人間属に舞い降りた天使様?
あやねは周りが騒がしくなっているのに気づいて目が覚めた。
「おー、気が付いたようじゃ。」
「ほんに、ほんに。めんこいのお。」
知らないおじいさんとおばあさんが、自分を覗き込んで何か言っているようだ。
視界がだんだんはっきりとしてきたので、周囲を確認してみると、木造建築の
日本の古民家のような雰囲気だったが、畳では無かったし、囲炉裏は無かったし、
ベッドでも無かったし、暖炉も無かった。
と言うのも今のところは暑くも寒くも無かったので過ごしやすい土地の様だった。
おじいさんもおばあさんも西洋風のくっきりとした顔立ちの70歳位の見た目だった。
思わず「ハロー」と声を掛けてしまいそうだったが、あやねは相手の言っていることが
全て分かったし、東北弁っぽく聞こえる細かい微調整も自動言語変換能力が備わっている
ようだった。
「あっらー、目が覚めたようだけんど、言葉は分かるずらか?」
と優しそうな声でおばあさんが話しかけてきた。
東北弁っぽいが静岡っぽくもあったが、まあ自動言語変換能力さんにつっこむのは
止めにしておこう。
「あ、はい、私、ここはどこですか?」
とおばあさんの問いかけにしっかりと返事をした。
「あっ、言葉はわかるだにか。良かったずら。」
と西洋風の顔立ちに地方の方言のおじいさんとおばあさんの違和感が半端無かったので、
なかなか中身が入って来なかった。
まあ、おそらく優秀な自動言語変換能力さんはここが地方の田舎言葉であることを
強調したいのであろう。その後で知ることになるのだが、ここは人間属の都市からは
かなり遠くの辺境の地で、魔属との国境と隣り合わせの田舎村だったようだった。
あやねは目が覚めてから何か頭の中に存在する異物のような存在に気が付いていた。
「あなたは天使様ですか?」
と頭の中の異物に話しかけてみた。しかし返事は無かった。
「あなたは世界神様ですか?」
と何か思い当たる節があったのでそのように質問してみた。
しかし返事は無かった。
「あなたは私をサポートしてくれるのですか?」
今度は少し質問の内容を変えてみた。
「はい、私はあなたをサポートする能力です。」
と女性っぽくもあり男性っぽくもある中性のメリハリの利いた声が頭の中で響いた。
どうやらビンゴだったようだった。
あやねはこの世界に送られる際に天使様と約束をしたのだった。
それは、《人に能力を与える力を下さい。》というものだった。
おそらくこの頭の中の異物はその能力を与えることが出来る存在なのだろうと。
「では、あなたのことは、能力様と呼んでもよろしいでしょうか?」
とあやねはわざと、他人行儀な丁寧な言葉で質問してみた。
「あやね様、あなたは私であり、あなたが主人ですので、
敬称も敬語も不要でございます。」と返事があった。
「分かりました、能力さん、早速ですが、自動言語変換能力の方言機能を
OFFにしてもらえませんか。」
とあやねは能力さんと呼ぶことにしたらしい存在に聞いてみたようだった。
「はい、もちろん可能です。では今後はOFFにいたします。」
と能力さんは素直に言うことを聞いてくれた。
「ここは、辺境のデリト村です。隣は魔属の国です。」
とおじいさんの言う言葉が方言無しに変わったのですんなり聞き取るようになった。
あやねはデリト村の事は何も知らなかったが、天使様に転生されて辿り着いた土地で
あることはそれで十分に理解できた。
「そうですか。私を助けてくれたのですね。ありがとうございます。」
と家まで運んでくれて寝かせてくれていたお礼をあやねはおじいさん、おばあさんに伝えた。
「ところで、言いにくいのですが、お嬢ちゃんは魔属なのかい?
それともお父さんが魔物のハーフとか?
背中に白い羽のようなものが付いているのを見てしまったんですよ。
いや、仮に魔属だからって、すぐに保安官に突き出したりする積りはないのですが。
人間属には背中に羽の付いた者は居ないから、
とりあえず隠した方が良いと妻と相談して、妻がサラシを巻いてくれたんですが。」
と申し訳無さそうにおじいさんは聞いて来た。
おじいさんにそう言われて、あやねは初めて自分の姿をまじまじと見た。
するとそこには典型的なエンジェルが居た。年恰好は5歳位の女の子で西洋風の
目鼻立ちのきりっとした美形の容姿だった。
「やりすぎー。天使様、確かにお任せとは言いましたけど。」
と頭の中で呟いた。
「恐れ入ります。」
と能力さんが答えた。
「お前かーい。」
と思わず能力さんに突っ込みを入れた。
「はい、私が天使様に言われて造形を担当いたしました。
天使様の姿に似せるのが一番かと。」
とさすが能力さんは冷静に答えた。
確かに自分はステータス設定のプロだが、グラフィック(外見)は専門外だと丸投げした。
その結果がこれだ。
「……はぁ。まあ、いいわ。グラフィックの修正は後回し。
まずはこの村の『バランス調整』から始めようかしら。」
あやねは、自分を助けてくれたおじいさんとおばあさんの頭上に、
半透明のステータスウィンドウをそっと表示させた。
世界を救う前に、まずはこの親切な老夫婦の「健康値」と「寿命設定」を、
少しだけプロの手でいじっておいてあげよう。
それが、異世界に降り立った「最強のデバッガー」の初仕事だった。
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更新が遅れて申し訳ございません。
最強の光神は、二度と夜を許さない。 〜国民的ゲームの主人公になって、絶望の淵にいた多種族を全員幸せにします。……でも、照れるとすぐ体がピンクに光るのは勘弁してください〜
の執筆に全力を注いでおりました。こちらは12話で一旦完結となりましたので
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