異世界転生する
イブキ ナツコ。26才。小学校教師。独身。
これが私のプロフィール。
深夜まで翌日の授業の準備をする日々が続いている。
そんな私の楽しみはラジオを聴くこと。
特に深夜ラジオが好きだ。今も手を動かしながら耳を傾けている。
「お前ぇ……なんでそんな昭和に詳しいねん! 同い年と思われへんわ」
「ええやんけ! 昭和のアイドルとか好きやねん」
関西弁のやり取りの応酬は私の笑いを誘う。
思わず手が止まってしまう。
漫才のコンテストで優勝したコンビの深夜ラジオ。
オープニングから長い間フリートークが続いている。
どうしてこんなにずっと面白い会話を続けられるのだろう。不思議だ。
「そろそろ寝ないとやばいかも」
私は時計を見て呟いた。
明日も休日出勤しなければならない。
名残惜しいがラジオを消した。
放送時間はまだ半分以上ある。
けれど、リアタイ出来なくても大丈夫。
スマホアプリで後日でも聴くことが出来る。
便利な世の中だと思う。
私は毎日深夜ラジオを聞いている。
俳優のラジオもアーティスト、アイドルのラジオも、もちろん芸人のラジオも大好きだ。それぞれに良さがある。
立ち上がり就寝の準備をする。
歯を磨き、加湿器に水を足す。
さあ寝よう。
ベッドに入ろうと体を曲げた。その時。
ズキン。ズキッ。
激痛。
胸部を押さえる。
「っつ……!?」
痛い。痛い。痛い。
倒れてしまう。
シーツをがむしゃらに掴んだ。
まだ痛い。
あ、死ぬ。
私はそう確信した。
視界が暗くなっていく。
心臓の痛みは消えない。
どうせなら……最後のコーナーまで聞いとけば良かった。
ネタコーナーにメールだって送ってたのに……。
後悔しながら私は意識を失った。
「オギャーオギャー」
あれ。誰か泣いてる。赤ちゃんだ。
「ー〜ー〜」
「〜ー〜ー」
誰かと誰かが話してる。何を言っているのか分からない。
私は助かったのだろうか。
声を出してみる。
「オギャーオギャー」
あ、私だ。
え。
もしかして。
転生って奴ですか。
ラジオリスナーが転生して頑張って生きていく話です。