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ACT-14 ~解放と脱出法~

今回の副題さんはまたまた悩んだ末に、あまり内容とあってないです。

次回でようやく水晶宮と残りの精霊王の解放に向かう予定です。

今回は、副題のとおり、捕らわれていた者たちの解放と、

そしてまたそんな彼らとの脱出?です。


※今回の容量は26Kbです


それにしても…とふと思う。

外に共に出てきたのはいいが、

しかしこの二人の格好は毎度のことながら変わっているというか何というか。

まあティンはこの姿に慣れているのでさほど違和感を感じないが、

第三者がみれば一瞬、首をかしげること間違いなしといえるであろう。


「あいかわらず、クークもステラも表にでるときはその姿なんだ……」


まあ別に個々の感性に口をだすつもりはないが、ないが、である。


「「?ティンク様?」」


ティンの問いかけの意味を理解できず、

同時に首をかしげる、クークとステラ、と呼ばれし両名。

先ほどまではいっていた水晶の檻の中にいたときの姿とは異なるその姿。

ステラは真っ白い髪に赤い瞳、

ついでに服も真っ白なワンピースもどきをきている見た目、十代前半くらいの少女。

ついでにいえば、その肩には真っ白い蛇がまきつけられており、

はたからみればおもいっきり引いてしまう。

どうもこのステラは以前、変異種として誕生した白蛇が気にいったらしく、

それ以後常にこの姿を好んで模している。

この世界において、それゆえかかつては白蛇は神のお使い、とまでいわれていたほど。

まあ、その表現もあたらずとも遠からず、ではあるが。

そもそも、そのあたりにいる普通の白蛇にまじって、

具現化した精霊王たるステラがうろうろしていたのだから、

人々の言い伝えも完全なる虚偽、というわけではない。


水は大地のどこにでも存在しうる物質。

水があるところならばどこにでもステラは具現化することが可能。

そしてそれは、粒子となっている大気中においても同じことがいえる。

かつては時折、雲に交じって具現化したステラが空を漂っている姿がよく見受けられていた。

その結果、人々の間にて様々な物語などができあがったりしたのも事実。

対する、クークはといえば、土、といえば代表するのは草木、とばかり、

本来ならば常にその身を木々、もしくは草花に身をやつしては具現化して彷徨っていたりする。

一時、巨大ミミズもどきになったこともあるのだが、それにより人々に恐怖を与えてしまった過去をもつ。


ノースワーム、と人々の間で言い伝えられている巨大な生物が

よもやクークが具現化した姿だとは、

よもや誰が想像したであろう。


クークもまた先ほどとは多少姿はかわっている。

先刻まではその手足はどうみても人のそれではなく、草木の蔦もどき?

というようなものであったが、

今のクークの手足は人のそれらとほぼかわりがない。

もっとも、その手の指が五本のところが四本であり、手をかざし意識するだけで、

その手からは無数の蔦がのび対象者を一気に絡め取る。

足元は先ほどはどうみても、木々の枝のようであったそれが普通の足のようになっており、

くるぶしから下は木でできた固い靴のようなものを履いているように垣間見える。

事実は、履いている、のではなく靴そのものが足代わりであり、

ゆえに、靴を脱げ、といわれても、

体の一部なのでその場合はくるぶしから下を切り離すしかない。

髪の色は茶色で蔦で編み込まれたような帽子をすっぽりとかぶっている。

もっとも、この帽子そのものもまた体の一部であるゆえに、

帽子を取り外すということはできない。

まあ、髪の毛にあたる部分を帽子に見立てているだけなので、

その部分をそのまま髪にみえるようにすればいいだけなのだが。

しかし、問題はそこではない。

何しろクークの姿はどうみても、七歳かそこらのまだ幼い幼女。

クークいわく、人間は子供に甘いのでこの姿を好んでいる。

まあ、土にまみれ、自然の中で遊ぶのは子供がほとんど、ということもあり、

この姿にて人間の子供に紛れてかつてはよく遊んでいた。

しかしここ数百年、そのような交流は、同じ人間の手により断たれていた。


ティン達がそんな会話をしているそんな最中。

やがて、三人は建物の外にとたどり着く。

建物内を進むにあたり、

ところどころ青き炎につつまれている人の姿がみえたがそれはそれ。

それらをさくっと無視し進んでゆき、石柱が立ち並ぶ正面入口にとやってきているティン達三人。

青き炎は至るところにて発生しており、

その中で様々な人々が悶えているような気もするが。

それらは全て自業自得。

なのでティンからしてみれば気にかける要素はさらさらない。

精霊王達もまたティンクが気にかけない以上、自分達が気にかけることは許されない。

気にはなるものの、干渉することが許されない以上、手だしすることはままならない。


もっとも、この炎はティンが起こしたものであり、

ゆえに、たかが一精霊王でしかない彼らがどうにかしようとも、この炎は絶対に消えることはない。

全ての精霊王と、精霊神。そして他の二柱王の力を使いようやく消し止めることは可能。

二人しかいない精霊王達にどうにかできる代物ではない。


先刻までは黒い霧のようなものに覆われていた建物が今では何の穢れもない白き建物にと変わっている。

そしてまた、降り注ぐ太陽の光によってその白き建物は、

その光の当たり具合によってその色合いをめまぐるしく変化させている。

本来、この宮殿がもっていたはずの景色が完全によみがえっているのが見て取れる。


「さてと。レニー達がもどってくるまでしばらくこれまでのことを詳し~く聞くとしましょうか?二人とも?」


にっこりと、いつのまにやらその場に先ほどまではなかったはずの真っ白い椅子に座りつつ、

目の前で何やら多少固まっている精霊王二人に対しにこやかに語りかけるティン。

そう語りかけるティンの目はどちらかといえば完全に据わっている。

レニーとは誰なのか気にはなれど、しかしこのような状態の【主】に聞けるはずもなく。


『は…はいっ!』


ぴしりと姿勢を正し、二人同時に思わず叫ぶように答えるクークとテスラ。

精霊王達にとって、目の前のティン・セレスは絶対に逆らえない存在。

そしてまた、そのような存在の手を煩わせてしまった以上、

すくなからずの覚悟が必要となる。

これまでもそうであったように……


震える声で説明をある程度かいつまんで終えた二人の口から何ともいえない声が響き渡ってゆくのは、

彼らが建物よりでてしばらく後。

ちょうどそれは別行動をしていたレニエル達が捕えられていた存在達を解放し、表にでてきたときとほぼ同時。



レニエル達は知るよしもない。

それが自分達が尊敬してやまない精霊王達の悲鳴である、ということを……






ぞくっ。


「レニー?」


思わず体を抱え込むように震えてしまう。

そんなレニエルに気づいて何か体調の変化でもあったのか、と心配そうに声をかけるフェナス。

そもそも、レニエルはまだ力に目覚めたばかりだ、というのにかなりの力を行使したようにおもう。

だからこそフェナスからしてみれば心配でたまらない。

力に目覚めてくれたことは喜ばしい。

しかし、急激な巨大な力はその精神をもむしばむことがある。

特に【レニエル】の力は自分達のような存在と格が違う。

どれほどの力を抱擁しているのか、

完全に教育を受けたわけではない【輝きの守護】たるフェナスとて、

きちんと把握しきれていない。

きちんとした教育をうける前に、前任者達はレニエル

…すなわち、【王】を守るために犠牲となった。

それでもどうにか在る程度の力をフェナスが行使できるようになったのは、一重に残った仲間と。

そしてまた、一時隠れていた【樹海】の木々による協力のたまもの。

ようやく力が扱えるようになったときは襲撃をうけてから百年近くが経過していたが……


しかし、とおもう。

何が何だかわからないが、

少なくとも、あのティン・セレスという人物が何かをした、というのだけは把握した。


この場に捕らえられていたのは同族だけでなく、かなりの人数に及んでいる。

自分達のような森の民におよばず、獣人とよばれるもの、

あげくは神の御使いともいわれている、エルフまで。

全てが水晶の筒のようなものに入れられており、

そこから【力】を吸いだしていたらしい。

力を失った存在はそのまま水晶より取り出され、今度は生命力すらをも吸い取られ、

完全に使い物にならなくなるまで徹底的に【命】を吸い取られる。

吸い取られた【力】は特殊な方法で固形化され、

それらは【精霊石】と呼ばれし物質へと生成される。

その【石】さえ手にしていれば、たとえ力がない存在であっても、様々な力が扱える。

威力としては、魔硝石が百個必要なところが小さな精霊石が一つでことたりる。

つまり、こつこつと魔硝石を集めて使用するよりはたしかに効率はいい。

いいが、それらが命を犠牲にして創られている、とは一部のものにしか知られていない。

いずれこの石の純度が高くなればこれを世界にむけ、

世界制覇をたくらんでいるセレスタイン王国。

そのためのここは実験施設の一つ。

もとも、ここは施設の一つではあるが、一応要といえる拠点の一つ。

様々な場所で実験した結果、この場所がより【力】を純度もたかく精製するのに適していた。

ゆえに主たる実験体はこの場に集め、その力といわず命そのものを吸い尽くしていた。

そんな実験体として様々な場所より捕らえられ、もしくは拉致されてきていた存在達。

青き炎により、そんな彼らが閉じ込められていた器は奇麗に燃え尽きた。

水晶が燃える、というのも何とも不思議な光景ではあるが、

それが事実なのだから仕方がない。

その炎は当然、何の非もない存在がふれても無害なれど、

敵意などをもてばまたたくまに反応する。

中には助けだされたにもかかわらず、相手

…すなわちレニエル達が信じられず突っかかるものもいた。

そういう輩はその心に反応したのか、一時その体は瞬く間に炎に包まれた。

かの炎には心を浄化する力もある。

まあ、永らく幽閉され苦痛をともない【命】そのものを吸いだされていた実験体達にとって、

いくら突如としてあらわれた二人組…しかも一人はどうみても子供。

そんな二人を信じられるはずもない。

ともあれ、そんなことを繰り返しつつもどうにか仲間がそれぞれ分断して捕らえられていた実験施設。

中心の建物を取り囲むようにしてあった六つの小さな別棟ともいえる建物。

その中に設けられていた施設よりどうにか無事に全てのものを救いだした。

救いだしたはいいが、これからどうするか、などとはまだ決めかねている。

そもそもこんな大人数をどうやってこの王国の人々に気づかれずにつれだすか。

それもまた今のところは決めかねている。

それぞれがバラバラで逃げ出したとしても、

おそらく【帝国】はほうっておかないであろう。

もっとも、ここの施設の異常が計画の中心である存在達に伝わる時間はそう長くはないであろう。

永らく幽閉されていたがゆえに、半数以上のものが自力で立つことすらままならない。

それはまだ力があるものたちが協力しあい、ひとまず外にでてみよう。

という話しになり炎に包まれ悲鳴をあげている研究者もどきたちの姿を目の端にとらえつつ、

ようやく建物の外へでたのはかなりの時間が経過していたらしい。

外にでると同時、眩しいまでの様々な光が視野にと入り込む。

よくよくみればその光は建物より発せられているらしく、太陽の光を反射して、

建造物である建物そのものが様々な色合いを帯びて光っている。

おそらくこれこそが本来、この宮殿であった場所のあるべき姿なのであろう。


一瞬、そのあまりの神秘的ともいえる光景に目を奪われその場に立ちつくす存在達。

すくなくとも、永らく幽閉されていた存在達にとってこの光景はあまりに神秘的すぎる光景。

自分達が助かったのだ、とこの光景を目の当たりにして理解し、涙を流すものもすくなくない。

そんな中、一人レニエルだけは別なる気配を感じ思わずその場にて立ちすくみ、

思わず体を抱え込むようにして身震いしてしまう。

空気を震わすような、大気にとけこんでいるが、判る。

大気、そして大地が震えている。

その震えに含まれているのは…畏怖、という名のおびえ。

ゆえにおもわずぞくり、と体を震わせるレニエル。

この大気中に含まれている水と、

そして足元の大地より感じる畏怖という名の恐怖がどこからきているのか。

説明されるまでもなく瞬時に理解できてしまう。

おそらくは…かの御方関連だな、というのは理解できるが理解したくない、というのが本音。


「【創造主エトランゼ】様は精霊王様達に何をしたのだろうか……」


ぽそっとつぶやくレニエルの声は、誰に聞き咎められることもなく、

それと同時。


「あれ?あ、ようやくでてきた?レニー達」


気配を察知したのか、レニエル達のほうに近づいてくる人影が一つ。

力に目覚めたがゆえに理解した。

ティン・セレスの名前の意味を。

確かに彼女は初めてあったときから真実を語っていた。

この世界においてたしかに的確といえる名、であろう。

理解できるものには的確に自分のことを伝えられ、知らないものには【名】としてとらえられる。

名において自らの存在意義を示す、というのはこの世界においてはよくあること。

レニエルの名にしろ然り。

名そのものが、王の名であり、その名をつぐものこそ、王である証でもある。


「あ。はい。なんかお手数をおかけしてしまったみたいで……」


突如として燃え上がった敵対者達。

簡単に捕らえられている存在達を救いだせたのはティンの力によるものが大きい。

しかしこの場にて彼女の真の姿を説明するわけにもいかない。

ゆえに恐縮しつつも頭をさげる。

そんなレニエルに対し、


「普通の態度でいいけどね。レニー。とりあえず、こっちはクークとテスラは助けだしたから。

  まあこれまでたまってる仕事を短期間で彼らもまた片づけるでしょ。

  あとは…地下に廃棄物よろしく放り出されている人達の救助かしらね?

  まあ、それは一気にすますとして。なら、とりあえずこの場から離れましょうか」

さらっとにこやかにいいきるそんなティンに対し、

「あの?ティンさん?でもまだ動けない人達も……」


自分達だけが助かったのでは意味がない。

この場に取り残された人々が今後どのような対応をうけるのか想像に難くない。

レニエルとフェナスはティンのことをしっているがゆえに普通に接してはいるが、

幽閉されていた人々からしてみれば、ティンは第三者。

つまり味方なのか敵なのかもわからない。

ゆえに戸惑いを隠しきれない。

そんなフェナスの言葉に対し、


「?だから皆でこの場を離れたほうがいいでしょ?

  戻れる場所があるひとはその場所に戻すとして。

  とりあえず、まずは全員ここから退避するのが先決ですしね」


おそらく、というか確実にすでに中央部にこの施設の異変は伝わったはず。

そもそも、かの地にもこの地の状態を示す品がある。

転移陣はすくなくとも王都に続く道は閉ざされている。

本来あるべき機能がこの宮殿によみがえり、

許可がない限り、何人たりとてこの宮殿内に侵入することはできはしない。

空路を伝ってこの地を調べにくるとしたらそうそう時間は残されていない。

いくら人が空を飛べる術を忘れ去って久しい、とはいえ、

この国は空を飛ぶ翼竜を改造し乗り物と化している。

翼竜の合成獣キメラというべきそれらは、文字通り侵略者達の手足となり働かされている。

この場にいた捕らえられていた存在達は、無理やり強制的に捕らえられ、幽閉されていたものが大多数。

とはいえ、たった一人を捕らえるために集落を壊滅させられたものも少なくない。

つまり、この場に捕らえられていた人のせいで壊滅させられ集落や村もいくつか存在する。

当然、捕らえられた人々はそのことに対し絶望し、生きる気力を失っている。

そのあたりの責任は精霊王達にも一端があるのだから彼らに今後を任せるとして。

そんなことを思いつつ、


「さてと。じゃ、移動の足を喚びますか」


・・・・・・・・嫌な予感。

さらっと移動の足をよぶ。

その言葉に言い知れぬ不安を感じたのはレニエルだけでなく、フェナスとて同じこと。

ここにくるまで彼女が呼んだ…否、召喚したものはとてつもないものだった。

「「あ…あのっ!」」

レニエルとフェナスが思わず声を同時に発するとほぼ同時、

「召喚:『箱舟ノア』【Select5(セレクトファイブ)】」

二人の不安は何のその。

さらっと二人が危惧していたその言葉を紡ぎだすティン。


『……やっぱし……』


予測していたというか、何というか。

頭を抱えざるをえないというのはこういうことをいうのであろう。

それでなくても、これまで幽閉されていた人々がそれを目の当たりにしたとする。

どのような反応をするか…考えるのも恐ろしい。

ゆえに、レニエルはおもわず額に手をやりうなだれ、

フェナスはフェナスで頭をかかえていたりする。

そんな二人の様子を不思議におもえども、彼らには意味がわからない。

と。

ゆらり。

ティンの言葉に反応すのかのごとく、神殿の上部。

すなわち、神殿の上部にある空の大気が一瞬揺らぐ。

揺らいだ空に光が発生し、その光は瞬く間に収縮してゆき、様々な色合いに変化しつつ、

それらはやがて一つの形を取りなし、ゆっくりとそんな彼らの頭上にその姿を出現させる。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


一瞬、それが何かわからずに唖然とする人々。

そして、次の瞬間。


『えええええええええええええええええええええええええええええええ!?』


何ともいえない驚愕の叫びが辺り一帯にと響き渡ってゆく。


きらきらと輝く透き通ったその雄姿をこの世界で知らないものはまずいない。

絵本で、そして神話で、そしてまた、古代の壁画で、聖なる場で、教会で。

そこに必ず描かれている聖なる乗り物。

神々の聖なる乗り物、として知られているそれとまったく同じ形式の船がどうしてそこにあるのであろうか。

ゆえにこそ叫ばずにはいられない。


そもそも、今の技術でこのような空に浮かぶ船を創りだせるなど聞いたこともない。

前回、ティンが召喚したそれは、薄紫と薄桃色に彩られていたが、

このたびはどちらかといえば、透き通った淡き金色というか銀色に近い色合い。

しかし基本的な形は前回みたソレと変わりなく、

その先端部分が多少彎曲しなめらかな曲線を描きだしている。

その曲線はくるくるといくつか巻かれ、前後ともほぼ対極の模様を描き出している。

つまり、船首と船尾がほぼ同じ形状で、

後進しても前進するにしてもまったくもって違和感がない創りとなっている。

船体そのものはきらきらと光を反射し輝いており、まさに空に浮かぶ宝石、といって過言でない。

三日月状の形のそれの甲板部分には巨大な帆の変わりなのであろうか。

ハープのようなものが見て取れる。

ティンいわく、この船の形を参考のしたのが、帆船、とよばれているもの。

帆船、とよばれし代物はありはすれど、このような物質?でできたものはまずありえない。

そもそも、

ぱっとみただけでも何でできているのか普通の人々からしてみれば皆目理解不能。


離れているにも関わらず、何ともいえない心地よい旋律のような音が大地にいる彼らにも伝わってくる。


シャラン…シャラン……


それはまるで聖なる響き。

否、まるで、というよりもまさに聖なる響きそのもの。

それに伴い、ゆっくりと船底部分に雲がどこからともなく集まってきて、

やがて彼らの見守るその前にて、雲の上にと浮かぶ船の形が形成される。


「【Select5(セレクトファイブ)】のこれは水陸両用のタイプ。

  これが一番使い勝手がいいしね~」


驚愕し、一時は叫んだもののあいた口がふさがらない、とはまさにこのこと。

唖然とする元捕らわれていた人々とは対照的にさらっといいきっているティン。

ちなみに、もう少し上の召喚では、地中を進めるものも含まれ、

最終的には、惑星間の移動を行う箱舟も存在する。

簡単にいえば宇宙航行も可能な【箱舟】も実質存在する。


『…まさか……箱舟ノア?』


そうつぶやいた呟きはいったい全体誰のものなのか。

それは無意識に発せられた言葉。

お伽噺の中でしか知らないはずのソレが今たしかに彼らの目の前にある。

だからこそ、驚愕せざるを得ない。

こんな代物を召喚できる【人】など聞いたこともない。


「ティンさん!いきなりこういうとんでもない聖なる品を召喚するの時はせめて事前連絡してくださいっ!」


さすがにこうも続くと精神的に悪い。

ゆえに思わずティンにむかって意見するフェナスに対し、


「空から移動したほうが手っとり早いでしょ?」

にこやかに、さらっといいきるティン。


そもそも、この地に捕らえられていた存在達はかなりの数にのぼる。

それを把握しているからこその、この移動手段の召喚。

この世界でこのような大人数を一気に移動できる手段など、いまだに確立されていない。

まあ、精霊王達の力を使い、それぞれをいきなり元いた場所に帰還させる。

すなわち瞬間移動をさせる、というのも一つの手ではあるが、

それだと当人達が何がおこったのか理解できないであろう。

そもそも、何の心構えもなく元いた場所に戻されても、彼らからすれば戸惑うばかり。

実際、初期に捕らわれていた存在もおり、捕らわれた時間からかなりの年月が経過している。

今の現状を把握させることなく、元の場所に戻しても、かならず何らかの不都合がおこる。

このたびの一件にティン事態はさほどかかわる気はさらさらない。

とりあえず、解放はすれども、後のことはこの世界をまかせている存在ものにゆだねるつもり。

本来、ただ様子をみにきただけならばこうもほいほいと常に扱う品を召喚などしはしない。

するとしても、必ず一目につかない位置で行っている。

このたびは一時のこと、つまり一過性にすぎないゆえにさくっと【力】を使用しているに過ぎない。


しかし、当然、そんなティンの思いをフェナス達が知るよしもなく、

「いやあの!というかそういう問題ですか!?ねえ!?」

目の前でこうもまたまた常識外のことを見せつけられれば思わず叫びたくもなる、というもの。

すでに敬語をつかおう、という思いはどこにやら。

「これだとまだ残っている人達もとりあえず【保護】できるしね。

  さて。と【乗牽引トラミーン】起動」

『え゛!?』


これまた聞きなれない言葉をティンが紡ぐと同時。

空に浮かぶ【箱舟ノア】の底より光が発生し、

その光は瞬く間に周囲、すなわちティン達のいる場所を含めた神殿全体を包み込む。

あまりの眩しさにその場にいた人々が目をつむったその刹那。


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』


次の瞬間、

その場にいた人々は自分が置かれている現状が理解できず、おもわず間の抜けた声をだす。

さもあらん。

先ほどまでいた場所とはまったくもって異なっている。

そもそも、足元の光景からしてまったく違う。

さらにいうならば、先ほどまで自分達がいたはずの神殿らしきものがどうして眼下にみえているのか。


「動けなかった人達とりあえず、船底部分に設置してある【癒しの間】に移動させましたから」


癒しの間にも二種類あり、まったくもって動けない、つまりは力を涸渇している存在もの達用と、

そうでない存在もの達用に分けられている。

完全に力を涸渇し、生命力すら皆無に近くなっている存在もの達に対しては、

それぞれが癒しの水晶の中にはいり、その身と魂が癒されるまで眠りにつくこととなる。

そしてまた、少しばかり休息が必要なものたちには、それぞれに部屋が割り当てられ、

一人一人に介護を施す精霊が常につき従うようになっている。

ちなみに、この船にいる精霊達は文字通り、この船そのものに宿っている精霊であり、

ゆえに船内ならばどこにでも一瞬のうちに姿を現すことが可能。

この船に宿りし精霊は、それぞれに虹色の四枚の羽根をもっており、

大きさは人の子供程度。

つまり小さな羽の生えた子供がちょこまかと動き回っている姿を見ているだけで何とも癒される。

この船に宿っている精霊達はいわば癒し効果を属性としてもっている。

その癒しは目にみえる傷だけでなく魂における精神的な癒しをも施すことが可能。

しかし当然、この場にいる誰もがそんな細かいことを知るよしもない。

そもそも、癒しの間、といわれてもまったくもって意味がわからない。

しかも今の光で神殿に捕らえられていた全ての存在が保護され、

この船の中に収容されたなど、いったい誰が想像できようか。

「部屋はかなり在りますから、それぞれ好きな部屋を選んでくつろいでくださいね?

  あ、入口はそこですよ?」

驚愕し言葉もでない人々に対し、さらっと何でもないように説明し、

とある数か所を指差しつつ説明しているティン。

そこ、といわれよくよくみれば、どうやら甲板より降りる階段らしきものがあり、

どうやらそこからこの内部に入れるようになっているらしい。

内部に入るためであろう階段はいくつかあり、どこからはいってもこの船内に入ることが可能。


この船は見た目よりも空間が広く創られていることから、そこそこの箇所に一応、

今の現在位置と船内案内の看板が設けられている。

まさにあるいみ至れりつくせり、といってもいいのだが、

聖なる船と呼ばれているわりにあるいみ現実味を帯びている。

まあ、内部で迷子になり、行方不明になってもらっても困る、という配慮からそのような看板を設置してあるのだが。

見た目はさほど大きくない船体なのに、内部の広さはちょっとした国の領土全体よりも幅広い。

この船の内部は空間そのものがいじられており、ゆえにそこそこに移動するための陣が敷かれている。

つまりいくら広い、とはいえ移動の便利性は損なわれていない。

しかし、それは【文明】になれている存在ならばすぐに理解できるが、

ほとんどそういった知識がないものからしてみればそれはまさに神の御技としかいいようがない。

そもそも、一瞬のうちに別の場所に移動する方法など、権力者の一部ならば使用可能であろうが。

しかしそれでもかなりの【力】を使用する、と聞いたことがある。

中には魔硝石を万単位に設置しそれらを可能にしている国もあるという。

ちなみにその国では魔硝石を普通よりも高く買い取っており、

ゆえに魔硝石をためてその国に売りにいく存在も多少はいる。

しかしこの世界において旅をする、というのはまさに命がけ。

そういった人々は腕に覚えのあるものを雇い、命がけで別の王国に出向くこととなる。


「…あ、あの?もしかして…あの場というか建物にいた全員をここに呼び寄せた…とかいいます?」

しばし唖然としていたものの、はっと誰よりも我にと戻り、恐る恐るといかけるレニエル。

「地下に折り重なるようにして放っておかれた存在達もとりあえず収容したけど?」

レニエルに問われ、さらっと答えるティンの言葉にただただレニエルとしては驚愕せざるを得ない。


わかってはいる。

目の前の少女がいったい全体【誰】なのか。

判ってはいるが、その力の一端を目の当たりにするのと想像でしか知らないのとではわけが違う。

だからこそ戸惑わずにはいられない。


ティンの正体を理解しているレニエルですらそのような状態なのであるのだから、

他のものからしてみればその反応は……おしてしるべし。


「あの、それで、精霊王様方は?」


確実に救いだされたのは判っている。

しかしこの場に彼らの姿がない、というのも気にかかる。

先刻のあの精霊王達の叫びのようなものに起因しているのか、それともまた別の要因か。

「クークはとりあえず、かの地から地の保護を帝国に所属するものに限って解除した後、

  それから、その余った力を今まで振り分けられなかった地に降り注いでいるわよ?

  ステラはいうにおよばず。あの子が幽閉されててこの世界、基本的に雨不足になってたしね~」

そのせいでいくつもの大地が乾燥し不毛の大地となった場所は数しれない。

水の精霊の特性でもある癒しの効果を発揮し、それらの大地の再生を一応ステラには命じてある。

今この場でまともな会話ができるのはレニエルのみ。

しばし、驚愕に満ちた人々の声が響き渡ってゆく……






何がおこったのかわからない。

光につつまれ、ああ、お迎えがきたのかな?

そうおもったその刹那。

気がついたのはふかふかの布団の上。


ちなみに種族によってその布団の在りようが異なっており、

それぞれが快適に過ごせる材質にて布団は具現化されている。

ゆえに誰もがどのような種族であっても快適に滋養に専念できる。

癒しの間、という名は伊達ではない。

細かいところまでそのあたりの気配りはなされている。


「……え?」


目にはいったのは、暖かな光と、そして見知らぬ天上。

ふと視線を下にむければふかふかの布団がそこにある。


「…………え?」


こういう場合、誰しも言葉がでないもので、ただただ間の抜けた声が漏れ出るのみ。

夢?とおもいおもわず自らの頬をつねってみるが普通に痛い。

さらに爪を手におもいっきりたててみるがこれまた痛い。

しかし痛みを伴う夢、というのは捕らえられた当初からよくみていたこと。

目がさめたら捕らえられ、激痛に追われる日々は夢であり、普通の日常をおくっている、という夢。

現実逃避でしかない、とわかっていても、始めのころはそれでも現実を認めたくなかった。

いつのころからか夢すらもみなくなり、生きているのも不思議なくらいであった。


「あ。お目覚めですか?とりあえずはじめまして。あなたの担当になりました、フォンセン、と申します。

  何かご不便なことがありましたり、また御用のときには何なりと申しつけください」


しかも、しかもである。

目の前にいる、ふわふわと浮かんでいる、しかもどうみても見た目は子供。

しかしその背中についている四枚の虹色の羽はいったい全体何なのか。

髪の色も虹色であり、服は緑色のワンピースのようなものを着こなしている。

こんな子供、みたこともなければ、あの実験室にこのような子がいた記憶はない。


「……は?」


現状が把握できない、とはまさにこういうことをいうのであろう。

そもそも、何がおこったのか皆目理解不能なのだから仕方がない。

もっとも、この現状で理解できていればそれはそれですごいものがある。

少なくとも、部屋に送られた捕らえられていた存在達は自力で動くことがままならない、

もしくは体力すらほぼ残っていない存在達のみ。

つまり、突如として光に包まれたとおもって目を開くと、

見知らぬ部屋にいきなり自分がしかも布団の上にいる、というなんとも不可解な現状がそこにある。

ゆえに、間のぬけた声を発してしまうのは仕方がないであろう。


「ああ。そういえば、ティンク様が説明もなさらずに突如としてここにみなさんを召喚なさったようですし。

  とりあえず簡単にご説明いたしますね。

  ここは箱舟の中の癒しの間、と呼ばれる部屋の一つです。

  今からあなた様を含めた、かの地に捕らえられていた方々は、

  皆さま、水晶宮へとご案内することになります。

  かの地にてゆっくりと養生なされた後に今後の身の振り方を決めていただくようになるかと……」


担当になった存在が唖然としているのをみてとり、そういえば、とおもい一応簡単にと説明を施す。

もっとも、この説明においてもかなりつっ込みどころ満載の言葉が含まれていたりするのだが。

しかし、思考が完全に廻りきっていない以上、そこまで気がまわるはずもなく、


「……はぃ?」


ただただ間の抜けた声をもらすしかない。


そのような光景が、ティン達が甲板部分で話している最中、

すべての癒しの間の部屋において見受けられてゆく――

  

方舟の雄姿を簡単に他のもので比較していうならば、

まずこの地上における帆船、基本的にハープとしてある帆の部分はあのような形です。(帆の部分は四本、ととらえてください)

全体的な間隔は、知ってる人は知っている、とあるアニメのフェザー○ターの方舟さん。あのような外装、とおもってくださってほぼ間違いです。

(これで通用する人がいったい全体いくらいるでしょうか?)

脳内ではきちんと映像があるんですけどねぇ。

それを表現するにあたり、なかなかに難しいものがあります(切実に


ともあれ、次回の更新もまた不明です・・・


今後の大まかな流れとしましては、

水晶宮にいったのちに、残り二人の精霊王を解放し。

柱神達の力によってとあるものを召喚したのち、ようやくラストにむかいます。

気がむきましたらこれからもよろしくおねがいしますv

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