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①プロローグ

初めに言っておくがこれは私の小説ではない。精神はともかく、肉体にのみ関して言えば私は55年前(1970)の市ヶ谷の地で既に滅んでいるのであり、何の因果にせよ今こうして【令和】という時代にいることはこの世の道理に反することだ。しかし私のこの肉体は死んだはずなのに蘇り、呼吸をして腹も空く。この身体を無下に殺してしまうわけにもいかず、また引きこもりのように何もしないわけにもいかず、仕方がないのでこの『売れない小説家』を自称する女の部屋に居候させてもらう代わりとして原稿を添削してやろうということになったのである。読んで分かる通り、この作品の出来は到底素晴らしいとは言えない。この女は死に損ないの象使いのように覚えが悪く、文章の何たるかを何度教えてやっても一向に上達する気配が見えず、とうとうこの日(つまり11/25)を迎えてしまったのであった。私のところにいた5歳の子どもの方がもう少しまともな文が書けると思う。然し、この女の作品を私が書き直すわけにもいかない。先にも言った通り私は死んだはずの人間だからである。この時代をつくれるのはこの時代を生きている人間のみである。

私はまるで、人間自らが悟りの道へ至るのを辛抱強く待つ仏のように、この時代を生きる者たちが自らの手で自国の在り方を考え直すのを待っているのである。


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