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ACT-4 ~旅の始まり~

今現在打ち込み完了してるのはここまで~

・・・ちなみに、ラストを先に打ち込みしてたりするこの話・・・

ただいま、中(ラストにいくまでのイベントの数々)をちまちまと楔と並行してうちこみしております・・・



「う~ん、あいかわらず壮大、よねぇ」


思わずそうつぶやくティンの台詞はいかにも的を得ている、といってもいい。

目の前に広がるのは雲よりも高くそびえ連なる山々に、

その頂上付近にはうっすらと雪化粧が施されている。

山脈がほぼ大陸の九割以上を占めているこの大陸においてもっぱら収入源は湖の生き物となる。

中には山を利用して簡単な農業らしきものをやっているものもいるにはいるが、

しかし山より抜きぬける風によりその作業もあまりはかどらない。

山と湖に囲まれたこのグリーナ大陸は、山脈以外の場所は基本、平地。

山から冷たい風が常に吹き抜けることから、寒さに強い作物などが生活の糧の一つとなっている。


「とりあえず、洞窟があるのはだいぶ先なんですけど、何名様を案内していけばいいんですか?」


船をほっぽいて全員が移動するわけにはいかないであろう。

おそらく中から数名ほど一緒に行動することになるはず。

そんなティンの問いかけに、


「それは私と、あとは彼がついてゆく。他のものは船を守ってもらう」


フェナスと、そしてその横にまだ若い少年が立っている。

顔立ちが似ていることからおそらく姉弟かもしくは間違いなく血縁者なのであろう。

少しクセのある緑の髪はまだ若い少年の特徴をさらに強調しているようにみえなくもない。


「あれ?船の中では私、その子にあったことないですけど?」


四日ほど共に生活していたというのに、ティンはその男の子にあったことがない。

緑の髪に緑の瞳。

しかしその瞳にはかなり強い決意の色のようなものが見て取れるのは気のせいか。

おそらくそれはティンの気のせいではなく、その輝きようからある結論に達するが、

別にそれは今口出しすることではない。

ゆえに気がついたことは微塵も表情に出さず、


「まだ子供のようですけど。大丈夫ですか?

  そういえば、フェナスさんは腕のほうはどうなんですか?

  このあたりってけっこう魔獣が多いですし。魔硝石を稼ぐにはもってこいの場所ですけど」


事実、このあたりの魔獣の多発は他の土地と比べ格段に高い。

それでも村などの周囲に魔硝石を張り巡らせた結界を施すことにより、

村に悪意をもった魔獣を寄せ付けないようにはなっている。

魔硝石はその単体のみだけでも力を発揮するが、決められた形に布陣することにより、

よりその効果を発揮する。

特にその魔硝石の性質を考慮して扱えばそれは完全な結界となり、

逆に恵みをもたらす加護ともなる。


このあたりで生活するうえで必要となってくるのは、魔獣と渡り合える腕。

ゆえに必然的にこのあたりに住まう存在達は腕っ節が強くなっている。


「それは大丈夫だ。この子は私が命をかけてでも守る」

いいつつも、船を下りる時に持ち出した長剣の柄に手をかけつつもいいきるフェリス。

「ん~、まあ、回復術くらいは使えますよね?」

「…どうして使える、とおもうのだ?」


さらっというティンの台詞に警戒を強めつつもといかけるフェリスの台詞にさらりと、


「緑の髪は精霊の加護の証、ですし。

  あの子達…でなかった、オンファス、バストネス、ステラ、クーク。

  四大精霊王達の加護を受けた証、それが緑の髪という形になって表れているわけだし」


風、火、水、土を司る精霊王達の名。

しかしその真名をしっているものはあまりいない。

しかも、緑の髪の真実をさらっとこれまたいってのけるティン。

歴史学者や種族研究者でもそのあたりのことを知っているものはまずいない。

ちなみに、どう解釈されたのか、通常知られている名前はといえば、

風の精霊王オルソフ、火の精霊王バーネス、水の精霊王スティル、土の精霊王クスター。

この名前が精霊王達の名、としてなぜか根付いている。

かつてその名を伝えた巫女の言葉を誤って捕え、それ以後、伝達式に名が変わり、

なぜかその名が精霊王達の御名、として宗教上はなぜか確定してしまっている。

その名が真実の名を示していない、と知っている存在は今ではほとんど存在していない。


「…精霊王様達の真名を知っているのですか?」


それまで黙っていた少年がティンの言葉をうけて驚愕の瞳に眼を見開きつつもといかけてくる。

この世界で、その真名を知っている存在は今ではほとんどいないはず。

さらり、とその真名をいっている目の前の少女の正体にさらに疑惑が募る。

さらには自分達の髪の色がもつその真実すら言い当てている。

これで警戒と疑念といったものを抱かないというほうがどうかしている。


「あれ?もしかして今はあまり知られてないのかな?彼らの名前って。

  あ、そっか。通称のほうで広まってるのかな?ん~、まあ、色々とありまして。私のほうも」


彼らはその役職柄、別の名前を用いることもある。

ゆえにどうやら今の世の中ではそちらの名前のほうが主流となり、

真名のほうはほとんど一般的に知られていないのが常識となっている。


「やっぱりそういった細かなことは実際に身聞きしてみないとわからないことってあるよね」

ぽそり、とつぶやくティン。

わざわざそこまで詳しいことは判らなくてもよかったがゆえにさほど気にとめていなかったというのもある。


あの子達、といっているのがさらに余計に気にかかる。

というかこの口ぶりだとどうも精霊王達と知り合いのような気がしなくもないが。

否、そんなことはありえない。

精霊王達が幽閉されてゆうに軽く二、三百年、という時が経過している。


「で、君の名前は?」

「え?あ、僕はレニエル、といいます。レニーって呼んでください」

思わず真名を名乗り、しまった、とはおもうがすでに遅い。

「わかった。レニー、だね。それで、回復術くらいはつかえるんでしょ?

  たぶん洞窟の中も魔獣が結構発生してるとおもうしね」


回復くらいは自力でしてもらわなければ面倒なことこの上ない。

そんなレニエル、と名乗った少年の思惑などには気にめともずにこともなげに返事をするティン。

彼女にとってはその名前がもつ意味などどうでもいいこと。

どちらにしてもその瞳に宿る意思の強さですでに判っていたこと。


「そういう、ティンさん、あなたはどうなんですか?」

「私?私はまあ、というか怪我とかしなければいいだけだし」


そもそも私に傷一つつけられるはずがないし。

それは本音。

しかしそれを口にだすわけにはいかない。


「魔獣は核をつけば一撃、だからね。まあ魔獣によっては核が何箇所にもあるヤツもいるけど」


核をうまくつけば、器を乗っ取られているだけの動物は魔硝石から解放される。

そもそも、魔獣とは、周囲にたまりすぎている【物質】を浄化、返還させるための手段にすぎない。

ゆえに、そのあたりの知識をもっていれば魔獣と対峙しても冷静に対処できるはずなのだが。

しかし正確な知識が伝わらないがゆえに、人々は魔獣を畏れ、恐怖する。

まだ完全に昇華しきっていない魔獣たちですら排除しようとする。

ゆえにさらに余計に魔獣が誕生する、という悪循環に陥っているのだが……


「魔力の流れがわかるのですか?ティンさん、あなたは?」

「魔力?ああ、生命力のことね。まあね。よく観察すれば普通は誰でもわかるはずなんだけどね」


力の流れ具合とその密度具合。

それは鍛錬によって誰でも見分けることが可能。

警戒色を強くだしているフェナスの台詞にさらっと答える。

そもそも、それに気づいていない、ということ自体がティンからすれば信じらない。

あのときから進化が停滞しているのではないか?

とつくづくおもってしまうのも事実。

…まあ、あのときの彼らは彼らで確実にやりすぎていた、という感は否めないが……


「とりあえず、なら問題ないかな?ここからだと洞窟までは数日かかるけど。平気です?」


とりあえず最終確認。

自分一人ならば何とでもなるが、連れがいれば話しは別。

素直に陸路を通ってゆくしかない。

山のふもと付近まではまだいい。

そこまでいくのにところどころではあるが小さな村は点在している。

しかし、山の中に入ってしまえば村どころか魔獣達の宝庫となる。


「我々は海賊だ。平気も何も、常に命の危険と隣り合わせなのだ、問題はない」


本来は海に住まう民ではなく、大地に根付いてこその一族なのに、海に生きることを選んだのは、

一族を守るため。

その決断は間違っているとはいえないが、それでも年とともに一族の力が衰退しているのは事実。


「なら、さくっといきましょうか。

  ここで話しあってても、暗くなる前にどこかの村にでもついておきたいですし」


実際に夜になれば湖からどんな巨大生物がはい出してくるかわからない。

暗くなる前に安全な場所に移動したい、というティンの気持ちもわからなくもない。


「わかった。では、お前たち、あとはたのんだぞ」

「「まかせてください!吉報をっ!」」


フェナスが振り返り、背後にいる船員達に声をかけるとほぼ全員が同時に返事をかえしてくる。

隠し通路ともいえる洞窟をみつける。

そこからならば、捉えられている数多の仲間を救えるかもしれない。

それはほのかな希望。

それぞれがそれぞれの心のうちに思っていることは口にはださず、


「じゃ、いきましょうか。えっと…村は…あ、こっちですね」

ざっと足元をみて大体検討をつけるティン。


こういった大地には必然的によく使う道筋には自然と道ができるもの。

完全に道、として塗装されているわけでも、整備されているわけでもないが、

踏み固められ、周囲より格段に草木などの数も少ない茶色い土が表にさらけでている簡単な道。

まだ獣道とかでないことから、このあたりには頻繁に人が行き来しているのがよくわかる。

うっすらと大地に刻まれている道、という刻印。

それを進んでゆけばおのずと人が暮らしている場所にはたどり着ける。

それはどの世界においてもいえること。

もっともそんな道しるべがないのが、海、という存在。

海での道しるべはもっぱら夜空に浮かぶ星々となる。

その配置と位置とで自分達が今、どこにいるのかを知るのが一般的な方法。


「じゃ、いきましょうか。えっと。しばらくよろしく?フェナスさん、それにレニー」


とりあえず改めて一応挨拶がわりにぺこり、と頭をさげるティン。

黒い髪に黒き瞳、さらには緑の髪に緑の瞳の男女がひと組。

この組み合わせはかなり目立つ。

騒がれないのはこのあたりに今のところ人の気配がないからであろう。


「え、あ。こちらこそ」

「よろしくおねがいします」


相手の正体もわからない。

しかし実力はけた外れ。

知識からして油断が出来ない相手ではある。

それらを頭にいれつつも、挨拶された以上、礼儀としてそれぞれに返事をするフェナスとレニー。


今、ここに、三人の旅が開始されてゆく……







建築技術はわるくない。

むしろ木材建築はよりよく発達している、といってよい。

かの災害の後、こういった技術のみは細々と受け継がれているらしい。

とはいえ、災害の元になってしまった技術などは今の世では奇麗さっぱりと失われているようだが。

…かの国を除いて。

このあたりにおいて木材は豊富にあるがゆえに、どうしても様々な用途に木材が使われる。

村に近づくにつれ、道らしき大地の跡も奇麗に柵がほどこされ、

案内版もまた設置されているのが見て取れる。

村らしき場所に近づくにつれ、ひときわに目立つ木造の高い建物、というか櫓のようなものがみえてくる。

通称、物見やぐら、とどこぞの世界では呼ばれているそれは、見張りの塔、と呼ばれ、

この世界では一般的な建物。

まっすぐに建設されたその建物は周囲を見渡すためだけに作られている。

この世界、周囲が見渡せる、というのはそれだけでかなり重要な役目をもつ。

例えるならば、周囲に森があったとする。

しかし、上空からならば、その森の中でうごめく不審な動作をする存在を見つけることが可能。

もっとも、視力がよくなければそれらも見つけることはできないが。

村に近づくにつれ、周囲で放し飼いにしているのであろう、放牧されているとおもわしき、

牛や羊、といった動物の姿がちらほらと垣間見える。

もこもことした真っ白い毛並みにその額にある一本の角。

角の大きさにより、雄か雌かが判断できるのが羊。

そしてまた、左右に伸びる四つのくるくると巻いた角をもち、黒と白の模様をもつ四本足の生き物。

角の巻き具合により雄か雌かが判断できるのが牛。

どちららもこの世界においては家畜、として一般的な生き物。

肉も毛皮も、さらには乳も収入源になることから、こういった平原などがある場ではよく放牧されている。

この辺りで放牧するにあたり、どうしても湖からあがってくる生物に対抗する必要性がある。

ゆえに放牧しているそれぞれの柵にはそれなりの魔硝石が組み込まれている。

この辺りで基本、重宝される魔硝石の属性は雷。

自然界において、また術において雷を扱えるものははっきりいって存在しない、といわれている。

しかし、魔硝石に至ってはどういう原理なのか時折、その内部に雷の属性をもつものが多々とある。

それは微量な力をもつ魔硝石とはいえ、塵も積もれば山となる。

まさにとある世界にあるらしきそのことわざ通り。

多数の魔硝石を同時に配置することにより、簡易的な電流を流した状態の放牧場が出来上がる。

ゆえに家畜が逃げることもなければ、巨大生物に家畜が食べられる心配もなくなる。

ちなみに放牧場からだすときには、銅の性質をもつ魔硝石を扱いそこから連れ出すこととなる。


「このあたりはさすがに放牧が盛んみたいね」

そんな周囲をみつつも思わずぽつり、とつぶやくティン。

「このあたりはどうしても自給自足になるからそれは仕方ないだろう」

そんなティンのつぶやきに、周囲を警戒しつつもいってくるフェナス。


少なくとも、周囲には誰かが隠れるような茂みも森も、また竹林も存在していない。

あるのは広い放牧場とその中心に伸びている柵で囲まれた街道らしきもののみ。

放牧場の中心らしき場所をつっこる街道を抜けた先にどうやら村があるらしい。

その後ろには竹林らしきものが見て取れ、さらにその後ろには生い茂った木々の姿が垣間見える。

豊かに放牧場の中に生い茂っている草は、おそらく湖からの湧水による効果であろう。

湖の水は草木にも影響をあたえ、その質をより高め、さらには急激に成長させる効果がある。

ゆえに放牧していても、草が枯れ果てる、ということはありえない。

むしろ草食動物を野に放っていなければ、平野は恐ろしいことになり果てる。

簡単に説明するならば、軽く背丈以上、

もしくは、ちょっとした見張りの塔並みの背丈をもつ草木が生い茂る平野となり果てる。


「あ、村がみえてきた。そういえば、私の資金は魔硝石が通貨変わりだけど。

  フェナスさん達は大丈夫ですか?」


この世界で流用している通貨は一応、セレスタイン教が出来たときに決められており、

世界共通通貨となっている。

基本、銀、金、銅からなる通貨で、その表面には世界神セレスタインを現している、

といわれているシンボルともいえる文様が刻まれている。

この世界においては銀のほうが希少価値が高く、ゆえに銀貨が一番価格が高い。

もっとも、最近においてはわざわざ通貨をもちいず、

魔硝石の質と量とで取引している存在も多々といるのだが。


「心配ない。銀貨100枚は持ち合わせている」

「…そ、そうですか」


銀貨百枚。

それははっきりいってとある国の国家予算に匹敵する価格である。

銅貨百枚につき金貨一枚の価値があり、さらに金貨千枚における価値が銀貨一枚、となっている。

ゆえに流通的にあまり銀貨は一般的に出回っていない通貨、ともいえる代物なのだが。


「細かいのもありますよね?」


というか、こんな小さな村などで銀貨をつかってもまちがいなくお釣りがはらえないのは目にみえている。

そもそも、銀貨一枚でかるく村の全財産を買い上げることすら可能。


「金貨もいくつか。あとは魔硝石の細かいものが多少」


フェナスに続き、レニーが変わりに答えてくる。

まあ、魔硝石が多少なりともあるのならば当面の費用は問題ないであろう。

そう判断し。


「ならとりあえず、銀貨はおいといてくださいね。お釣りとか絶対に払えないでしょうから。

  基本は魔硝石でいきましょう」


金貨でもお釣りが完全に払えるかどうかあやしいもの。

たしかにティンのいうことも一理ある。

それゆえに、


「わかった」「判りました」


素直にうなづくフェナスとレニエル。

そんな会話をしている最中、

やがて目の前に道の道が開け、視界の先に村らしきものがはっきりと見えてくる。


「さてっと。今日のところはこの村で休んで、明日また早くに出発しましょうか。

  ここからだと洞窟までどうしても数日かかりますし」


山脈を貫くようにして存在している洞窟は山に立ち入りしばらくいった場所にその入口は存在する。

それでもとある小さな川沿いにあるのだから

今まで見つからなかった、というのが不思議で仕方がないのだが。

さて。

旅人を温かく迎えてくれる村だといいな~。

おいしいもの、あるかな?

そんなことを思いつつも、ティンはフェナスとレニーと共に村のほうへと足をむけてゆく。




「うん?なんだ?見ない顔だな?」


村に近づいてくる三つの人影をみて思わず顔をしかめる。

そもそもこんな辺境ともいえる村にやってくる旅人などはまずいない。

いるとすれば、背後の山に生息しているといわれている竜を狩りにくる冒険者くらいであろう。

しかし、ざっとみたところ、腕に覚えのあるようにはみえない。

それぞれに頭にフードをかぶった、一見したところあやしい、という言葉がしっくりくる三人組。

それぞれの髪の色が目立つ、というので三人とも頭を隠すフードを身につけている。

それは人里に近づけばどうしても偏見など、といったものはあるわけで。

場所によっては緑の髪の人間もまた、緑の悪魔、とすらいわれていることもある。

それは、かの国が緑の髪をもつものを徹底して狩りだしており、

一人の緑の髪をもつ存在ものを捕えるために村一つ焼き打ちしたこともあった。

それゆえに、緑の髪の持ち主もまた、恐怖の対象として根付いてしまっている。

高い山脈にエレスタド王国とはさえぎられており、さらにはその間には巨大な湖。

それでも、永きにわたり、王国からの干渉がなかったわけではない。

何しろこの辺りは魔硝石の宝庫ともいえる場所。

ゆえにたびたび、王国の侵略はうけている。

ゆえに疑心暗鬼になってしまうのも仕方がないといえば仕方のないこと。


「すいません。私たちは湖のほうからきました。このあたりで野宿をするわけにもいかず。

  できましたら一晩、休ませていただきたくここにきた次第です」


すっと手前に一歩でて、怪訝な表情をうかべ、

あからさまに警戒している人物にと頭をさげて挨拶するティン。

魔獣が多い場所で野宿をするなど死に急ぐようなもの。

数百年の間に民に根付いた恐怖はそう簡単に消え去るものではない。

何の用事でここにきた、とは説明しない。

説明してもおそらく余計に警戒を抱かせるだけ。


「…湖、から?あんた達だけなのか?」

「いえ、他にもいたのですが……」


それだけいって言葉を区切る。

これはあるいみ駆け引き。



「…そうか。大変だったな。

  わかった。村長にかけあってみよう。しかし、我が村もそう裕福ではない。

  ここからしばらく離れた町では、他の場所に出向く船もでている。

  一晩休んでそこにむかうのが一番いいだろう」


ときどきいる。

湖からの遭難者、が。

他にも仲間がいたが、今は三人だけ、ということはおそらくそういうことなのであろう。

最近、確かに湖に住まう生物が今まで以上に巨大化している。

以前はそれほど巨大な生物は生息していなかった。

しかしここ最近、否、ここ百年ばかり巨大すぎる生物が増えてきているのもまた事実。

それらの巨大生物で肉食のものは、知恵のあるものもでてきたのか、

最近は湖を運航している船に目をつけている。

すなわち、抵抗もあまりできずに、

それでいて一つの船を襲うだけでいくつかの小さな食料が手にはいる。

そんな認識なのであろう。

抵抗してくる湖の生物よりも、餌としてはかなり食べやすいのはわかる。

わかるが襲われるほうの身になればたまったものではない。

襲撃をうけてどうにか命からがら逃れたのであろうが、この村とて裕福なわけではない。

どちらかといえば自分達のほうが助けてほしい位置にある。


「ありがとうございます。さ、いきましょ」


何だかティンに全て誘導されているような気もしなくもないが、

下手に会話に割って入り、自分達の種族が判ってしまえば厄介なことになりかねない。

このあたりは山脈があるとはいえ、かつては帝国の虐殺があった地域でもある。

自分達の一族が忌まわしきものと伝わっているのか、はたまた悲劇の民として伝わっているのか。

それは場所によって様々であろう。

しかし、万が一、忌まわしき存在として伝わっていれば下手をすれば命にかかわる。

何よりもフェナスはレニエルを絶対に守りきらなければならない理由がある。

彼に何かあれば、まちがいなく、一族は全て滅びてしまうであろう。

それがわかっているからこそ、下手な行動はできはしない。

それでも、海賊、などという行為をやっていたのは、レニエルの、『仲間を助ける』という言葉。

その言葉をうけ、いろいろと話しあい、

結果として海賊、という隠れ蓑をかぶることで自分達の存在をごまかした。

見張りの村人が勘違いしているのはその表情からすぐに読み取るものの、

ここはその勘違いにまかせておいたほうが無難と判断しあえて口をはさまないフェナス。

この地で野宿をするなど、はっきりいって危険極まりない。

それよりは村の中で休んだほうがはるかによい。

休ませてもらえれば、だが……


次回投稿はいつになるかわかりません。

これは楔さんの気力がのらないときに打ち込みしているもので・・あしからず・・・

でもさほど時間はあけずにできる・・かな?

予定は未定、です・・・はい・・・

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