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第34.5話  ピンチに出遅れた騎士 side 翼



 教室、自分の机の上に体を伏せて寝ている陽の姿を見て「アレ?」と思った。

 高校生ならよく見かける姿だけど、陽が教室で寝ている姿はこれまで一度も見たことがない。

 ふっと思ったのは具合でも悪いのかってこと。

 そういえば、先週風邪で休んでいたな……

 それに土曜は雨に打たれてけっこう長い時間びしょ濡れの状態だった。すぐに風呂の湯につかるようには言ってそうしたみたいだったが、と土曜日のことを思い出すと同時に、じぃっと上目づかいで見上げるあの瞳を思い出してしまって、胸の奥がチリチリとざわついた。

 俺は慌ててその意味不明な感情を追い出して、陽の方へと視線を向ける。俺は教室の真ん中よりの後ろから二番目の席。間に二人挟んで陽と同じ並びだ。

 顔ごと左に向ければ、授業中だろうと陽の姿を伺うことができるが、まあ、授業中にそんなことはしない。それに、さすがに具合が悪くても陽が授業中に寝たりしないことは想像がつく。あいつ、意外と真面目だからな……

 でも、なんだか気になって視線だけを左に向ければ、机に肘をついて額を押さえている陽の姿が見えた。風邪の治りかけに雨に打たれて、ぶり返したか……

 四限の化学の実験の時、いつもなら真っ先に器具を取りに行ったり、率先して実験を進める陽が静かだった。

 実験のため薄暗く照明を落とした実験室の中、陽が時々、苦しそうに吐息を漏らし、額に手を当てて俯いていることに気づいていた。

 これは相当辛いんだろうな。だけど、それを陽は言わない。

 そういうヤツなんだ。

 どうせ、周りを心配させて悪いとか、迷惑かけたらいけないとか思って、我慢してるんだろう。

 バカなヤツ……

 そう思うのに、俺は陽を放っておくことができない。

 陽が我慢してるなら、俺が無理やりにでも保健室に連れて行こう、そう思っていたのに、間が悪いことに、授業が終わって陽に声をかけようとした時、化学教師の新村に呼ばれた。

 たまたま近くにいたという理由で、実験室の片づけを手伝わされた。こういうのは週番にやらせろよと、内心悪態つきながら、俺はさっさと後片付けをやっつけて、実験室を飛び出した。

 陽はすでに安部と教室に向かっていて、安部も陽の不調には気付いているカンジだったから安部と一緒にいるなら心配はないが、なぜだか胸騒ぎがする。

 バカみたいに廊下を走って、階段を駆け上がって踊り場を回ったところで、階段を登っている途中の春馬の後姿を見つけた。

 春馬――

 そう呼ぼうとした瞬間、春馬がすごい勢いで階段を二段飛ばしに駆け上がっていく。

 その先、階段を登りきった所で、角を曲がってきた男子とぶつかって後ろに倒れかかっている陽の姿がやけにスローモーションで視界に飛び込んできた。

 俺はとっさに階段を駆け上がる。だけど。

 俺よりも先に陽の元に駆け付けた春馬が、床にぶつかる前に陽を抱きとめて、俺は伸ばした腕を空中で止め、ぎゅっと空気を握りつぶして、悔しさに奥歯をギリっと噛みしめる。

 たまたま春馬の方が陽の側にいたからだって頭では分かっている。なのに、イライラと込み上げてくる感情にどうしようもなくなる。

 助けることができなかった腕を見下ろして苦々しく舌打ちして、俺は踵を返して階段を駆け下りた。




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