表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

ACT-18 ~精霊神コランダム~

ストックしてる話をひとまず連続投稿~

・・・・ちなみにGW中もずっと仕事・・・

おやすみがほしい今日この頃・・・



         WOLD GAME ~精霊神・コランダム~




三度目の正直、との諺がこの世界のとある場所には伝わっている。

もしくは二度あることは三度ある、という諺もある。

しかしだからといって同じ【魂】が輪廻の果てに同じ過ちを繰り返しているというのはいただけない。

かつての惨劇を起こした人物の【魂】と、今現在、本来あるべき寿命を他者の力で覆し、

数百年にわたり実質裏で支配を繰り返しているかの国の王。

たしかにかの地に住まうもの、特にコラム宮を管理する立場であるかの一族は、

普通の種族などとはことなり在る程度の寿命を要している。

この【世界】に存在する以上、管理はすべて【彼女】に一括されている。

当人からしてみれば、全部自分にまるなげされている感が否めなくもないが、

しかしそれでもこの【世界】に移住したわけでなく産まれ出た以上、すべての命は彼女の管理下にある。

それ以外のことはこの世界に住まうものに任せてはいるものの、

だからといって世界の理が乱れている状態で手だしをしない、と明言しているわけでもない。

天井部分から差し込む光は部屋全体に広がり、壁の材質に使われているとある素材に反射し、

部屋全体が淡く緑色にと照らし出されている。

入口から入って正面にみえる壁は曲線を描いてはいるものの、

そこには一つの【模様】にもみえる【絵】が壁にはめ込まれているのがみてとれる。

頂上部分に不可思議な紋章のようなものが描かれ、

そこから伸びた線の先に一つの球体のようなものが描かれている。

その球体の中をまるで拡大したかのような模様もまたそこには描かれているものの、

それらはあまりに天井付近に近いがゆえによくよく目をこらさなければ完全にはみえないであろう。

まず正面にみえるは、世界を司り守っているといわれている存在達を示している、

といわれている様々な姿形をしている絵姿。

四体の精霊王、そして二極たる精霊王、竜王、そして輝ける王。

そして精霊王達が手を伸ばした先にみえるは一人の女性の絵姿。

その女性は竜王、そして輝ける王とみられし絵姿の人々とともに並んで描かれている。

この絵が何を意味するのか、きちんと理解できるものはそうそう多くはいない。

部屋全体はまるでちょっとしたドームのような形となっており、

緑色に部屋全体がほのかに光っているようにみえる以外、

正面にある大壁画以外に目立ったものといえば、

部屋のいくつかの場所に設けられている色彩様々なちょっとした水晶の台座くらいしかない。

それ以外には正面に祭壇のようなものがある以上、部屋そのものの中には何もない。

部屋の中心部分にはより強い緑の光が天井から降り注ぐようにおりてきており、

まるで淡き光の中にちょっとした強い光の柱が発生しているようにみえなくもない。

「さてと。オンファス。バストネス。ステラ。クーク。あとランメルにスベルグ」

部屋の正面部分、祭壇の正面にとたちそのまま虚空をみつめつつ名前を紡ぐ。

それと同時、瞬時にその場にあらわれるいくつかの影。

それぞれの影が形を成す中、それぞれがどこかおびえているよえにみえるのは気のせいか。

現れた姿はそれぞれ。

鳥のような姿をしているものもいれば、猫のような動物の姿をしているのも、

蛇のような姿をしているようなもの、それぞれがすべて異なる姿をとっているのが見て取れる。

名を呼ぶと同時にこの場にと呼びだされた彼らをじっとみつめつつ、

「あなた達にはここが【何】なのか説明するまでもないわね?」

静かにそこに現れた存在達にむかって言い放つティンの姿。


今現在の刻限はタレンを回ったころ。

すでに外では太陽の光が陰りを見せ始め、ゆっくりと夜の帳につつまれようとしている現状。

その証拠に【夜の帳】とも別名をもつ【ナクライ】が初鳴きをしているらしく、

風にのって鳴き声が静かにきこえてきている。

この部屋そのものの天井部分には屋根らしきものがなく、

そのまま【空】がみてとれる。

天井部分を覆っているのは特殊な【力】であり、

雨をのぞいたすべてのものを部屋の中に浸透させる役目をもつ。

精霊王達の加護が薄くなっているこの世界においては季節を問わず早くに日が暮れて夜が長い。

そのような状態がここ数百年ほどつづいている。

それらは夜を長引かせることにより、闇の精霊王がその力をもってして、

世界にはびこりはじめている【瘴気】などといった負の力をある程度浄化しているからに他ならない。

しかしこの地に住まうもの、特に人族などといった存在達はその事実をしらない。

自然からの声に耳をかたむけようとせずに、自分達が定めた理の中で判断しようとする。

真実をいうものがいてもそれはたわごととしてうけとめ、極端な地においては異端児としてみなされる。

あげくはそのために罪にとわれることも少なくない。

異端とされる原因の一つに、光と闇の精霊王が行っているとある現象もかかわっている。

月が欠ける現象と、太陽が欠ける現象。

数年ごとにそれらの現象を引き起こし、この惑星中の光と闇のバランスをたもっている。

本来ならば数年ごとにおこなわなくても数十年に一度くらいの頻度でよかったものが、

四属性を担う精霊王達が幽閉されたことにより、世界の理に歪みが生じ、

強制的な処置を取らねば世界の安定がくるいかけてきていた。

その結果としてそんな事実をしらない人々が疑心暗鬼となり、

悪者をあえてみずから創りだすことにより、それらを処罰することにより災害がまぬがれる。

そのような傾向になりはじめたのは精霊王達が幽閉されて百年ばかりが経過したころから。

今現在は【帝国】の悪業が目だっているせいかさほどそのような話しはきかないが。


『ティンク様……』

どこかその声がかすれているような気もしなくもないが、そんな彼らの思いを知ってか知らずか、

「はいはい。文句はいわない。とりあえずこの場にクレマティスはよんでないけど。

  まあ彼には森の民達に今後のことを指示してもらう役目を押しつ…もとい任せてるし」

つい本音ともいえるおしつけた、といいそうになるがいい方をあえて変更し、

にっこりとその場にあらわれた精霊王四体と精霊二極王へと話しかける。

今現在、いまだにレニエルが【継承】している今現在、彼を途中でこの場に呼び寄せるわけにもいかない。

かの【聖水晶】の中でレニエルは完全なる力の継承と覚醒を果たすこととなる。

精神的なものから肉体的なものまで全て。

かの中よりでてきたレニエルは今までのレニエルではなく、完全なる【王】としていきることとなる。

いまだに【雛】であり【継承者】であった時代はようやく終わりをつげ、

この世界にとってもあらたな歴史を刻むこととなる。

「とらあえず、コランダムをあなた達の力だけで呼びだすこと。

  私が呼んでも意味がないのはわかるわよね?」

まちがいなくティンが一声かければすぐさまこの場に姿を表すであろう。

たとえその精神をまどろみにゆだね、眠りについていたとしても。

ティンの言葉は絶対的なもの。

ましてやこのたびのことは自分達のふがいなさ…すわわち不手際以外のなにものでもない。

それでなくても目の前の【大いなる母】こと【ティンクセレクタ】が出向いてくるきっかけをつくったのは、

まちがいなく自分達。

ゆえに断る理由も、ましてや反抗する気もさらさらない。

目の前のかの御方が何を考えているのかは理解しかねるが、

その指示は絶対的なもの。

それゆえに。

『緑の聖なる場にて我らの盟約を紡ぎます』

別名、この神殿の表向きの中心である【祈りの間】。

この部屋は他の神殿、【水晶宮】や【コラム宮】といった場所とおなじく、

【召喚の間】というものが存在する。

それぞれの聖殿において【祈りの間】とよばれしそこにおいて、

世界の存続にかかわる存在を呼びだす聖なる儀式を行うことが許されている。

それ以外の場所で行おうとするならば、歪みが生じ、その歪みは術者へとそのまま向かう仕組みとなっている。

それがこの世界のもうひとつの理。

もっともその理を悪用し、一つの聖殿を悪用してしまった帝国のようなものも存在するのだが。

それは理の裏をついた行動であり、よもやそのような行動をおこす輩がいるなどとは誰も想像すらしていなかった。

光が強い場所であればあるほど利用することにより、生じる歪みと闇は強くなる。

かの帝国ことエレスタド王国の上層部はそのことをしっていたのかそれとも結果としてそうなったのか。

真実はおそらく当事者達でしかしりえないであろう。


呼びだされた存在達。

水の精霊王ステラ、土の精霊王クーク、風の精霊王オンファス、火の精霊王バストネス。

城蛇のようなその体は常に形をとっている巨大なものから、

そこいらにいるちょっとした数十メートル級の一般的な蛇とさほど大きさはかわらなくなっている。

人型なれどどうみてもその体の構築が木々でなされているかのような姿をしているもの。

きをぬけば踏みつぶしてしましそうなほどのまるで手の平サイズ。

そうといかいえない真っ白いもこもことした猫のような動物。

そして人間の子供くらいの大きさはあるであろう、真っ赤な全身をもつ鳥。

それぞれが東西南北にと四角を描くように出現し、

その四体の中心にとたつは、ぱっとみため対極に位置していると見ただけでわかる存在達。

かたや、漆黒の髪をその身長よりも長くのばし、体を覆い尽くすような真っ黒い服装を纏っている女性。

白き髪をそのまま身長よりも長くのばし、体を覆い尽くすような真っ白い服装をまっとっている女性。

それぞれの体は互いに半透明であり、今にも周囲に溶け込みそうな気配を醸し出している。

光と闇がそれぞれに幻想として形をとったといっても過言でない雰囲気をもつ彼女達。

彼女達は精霊王の一角であるものの、属しているのは世界の理部分といっても過言でない。

光も闇もその力は使いようによっては滅びを招くほどの力をもつ。

それゆえにこの【地】においてはそれらを統括すべく【意思】をもたされた。

この場にいるすべての存在は、目の前にいる少女、ティンより意思をもたされたに他ならない。

ゆえに彼らにとってティン母であり、また絶対的な神でもある。

ティン曰く、自分はそんな大層なものではない、と謙遜しかねないが。

しかし事実は事実。

この世界はそもそも【彼女】によって【創られた】ものなのだから。


『我が紡ぐは命なる恵み』

『我が紡ぐは母なる鼓動』

『我が紡ぐは命の鼓動』

『我が紡ぐは全てなる流れ』

ティンの言葉をうけ、精霊王達四体は、それぞれ部屋の四方へと移動する。

火の精霊王は紅き水晶が設置されている台座の前へ。

土の精霊王は茶色の水晶が設置されている台座の前へ。

水の精霊王は青き水晶が設置されている台座の前へ。

風の精霊王は白き水晶が設置されている台座の前へ。

四体の言葉をうけ、四つの水晶の台座が淡く輝きを帯び、

その輝きは一つの線となり、部屋の中央部分へとのびてゆく。

中央部分にて交わった四色の光の筋は一つの文様を描きだし、

光がより一層かがやきを増すと同時、部屋の中心部分に先ほどまではなかったはずの、

あらたな二柱ともいえる台座が突如として文様の中より光の中より床からせりだすようにと出現する。

金と黒の色を帯びた台座の色は両極端。

水晶の色が金の台座は黒一色であり、水晶が黒の台座は金一色。

出現した台座にかぶさるように、二極王ともよばれる光と闇の精霊王がその身をそのまま台座へとゆだねる。

刹那。

中央部分の台座より、金と黒の光が四色の光と混ざり合い、

それらの光はそのまま空高く天を貫くかのごとくにたちのぼる。

「「『我らはここに願う。我らが束ねしもの。我らの力全てをもって今ここに再臨せたもう』」」

立ち昇る光と、五精霊の言葉はほぼ同時。

『緩やかな流れの中の奔流よ』

『古よりつづく命の流れよ』

『揺りかごの中命は育まれ』

『刹なる道を光差ししめす』

「孤独は闇に、闇は安らぎに」

「安息の闇と希望ある光」

「「『理を司りしものの一柱 限りある永久なる時の流れにてあらわれたもう』」」

それぞれがそれぞれに一つの旋律にのり力ある言葉をのせて【聖歌】を紡ぎだす。

【聖歌】と呼ばれしものはいくつも存在し、今かれらが扱っているのは、

世界を司る位置にいるものにしか使用できない力ある言葉。

もしも力のないものがこの言葉を紡ごうものならば、世界の理により声を発することすらできはしない。


世界、否、惑星の数か所よりその言葉と同時、空に突如として立ち昇る聖なる光。

それらの光は瞬く間に世界を包むかのように、上空を駆け巡る。

一つの光の線はいくつもの光の線と交わり、螺旋を描き、それらの螺旋の光はこの場。

すなわち緑の光の柱が立ち昇るこの地にと終結される。

一般の地上にいきるものたちは何がおこっているのかまったくもって理解はできない。

ただわかるのは、その光がとてつもないものであり、しかしそれがなぜか直感的に、

悪いことの前触れ…すなわち厄災の前触れの現象ではないことを理解する。

誰ともなく空をみあげ、中には無意識のうちに涙を流すもの。

より自然と深く繋がっている動植物などに関しては、それぞれが上空を仰ぎみる。

それと同時。

世界各地にて、動物達による一斉の咆哮が響き渡る。

まるで何かを祝福するかのごとく――



その背に薄い羽のような、それでいて服装の一部である薄い幻にもみえる空気とまざりあっている。

ゆらゆらとゆらめきながらも形を時には羽のごとく、時には翼のごとく、

時には普通の服の装飾の一部のごとく。

一刻といわず絶えずその纏っているらしきものは変化していっているのがみてとれる。

ゆっくりと緑の光の中、出現する一つの影。

さらり、と緑色の光に包まれた青く透き通った長き髪らしきものが周囲にとたなびく。

光の中よりあらわれしは、一人の女性のような姿をした存在。

しかし男か女か、といわれればそれぞれに視るものによりその意見は異なるであろう。

目の前の【存在】の姿はみるものによってその姿を変化させる。

否、そのように垣間見える。

彼ら精霊達により召喚されたがゆえに視えている姿は生み出された当時の姿のままではあるが、

それは【創りだされた】ときにそのように【在る】ようにされたからにほかならない。

基本的にどのような姿にも変化は可能なれど、だからといってあえて姿を変化させることがない。

それがかのものの言い分であることを、この場にいる精霊達は知っている。

ゆっくりとその整った顔立ちの中閉じられていた瞳を開くとそこにあるは、

黒き瞳とその中に揺れ動く緑や青といった色とりどりの光の乱舞。

「「『おひさしぶりでございます。我らが精霊神様』」」

その姿をめにし、その場にいる精霊王達がかるくそれぞれに片手らしきものを胸のあたりにあて、

彼ら独自の間にて取り決められている様式をとる。

かるく頭をさげている様はそうそうみられるものではない。

『私を呼んだは……』

世界の理が乱れ始めているのはわかっていた。

しかし自らは率先して干渉できる立場ではない。

そのように理の一端として世界に組み込まれている。

自身が自ら動けば世界により大きな歪みが生じてしまうことを十分に承知している。

ゆえに毎回【召喚】されるまでその意識を世界にそわせ世界の安定を見守っている。

そんな自分を呼びだした要員は理解できる。

できるが。

言葉を発しかけてその場にいる人物にその視線をむけ、その表情が驚愕の表情に彩られる。

そして。

『お久しぶりでございます。我らが世界を創造せし。ティンクセレクタの創世神…ティンク様』

ここしばらく感じていた懐かしき気配。

だがしかしその気配をたどろうとしても何かに邪魔されたようにさえぎられていた。

不思議におもっていたが目の前のティンの姿を確認したがゆえにその疑念はいともあっさりと解決する。

かの【御方】の気配を探ったり手繰ることは【許可】がなければ絶対に不可能とされている。

またそのように定められている。

「久しぶりね。コランダム」

精霊神、コランダム。

この世界の中においてそれこそ伝説というかほぼ神話の中にしか存在しないとまでいわれているもの。

世界を担う柱の一角。

『ティンク様自らのお手を煩わせてしまうとは…あなた達……』

おもわず自らの配下であり、

また分身ともいえる精霊達にと視線をむけるコランダムとよばれしものの気持ちはわからなくもないであろう。

何より世界を創りし存在の手をわずらわせているなど絶対にあってはならないこと。

何のために自分達のような存在をわざわざ創りだし世界を任されているのか、という問題もある。

だからこそなおさらに申し訳なくおもってしまう。

何のために自分達がこの世界にあるのか、という存在意義すら問われてしまいかねない。

それゆえにコランダムの言い分も何も間違っていない。

いないが、しかし極力地上にいきるものを身守る立場として産みだされているという事実もある。

自分達の存在意義と使命。

それらにはばまれ精霊王達も行動を制限されていたに他ならない。

もしも他者を人質にとられ脅された時点にて、精霊神を召喚しよう、と思い立っていれば、

こうまで数百年にもわたる世界の歪みは広がらなかったであろう。

「さてと。あなたは私とともにきなさいね。あとあなた達はこの地の再生。

  あなた達はこの地がかつてはどのような姿であったか覚えているでしょう?」

かつてこの地は地上にありながら、空でもあった聖なる神殿。

一定の周期をおいて神殿は世界をめぐり、時々に応じてその位置を変化させていた。

時には空の上にあり、時には地上にありもしたが、神殿全体が常に【緑の加護】に覆われており、

その加護の中には【世界柱】の加護もまた含まれていた。

この場に呼び出された精霊神に対しまったくもって動じることもなく、さらりと挨拶をした後、

この場にいる精霊達にと次なる指示を飛ばしているティン。

今現在はレニエルがこの神殿の核ともいえる水晶の中にいるがゆえに、

精霊達のみの力でもかつてのような姿を取り戻すことは可能。

今現在、この神殿は簡易的によみがえったとはいえかつてのような姿にはほどとおい。

この神殿全体はちょっとした大きさを誇り、力により具現化された様々な施設などといったものも存在する。

土の加護により湖上ではあるものの、そこには浮き島のようなものが形成され、

その浮き島を湖よりもうかばせているのは風の加護。

火の加護は神殿にとつづく石柱の灯篭にとほどこされており、

水の加護はいうまでもなく至るところよりも地上より溢れんばかりの噴水を産みだしている。

精霊達がそれぞれの対応する水晶に重なり、一時にしろ【同化】したことにより、

この地にて失われていた【加護】の機能もまた復活している今現在。

それは建物の中にいれば普通はわからない事柄であるが、

彼らの意識はここにあるようでいて、その意識は世界全てにとつながっている。

ゆえにこそ今現在どのようになっているのか手にとるようにと理解は可能。

「完全に機能を回復させた後、森の民の一族をこの地に全員【喚ぶ】ように」

よばれし一族のものはこの地が何であるか本能的に理解するであろう。

だからこその指示。

完全に神殿全体が復活を遂げた後にはう浮き島のようなものなれど、

その中には港となるべく場所もまた存在している。

浮き島とはいえ島を構成しているのは、ほぼ湖と森といっても過言でない。

その中にまるで神話の絵画のごとくに整った建造物がところかしこにたっている。

自然と建物の調和。

この地はそれがもののみごとになされている。

この神殿の姿は神話として、時には伝承の絵画としても世間一般にと伝わっている。

完全な姿ではなく抽象的な姿ではあるにしろ、語り継がれているのは事実。

彼ら精霊達はしかしながら気づかない。

この神殿が復活したことにより、湖の一角において、

唖然としている森の民の一族の一員がいる、ということに。



神殿の中にて精霊達によるそんな会話がなされている同時刻。

港町ヘドローグ。

かつてはこの地より【竹細工の村・カマサイト】へと出向いていた行商人もかなりいた。

それがすくなくなってしまったのは、湖に生息する魔獣が年々強くなっていったことと、

そしてまたこのあたり一帯を荒らしまわる盗賊に原因がある。

湖の魔物とも別名呼んでいるそれらの生き物に対しては自然の力の一端でもあることから、

自分達のようなかよわき生き物ができることといえば知能や力をもって対処するのみ。

夜の帳ともいわれている時を告げる鳥、【ナクライト】の声が近くの森より聞こえてくる。

調教し、それぞれの主要たる場所には時をつげる動物などが飼われていることも多々とあるが、

このようなあるいみ小さな港町にはそこまでの余裕はない。

そもそも近くにそれらが生息している自然は多々とある。

そもそもこの場所からそう遠くない場所にあるは巨大なる山脈。

その山脈の果てに今は口にすることすらはばかられる巨悪なる帝国が存在している。

人が住まう地としてはあまりに適切な場所とはいえない。

それでも港町としてこの町が発展していたのは、この地にすまういきとしいけるものたちの努力のたまもの。

先日、風の噂でこのあたりを荒らしまわっていたかの盗賊が壊滅した、という話しをきいた。

それは【カマサイト】よりやってきた村の行商人の言葉により真実だと知れ渡った。

それまで何をしても、街などの自警団などが対処しようとしてもどうにもならなかった盗賊団。

それらがどうして壊滅したのかは到底理解できないが、しかし脅威の一つがなくなったのは事実。

ゆえに、今までは安全上の都合により制限していた立ち入り禁止場所を解除した。

何かが起こっているとは街の巫女談。

そうはいっても巫女とて自然界の意識の流れを一部感じることができるだけなので、

正確に何がおこっているのか、ということまで理解はできない。

それでも停滞していた世界の流れが変わろうとしているということくらいは理解可能。

人々が何が起ころうとしているのかを知ろうとそれぞれに活動を開始していたその矢先。

山の向こうより突如として立ち昇った眩しき光。

山全体が光に包まれるかのような光であったが不思議にも嫌悪感は抱かなかった。

山の向こうにあるは、エレスタド王国のみ。

かの王国で何かが起こった、もしくは何かの実験が失敗したのか。

様々な憶測が飛んでいる最中、次なる現象が先ほどからおこっている。

それも今度は自分達が住まう街と直面している湖の一角で。

時は【ミアジル】を迎えるにあたり、それまで薄暗くなっていたはずの空が突如として光に彩るられた。

家々の窓、そして外にいた人々がみたのは、湖の遥かなる先より立ち昇っている緑色の光の柱。

空を覆い尽くしていた光の螺旋ともいえる様々な色彩をもつ光の筋は、

その光に吸い込まれるようにと集まっているのが嫌でもわかる。


ざわざわ。

「何がおこって……」

「だけど、なんだか奇麗……」

「まさか、帝国が何かしでかしたのか!?」

「しかし、不思議なことにさっきまで暴れていたはずの魔獣が突如としてきえさったぞ!?」

それぞれが疑念を口にする。

光の発生と同時。

空を光の筋が覆い尽くすと同時、それまで大地を闊歩していた様々な魔獣たちが、

突如としてその体全体を淡く発行させつつ、魔硝石のみを残して消え去った。

今までの常識から考えてありえない現象。

さらに気のせいとは言い難いほどに、草木全てがより輝いているようにみえるのはこれいかに。

その現象は街の周囲だけではなく、湖を囲む全ての大地全体に及んでおり、

さらにいえばこの現象は世界全てにおいてゆっくりと広がっている、ということを彼らは知らない。

また、知るよしもない。

世界各地において様々な憶測が飛ぶ最中、やがて空を覆っていた光の帯はゆっくりと、

跡形もなくきえさってゆく。

後にのこるは、何ごともなかったかのごとくの静寂なる空。

まるで夢をみていたかのようなその現象。

人々は知らない。

その現象が意味することを。

…世界を守護する柱の一員である、精霊神が降臨した、というその事実を。

文字通り、世界を担う存在がその時をもってして、この大地に器をもってした具現化した。

というその事実を――



ひとまず連続投稿は次で完了です


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ