた。




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