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ACT-12 ~古の聖殿~

今回、「レニエル」のあるいみ覚醒?

んでもってようやく神殿に突入です!

…あれ?容量的に精霊王登場までいかなかった謎・・・(汗

そこまでいれたら40Kこえてしまう…あはは…

というわけで精霊王は次回ですね…すいません……


前回までのお話し:


世界神セレスタインに創られた、というとある世界。

世界神によって世界を任された精霊王達により世界は安定し繁栄していた。

だがしかし、あるときから世界神の「全てが平等に」という教えを勘違いした人類が暴走。

そして精霊王達から教わった知識を逆に利用し、精霊王達の力をも自分のものにしようとした愚かなる人類。

愚かなる人類は自分達の利益のためだけに精霊王達を幽閉し、世界から精霊王の加護がかききえた。

それからはや数百年…

そんな中、一人の旅人が精霊王達を解放するために動きだし?

道中、偶然に出会った【森の民】と呼ばれし種族のものたち。

そのうちの二名とともに彼らは動き出す。

目指すは捕らわれ幽閉されている精霊王達の解放。

しかし、どうもその旅人…【ティン・セレス】は普通の【人】ではないらしく??





            WOLD GAME ~古の聖殿~





一度感覚で覚えてしまえばあとは実戦をつむのみ。

元々、魂そのものに刻まれている【力】である。

本来ならば天地を通じて目覚めるまでに覚えているべきはずの【力】。

一度力が発動すれば、自然と全てが理解できるようになってくる。


だからこそ、【判る】。


「……あの……」


今までは漠然としか感じなかった違和感。

その違和感の正体。

それは紛れもなくこの【世界】を取り囲む世界そのもの。

聖なる獣である神獣ですら敬意を示していた相手。

力に目覚めたからこそ理解した。

しかしどのように対応していいのかいきなり理解してしまったがゆえに戸惑いを隠しきれない。


そんなレニエルの様子に気づき、くすっと笑みをもらしたのち、


「まあ、私は私。あなたはあなた。レニエルはニレエル。そうでしょ?

  そこのフェナスがフェナスであるように。さて、と。

  とりあえずレニーもおぼろげながら力に目覚めたようだし。ならいきますか。

  とりあえずここをくぐっていけば目と鼻の先にでますしね」


実際はもっと離れてはいるのだが。

しかし、この壁を【通じて】別の壁の場所に【移動】することは可能。

壁となっている【力】と【力】を正常に結び付ければいいだけのこと。

のんびりと歩いていってもいいが、おそらく相手側が混乱しているのは一時的なもの。

ゆっくりしていて人質となっている輩達に危害が加えられては意味がない。


「…これをくぐる?しかし、まだ聖廟のある神殿はまだ先、なのでは…まさか……」


自らの中に芽生えた膨大ともいえる知識がとある可能性を導きだす。


「多分。レニーの予測してる通りだとおもうけど。

  この邪気の成分を含む【精霊石】による【壁】は神殿の周囲にも張り巡らされてるみたいだし」


ふわふわとティン達の前にと浮かんでいる球体は今現在、とある一点が微かに光り輝いている。

緑色に光っているその光が示すのは、今現在、ティン達がいる場所を指し示している。

球体の中にみえる光の位置と逆五紡星の中心にある光とはかなりの距離がまだあるように垣間見える。

だがしかし、【力】を媒介にして空間そのものを移動してしまえば距離などという代物は関係ない。


「……あの。僕にはまだ空間移動はできませんが……」


いくら何でも今目覚めたばかりの自分にそれだけの力はない。

やり方はわかる。

しかしそれだけの力がまだ今の自分には備わっていない。


「何もレニーの力はアテにしてないから大丈夫よ。

  それに私の力を使うわけでもなし。ここに使われている【念】達の力を使うだけのことよ」


元々、この【念】となった存在たちも、いいようにあつかわれるのを拒んでいた存在達。

ゆえにその縛られている悪意ともいえるソレを浄化すればおのずと自分達の味方につく。

そもそも、この場にとどまらせられているのは邪気に無理やり絡め取られた魂達の結晶体。

この炎を放った目的は彼らの解放、という名目をももっている。


二人の会話をききつつも、はっとようやく我にと戻り、


「いやあの!?というか、今、何が!?というか、レニエル!?ティンさん!?」


今、レニエルが扱った光は紛れもなく、王たる力の一部。

確かに船上で育てたがゆえか彼は動けるようになってもそのあたりの知識を持ち合わせてはいなかった。

しかし、さくっとそんな彼の魂の底に眠りし力を目覚めさせた目の前の少女。

レニエルとすればティンが【誰】なのかフェナスにきちんと説明しておきたい。

本来あるべき知識がよみがえった今、ティンが誰なのか今のレニエルは理解した。

しかし、そんなレニエルの思考を読み取ったのか、

手を小さく口元にもっていきかるくウィンクするティン。

はっきりいってティンからすればあがめられるのも敬われたりするのも面倒くさい、というのが本音。

面倒なのはいつもの日常だけで十分。

というかあまりかしこまられてもこちらの言い分というか自由がきかなくなってしまう。

もっとも、そうなればその部分の記憶のみを封じる、という手も残ってはいるのだが……


「今はどうでもいいことを言い合っているときではないですし。それより、さくっと移動しますよ。

  あ、フェナスさんはこの炎の中に入っても平気。というのはわかりますよね?」


緑と青の光に覆われているあるいみ心奪われる光を醸し出している炎の壁。

怖い、という概念などはまったくおきず、むしろみていてとても心安らげる炎の壁がそこにある。

ゆらゆらと青と緑に輝くその様は、まるで深緑に囲まれている湖の湖面を連想させる。


「どうでもいい…って……」

フェナスからしてみればどうでもいい、というよりはむしろ重要すぎる内容である。

それをさらり、とどうでもいい、の一言ですまされてもかなり困る。

「まあ、判ってるでしょうから説明は省きますけど」


いやあの、きちんと説明してくださいっ!

さらっと自分の問いを流されて思わず心で叫ぶフェナスは間違っていない。

絶対に。


「とりあえず、相手に気づかれて対策をとられる前に、さくっといきますよ。

  さて、レニー。あなたのほうは心の準備はいいかしら?」


心の準備。

それはおそらく、【王】としての覚悟の強さを示しているのであろう。

【判ってしまった】。

だからこそ。


「はい。僕…いえ、私のほうは大丈夫です。私は私の役目を果たすためにもいかなければなりません」


そう。

自分と彼ら精霊王は一心同体といってもいい間柄。

【力】に目覚めた今だからこそそれが【判る】。

世界を支える柱の一角。

わざわざ目の前の【御方】が出向いてきているというのに自分が何もしないわけにはいかない。

まだ幼いから、という理由は理由にならない。

できうることをしなければ。


様々な思いがあるがそれを口にはださず、ティンの問いに力強く答えるレニエル。


「じゃ、いきましょうか」

「はい!」

「って、説明をお願いしますっ!って、きゃぁぁっ!まってください!ティンさん!レニエル!!」


一人、話しについていけないフェナスをさくっと無視するかのように何なら意味不明な会話を交わしつつ、

目の前の光り輝く炎の壁にと恐れることなくむかってゆく二人の姿。

そんな二人に対してあわてて叫んでおいかけてゆくフェナス。


炎はさらに輝きをまし、そのまま彼ら三人の姿を包み込む――





目の前の広がるは、何といったらいいのかわからない光景。

先ほどまでとは絶対に違う。

ばっと思わず背後を振り返ればそこにあるのは青き光の炎の壁。

先ほどまでたしかに前もみえないほどの異形ともいえる木々に囲まれた空間にいたはずである。

にもかかわらず、今いる自分達がいる場所がいったい全体どこなのか。

先ほどの会話の意味を理解していないフェナスからしてみれば驚愕せざるを得ない。

はっと自然と目にはいる、いまだにティンの目の前に浮かんでいる球体をみてみれば、

星を示す光の中心、その中心の光が異様に輝きを増しているのがみてとれる。

このあたりの空間はぽっかりと開けており、周囲にあるのは聳え立つ巨大な石柱の連なり。

足元には奇麗に切りそろえられた真っ白い石が丁寧に敷かれており、

石柱に沿ってその道は目の前にある巨大な白き建物へと伸びているのがみてとれる。

先ほどまでこんな巨大ともいえる建物は目の前になかった。

そもそもここまで大きな建物ものならばいくら何でも遠くからでも認識できるはず。

しかし、いくら薄い青き明かりしかなかった森もどきの空間とはいえ

こんな巨大な建物を認識できないはずはない。

白き石で出来ているその巨大なる建物はどうやらいくつかの棟らしきものに別れており、

中心とおもえし巨大な建物の天上部分とおもえし場所には、

巨大な球体のようなものがいくつかのっているのがみてとれる。

強いていうならば、

古代文明が残した、といえる壁画にのこっている建物そのもの、といっても過言でない。

しかし、本来ならば清楚で神聖なる感じをうけるであろうその建物は今はひっそりと静まり返り、

逆にその白き石を黒き霧のようなもので全体を包み込まれているのがみてとれる。

まるで建物全体を霧の蔦が巻きついているかのごとく。

生命の気配はほとんど感じられない。

そもそも、鳥の声すらこの森にはいった時点からまったくもって感じられなかった。


「こ…ここは……」

「かつての精霊王達の集いの場。聖なる王の神殿。どうもここを拠点にしてるみたいね」


本来、この場の目的は精霊王達が集い、そして彼らをまとめる精霊神を呼び出す場であった。

しかしその神聖な力を逆利用し、精霊王を幽閉することにどうやら成功しているらしい。


戸惑いを隠しきれないフェナスとは対照的に、この場がどこかを的確に示しているティン。


「精霊王様達の祈りの場…そんな場所に精霊王様を…?」


聖なる地を穢してまで行うことではないとおもう。

その行為のせいで世界がどれほど疲弊していったか、かの国の存在達はわかっていないのであろうか。

おそらく自分達の利益のみを優先しているがゆえに目先のことしかみえていない。

それに伴う代償は別の力で補えばよい。

そんな傲慢な考えが今のような状況をうみだしている。

レニエルもまたこの地に満ちている穢れと、本来の力を感じ取り、思わず顔をしかめて思わずつぶやく。


「聖なる場、だからでしょうね。強き光はより強い闇をも引き付けるから」


そんなレニエルの問いにさくっと完結に述べているティン。


強い光があればどうしてもそこには強い影という闇の部分は存在してしまう。

しかし、光がより強くあればその影は小さく、光にほぼ取り込むことは可能。

だがしかし、その光が消えたときは、それこそそれまで以上の闇が周囲を包み込む。


「まさか…ここは、神々の祈りの…場?」


噂にはきいていた。

そのような場所がこの地にはかつてあった、ということを。

ましてやここは、聖なる山の麓。

この場にあっても何ら不思議ではない。

しかし今の今までそのような聖なる神殿が発見された、とは一度たりとてきいたことがない。


「おおかた、この国の先祖がみつけて隠してたからでしょ。

  元々はこの場が知られたらいろいろと面倒…もといあの子たち…じゃなかった。

  とにかく、【柱】である彼らも基本は不干渉、ということであったから公にはしていなかったしね」


下手のこの地がしられてこの場を利用する輩がでないように。

この国のかつての先祖はその【王】達の願いをききとげていた聖なる魂の持主であったというのに。

しかし、いくら親が清廉潔癖でも周囲がそう、とは限らない。

ましてやその子やその子孫までもがそのままだ、とは言い難い。

茫然と目の前にある光景が信じられず、しばし自分の頬をつねったり何だりしつつもつぶやくフェナス。

そんなフェナスにさらっと答えているティン。


そもそも、柱だの何だの、といっている時点でティンがこの世界の【成り立ち】をより詳しく知っている。

と証明しているようなものなのだが、唖然としているフェナスはその事実に気づかない。

中心の巨大な建造物を取り囲むようにして点在している六つの小さな…小さい、

といってもかなりの大きさをそれでも誇ってはいるが。

おそらくこの建造物がある空間はちょっとした国程度の広さを誇っている。

目の前の建造物が【城】だ、ともしもいわれても違和感ないほどの大きさを実質もっている。

全てを平等に扱う、ということは一種族だけをひいきするわけにはいかない。

だからこそこの地において、そしてまた世界を視通せる山の頂上、

そしてまた空の城において世界を見守っていた【柱】達。


「それより。呆けてないで。

  侵入者…すなわち私たちのことに気がついて襲撃者がむけられてくるわよ?」


この地には【証】を持たぬものが侵入した場合、

問答無用で攻撃するように【植え付け】られているものがいる。

それらは、【彼ら】による実験体であり、そしてまた被害者でもある。

全ての力…器における精神体における力の全てを抜き取られ、

その空となった器をも利用される。

完全に命そのものを冒涜している、としかいいようのない行為の結果がここにはある。


「ティンさん!?ここは…」

「ここは、聖なる場。今でいうところの、セレスタイン教壇の本来の総本山であり、

  そして…中心にあるのは全ての源たる聖廟。―― コラム宮」


長ったらしい名前が面倒なので省略した。

そのせいか、かの存在の名前までそれにて定着しまったようであるが。


「コラ…!?もしかしてここは、精霊王達の神である精霊神コラム様の神殿!?」


精霊神、コラム。

そう一般には伝えられている。

しかしその姿をみたものは皆無、ともいわれている。

全ての精霊を司るものであり、そしてまた全ての命の親ともいわれている存在。

一節には精霊王達がその力をもってしてはじめてその御身を召喚することができる。

ともいわれていたらしい。

もっとも、その認識はあたらずとも遠からず…なのではあるが……

しかし、そんな裏事情は当然、フェナス達は知るよしもない。


「元。ね。今は魔窟の巣窟となってるようだけど……それより、きたわね」


フェナスの言葉を否定するわけでなく逆に肯定し大きくため息を吐き出すティン。

…彼らが全員集まったときでないとその実体化できない、という特性変えたほうがいいかしら?

そんなことをふと思う。

もっとも、実行しようとおもえばすぐさまこの場にてそれは可能、であるが。

しかし一応は、彼らの言い分も聞いてみる必要性もあるであろう。

ゆえに今すぐにその思いつきを実行、という案はひとまず思考の端においておくことにする。

ため息と同時にすっとティンが石畳の先。

すなわち、巨大なる建物…かつては聖殿、として精霊達でにぎわっていたその建物。

その方向からむかってくるいくつかの影に対して指先をむける。

ティンに示され、そちらのほうをみてみれば、

黒き霧に覆われた白き建物の中からなのか、それともその黒き霧の中からなのか。

ともかくそこからゆらゆらと石畳をまるでたゆたうように近づいてくるいくつもの影。

ざっとみつもり、かるく十以上はいるであろう。

かたやこちらは三人。

普通に考えれば勝機は薄い。


だがしかし、

ゆらゆらと近づいてくる影の中に見覚えのある姿をみつけ思わず目を見開くフェナス。


「まさか…そんな…カ…ス…ミ?」


つぶやくフェナスの声は気のせいではなく完全にかすれている。

目の前には懐かしい面影をもっている女性がいる。

しかし、その目は虚無であり、その体そのものにも精気がまったく感じられない。

すくなくとも、その【魂】がまったくもって感じられない、という現実が目の前にある。


―― 王の卵をつれて逃げて!


そういったあのときの彼女の決意。


「あ…あ…うそ…そんな……ギー…セン…様?」


―― 王は我らが希望!王がいつか覚醒すればヤツラの思惑も計画も、さらには世界をも救える!


聖なる地を守りし、聖なる騎士。

誇り高かった。

誰よりも。

そしてまた、その本体もまた誰よりも力強かった。


…かの国が確定、否、確率してしまった【術】の厄介な特性の一つ。

彼らがよく成していた【姿】のままに【殻の器】を操り道具と化す。

そもそも、本体である【草木】をどうこうしても彼らにとって意味がない。

その命の源ともいえる【力】と【精気】を全て奪った後は、

その器にのこりし【残留思念】ともいえる存在をあつかい、自らの手駒と化す。

そう、自分達の都合のいい【駒】として、【戦力】として。

【心ある存在】は普通、知り合いと同じ姿のものにどうしても気を許してしまう。

たとえそれが元の知り合いではない、とわかっていても、どうしてもそこま戸惑いが生まれてしまう。

まして、それらが力のあるものであるならば、

その知り合いがせめてきたときに何よりも有効な手段となりえる。


「?フェナス?フェナス!しっかりしてくださいっ!」

ふと見れば横でがたがたと震えて体を抱きしめ、ある意味放心しかけているフェナスの姿。

いつも守ってくれていた自信にあふれていた【フェナス】の姿はそこにはなく、

ただただ【迷い子】ともいえる表情をしている彼女の姿がそこにある。

まだ、当時、まどろみの中にいたといっても過言でないレニエルは知らない。

目の前に近づいてきている姿をしているかつての【存在達】が自分を命をかけて助けてくれたものである。

ということを。

精気のなくなった傀儡としかいいようのない人形。

おそらくは何らかの別の意思か何かを埋め込まれているのであろう。

そうでなければ自分達にむかってしかも向かってくる輩全てが武器を手にしているはずがない。

いきなり見ず知らずの相手に対して武器を手にむかってくるなど考えられない。

しかもあいてからは殺気も何も感じない。

感じるのはただ【虚無】ともいえし無の心。


「?普通の体…ではない?もしかして…彼らの元は、【精霊】…ですか?」


その姿形を無理やりに別の力にて固定化させているような感覚を目の前の輩達からは受ける。

様子のおかしいフェナスをなだめつつも、どこか冷静に横にいるティンにといかけているレニエル。


「そう。どうやら第一陣の襲撃者は朽ちた精霊の器、みたいね」


すでに精気を奪われ、ただそこに【在る】だけでしかない輩達。

存在、ともいえない、心も命もそこには存在していない。

ただ、その形がそこにある、というだけ。

そしてその形は別の力により強制的に操られるように動かされている。

今、こちらにむかってきている輩達が行うことは、この地に迷い込んできた輩の排除。

【排除】という行動パターンのみを埋め込まれた物言わぬ人形達。


「精霊の…器……」


自分達【森の民】も一種の精霊の一族、といって過言でない。

年月を得た草木がその霊力、精神力をもってして実体化した存在。

それが【森の民】。

ティンが今説明したこと。


そして、目の前のフェナスの様子から察するに、

「……私の…一族の…もの…?」


信じたくはない。

だけどもいつも冷静なフェナスがここまで動揺している、ということはその可能性が高い。

だからこそ思わず茫然としてつぶやくレニエル。

そんなレニエルの問いにティンは答えない。

…その答えは、レニエル自らがださなければいけない問題、なのだから。




「あ…あ…あ……」


動けない。

わかっている。

相手はかつて自分のしっている彼らではない、ということは。

理性では理解している。

だけど…だけども、かつてと変わらず面影を目の前にしてどうしても行動に移せない。

自分が守らなければならないのは、レニエルだけのはず。

だけども…本当ならば助けたかった。

彼らを犠牲にするのではなく、全員で【王】を守り切りたかった。

自分が選ばれ…【王】を託されたのは…まだ当時、自分が幼なかったがゆえ。

ようやく自らの意思で動けるようになり、日々鍛錬に励んでいた。

そんなまだ幼き子供である彼女達に【希望】が託されている、など襲撃者はおもわないであろう。

それゆえの【大人】達の判断。

自分達の命は未来に紡ぐため、新しい次代は新しい命に紡いでもらうため。

だからこそ、年配の存在達…

すなわち、【精霊】として力をつけていた存在達はこぞって王を守るための壁となった。

…結果として無事に【希望】である【王の卵】は無事にその窮地を脱することができた。

…数多の犠牲によって。



―― 何をしている!フェナス!お前は【輝きの守護】の一族たるもの!



ふと、どこからともなくそのような【声】が聴こえたような気がし、はっと我にと戻るフェナス。

そう。

ここで負けるわけにはいかない。

何よりも。

目の前の彼らは自分の知っている彼らにはあらず。

わかっている。

わかっているのに…だけども、心はそれについていかない。

自分に彼らを傷つけることができるのか。

…また、見捨てることができるのか?

あのときは力がなかった。

だけど、今は?

力のないときと今、とでは違う。

しかし、あのときと今とではまた状況がまったく違う。

すでに彼らから【精気】はまったくもって感じない。

むしろ抜け殻ともいえる人形でしかない。

それも【判る】。

だけども震える体はどうしようもない。


「……輝きの王の名の元に命ずる。聖なる輝きよ。我の命をもってして、虚無なる人形を無とかさん」

「レニ…っ!?」


もしも目の前の存在達が自分の一族ならば。

そして目の前のフェナスの反応からして自分を守るために犠牲になった存在であるならば。

その姿形が悪用されているのであれば…全ての始末をつけなければいけないのは…紛れもなく自分。

先ほど理解した自らの【力】。

だからこそ言葉を紡ぎだす。


「現世は幻。幻なる真実。幻なる虚無は夢。夢は現実なり。―― アラバスター…解除」


精霊の本質。

それはその生命力である霊力と精力により生み出される意識体のこと。

そしてそれらの力がつけよればつよいほど、仮初めの器を自分自身の力で成すこともできる。

いわば、【力の具現化】といっても過言でない。

その【力の具現化】を彼らの言葉で【アラバスター】と称する。

それは【力ある存在】でしか知りえない言葉であり、【柱】である存在のみができるその構成の解除。

レニーの今紡ぎだした言葉の意味。

嫌でも【理解】する。

それは…彼らの【姿】の強制なる…解除。

すなわち…姿の分解であり…その姿であることを無とする力ある言葉。


だからこそフェナスからしてみれば叫ばずにはいられない。

彼がそこまで先ほどの一瞬で力に目覚めていることは喜ばしい。

だけど…だけども、

彼らは本当ならばレニエルにとっては【聖なる存在】として傍にいるべきはずであった存在達。

それをレニエルに教えていないのは…彼がそれにたいして罪の意識をもたないがため。

自分のためにほとんどの【聖なるもの】が命を落とした…と知ればまだ幼いレニエルの心は壊れかねない。

彼らが誰であったのかレニエルに説明する間もなく、レニエルから紡がれたのは…強制なる【無】。


刹那。


ティン達のほうに武器を手にとりむかってきていたそれらの姿は一瞬、その輪郭を崩し。

そのまままるでその輪郭そのものを大気の中に溶け込ますようにとかきけしてゆく。

まるでそこに始めから何もなかったかのように。


「ん~。まあ、とりあえず、それらの【精神体】でもある【力の結晶】が無事なら、

  まだ彼らをよみがえらせることは可能、だから。あるいみ的確な判断ではあるわね」


彼ら【精霊】という存在は基本、その本体が壊れないかぎり存続を続けてゆく。

しかし、【森の民】と呼ばれし存在達のその本質は…どちらかといえばその【精神体】ともいえる。

強き精神をもっているがゆえに、本体である草木から別の姿へと変化することが可能である種族。

それこそが森の民、とよばれているゆえん。


「はい。今いたのは、姿を模した、ともいえる精霊達の人形、でしょう。

  …しかし、あのような輩をむけてきた…ということは…ここにやはり……」


おそらくは、捉えられている仲間も、そして他の輩もこの場にて幽閉されているのであろう。

幽閉、という言葉は正しくないかもしれない。

…何しろ捉えられた力ある存在達は全ては【道具】にされるべく集められているにすぎない。

強制的にその【力】を抜き取り、人工的な【精霊石】を創りださんがために。

ティンの言葉にうなづきつつも、すっと手を伸ばした手をそっとフェナスの体に添えつつ、

それでも自分の役目をはたさんがために、きちんとティンに対して自分の意見を紡ぎだすレニエル。


「まあね。…で。どうする?レニーとフェナスさんは。

  私はこのまま中央にいくつもりだけど。…二人は捉えられている存在を解放したいんでしょ?

  まあ、今のレニエルならば、あのような普通の人形相手ならば問題ないでしょうけど。

  だけども、ここには普通の【人】の抜け殻も多々といるのを忘れないようにね」


それはすなわち、死者の骸が別の意思によって強制的に動かされている存在もいる、

ということを暗に指し示している。

魂はすでに別にわけられた、というのに肉体だけが存在している、生きる屍。

つまり、それが意味すること。

簡単に捉えられている存在達を救いだす、といっても

待ち構えているあるいみ【敵】もまた【被害者】でしかない。

何よりも、


「それにこの場には実験に携わっている研究者達も多々といるみたいだし…ね」


そんな存在達に対して正確な判断が下せるか。

死を持ってつぐなわせるか。

それとも、永き時の中で反省をうながさせるか。

…決めるのは、柱の一角でもある【輝ける王】の裁量次第。

それにより、ティンがこの【世界】に対して行う【行動】も決まってくる。


…新たな構成か、それとも…未来を託すか……






「あの子もけっこう根性すわってきてるわね」


これはこの世界の未来も少しは期待できるかもしれない。

ただ、今までは傍受されるだけの守られるだけの存在だった。

それが今までの【王】の姿。

聖なる存在に囲まれ、そして与えられた役目をこなすだけの、そこにあるだけの存在。

それは、彼らがまだ動くことすらできなかったときから変わらなかった。

しかし、ティンが求めていたのはそんなことではない。

自ら考え、そして自ら感じ…そして自ら成長してゆく。

それを願っていた。

他者の意見に流されるままではなく、自らの意思により自分で成長してゆく。

王が成長すればそれに連なる属性のものもまた成長してゆく。

輝ける王は、この地における草木に根ずく緑の象徴。

自然の力が強くなればそこに根ずく数多なる生命もまた強くなってゆく。

ティンと共に中央にくるか、それとも自分達だけで捕らわれの存在達を救いだすか。

ティンの傍にいれば実際問題としてまったくもって危険も何もないであろう。

すくなくとも、ティンが傍にいるだけで【王】としての力が自然と解放される。

しかし、レニエルが選んだのは、フェナスとともに被害者達を救出にまわること。

もともと、この地に向かいたかった理由は、捕らわれた存在達を救いたい、という思いから。

そのときはティンが【誰】なのかまったくもって理解もしていなかったレニエル。

レニエルとてティンの許可がない以上、

勝手に正体を話していいような【御方】ではない、と力に目覚め覚醒したときに理解している。

それほどまでにティンの存在は、この世界にとってはあるいみ衝撃的なこと。

輝ける王が強くなれば大地もまたそれに伴いその力をもってして強くなる。

薄っぺらい大地のみでは生命はいずれは死に絶える。

かといって全ての力が大地に返還されればそれこそ惑星そのものの力は涸渇する。

世界は微妙なるバランスにおいて成り立っている。

もっとも、そのバランスをいともあっさりと壊そうとしているのが

ほかならぬ人類、という種族であるのだが。


「というか。なんで私達のところでもそうだけど。人類って毎回同じような過ちおこすのかしら?」


それは今のところ知っている数多なる世界においてもどうやら同じようなことが起こっている。

自分達が全てを支配できる、とでもおもっているのであろうか。

実際に、世界を守り導いてゆく、というその大変さはおそらく経験してみなければわからないのであろう。

壊すことは簡単でも再生することは難しい。

それまで培ってきたものをすべてなかったことにするその勇気をもちえなければ、

無から始める、という気持ちもおそらく生まれない。

ティンの周囲には先刻と同じようにいくつもの青き炎が立ち昇っている。

ティンの近くに近づこうとした様々な姿をしている存在達は、

ティンに近づくこともなく、そのまま青きの炎に包まれ、その場にて崩れ落ちている様がみてとれる。

しかし当然のことながらその炎は周囲にある建造物の一部であるであろう。

装飾品や壁、などといったものにはいっさい傷をつけていない。

正確にいうならば、焦げ跡もまったくもってついてなどいない。


ティンがその気になればこの建物ごと【ないもの】として扱うことも可能。

しかし、この場を残すことにより、彼ら達にとって自らの過ちを顧みる材料にしてみるのも一つの手。

そう思い立ったからこそ、建物に傷一つつけることなく、炎のみ操り進んでいるティン。

ここにくるまで幾人もの協会関係者であり、実験の関係者でもある【帝国】に属する人間。

そういった輩もティンに気づき、むかってはきた。

しかしそういった輩もまた今は炎につつまれ、その苦痛をもってしてその場に苦悶していたりする。

そもそも、こんな実験というか計画に違和感なくそれこそが正義、としてしか思わない輩には、

別の視点からの視野も必要であろう。

そんなティンの心優しき配慮により、炎に包まれた存在達は、

自らが手がけた実験体…すなわち、被害にあった様々な【存在達】。

彼らの苦痛を全て自分の経験としてその精神体そのものに炎を媒介としてうけている。

それで彼らの精神が壊れるもよし、反省するもよし。

壊れるにしても反省するにしても、それは彼らの自業自得というか彼らが選んだ結果。

自分がされて嫌なことは相手にしてはいけない。

それはどんな種族においてもいえること。

しかし、彼らはそんなことをまったく考えずに…

自らの欲とそしてその研究心だけのために行動を起こした。

だからそこに情緒酌量の余地はない。

視るかぎり、どうやらレニエルのほうは、その力をもってして、

意識ある存在は普通に眠りにつかせているだけ、みたいではあるが。

しかしそれで彼らが更生する、ということはまず確実にないであろう。

目覚めたとき、彼らは逆にレニエル達に対し牙をむくことは必然。

それでも、まだレニエルはそこまで非常に徹しきれていない。

何かを守るためには何かを犠牲にしなければいけないこともある。

それはわかっていても、どうもそこにまで心がおいつけないらしい。

まあそれもいつまでもつか、というところか。

そもそも、自分本位でしかない存在はどのように反省を促しても、所詮そのしがらみからは抜けきれない。

それこそ魂を完全に浄化し新たな生を踏み出さない限りは。

浄化の力はたしかに全ての不浄なる気を完全に浄化させることは可能。

しかし、その本質がかわっていなければ同じ不浄は再びたまりゆき、また同じ過ちを繰り返すこととなる。


例えていうならば、

一人の人物がいずれは世界を破滅させる何かを生み出すと決まっている。

とする。

その人物に対し計画を断念させようといろいろと手をつくした結果、

それでもその人物は自分の計画のもたらす結末を考えずに自らの欲望のままにその計画を実行。

そして世界は破滅。

しかし、その人物が世界を破滅させると完全に確定した時点で彼を抹消していれば、世界は救われる。

どちらも救いたい、という思いはたしかに大切な心ともいえる。

しかしそれで数多な命が滅んでしまっては…もともこもない、ともいえる。


そして、レニエルはそれらを決定する重要なる立場にいる【柱】の一角。

ティンからしてみれば、幾度もこのようなことを経験したがゆえにそれにたいしての迷いは一切ない。

むしろそのせいでいくつもの世界が滅んでしまった様をみているがゆえに迷いはない。

たかが一つの問題のせいでその【世界】そのものを破滅させるいわれはない。

もっとも、今のように【任された】初期はそのようなことを多々とやってしまい、

自らの苦労をさらに倍増させていたりしたのだが……

この【世界】はある程度慣れてきたがゆえに産みだしてみたとある【世界】。

全ての命が平等であり、そして共存できる世界を目指して産みだしてみた。



しかし…いまだにその願いはこの地においてもかなえられては…いない……






打ち込みしてみないと脳内ストーリー文章の容量はいまいち不明、というのがよくわかります。

楔にしても脳内においては短いんですけどね。

ちなみになぜかこれをやっている最中、楔と並行して「魂」というとある小説をメモ帳にうちこみしてるんですけど・・それのアナザーストーリーがおもいついてしまい、それが頭からはなれず…何だかなぁ・・・

また誘惑にまけてメモ帳でそれをもうちこみはじめるかもしれない薫です・・・


前回、今回精霊王登場、といいましたけど容量的に次回にまわします・・・

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