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ACT-6 ~盗賊団ゾモルノク~

今回のお話は、あってもなくても問題ないかな?というお話ですが、

とりあえず、フェナス達が村で眠っている間にティンがかかわった?とある事件?のお話です。合間劇のようなもの?にあたります



パチ…パチパチッ。

かがり火の火の粉が空にと舞い上がり、いくつかの炎の明かりが周囲を照らし出す。

「がははっ!野郎ども、楽しんでいるかっ!」

「「おうっ!」」

そんな中、かがり火を囲むようにして数名の男達が何やら集まり宴会らしきものを催している。

そんな彼らの周りには精気のまったく感じられない少女達が数名常に付き従っている。

彼女達にはすでに心はない。

何しろ彼女達は一度、殺された存在達。

その体に別の力を埋め込まれ、実験体として生み出された。

「しかし、お頭。女を都合してくれるのはいいんですけど、

  もっとこう、自我があるヤツのほうが楽しめるんですけどねぇ」

今いる女達は全員人形のようなもの。

「がはは。そのうちにそのあたりの村からまた浚ってくればいいさ。

  そろそろ次の商品を仕入れにヤツラがくるころだし、な」

まったくもっていい得意先だとおもう。

自分達に力やこういった道具を提供してくれる【得意先】。

見返りは至って単純。

彼らの創りだした道具などの性能を自分達が使うことによりそれらの使い心地を伝えるだけでよい。

相手が【エレスタド王国】だとは知っている。

しかも神殿の関係者だ、ということも。

しかし、それが何だ、というのであろう。

自分達にとって都合のいいことこの上ないのに追求するつもりはさらさらない。

何より彼らと協力体制になってのち、自分達の組織が格段に力をつけているのは疑いようのない事実。

「精霊石の力も残り少なくなってますからね」

精霊石。

彼ら神殿関係者が開発した、という精霊達の力を宿したとある石。

その石をもっていれば何の訓練もしていない人物ですら石に込められている力を使用することが可能。

まさに夢のような代物。

何しろ石を手にし念ずるだけでその力が扱えるのである。

当然、それに対するリスクは伴うかもしれない。

どうやらそのリスク云々を彼らは調べたいらしく、彼らのようなゴロツキにその依頼をもってきた。

その結果、

彼らと取引を始めて、彼らの組織はあっというまにこのあたり一帯を支配する盗賊団にと成りあがった。

今では盗賊団、というよりはあるいみ組織、といっても過言でないくらいに人数は膨れ上がっている。

それでも、本部ともいえる彼らがこのような辺境な場所に本拠を構えているのは、

彼らの出発点がこのあたりであったことに由来する。

各地に支部のようなものができ、手下も多々とできている。

それらの支部にはそれぞれに代表者をおき、そのあたりのことは任せている。

巨大な組織に成長したとはいえ、元々は小さな盗賊に過ぎない彼ら。

盗賊であり夜盗であり、そして山賊でもあった。

今現在の狙いはこの地、グリーナ大陸の実質的な支配。

裏側での支配はほぼ半分手にいれたも同然であるが、しかしまだ半分は達成していない。

この地における巨大な港町とあとは竹細工で有名な小さな村。

その二点を抑えればこの地での勢力はもはや確実なものとなる。

この付近には竜が生息している、という噂もある。

実際にその姿をみたことはいまだかつてないが。

竜を捕えることができればもはや地位は動かない確定したものとなる。

何しろ竜の血は不老長寿をもたらす、といわれている。

そんな力を得れれば何も怖いものはない。

だからこそこのあたりから拠点を移すことなく活動しているのだから。

「では、明日再び、あの村に人口魔獣を使って襲撃を実行、だな」

「いい加減に村長もあきらめて我々の支配下にはいればいいものを」

あの村を手にいれるためにいろいろと策をめぐらせた。

かの地にはいってくる商人も徹底的に襲撃し、外からの情報を遮断した。

それだけでなく、村長の息子を捉え、与えられていた道具を使い、人口的な魔獣へと変化させることに成功した。

かの道具をその身に植え付けられた生き物は当人の意思とは関係なく、

植え付けた当人の命令をひたすらに実行する道具と成り果てる。

植え付けた道具のもっている特性によってその体が変化することは多々とあるが。

もっとも、その変化は副作用らしく、【彼ら】いわく、副作用がなくなってこと利用価値がある、とのこと。

つまり、自分達に廻ってきている品はあくまでも試作品。

試作品でも利用価値はある。

設定によりその意思を残したまま道具にすることもできるのでかなり重宝しているのも事実。

「やろうども!明日は祭りだ!」

『おおおっ!』

彼らの盛り上がりも絶好調。

と。


ドォォッン!

刹那。


周囲をとどろかす轟音が彼らのいる一体にと響き渡る。

それと同時。

「て…敵襲!殴りこみだぁぁ!」

次々に飛んでくる炎の矢とよべしもの。

それらは大地に触れるなりいくつもの小さな光の針となる。

それらの針は周囲にいる男たちに問答無用で襲いかかる。

「炎…だと!?魔道士か!?」

どこぞの国のお抱え魔道士が動いた、という可能性もありえる。

たしかに最近、ちょっとぱかり行動範囲を広げたのは事実。

使えないはずの術をしがない盗賊風情が使っていれば調査員として魔道士をよこす、という可能性もなくはない。

しかし、しかしである。

唯一の港町であるかの付近には子分たちを配置しているし、

また、何か不審な動きをするたびの一行がいればすぐさま襲うように、と指示はだしてある。

ゆえにこの攻撃がどこからもたらされたのか理解ができない。

可能性として…湖から港を通じずに入ってきた魔術師、もしくは魔道士、ということがあげられる。

それならば自分達の目を欺き、間者として入り込んできても不思議ではない。

「やろうども!水と氷の精霊石を!」

「へ…へいっ!」

常にいつも全ての精霊石を身につけているわけではない。

炎に対抗するには、水、もしくは氷の精霊石でなければ対処は不可能。

炎に炎をぶつけても、所詮マガイモノでしかない精霊石の力と、

本家の魔術師達が扱う炎とでは威力は格段にと異なる。

もっとも、【彼ら】がいうには、最終的には魔術師すらをも凌駕する精霊石を創りだすのが目的。

ということらしいが……

「くっ!襲撃者はどこだ!?」

攻撃がどこから飛んできているのかがわからない。

気配すらも隠しているのか、まったくもってつかめない。

そういった敵意などに関する勘は敏感だ、と自負していたのに。

攻撃は四方から飛んでくる。

複数による攻撃か!

そう判断し、

「野郎ども!ぬかるなっ!」

警戒もあらたにすぐさまに臨戦態勢にと突入する。

いまだに見えない襲撃者に対抗するために……


「まったく。ほんと、あの国の人間って何やってるのかしら?」

というか、

「ステラもステラ、よねぇ。同じ過ちは二度目・・っと」

そもそも、ステラが知識を教えたのが悪い、とはいわない。

確かに彼女が知識を伝えた当時はかの王国の人々はきちんと間違いなく使用していたのだから。

しかし、前回、といい今といい、どうしてこうして人とは同じ過ちを繰り返してしまうのか。

それを思うと気が重い。

過ぎたる力はさらなる過信を産む、とはよくいったもの。

そしてそれは外にいる彼らにもいえること。

こちら側に気をむけてない、というのが目にみえているものにしか警戒していない、というのがまるわかり。

「攻撃なんて、離れた場所からでもその気になれば簡単なのに」

外で行われている攻撃はあくまでも威嚇。

つまり、いるはずのない襲撃者に注意をむけさせているだけに過ぎない。

空に放り出した球体にはとある【命令】が加えられている。

すなわち、人のいない場所ではあるが人が集まっている場所にむかい常に攻撃をし続けるようにと。

どうやら襲撃者の報をきき、この中…つまりは本拠地の内部にいた存在達もまた外に出向いていったらしい。

普通ならば一人くらい本拠地である洞窟の内部に見張りとして残しておくであろうに。

もっとも、出入口が一つである以上、入口付近で警戒していれば中に入られる心配はない。

と高をくくっているのではあろうが。

「さてと……。まずは、戒めの楔より解き放たれ 大地に還りゆかん」

目の前にある牢屋らしき場所の中に閉じ込められている精気のない顔の人々。

中にはまだ子供の姿の存在もいるが、それをみて思わず顔をしかめる。

ここにいる存在達はその体が動いてはいても、心がない。

つまり、彼らには魂が宿っていない。

いわば物言わぬ動く死体。

一人からその肉体…つまり、脳が死ぬ間際まで記憶していた情報を読み取った。

それにより判明したのは、可の地において行われている非情な実験。

しかもこの実験を目にするのは二度目であったりするのだからたちがわるい。

だからこそ愚痴の一つもいいたくなる彼女の気持ちもわからなくもない。

少女…ティン・セレスがそうつぶやくと同時。

周囲に青白い炎が発生し、その炎はまるで円を描くように周囲にと広がってゆく。

『あ…あああああっ……』

心がない、とはいえ肉体は人のそれ。

声くらいは発生させることができる。

もっとも、この声は肉体が発しているものであり、彼らの意識が発しているものではない。

この炎は不死者ともいえる彼らのみを焼き尽くす。

「……安心して。あなた達の魂もすぐに安らかに逝かしてあげるから」

彼らの魂は【神殿】に囚われているらしい。

肉体と精神を分ける技術。

そしてその技術は力を取り出す技術へと発展し、かの【帝国】は力をつけ始めた。

さらに、精神体を捕らえる技術をも水の精霊王スティルより伝わるとされていた秘術にて完成させた。

そして吸いだした力は石にと閉じ込めて第三者が使用できるようにと加工した。

それが【精霊石】。

精霊石の元となるのは魂。

魂を物質化し固形化し、それを石の形にしたものに【力】を閉じ込める。

「アタバルジャイト帝国と同じ道をたどってるのよね。エレスタド王国……」

今現在、その帝国の名を知るものはまずいない。

いるとすれば精霊王達くらいであろう。

今ではその名残、としてアタバル湖という名でのこっている程度。

かの広大なる湖はかつて一つの王国であり、自ら滅びの道を歩んだ愚かなる国。

かの国もまた精霊王達を捕らえるまではしなかったものの似たような実験を繰り返していた。

かの国の装置の暴走でこの地の安定が一時期狂い、過半数以上の生命体が死に絶える結果と成り果てた。

その報告をうけたときにもおもいっきり呆れはしたが……

時を隔ててどうしてまた同じような行動を人は起こすのか、それが不思議でたまらない。

誰か止めるものがいなかったのか、とつくづく思う。

しかし今さらそれをいっても仕方がない。

また同じような過ちにたどり着くまでに自分がこうして出向いてきただけでもマシ、と思うしかない。

というか。

「…短い期間に問題が二度ってどうなんだろう?」

問題はそこにある。

時間率を確かにいじっているのは明らかなれど、かといって同一時間にするわけにはいかないのも事実。

そんなことをしていたら管理どころではなくなってしまう。

あまりにひどいような箇所は幾度か時間を巻き戻す形で簡易的な初期化もどきを施してはいる。

「…ここにも、別の管理が必要かな?」

自分がいつもこうして出向けるとは言い難い。

そもそも、常に確認しているわけではない。

今のところ、世界の管理者のようなものを仮に置いた場所はうまくいっている。

…もっとも、その管理者が暴走してしまった世界もあったりはしたが。

一人そんなことをつぶやいている最中、やがて青い炎はゆっくりと収束してゆき、

やがてその場に残るはいくつもの鈍く輝く小さな石のような物体のみ。

それらが彼らの器というか肉体に埋め込まれていた【道具】であり、

実験的に創りだされた【精霊石】のマガイモノ。

あくまでもこれらのマガイモノには命名を忠実に実行するように、との【術式】が封じられている。

簡単に説明するならば、この術式を用いれば、相手が何であろうが、

たとえそれが紙であろうが普通のそのあたりにころがっている石であろうが、

とりあえず命令を下した実行者のいうことを忠実に再現するように行動を起こす。

もっとも、この術式はいまだに研究途中であるがゆえであろう、難しい命令などはこなせない、

という欠点を持ち合わせているようではあるが。

そもそも、そんなものが大量に開発されればまちがいなく大問題になるのは目に見えている。

研究をやめるように、といってもおそらく力に取り憑かれている輩達は絶対にやめることはないであろう。

研究における犠牲は聖なる生贄に過ぎず、世界に貢献するのだから何の問題はない。

と言い切っている彼らがきくみみを持つはずがない。

「深遠の眠りを妨げられし 数多の輝き 安らぎと休息の果てに 道を指し示さん」

すっと左手を突き出し、静かに言葉を紡ぎだす。

それと同時、ティンの左手の中指にはめられている

ほのかに光の加減によっては淡い光を放つ銀色の指輪とその中央にはめ込まれている虹色の石。

それらがその声に反応するかの如くに淡く輝きを増し、

その輝きは、手首にはめられている様々な色彩を彩る腕輪を包み込み、

その光はティンを中心として虹色の光となり、静かに周囲を照らし出す。

その光景はあたかも、ゆっくりと薄暗い洞窟の内部に具現化した、

雲の隙間から覗いた太陽の光が差し込む現象、【神の降臨】のごとく。

【神の降臨】とはそのあまりの美しさと幻想的な光景をみて人々が付けた名前。

実際、そのような光景を目の当たりにした人々はそのような感想を抱く。

特にこの世界においては、セレスタイン教が普及している。

本部となっている国はともかく、その宗教における浸透率は伊達ではない。

薄暗い洞窟の中。

淡い、それでいて幻想的な虹色の光が洞窟全体を包み込んでゆく――


おかしい。

攻撃は常に繰り出されている。

が、こちらを完全に狙っているのかいないのか。

攻撃によるけが人はでているものの、さほど大事には至っていない。

といっても身動きができないくらいに怪我を負ったものはいるにはいるが。

やはり、というか精霊石で扱う術と、相手の術の威力は格段に異なる。

水で盾を創りだしても、相手が放ってくる炎にいともあっさりと蹴散らされる。

このままではラチがあかない。

本拠地としている洞窟の中に逃げ込み、敵を洞窟内に誘い込む方法も一瞬思いつくが、

万が一、襲撃者が洞窟を崩しにかかればそれこそ生き埋め。

そんな危険な賭けはしたくない。

「…お、おかしら!?」

どうするべきか悩んでいる最中、ふと背後がなぜか明るくなったような気がする。

次の瞬間、あせった子分達の声。

ふと振り向けば、視線の先に自分達の本拠地としている洞窟のほうから漏れ出している明かり。

自分達が使っている明かり、ではない。

あきらかに第三者の手が加わったであろう明かりが確実に洞窟内部から漏れ出している。

「・・ちっ!しまった!この攻撃はオトリか!本命は本拠地かっ!」

本拠地の奥には実験体としている器がいくつか存在している。

ついでにいえば、いまだに使用していない精霊石すらも保管している。

さらには、近隣の村や旅人、商人達から奪ったお宝もまた保管している。

この襲撃者の目的はどれが目当てかわからないが、すくなくとも、

外にいる自分達に攻撃をしかけていたのはあくまでもオトリ。

おそらく本隊は本拠地の中にどうやったのか入り込んだのであろう。

しかし入口は一つ。

されど、この攻撃の混乱を縫って別の場所から道を創りだすことは不可能、ではない。

すくなくとも、土を掘り進む術がある、というのは彼らは知っている。

もっとも、かなり実力のある魔術師以外がそれを行えば、彫りだしたときにでる土の処理に困り、

逆に自らが掘った大地の土に埋もれて窒息死…ということもおこりうる。

そのあたりの問題点は魔術師が複数いればどうにか対処は可能だ、と一般的には知られている。

もっとも、それを実際に行った、という話しはきかないのでおそらく理論上は、という注釈がつくのであろうが。

「やろうども!ここは任せた!お前らは俺につづけ!」

せっかく集めたお宝にしろ、あの場に保管している精霊石にしろ。

どちらにしても奪われるわけにはいかない。

本拠地にしている洞窟の中から漏れ出す光は見たこともないような虹色っぽい光のように感じられる。

そんな光を放つ術など聞いたこともない。

ないが自然界でそのような光を放つモノなど聞いたことがない以上、

何か知られていない術をつかわれた、とおもうほうが道理にかなっている。

いまだに飛び交う炎の矢の中を子分達にとまかし、数名の子分をつれ、

頭、と呼ばれた男性はそのまま本拠地としている洞窟の中へ向かい駆けだしてゆく。


精霊石と魔硝石を扱ったという人工的な【灯り(ランプ)】。

仕組みは今いち説明をきいても理解できなかったが、便利な品であることは疑いようがなかった。

壁に埋め込んでいた光源確保のための石がことごとく消え去っている。

先ほどまであふれていた虹色の光はもはやない。

洞窟の中にはいると同時、真っ暗な空間が彼らの目前にと迫ってくる。

「てめえら、誰か松明をもってこいっ」

「ここにありますっ!」

外を照らしていたかがり火にくべていた木の一本を手にもっている一人の男性。

念のためにどうやらここにくるまで、一本、かがり火より引き抜いてきていたらしい。

松明の明かりだけでは心もとないが、それでも中を確かめないわけにはいかない。

敵がまだそこいらに潜んでいる可能性もある。

が、ここは自分達の本拠地。

どこに隠し通路があったり、いざという時のための隠れ穴の位置など、

目をつむっていても判るほどに把握している。

「俺達、盗賊団、ゾモルノクに対して舐めた真似しやがって……」

しかし相手はおそらく未知の力を扱う魔術師。

ゆえに警戒しつつも、真っ暗な本拠地の中へ松明の明かりを頼りに入ってゆく男が五人。

手前にまず二人が先にと立ち、その中心に頭、と呼ばれた男性、その背後にさらに二人。

周囲を警戒しつつも、洞窟の中へと入ってゆく男たち。


「…お、お頭!」

まず真っ先に確認したのは、道具となるべく輩を閉じ込めている牢。

しかし鉄格子はまったくもって壊された形跡もないというのに、そこにいるはずの【死人】達がいない。

さらにその奥に続く隠し通路の扉が開かれているのが目にはいる。

「ちっ!やはり襲撃の狙いは精霊石かっ!」

その奥に隠してあるのは、自分達が実験をしている精霊石。

取引先より常に死体は持ち込まれる。

それらの死体に精霊石を埋め込むことにより、簡単な傀儡が出来上がる。

おそらくこの時期に攻撃をしかけてきた、ということはこちらの道具が少なくなっている、と見越してなのだろう。

となれば念いりにこちらの内情を探っていたどこかの国か組織の関係者が攻撃をしかけてきた、とみて間違いないであろう。

これまでも、彼らの行動は様々な国や組織により監視対象になっていたが、

そのつど、それらの間者達は撃退してきた。

もしくは取引先の彼らがいい材料、とばかりに引き取っていった。

今まで誰ともすれちがっていないのをみても、いまだにこの中に敵は潜んでいるか、

もしくは自分達がここにくるまでに逃げ出したか。

しかし、入口を見張っていた部下は誰もでてきていない、といっていた。

ならばいまだに中にいる可能性が高い。

ここまでくるまで誰にも合わなかったことから、この奥にいる可能性は遥かに高い。

「やろうども、ぬかるなよっ!」

「「へいっ!」」

じりじりと松明の明かりが周囲をほのかに照らし出す。

どうやれば死人を奇麗さっぱり消すことができるのか、その攻撃もまた不明。

彼らは死人をここまで奇麗に消す術など聞いたことがない。

もしかするとどこかの魔道士がそういった術を完成させたのかもしれないが。

それはあくまでも憶測にすぎない。

相手の力が未知数であればあるほど、頭、と呼ばれた人物の笑みが深くなる。

もしかしたら、前回受け取った【精霊石】の効果を試すのに絶好の機会、なのかもしれない。

幾多とある小さな精霊石のみで今までの襲撃などには対処できていたので、

いまだに新たに実験材料として手渡されたソレを試したことは一度もない。

何でもかなりの力が込められている精霊石だ、という話し。

自分達の盗賊団をないがしろにするような行動をとる輩にはそれの実験体にふさわしい、といえるであろう。

そんなことを思いつつも、頭を筆頭に彼らはさらに奥に、奥にと進んでゆく……


洞窟の奥深く。

広々と広がるその空間は、まさに様々な実験や闘技場と化すのにうってつけ。

取引を行った際、実験する場があったほうがいいだろう、といって相手が作成したもの。

何でも闇の精霊の力を閉じ込めた精霊石を使ったとかで、闇に呑みこまれるようにして大地は消滅していった。

もっとも、それを利用した結果、利用者である人物もまた同じく闇に呑みこまれ、

そのまま行方不明になってしまったという事実があるが。

しかし別に使用したのは彼らの仲間ではなく、どこぞの旅人。

彼らが村を襲撃した際、刃向ってきた旅人を捕虜兼奴隷として扱っていたその彼を使用したに過ぎない。

ゆえに盗賊団にとって痛くもかゆくもない。

「…ほう。女が一人、か。仲間はどうした?」

そんな洞窟の奥にとあるちょっとした広間のような空間において、そこにたたずむ人影をみてとり、

口元に笑みを浮かべつつもといかける盗賊団、ゾモルノクの頭領。

「それはこっちの台詞。あなた達、ずいぶん好き勝手なことをしてくれてたみたいね?

  そもそも、死者を冒涜する行為ってかなり問題あるとおもうけど?」

そんな彼らに動じることなく、やってきた五人の男たちにむかってさらっと言い放つ一人の少女。

松明の明かりのみなので詳しく少女の容姿はわからないものの、

見たところどうもまだ子供、すくなくとも十四かそこらにしかみえない。

まあ、相手が魔術師の場合、その力をもってして成長具合や姿をも変化させることが可能。

それを知識として知っているがゆえに、相手の姿がいくら子供だとて警戒を緩めるわけにはいかない。

「ふん。モノもいえぬ抜け殻をどう扱おうと勝手だろう。

 そもそも、死人達を奇麗に消したのは、お前か?それとも仲間か?」

しかしここにくるまで気配も何も感じなかった。

となれば少女が一人でここにのこったか、もしくは仲間達は気配を隠してそのあたりに隠れているか。

「その問いかけには答えられないわね。

  というか、無理やりに閉じ込めた精霊達の力を使って悪事を働いている。

  それ事態が私は許せない、しね。それに安らかに眠りにつくはずの魂達をも冒涜してるし」

無理やりに【石】の形状にさせられてしまった魂に安息はない。

常に【石】からは魂達の悲鳴が発せられている。

すこし勘のいいものならばその気配に気づくであろうに。

その魂の悲鳴に呼応してこの周辺では魔獣の発生が比例するかのごとくに増えている。

すこしばかり周囲を【検索】してみたところ、そのような結果が得られている。

それゆえの言葉。

「答えるつもりは、ない。か、しかしお前が死ねば嫌でも仲間達はでてこざるを得ない、だろうな」

にやり。

目の前の少女はどうみても時間稼ぎのためにすぎないオトリ、であろう。

ならばこちらから攻撃をしかけ、相手の動揺を誘うのみ。

ゆえに、にやり、と笑みを浮かべ。

すっと懐に手をいれ、

次の瞬間。

「爆ぜ燃え柱となれっ!!」

鍵、となる言葉を発生する盗賊団の頭領。

次の瞬間。


ごうっ!!


瞬く間に少女を中心として炎の柱が出現する。

それは天上を突き抜けるかのごとくに巨大な柱となり、渦を描く。

「はははっ!さあ、お前らの仲間は燃え尽きたぞ!でてこ…な、何ぃ!?」

彼の中では、確実に少女の息の根をとめたはず。

そこにころがるのは黒こげになった少女の死体。

…のはずなのに。

まるでゆっくりと何かに吸い込まれるように炎は瞬く間に収束してゆき、

その場にたたずんでいるのは無傷の少女。

ありえない。

そもそも、この精霊石には中位の火の精霊の力を閉じ込めている、そう【ヤツラ】はいっていた。

実際、あるときある場所にて試し打ちをしたところ、かるくその地にクレーターが出来た。

大地がその熱に耐えられずにどうやら溶けたらしい。

なのに、なのに、である。

無傷、など絶対にありえない。


「……あなた、馬鹿?」

少女からしてみれば、馬鹿、としかいいようがない。

そもそも、ここは閉じられた空間。

そんな中で、酸素を大量に消費する攻撃を行えばどうなるのか。

結果は至って単純明快。


「…ぐっ……」

「お…おかし……」

ぐらっ。

バタっ。

ドサッ。

「て、てめえら!?…くそ!?どこからこいつの仲間が攻撃してきやがったか!?」

攻撃を仕掛けた頭領以外の人物。

一人はそのまま首を抑え倒れ込み、一人は胸を抑えるようにして足元をふらつかせ、

一人はそのまま意識を失い、前方へと倒れ伏す。

そんな部下の姿を視て怒りに燃えた声をだしている盗賊団の頭領。

「……わかってないし……」

そんな男の姿をみてさらに呆れざるを得ない。

そもそも、いくら火の精霊、とはいえ、彼ら自身はある物質に干渉して火を扱うにすぎない。

火を扱うためには、物質の酸素、というものが必要不可欠。

そういった科学知識を持たない輩が何も考えずに使用すればどうなるのか。

閉じられた洞窟の中で大量に酸素を消費する術を使えばおのずと結果は明らか。

…すなわち、酸欠。

人は、酸素がなければいきていかれない生き物。

しかし、酸素、という定義も知識もない彼ら盗賊達にとっては誰かに攻撃をうけたようにしか感じられない。

まさか自分が今行った攻撃が部下達を倒れさせた、と理解できるはずもない。

「この中で意識をもったまま、というのはやっぱり、取り込まれてるわね。あなた」

普通の人間ならばこの薄い酸素の中で意識を保つことは不可能。

そう、普通ならば。

しかし、瘴気に入り込まれた存在ならば話しは別。

その身は常に仮死状態に陥るために、当人が自覚していないまでもすでに普通の人ではありえなくなっている。

瘴気に入り込まれた肉体は浄化を施さねば、後の地、完全なる魔獣と成り果てる。

「…とりあえず、器はそのまま浄化するにして。あなたの精神はひとまず檻にいれて反省を促さないとね」

これまでどれだけの命をないがしろにしてきたのか。

先ほどの言葉からしてみても、命を命とおもっていない。

そういった輩は自分の命と他者の命が同じ重さをもっている、ということに大概気づいていない。

それゆえに。

「氷結洞」


ぴしっ!

少女がそうつぶやくや否や…周囲が完全に氷にと覆われてゆく。


「な…何…く…炎…って、きかないっ!?う…うわぁぁっ!?」

ピシピシと凍りついてゆく洞窟。

その氷はその場に倒れている部下達、

そしてわめいている頭領すらをも取り込んでゆっくりと洞窟全体にと広がってゆき、

洞窟全てを呑みこんだ氷はやがて、そのあたり一体をも包み込んでゆく……




次回からはティン、フェナス、レニエルの旅が再開されますv

・・・次回更新もまた不明・・・

こちらは、あくまでも楔の合間をぬって打ち込みしているのでかなり遅くなります・・・

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