ACT-15 ~聖なる山にて~
か~~~なり時間が空いたという自覚あり。
なんかぱたっと打ち込み気力がわかなくなってしまい今日にいたってます・・
なんか疲れがとれにくくなってるのか、はたまた12時間勤務以上がつづいてるせいか・・・
ともあれ時間があきました。
…今回ははなしはほとんどすすんでいません・・・
ちなみに今回は18KBです
ともあれとりあえず打ち込み完了できた範囲までいくのです
アロハド山脈。
別名、聖なる山。
その呼び名は今ではもはや忘れられて久しい。
世界より精霊王の加護が急激に失われ、聖なるものに属する名も場所も、
人々から忘れ去られていった。
とはいえ限られた寿命でしかない生命体からみれば、という注釈がつく。
それ以外の存在。
人はよくて百年、能力を駆使してもよくて数百年。
しかしそれらの感覚は限られた器ででしかいきられないものたちからみた場合のみ。
それ以外の存在。
精霊、妖精、はては神獣ともいわれている存在達。
そしてまた、数千年、という寿命をもつ存在達からしてみれば、
それらの世上はまったくもって関係はない。
そしてまた……
W・G 伝承の真実 ~ACT15・聖なる山にて~
「……ここっていったい……」
その呟きは誰のものなのか。
気がつけば、何かどこかの建物らしき中。
先刻まで薄暗く、いつ死が訪れるか、もしくは実験材料にさせられるか。
日々に希望の光すらはいらない日々。
しかし、突如として自分達を実験体として扱っていた存在達がいきなり炎に包まれ、
そしてまた、きがつけば淡い光にとつつまれた。
そしてきづけばふかふかなおそらく寝具らしきものに自分達は寝かされている。
窓からみえるは、うっすらとみえる真っ白い何か。
その視界に移り込むはみたことのない景色。
判るはずもない。
今、彼らがいる場所が雲よりも高い位置にあり、白い何かにみえるのは、
自分達がかつて捕らえられる前には目にしていた空に浮かぶ雲そのものである、ということは。
そもそも、空を飛ぶ能力をもつものでなければ、上空からの景色をいきなりみせられたとしても、
自分達がよもや空の上にいる、などと一体誰が想像できようか。
一つだけわかるのは、暖かな何か安心できる空気にこの場が包まれている、ということのみ。
それはこの場にいる全ての存在にいえること。
一部の動くことすらままならず、また休養が必要なものたちは、
それぞれに担当する係りのものがつきっきりで看病している。
そもそも、ティンの力により解放された精霊王達。
彼らが目覚めたことにより、精霊達の力もまた活性化している。
ゆえに、王達の命により、精霊達がこの場に集っている、といっても過言ではない。
茫然とするは、部屋の中にいる存在達だけでなく、甲板にいるものたちとて同じこと。
捕らわれの神殿より脱出したまでは覚えている。
そして空にうかんでいた伝説の中で、またお伽噺の中で誰もがしっている船の姿も。
何がおこったのか理解不能。
されどこんな乗り物、もしくは建物など彼らはみたこともきいたことすらない。
そもそも、今現在自分達がたっているその場すらあわく光り輝いているのはこれいかに。
遠くにみえる緑や青、そして動いている白い何か。
それらが、地上の森や海、もしくは湖である、ということにきづくものはまずいない。
誰もが唖然とし、ただただ茫然とするしかないそんな中。
『これより、水晶宮の結界内に入ります。
皆々様にはしばし船旅をご了解ください』
突如として鳴り響く、澄み切った声。
その声はどちらかといえば聞こえてきた、というよりは脳内、もしくは精神に直接語りかけてくるかのごとく。
水晶宮。
その名もまたお伽噺や伝説の中で誰もが一度はきいたことのある名。
精霊王が鎮座している神殿であり、
また、世界の中心たる天空宮に通じる道がある、といわれている場所。
いきなりそのようなことを伝えられても、この場に保護された存在達からすれば理解不能。
されどそんな彼らの思惑はいざしらず、彼らののる【箱舟】が静かにゆっくりと向かうは
アロハド山脈の頂上に位置する、聖なる神殿、【水晶宮】――
グリーナ大陸をほぼ占めているといっても過言でないアロハド山脈。
その山脈は雲よりも高く、一番高い場所は天空に通じている、とまでいわれている。
常に一部の山頂には雲がかかっており、
その頂上には万年雪らしきものがつもっているのうに傍目にはみえる。
しかし、実際にそこまでたどり着いたものはいまだにいない、とすらいわれている。
事実、そこに至るまでの道のりははてしなく険しく、
空を飛ぶ生物に乗っていったとしても、雲に突入すると同時、
乱気流に巻き込まれ、雲を抜けることすら不可能、とまでいわれている。
常に光り輝いているようにみえるその山頂にある、といわれているのが伝説の神殿。
水晶宮。
そこにたどり着いた生物、はては乗り物などあるはずもなく…
しかし、今ここにそんな場所にゆっくりと静かに近づいてゆく船のような形をした物体が一つ。
きらきらと太陽の光に反射し、それこそ光の物体ともいえるそれは、
ゆっくりと雲の合間をすすんでゆき、銀色に輝いているようにみえる建物らしき場所へと近づいてゆく。
地上では、雪、と認識されているそれは実は雪ではなく、むき出しの水晶の原石。
それらは周囲の雲と混ぜ合わさり天空の第二の大地、と化している。
それらは決して地上にくらす存在達からしてみれば信じることのできない現実。
最も、認められたものでなければこの雲の大地に足を踏み出すどころか、
瞬く間にと地上へと落される。
最も、ここにくることができるのは認められたものでしかありえないのでまずそんなことはおこりえないが。
ざわざわざわ。
そんな雲の大地の上はいつもは静まり返っているものの、
今現在は無数のざわめきに満ち溢れている。
「あの…王?」
「なんだ?」
ゆっくりと近づいてくる箱舟を迎えるために神殿の入口に続くまでずらりと並ぶ人影。
そんな人影の先頭に漆黒の髪を長く伸ばしたほかの人影とくらべ各段に雰囲気の違う男性が一人。
そんな彼の傍らで恐る恐る語りかけるは紅き髪の男性。
「ティンク様が自らお出ましになられたということは、我々にもお咎めがあるのでしょうか……」
よもや自分達が【主】と仰ぐ存在が自ら乗り出してくるとは夢にもおもわなかった。
【王】が地上よりもどり、自分達将神を呼びだし聞かされた真実には驚きを隠せなかった。
そもそも、よもや【主】がこの世界に降り立つなど。
「あるとすればそれは我とて連帯責任だな。
…とりあえず水王ステラ殿と、土王クーク殿は解放に至ったわけだが。
かの御方が出向いた以上、火王バストネス殿と風王オンファス殿は自力で戒めを説いてほしいものだが……」
しかしおそらくはそれは無理なのであろう。
ざっと確認したところ、かの御方はあの湖付近には自らの【力】の波動がいきわたらないようにしているっぽい。
「我らが王。クレマティス様。あなた様、竜王自らが出向いていかれる、という案は……」
「却下だな。下手にうごいてあの御方の機嫌を損ねたくはない。
まずお前たち、四将には先日も説明したとおり。
水将と土将はステラ殿とクーク殿の補佐をかねて地上の見回りと安定を。
風将と火将はおそらくあの御方がバストネス殿とオンファス殿を解放するであろうから、
解放されてすぐに【力】がいきわたるように道を確保しておくように。
…と、船が到着したな」
先日、永きにわたる王の不在からようやく王が帰還したここ水晶宮。
その主たる竜王クレマティスが真っ先にしたことは、彼の直属の部下である四将を呼び寄せること。
そんな王の口から語られたのは、竜王の眷属たる彼らにとっては信じられない出来事。
この世界を創りし、彼らが尊敬し畏怖してやまない【世界神セレスタイン】の降臨。
竜王、とよばれしクレマティスとてその目にするまで信じられなかった。
そもそも、かの洞窟の中で目にしたそのときの衝撃は計り知れない。
衝撃が大きすぎてあるいみ冷静になれた、といっても過言でない。
そもそも、人間達が精霊神コランダムの神殿を悪用に走ったのが全ての原因。
あの場でなければいくら精霊王達とて唯唯諾諾と捕らわれたままになってはいなかったであろう。
光の属性が強い場所であればあるほどそれにともなう闇もまた濃くなる。
王が二人、かの地に捕らわれていたからこそあるいみ世界全てが闇にまで包まれなかった。
ともいえるのであるが。
しかしそれは結果論。
かの御方が降臨してきた以上、そんなたわごとですまされる出来事ではおさまらなくなっている。
「……あの御方の考えは我らには計りかねるからな……」
この地に幽閉されていた存在達を連れてくると連絡があったときにも驚いたが。
たしかにこの地より安全な場所はない。
しかし、悠久の時からみても、普通の存在をこの地に呼び寄せたことは一度たりとてない。
が、かの御方がそのように決断した以上、世界にあらたな【何か】の変化があるのであろう。
もしくはあらたな【理】が設定されるのか。
様々な結果に対応すべく、考えうる対策をしておくのが役割を課せられた存在の役目。
「おそらくかの御方は【彼ら】をこの地に降ろした後、そのままアダバル湖に出向かれるであろう。
我もかの御方に同行するがゆえ、あとのことはまかせたぞ」
『おうせのままに。我らが王よ』
クレマティスの声をうけ、ざっとそのばにひざまずく数十以上の人影。
彼らは今でこそ人型をとっているものの、彼らの本質は竜。
人型をとっているのは今からこの場にやってくるであろう存在に対しての対策にすぎない。
かの地に捕らわれていたのは何も人族だけではないにしろ、
それでも竜の姿のままでは混乱させてはいけない、ということから彼らは人型をとっている。
最もその気配は竜のそれであり、みるものがみればすぐにわかるのであるが。
そもそもこの地は天空宮、すなわち天上へとつづく門への入口。
聖なる力に満ち溢れたこの地に滞在する以上、その魂もまた浄化されてゆく。
永きにわたる幽閉生活の中で魂すらも穢された存在達を本来の姿にもどす。
それを目的としている以上、たしかにこの地は養生の場として申し分がない。
…が、脆弱な人の魂がこの地の聖なる気に耐えられるかどうか、という問題があるにしろ。
あの地に捕らえられていたのは少なからず特殊なる力をもった存在達のみ。
だからこそこの地を養生の場にと選んだのであろう。
それがクレマティスの考え。
最も、そんな彼の考えはあるいみ正解であり、また間違ってもいるのだが。
真意を聞かされていない以上、その事実を彼がしるはずもない……
「フェナスさん?どうかしたんですか?」
何やら茫然、といった雰囲気をかもしだしているフェナスにきょとん、としてといかける。
「ど…どうかした、ではないですっ!ここってなんなんですかぁぁっ!!」
そんなティンに思わず叫び返すフェナスはおそらく心情的には間違っていないのであろう。
それでなくても茫然としていた。
空にうかんだ箱舟。
それにいきなり乗せられたのはまだしも。
すくなくともかの船にのるのは二度目。
洞窟を抜ける際にも驚かされた。
よもや空を飛ぶそれこそ伝説の船に乗ることになるなどおもってもいなかった。
しかも強制的に。
捕らえられていた仲間や、他にもとらえられていた存在達をたすけだした。
助けだしたはいいものの、彼らの保護をどうするかまでは考えていなかった。
大人数で動くにはどうしても目立つ。
かといってほとんどのものが衰弱している現状においてたしかにティンの召喚した船に乗せてもらえたのは幸運といえば幸運。
が、しかし、伝説級の乗り物をいともあっさりと召喚する目の前の少女。
ティン・セレスとなのっているこの少女の正体がとてもきにかかる。
そもそも、彼女の横にいたのは気配からして土と水をそれぞれにすべる精霊王。
そんな彼らとて【ティン・セレス】にたいし敬意を示していた。
そしてまた、守るべき存在である、輝きの王たるレニエルも。
船の中ではひたすらに同胞達の介抱にとあたっていた。
それはレニエルとて同じこと。
あまりの忙しさに考えることを放棄していたといっても過言ではない。
目の前に広がるはどこまでもつづく真っ白いもふもふとした感じの大地。
これが本当の大地でないのは【森の民】の直感として理解できる。
気づけば【船】はどこかにたどり着き、
見たこともないしかもあからさまに人でも、ましてや地上では感じたことのない気をもつ存在達。
人の姿をしていてもその本質は人ではない存在達。
その中で采配をとるは、先日出会った聖なる竜。
ゆえにこそ理解せざるを得ない。
かの存在を王、と呼んでいる目の前の人々は、竜の化身。
それこそお伽噺の物語にしかでてこない竜族がどうしてこうして自分達を出迎えるため、
ましては人型をとっているのか理解不能。
そもそも彼女とであってこのかた理解不能な事が多すぎる。
あるいみ同族達の介抱を彼らに託したがゆえにようやく我に戻れたといっても過言ではない。
そんな彼女…フェナスの何ともいえない声が響き渡る。
「フェナス。叫ばないでください。どうみてもここは水晶宮、でしかないでしょう?」
そんな彼女に対しかるく首をかしげて話しかけるレニエル。
【ティン・セレス】の【存在の在り方】を理解した以上、レニエルからしてみればこれはあるいみ想定内。
そもそも、かの存在がかかわった以上、何がおこっても不思議ではない。
しかし、その正体を自分からフェナスに話していいものかどうか。
それがわからない。
何となくではあるがまだ話さないほうがいいような気がするゆえに説明はしていないが。
本能的に感じる直感に間違いはない。
柱の一つたる【輝ける王】だからこそその直感は何よりも大切だと力に目覚めた今は判る(・・)。
「レニーのいうとおり。ここは水晶宮よ。
とりあえず、捕らえられていた存在達はここでしばし魂の浄化を図ってもらうことになったから」
捕らえられていた存在達はいきなりの出来事にいまだについていけずにほとんどが放心状態。
もっともこの現状できちんと正確に現状を把握できればそれはそれですごいとしかいいようがない。
「クレマティス。とりあえずしばらくは彼らの保護はあなた達にまかせたからね。
あと、クークとステラに命じて他の地に捕らえられているものたちもここによこすようにしてるから」
幽閉している地が大地の一部である以上、土の精霊王と水の精霊王。
彼らにできないことはない。
大気中には水分の元となる元素が含まれている。
すなわち、水の精霊王の子供たる存在達が世界各所に存在しているといっても過言でない。
そしてまた、大地にたずさわる全てもまた土の精霊王の管轄内。
この惑星上における大地全てを土の精霊王たるクークは統括、管理している。
水は命の源、といっても過言でない。
この地にいきるほとんどの生命体は水なくしてはいきてはいけない。
もっとも、水なくしてもいきていける生命体もいるにはいるが。
一人、あるいみパニックになっているフェナスをさらっと無視し、
その場でひざまづいている竜王クレマティスにと何やらいっているティン。
他の竜族達はといえば目の前にいる少女が【誰】なのか聞かされているがゆえに恐縮し固まっている。
「かしこまりました。それでティンク様。これより湖の神殿にむかわれるのですか?」
ひざまづき、その左手をまっすぐのばし、右手を胸の前にもっていきつつもといかける。
クレマティスの左手は水晶の床に触れており、その姿は水晶に反射し映り込む。
しかし、目の前にいるはずのティンの姿は足元の水晶には映り込んではいない。
ティンが意識しない限り、その姿の痕跡はどこにものこらない。
そのようにこの世界ではなっている。
そういった存在である、と竜族たるクレマティス達は理解しているが、
しかしそれ以外のもの、すなわちティンとともにこの場にやってきたフェナスからしてみれば、
姿がうつっていないのにきづき驚愕を隠しきれない。
何ともおもわなかったが、今の今まで
彼女の【影】をみたことがなかったことにいまさらながらに気づかされる。
「オンファスとバストネスのあの子達を解放したら柱にてコランダムを呼びだすから。
クレマティスもそのような心づもりでいて」
今、この場にいるのは、ティンとクレマティス。
そしてレニエルとフェナス、そして竜族とおもわしきものたちが数名。
四人以外のものたちは、その場に膝をつき、上半身をかるくまっすぐのばし、
それぞれが腕を胸の前で交差させているのがみてとれる。
それが彼ら竜族の敬意の表し方なのであるが、そのことはあまり知られてはいない。
「コランダム様を呼びだされるのですか?」
それまでだまっていたレニエルがそんなティンの言葉に少しばかり首をかしげつつ、
それでいて恐る恐るといった雰囲気でティンにと問いかけてくる。
そんなレニエルに対し、
「そもそもこうなった原因はあの四人だけの問題ではないしね。
コランダムと一緒になればこの地の修正は簡単でしょ?
レニー。あなたの継承の儀もあの子以外にこの地でできるものは残ってないみたいだし」
継承の儀。
輝ける王に必要なすべての能力の解放の儀式。
本来ならば、輝ける王の後継者にその力をたくすべく森の民が存在している。
しかし、とある一部の人間の暴走により、その儀式をおこなうべく森の民は今は存在していない。
フェナスはあくまでも【守護者】。
水は大地を潤し、大地は命をはぐくませる。
炎は命の循環を促し、そして大地へともどり、炎の熱はやがて水へと還りゆく。
輝ける王にはそれらの能力も備わっている。
ゆえに、精霊王達とならぶ、世界の【柱】としてこの世界に存在している。
それはこの世界の【絶対的な理】。
「僕のようなものにわざわざ精霊神様のお手をわずらわせてもいいのでしょうか…?
それでなくてもセレス様のお手を煩わせてしまったというのに……」
自分はまだ力に目覚めたばかり。
それでなくても仲間をたすけだすのに【ティン・セレス】の力を借りたのは曲げようのない事実。
よもやティンがかの御方などとはゆめにも思っていなかったが。
「幼き王よ。しかしティンク様のいわれているとおり、そなたはまだ完全ではない。
この世界の理を本来あるべき形にするためにもそなたの目覚めは必要不可欠。
それと、そこの娘。輝きの守護を担うものよ」
戸惑いの色をかくしきれていないレニエルにと淡々と答えるクレマティス。
王の継承の儀を幾代にもわたって彼はみまもってきた経緯がある。
ゆえにその言葉における重みもまた深い。
「え?は…はいっ!」
先ほどから話しについていかれない。
そもそも出てくる名前はといえば伝説級の名ばかり。
さらっと精霊王達の真名を呼び捨てにしているティンのこともきにかかる。
もっとも、竜王クレマティスすら敬意をしめしているところをみると、
どうやらフェナスが予測していたティンが世界神の関係者、というのもあながち間違ってはいないのであろう。
そう彼女の中では結論づけているが、しかしいきなり話しかけられるとはおもってもいなかった。
ゆえにこそ声がうわずってしまうのは致し方がない。
「そなたの守護者としての力はまだ未熟。みたところ継承者としての能力は使いこなせてはいるが。
しかしその本質の力はまだつかいこなせてもおらぬし目覚めてもおらぬな?」
洞窟の中で出会ったときからおもっていた。
王を導く立場の守護者が確実に目覚めていないがゆえに、王もまた力に目覚める機会を逃していた。
そういってしまっても過言でない。
もっともそれは彼らの事情からしてしかたがないといえば仕方がない。
フェナスがレニエルの【卵】を仲間達から託されて追手と襲撃者達から逃れたのは、
まだ彼女が本来ならば保護が必要な時期にそのような事態に陥ったが故に、
彼女は守護者として完全に教育を施されたわけではない。
だからこそクレマティスの言葉に言葉につまるしかない。
それは事実であり、くつがえしようのない現実でもある。
歴代の守護者の力は強大であったと語りかけてくる大地はそう伝えている。
しかしフェナスは自分の中にあるであろうその力を確実につかいこなせない。
またその力そのものを感じることも滅多とない。
あくまでも今現在、フェナスが仕様しているのは力のごくごく一部。
力の数を百とするならばそのうちの十の力もつかいこなせてはいない。
もしも彼女がその力をつかいこなせていれば、
ティンが元々もっている独特の雰囲気にもすぐにきづき、彼女が何ものであるかすぐさまに理解したであろう。
「…はい」
事実をつきつけられそれでも否定できないのが彼女にとってはとてもくやしい。
どうすればいいのか彼女ですらつきみきれていないというのが実情。
「ふむ…試練に入る前に今のままでは還るより他にあるまい」
還る。
それは彼女達、森の民にとってのあるいみ死に等しい。
彼女達の死は死でなく、自然に還りゆく、という意味からしてそう呼び称されている。
「そなたが望むならばこの地にてある程度の特訓を手伝うことは可能だが、
今のままではそなた、輝ける王の守護どころかその力にその身を焼き尽くすことになるぞ?」
王の力はそれこそ絶対的なまでに強大なもの。
守護者の力でその力はあるいみ幕となり、世界によりよく循環してゆく。
それが守護者としての役割であり、この世界の理。
竜族はそれぞれに属性をもっている。
ゆえに、それぞれの属性をもつものに師事することによりその力をより正確に引きだすことも可能。
もっとも、力に呑まれるような存在にはこの方法は適応できない。
そもそも竜族達の力に耐えうる精神と、存在たる器が必要不可欠。
「たしかに。継承の儀にともなって守護者の試練もまたあるしね。
ならクレマティス。彼女のことはお願いしてもいいかしら?フェナスさん。あなたもそれでいい?」
「は…はい!こちらこそよろしくお願いします!」
レニエルが力に目覚めた以上、継承の儀が近いのもまた然り。
幼きころに試練のことも一応フェナスは聞かされている。
試練にうちかってこそ、本当の意味で【輝ける王】の【守護者】として力を発揮できる、とも。
フェナスからしてみればこの申し出はとてもありがたい。
そもそもいままで彼女に教えられる存在がいなかったのも事実。
ティンからしてみればクレマティスが申し出てこなければ自らが疑似的に創りだした空間にて、
彼女に特訓を施そう、とおもっていたのだが。
フェナスからしてみればクレマティスが提案してきたことはあるいみ幸運、といえるであろう。
そもそも、ティンの疑似空間の特訓は精霊王達からしてみてもとても過酷なものであるのだから……
とりあえず話がすすんでいない、という自覚あり
次回でようやく精霊王四柱そろう予定です
・・・・・次回はいつになるのかまたまた不明
気力がのればうちこみします・・・