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ACT-16 ~緑の疾風~

今回もまたまた話がすすんでおりません・・・

なんか説明ばかりになっているふしがひしひしと・・

しかしそれだけでなぜか20kbを超えたのでひとまず投稿まで

・・・そろそろ精霊王や竜王、ついでに精霊神などといった、

人外ばかりの存在達ばかりがでばってきます、あしからず・・・

前回までのお話し:

ティン達の活躍により捕らわれていた様々な存在達は救いだされ、

伝説ともいわれていた竜王の宮殿、水晶宮へと全員が保護された。

その地においてフェナスは輝きの守護の役目を果たすため特訓することとなり、

そして残されし輝きの王たるレニエルは、竜王クレマティスとともに湖へとでむくことに。

かつてその地にあったという巨大国家のなれの果て。

アダバル湖にて彼らを待つものは?



         WOLD GAME ~緑の疾風~




かつて世界は一度滅んだ、といっても過言ではない。

それから永き年月を得て今の生態系に落ち着いた。

眼下に広がる広大なる湖はかつての文明における跡地のなれの果て。

この地にかつてこの世界を支配していた国があったことを知る存在は今やごくわずか。

「しかしすいません。竜王様。私なんかのためにその御身を使わせてしまいまして……」

空を優雅にすすむうねうねとした一つの影。

そんな影の横には小さな人影と、そしてその頭らしき上にさらに小さな人影らしきものがみてとれる。

「仕方あるまい。輝ける王はまだ完全に覚醒を果たしていない以上、自力で飛ぶことは不可能であろう?」

まだ自らの体に【乗せて】いるレニエルはそこまでの力をもっていない。

もっていないというか目覚めていない。

ゆえに、竜王とよばれしクレマティスのいい分も至極もっとも。

最も、今のクレマティスの体は本来の器、すなわち竜本来の姿となり空に一筋の光として溶け込んでいる。

そんな長い胴体の頭部分の上にちょこん、と座り込みつつも申し訳なさそうにしているレニエルの姿。

「というか率先して自分の体に乗ればいいっていったのはクレマティスなんだから。

  きにしなくてもいいのよ。レニーは」

「…ティンク様…」

確かに自分から申し出たのは事実。

その心情はおそらくは、横にいるこの【御方】には完全にばれているのであろう。

ゆえにこそ自らの心の中を暴露されるのではないかとおもいおもわずつぶやくしかない。

そんなクレマティスやレニエルに対し、

「とりあえず。レニーに一緒にきてもらえるのはこちらとしても助かるし。

  コラム宮のほうは浄化の力で本来の姿にもどったことだし。

  ここも一部を復活させてもそろそろいいかな、とおもってるからね」

いいつつも、そんな優雅に空を泳ぐように飛んでいるクレマティスの横を普通に歩くように、

空を飛んでいるティンの姿。

普通ならばありえない、人が空を大地のごとくに普通に歩くように飛ぶなど、ということは。

最も、ティン・セレスに限ってはその常識にあてはまらないというのを彼らはよく知っている。

「拠点はレニー達の船でいいわよね?」

「というかいいのですか?」

彼女が率先してあまりこの地の生命体にかかわる、というのはいまだかつてあまりなかった。

それゆえのクレマティスの問いかけ。

「あの湖の底に沈めてる神殿を復活させるつもりだからね。

  ついでに森の民達にその場を管理させたら問題ないでしょ?

  もともと、かの地はかつて森の民が管理していた場所でもあるし」

今でこそ湖の底に沈んではいるものの、

その本質から考えてちょうどそこに同じ種族がいる以上、元の管理者達にまかせるのが筋というもの。

人の世からしてみればたかが数千年、されど数千年。

世界における永き時から考えれば確かに短い期間であり、

そもそもかの地を封じたのは大地に住まう存在達がおごらないためでもあったはず。

かの神殿の力もあり、かつての王国は世界を支配しようなどといった大それたことをしでかした。

共存ではなく力による強制力として。

「アダバル湖にはあの子達の影響で力が満ち溢れた存在が産まれてるし、

  魔獣たちもそこそこに強い存在達もいるしね。守りとしては問題ないでしょう?

  それに今のこの世界で森の民達を解き放ったとしても、愚かな人々が危害を加えかねないし」

事実、森の民を手にいれようとかの国が行った非道なる行い。

ゆえに被害者であるはずの彼らを悪者としてみる人間も少なくない。

すでにかの民の数は数えるほどとなってしまっている。

このままでは、この地における緑という緑は加護を失い消滅してしまう。

主に人間にいえることなのだが力あるものを虐げ、排除しようとする。

自分達だけの利益の身を考えて後先を考えない。

その結果におこることに目をむけようとしない。

そういった人間達だけではないのはわかってはいるがそういった人々がいるのも事実。

あまりに人間達が無体をするようならば、この世界にあらたな理を下すこともいとわない。

しかしそれは今ここでティンが二人に説明する必要もない。

「さてと。そろそろ見えてくるかしらね?」

「……ホセ達驚くでしょうね……」

自分が目覚めてこのかた力を扱いきれていなかった。

彼らが率先して自分の目覚めを促そうとしてくれたが誰もが達成しきれなかった。

自分が目覚める前、卵の状態のころからいてくれたものだからこそどう対応していいかわからない。

戸惑いをかくしきれずにぽそりとつぶやくレニエルの心情は肌が触れているがゆえに、

ひしひしとクレマティスの体にと伝わってくる。

元々、三柱たる彼らは繋がっている、といっても過言でない。

ましてやそれが体が密着していればなおさらに。

ゆっくりと空をたゆたいつつも眼下をこらし目的のものを探り出す。

目指すはレニエル達が拠点としていた一隻の船。

【緑の疾風】の要たる本陣。



「頭…否、お嬢達は無事にたどりつけましたかねぇ?」

「我らの力が強く感じられているということはレニエル様が力に目覚められたということでもあろうしな」

先日、フェナスとレニエル、そして身元不明のティン・セレスとなのった少女。

その三名をこの船より送り出し、自分達は湖をただよいつつも待機している。

待機といっても湖を優雅に運航しつつ何か予兆がないか調べているにすぎないが。

「ホセ様。しかし我らの力が強まった、ということはレニエル様が目覚めを迎えられた、

  ということなのでしょうが、ホセ様方ができなかったことをどのようにして目覚められたのでしょう?」

一族の中で年長者であるホセですら王の力を目覚めさせることは不可能であったというのに。

だからこそ疑問に思う。

力ある一族のものがほとんどがかつて王を守るべく命を落とした。

または仲間をたすけるためにその身を世界に還りゆかした。

彼らにとっての死は世界に還ること。

その身は本来ならば大地に還り、次なる命をはぐくむ種となる。

しかしかの国に捕らえられたものはその循環の輪からはぐれていた。

その力とその身を利用され、精神体そのものが蝕まれていたといっても他ならない。

捕らわれていたとおもわしき【力】も先日解放された。

それらは風にまじる力の密度にて理解した。

そしてまた、捕らわれていた水と土の大精霊達も。

大地を通じてその真実を彼らは知っている。

いくら本来あるべき大地より離れたといえど基本彼らは大地の民。

ゆえに大地との結びづきはとても深い。

「考えられる原因のひとつに竜王様の手助けがあったという可能性もありえるがの」

アロハド山脈の頂上の一角に竜王の宮殿、水晶宮クリスタルパレスがある。

そのことをホセ、と呼ばれた薄茶色の髪をした男性は知っている。

老体といわれしこの体にもわかるほどの大地と水の加護の充実。

ここ数百年は決してえられなかったものがそこにある。

数百年にわたり唯々諾々と捕らえられていた精霊王達が解放されたということは、

すなくからずとも竜王自らがかかわっていても不思議ではない。

今の今まで静観していたかの存在がどうして今動いたのかはわからない。

が、何となくではあるがあの少女、ティン・セレスと名乗った存在にかかわっているような気がする。

しかし、【創りし存在】または【創造せし存在】といった意味合いをもつ【ティン】という名。

あのような名をもつ存在などいまだかつてみたことがなかったのも事実。

【力】が使えるのならば世界のその言葉もしっていなければならない。

そのような大それた名をつけるとは思えない。

しかも【セレス】はこの惑星そのものを示す名。

ホセコウ大地を統括している彼だからこそその事実を知っている。

伊達に本体が齢一万年をこえる大樹として生きてはいない。

「ホ…ホセ様!!」

会話をしつつ甲板にて会話をしているそんな最中。

ふとあせったような声が彼らの耳にと聞こえてくる。

ざわざわとざわめく声が次第に甲板上にとひろがってゆく。

それらは全て空をみあげて何かいっており、ふと空を見上げたさきにみえるは、

金色を帯びた一筋の雲。

「あれは……」

その姿を目にし誰ともなくつぶやく声は気のせいではなくかすれている。

森の民であるのを隠し、人の世に紛れて生活していた中で見知っているその姿。

否、森の民の集落でもその姿は知る人ぞ知る神聖なるもの。

体は蛇のように長く、しかしその腹の部分は蜃のようにもみえる存在。

その背にびっしりと生えている鱗はまさに鯉。

そしてその長き体にとある四つの手足とおもわしき先にみえるは鷹の爪。

掌は虎、耳は牛のようであり、そしてその頭は駱駝その先にある角は雄の鹿のように立派なもの。

瞳は兎のごとくに漆黒の粒らな瞳。

竜に九似あり、とは一体誰がいいだしたのかはわからないがまさにいいえて妙。

口辺に長髯をたくわえ、喉下に一部逆鱗のようなものもみてとれる。

まさに伝説ともいわれている聖なる生き物。

遠目で彼らは気づいていないがその手にある指と爪の数は五本。

竜族における位の高さは爪の数に比例しており、五本は最高峰の位置にいる存在を示している。

船室の中にいたものたちも騒ぎに気付きそれぞれ全員が甲板にと出てきている。

みあげた空にみえるは見間違えようのない生き物の姿。

本来ならば滅多と人前に姿を現さないといわれている聖なる存在。

船にのっていたすべてのものが唖然とその場にあるいみ固まってしまうのはしごく当然。

年長者とて竜の姿を拝見したことなど数えるほどしかありえない。

あまりのありえない姿を目の当たりにして彼らは気づかない。

その竜に乗っている存在と、そしてその横にうかぶ一人の少女に。


「とりあえず甲板に降りるとしますか。レニーは風を起こすからそれに乗って降りてね。

  どうもみたところ船乗員の皆は固まってるみたいだし。

  クレマティスが直に乗り付けたりしたらそれも面白…もとい混乱しかねないしね」

……今、絶対ティンク様、面白そう、といいそうになりましたよね?

ティンの言葉に思わず内心二人して同じことを心に思うがしかしそんなことを口にはだせない。

ゆえに。

「あ。はい。わかりました」

「あ、いっとくけど私のことは今までのように呼ぶようにね。

  いきなり口調とかかわったら他の皆が不思議がるでしょうし」

「そもそも、ティンク様がこの地に降臨なさってきていることがすごいことだとおもうのですが……」

ティンの台詞に至極もっともな意見をいっているクレマティス。

そうこう話している最中にもゆっくりと彼らは湖に浮かぶ船にと近づいていっている。

「私からしてみればたかが数千年くらいでなんでまた同じような過ちをしてるのか。

  といいたいけどね。前回も強くでなかったがゆえに被害は大きくなったわよね?」

「…うっ」

そういわれるとそれが事実なのでクレマティスとしては言葉につまる。

しかし強大なる力の干渉は逆をいえばそれによりより大きな歪みもまた発生する。

歪みは魔獣を生み出す元ともなる。

歪みが大きければ大きいほどより力のある魔獣が産まれ、

世界にいきるものたちを苦しめる結果にもなりかねない。

だからこそ彼ら精霊王や竜王といった存在達は率先して物事にあまりかかわりをもたないようにしている。

…もっとも、そのせいで世界が疲弊したりしている以上、臨機応変というものをきかせなければならない。

というティンの言い分も至極もっもであろう。

「さて、と」

ふわり。

そうこうしているうちにと完全に視界にはっきりとみえてくる湖にとうかぶ船の姿。

その姿を確認し、そのまますっとかるく右手をふるティン。

それと同時、ちょっとした風がレニエルの体の周りを包み込む。

「風のコントロール方法は判るわね。レニー。じゃ、いきますか」

「では、私は姿を人型にしますね」

そういうが否や長きその体が一瞬にしてかききえる。

それこそまるでその場にはじめから何もなかったかのごとくに。

同時にその場に一つの人影が出現する。

長き黒髪を背後でかるく一つたばねにしてくくった一人の青年。

服装はゆったりしたひざ下まである布地にさらにその下にゆったりしたズボンのようなものを履いている。

羽織っているのは前の部分を黒い紐でとめる形式の黒いローブ。

「あいかわらず外にでるときはその格好?」

以前にであったとあるエルフの姿をもとにしたこの姿。

それを知っているがゆえにおもわず呆れ半分でといかけるそんなティンに対し、

「明確な姿を瞑想できるほうがいいですからね。

  何しろ私に初めていろいろと教えてくれた人、でしたから」

もっともそのいろいろと教えた、というのが

普通に聖獣として生きてゆくのには必要のない知識だったりしたのだが。

主にいたずらとか、遊びとか、はたまた執務のさぼり方など……

そのせいでクレマティスの配下の存在達はしばしそれに彼がはまった時期はかなり泣き目にあった。

今でこそかつてのように頻繁ではないにしろ、しかし正気を中和するために聖殿から離れていたことを考えると、

どちらも似通ったもの、としかいいようがない。

そんな会話をかわしつつも、

「まあ、いいけど。とりあえずいくわね」

いってティンがかるく手をふると同時、レニエルの体を覆っていた風が瞬く間に強くなり、

そのままそれはまるで渦巻のごとくに、小さなそれこそ竜巻が発生したかのごとく、

そのままその竜巻のような螺旋を描いた風は眼下にみえる湖にうかぶ一隻の船にむけてつきすすむ。


「「若!?」」

「「若様!?」」

その姿に気づいた甲板にいた一部のものがおもわず声をあげる。

ありえない姿をみて唖然としたり、もしくは固まっていた人々。

彼らが次に目にしたのは風にまるで運ばれてくるかのごとく、

ゆっくりとおりたってくる彼らからしてみれば何よりも優先して守るべき存在ものであり、

そしてまた何よりも敬う対象である一人の少年の姿。

名前をいわないのはその名に込められた意味をしっているものがいないともかぎらない。

ゆえに彼らはレニエルのことを【若】もしくは【坊っちゃん】などと呼んでいる。

もっとも坊っちゃんなどという呼び方をするものはごくごく片手で数えるほどしか存在しないが。

「ホセ!それに皆!」

さほど長い間離れていたわけではないがそれでもやはり姿をみるとほっとする。

何しろ始めて船から地上、さらには旅というものを経験した。

いくら日数的にさほど、それこそ一廻りも経過していないが。

見知った仲間達の姿をみてほっとするレニエルの気持ちもわからなくはない。

そもそも彼は目覚めたときから常に船上にて過ごしていた。

ましてや仲間達と離れたことなどこのたびティン達とともに陸に上がったのが初めて。

だからこそほっとして自分の保護者の一人でもあるホセやそれ以外の姿をみてほっとする。

彼の精神からしてみればまだ人でいうところの子供でしかない。

表面にはださないが、彼とていまだに甘えたい盛り。

もっとも立場的にそれは許されないとわかっているので絶対に表面には微塵にもだすことはない。

「若。ご無事でしたか。…フェナスは?」

「ああ。フェナスは……」

ホセ、とよばれた男性がフェナスがレニエルの傍にいないことに気付き怪訝そうに問いかける。

が。

「輝きの守護ならば我の宮殿にて今は特訓中だ。久しいな。ホセコウエ」

そんなレニエルの言葉をさえぎるかのようにゆっくりと甲板に降り立ちつつも、

変わりに淡々とこたえるクレマティス。

今の彼の姿はどこからどうみても人間でいうところの二十歳前後の黒髪の青年にしかみえない。

気配もほぼ抑えており、まず彼が竜だということに気づかれることはない。

最も、世界の守護をうけている精霊達などといった存在にかかわりのある存在ならば話しは別だが。

いきなり名…しかも真名を呼ばれおもわずそちらを凝視するホセ、とよばれた男性。

ざっとみたところ歳のころは五十代、もしくはもう少し上といった感じをうける。

「青竜様!?」

ざわり。

ホセとよばれていた人物がその名を呼ぶと同時、その場にいたすべてのものに動揺が走る。

もっとも、当然のことながらレニエルはその一人には含まれていない。

「なぜ聖獣ともいわれております、竜王クレマティス様、御自らがここに?

  ……まさかまた政務や執務をさぼってレニエル様に会いにこられたとかでは……」

おもわず素でさらっと本音をもらしつつもそうといかえすホセはおそらく間違っていない。

何しろ彼の記憶の中のクレマティスがそうなのである。

かつて、まだレニエルが前のレニエル。

すなわち、輝ける王がまだ先代の時代、彼はよく暇だからといってさぼってやってきていた。

そのことをホセはよく知っている。

おかげで彼をさがしにきた部下が彼の本体のもとを訪ね、どこにいるかしらないか。

ときかれたのは何も十…否、百やそこらの数ではない。

「まあ一概に否定はせん」

しないんだ。

おもわずそんな青年、竜王とよばれし彼の台詞にその場にいたほとんどのものが心の中で突っ込みをいれる。

さすがに畏れ多くそれを口にはだすことはないが。

「私は洞窟にて瘴気の中和と浄化を行っていたのだがな。

  そこにまだ若き新たななる王と…」

ティンク様が、といいかけた彼がふと視線を感じみてみれば、

ティンが静かにかるく口元に手をあてているのがみてとれる。

ゆえに、

「かなり未熟なる輝きの守護の若者がやってきたのでな。

  瘴気のほうはコラム宮にあるいみ幽閉?されていたステラ殿とクーク殿が解放というか、

  ようやく自らの自縛を説き放って復帰したことで我の手をかけずにすむようになったことであるし。

  ああ、ついでといっては何だが、あの地に捕らえられていた存在達は、

  我の宮殿にて一次的に保護しているがゆえに安心していいぞ?」

かるく以前にあってからこのかた二百年近く経過しているというのに彼は変わらない。

否、それは自分にもいえるのかもしれない。

かつてとかわらずにいともあっけらかんと、しかし何やら重要なことをさらっというそんな彼に対し、

「…あいかわらずさらっと重要なことをいわれますな。あなた様は。

  しかしやはり水の精霊王様と土の精霊王様が解放されたのですか。

  では、我らが若…否、輝ける王の力の解放を促してくださったのも貴方様ですか?

  我らは感じております。…遅くなりました。我らが主。輝ける王レニエル様。

  覚醒、おめでとうございます。我らが導けずに思案しておりましたが。

  柱の一角の目覚め、心よりお喜び申し上げます」

いいつつも、そのばにすっと膝をつく。

そんなホセに準ずるかのごとくにその場にいた甲板にいた人々。

すなわち船にのっていた全ての乗組員、森の民達もまたこぞってそのばに膝をつく。

近くにレニエルが戻ってきたからこそ彼らはより深く確信をもてる。

レニエルが近くにいるだけでも本来あるべきはずの力が満ちてくる。

それこそレニエルが【王】の力に目覚めた証。

森の民…否、この地上における全ての大自然を統括する力に目覚めた証。

その大自然の中には当然草木といったものも含まれる。

そんな彼らの姿をみて一瞬戸惑いの表情を浮かべるものの、

すぐにもちなおし、

「皆のもの、今まで苦労をかけました。しかしまだまだ僕…いえ、私はまだ未熟。

  力の覚醒もまだ完全ではありません。ですがこれまで皆に苦労をかけていたのは事実です。

  力のない私をまもるためにどれだけの犠牲があったのか、私はそれを忘れません。

  これからも未熟な私ですが何とぞ力添えのほどをよろしくおねがいいたします」

皆との距離が今まで以上に開いてしまったようなさみしい焦燥感。

これまでも大切にされてきていたという自覚はあったが、

力に目覚めたがゆえにわかってしまう。

皆の自分にかけている期待がどれほど大きなものか、ということが。

おそらくは、これからは今までのように普通に接してもらうことはできないのだろう。

彼が望めばそれは可能かもしれないが、しかし彼にはやらなければならないことがある。

すなわち、二百年近く不在であった輝ける王としての役割としての責務。

「あ~。まあ卵からなかなか孵れなかったのはレニーのせいじゃないとおもうわよ。

  というかそもそも実力行使しなかったあの子達がわるいわけで。

  四精霊達が間接的に消えたことであなたにとどくはずの力もまた少なくなってたはずだし。

  というか卵の状態で無意識に大地の自然を守っていたがゆえに孵るのが遅れたわけだとおもうし」

でなければこの大地の緑という緑はほとんど朽ち果てている。

ぽんっと内心かなり緊張しつつ言葉を発しているレニエルをみこし、

その頭をなでつつもかるく何やらさらっとこれまたかなり重要なことをいっているティン。

「というか。ティス?さすがにまあ百年くらいは大目にみたとして。

  百年以上経過した時点でコラムに接触はからなかったの?

  地上における召喚は三柱そろわないと無理だけど。精神世界では問題ないでしょうに。

  スベやランに手伝ってもらえばこの地の瘴気もここまでたまらなかったはずだけど?」

ぽんぽんとレニエルの頭をなでつつも、気になっていたことをこれまたさらっとといかける。

「「……それについては我らから説明いたします」」

『なっ!?』

突如としてきこえてきた第三者の声。

正確にいうなれば振ってわいたようなどちらかといえば直接響いてくるようなその声。

ゆえに驚愕した船員達がこぞって驚きの声をあげるが、

「早かったですね。ランメル殿、スベルグ殿」

そこにいる黒き髪を身長よりも長くのばし、黒いワンピースのようなものを着こなしている、

しかもその姿が半透き通り、ふわふわとその場にうかんでいる一人の女性。

そんな全てが黒、といっても過言でないような女性の傍らに浮かんでいるのは、

どちらかといえば全てが白、といっても過言でなく容姿的には同じなれど、

その色のみがことなるこちらもまた半透明にてふわふわとその場にうかんでいる一人の女性。

先ほどまでは確かにいなかったはずの透き通った女性が二人、

今はたしかに甲板上の少し上の空間にふわり、ふわりと浮いている。

しかし森の民である船員達が驚愕したのはそこではない。

さらっと今いった、竜王が述べた名。

その名をもつものはこの世界においてたった一つの存在しかありえない。

『ご挨拶が遅れました。ティンク様』

『しかしティンク様も相変わらずですね。我々に気配を悟らせぬようになさってましたし』

二人の言い分も至極もっとも。

それゆえに、

「ああ。ですよねぇ。それは私も同感です。普通驚きますよねぇ」

しみじみと同意するようにつぶやいているクレマティス。

「ティス・スベ・ラン?そもそもそれだと意味がないでしょう?

  まあいいわ。あなた達もきたのなら話しははやいわ。

  この湖の底の宮殿をとりあえず復活させるから。

  あとはステラとクークの力で簡易結界くらいはできるでしょう?」

ちなみに、彼女、ティンが彼らを愛称で呼ぶときはすなくからず機嫌が悪いということ。

それらを彼らは身をもって知っている。

ゆえに、愛称で名を呼ばれびくり、と体ごと精神体を震わす彼らの気持ちもまあ判らなくもない。

…もっとも、それはティンの正体を知っていれば、という注釈はつくが。

「というわけで。レニー?この地に眠るかの地の感知はできるわよね?」

「は、はいっ!」

ティンの目が笑っていない。

というか逆らったらあとが怖い。

ゆえにほぼ条件反射でおもわず反射的に答えるレニエルはおそらく間違っていない。

最もまったく話しについていけず、なおかつ状況についていけない船員達はほぼおいてけぼりをくらっている。

説明を求めようにも相手は伝説級ともいえる光と闇の大精霊。

さらには目の前の青年は竜王クレマティス。

ついでに自分達の主たるレニエルもまた力に目覚めている以上、

今までのように気軽に話しかけられるような存在ではなくなっている。

ゆえに誰に説明をもとめることもできずにただただ彼らはおいてけぼりをくらったまま、

しばしそのばにて膝をついたまま硬直するより術がない。

「さてと。オンファスとバストネスにもステラ達同様にしっかりとお話し(・・・)しないとね」

何やらぽそり、と聞き返したいが聞いたらこわい、と本能的に感じる台詞をいっているティン。

さらにいえば今、ティンがつぶやいたのは火と風の精霊王の真名。

今でこそティンが【誰】なのかわかるがゆえにこわくて突っ込みなどできはしないが、

その呟きが他の者、例をあげればこの場にいる船員達にでも届けばされに混乱が広がることは必然。

ゆえに聞こえなかった、もしくは聞かなかったことにしてあえてスルーすることにし、

「では、とりあえず感知にはいるために【孔雀マラカイト】状態になりますね」

孔雀マラカイト状態とは輝ける王としての力の一部を解放した状態のことを指し示す。

その状態になると常にその体があわく緑色に光り輝き、

大地の加護ともいえるマラカイト…すなわち、孔雀石のような輝きを醸し出す。

力の加減によりその輝きは当然強弱はあるにしろ、常に体全体が緑色に覆われる。

大地の加護を授かっているといわれている石にはいくつかあるが、

孔雀石もまたその一つ。

最も、一番大地の恩恵をうけているといわれているのは、瑠璃とよばれしラピス・ラズリ。

ゆえにその名のついた力もまた輝ける王は所有している。

輝ける王はいわばこの世界の自然の守護者。

竜王が大気中で加護を施す役目を持ち、輝ける王は【土】に関する加護を持っている。

この事実はこの世界にいきるほとんどのものには知られてはいない。

だからこそなのか過ぎたる力は畏れを抱かせ、弱い種族はその力を排除しようとしてしまう。

その結果が自分達の首をしめることに繋がる、とはゆめにもおもわずに。

目先の利益のみを優先してしまい後のことまでは考えない。

知能あるものが陥る典型的な事例。

レニエルがそういいつつも精神を集中させる。

刹那、レニエルの体全体が淡い緑色の光にと包まれる。

それと同時にレニエルにつたわってくる周囲の様子。

意識を集中させれば湖の奥深くにより強い力が集まっている箇所があるのが手にとるようにと判る。

この状態になることにてよりこの世界との繋がりが深くなり特殊な波動などを感知することが可能となる。

また、意識すれば他者の心理状態までをも視通すことが可能。

「レニー。道をつくるのはできるわよね?」

「はい」

先ほどまでかたまっていた船員達はレニエルが力を利用したことにより、

感極まり言葉もでなくなっているものが大多数。

彼らはいつの日かレニエルが【王】として目覚めるのをまっていた。

ゆえにこそその感激もひとしお。

最も今この場にいるのはレニエルだけでなく、

伝説ともいわれている聖なる竜王たるクレマティスもいることから、

思考が追いつかず固まっているものもいるにはいる。

もしもここに第三者、すなわちかかわりがないものがいるのならば、

思考が追いつかないのが当然、としごく突っ込みがはいるであろう。

そんな彼らの思いとは関係なしに、緑の光につつまれたレニエルににこやかに何やらいっているティン。

本来ならばティンが示してもいいのだが、レニエルに示させたほうが彼のためにもなる。

それゆえの意見。

「しかし、この乗り物全体があわく光っているのはいったい…?」

「ああ。あなたはずっとあの洞窟の中にいたから知らなかったのね。

  この舟はこの子が卵から孵った場所でもあるから、繋がりができてるんでしょ。

  そもそも、この舟の材料となった元の木々もレニーの配下のようなものだしね」

当人が意識していなかったとはいえ【王】の力は絶大。

ゆえに卵のころからこの船内にて王がそだったこの船は、

そこいらの船とはかなり質そのものが変化している。

それはこれまでこの船が運航不可能まで壊れたことがないことにも起因している。

「なるほど。私があの地にいてからいろいろとあったのですね」

「…そのことはたぶんあなたの執務的な報告にあがってたとおもうけど?」

しみじみというクレマティスだがそれにたいしティンはといえばあきれた表情をうかべつつも、

淡々と冷めた視線で彼をみつつも問いかける。

どうもこのクレマティスは昔からそういった執務的なことをおざなりにすることがある。

昔はきちんと執務的なことをもこなしていたというのに。

かえすがえすも悪い癖をつけてしまったものだ、とつくづくティンとしても思ってしまうのは仕方がない。

「……と、とりあえず、私はこの船を道にそわせてすすませますね」

話しそらしたわね。

おもわずじと目でみるティンに対し、まるでとってつけたようにいいだすクレマティス。

その様はまるで子供が悪戯をみつかり、あわてて何かをとりつくろっているかのよう。

竜王、竜神とも呼ばれる彼のこのような姿は、彼をあがめる存在達からしてみれば信じられないもの。

みれば湖の表面上に淡く光り輝く緑の筋ができあがっている。

それは表面上に沿うように発生しており、どこかに誘っているようにも垣間見える。

「……今度全員そろわせてきちんとした教育のし直しが必要なのかしら……」

びくっ。

ぽそっとおもわず素でつぶやいたティンの言葉をききとがめ、

おもいっきり体を震わせて反応するクレマティスとレニエル。

レニエルとて力に目覚めた以上、それがとてつもないことだとは理解している。

その言葉に含まれる真意というか本質はともかくとして。

びくり、と反応してしまうのは本質にきざまれた本能ゆえの行動。

王は代々一人であり、王の魂は永遠不滅。

その生涯をとじるときにある植物にと変化し、

その植物から種子が産まれ、それは聖なる卵とよばれその卵より王は孵る。

その時々の姿に変化はあるものの、

周囲の状況にあわせ孵ったときの姿は千差万別。

今のレニエルの場合は場所が船上であったこともあり、普通の苗木のような形で卵から孵っている。

「さて、と。とりあえず目的の中心地にたどり着くまでに。

  お腹もすいてきたし。何かつくるとしますか。あ、厨房かりますね~」

すでに勝手知ったる何とやら。

伊達にしばしこの船の中で厨房係りとして過ごしていたわけではない。

いまだに固まる人々をそのままに、そのまま船内にとはいってゆくティン。


…後にのこされたは、いまだに現状が把握しきれない人々と、

どこまで説明していいのか戸惑いをかくしきれないレニエルとクレマティスの姿のみ――



この続にて、ようやく湖の底にある神殿にむかい、残りの二体の精霊王の救出?です

次回で精霊神コラムの登場までいければいいなぁ・・・(切実に

次回はいつになるかは不明です

よろしければもうすこしお付き合いいただければ幸いです・・・

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