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15.修学旅行3日目


 翌日。僕たちは中京区へとやってきた。錦市場という商店街のような街並みで初めてきたというのに初めてではないくらい懐かしい気持ちになりながら練り歩く。


「店いっぱいあるな」

「京野菜だとかあるみたいだね」

「あ、あのお店って扇子屋さんかな?」

「そうみたいだねぇ。嶋山くん寄ってみる?」

「ウチは何あるか気になるな〜」

「ははっ。きみたちが寄ってみたいなら行こうか」


 梨奈さんと沙美さんの露骨な我儘に僕は苦笑する。二人は喜んでるからまぁ良いかな。


「ほわ〜! おっしゃれ〜!」


 店内には様々な柄の扇子が飾られていた。あかりが声を上げつつ扇子を見ていく。そんなあかりを微笑ましく見ながら僕と前田くんも店内に入っていく。


「恭弥はどれ買う?」

「ん〜……まぁ、無難なこれかなぁ。前田くんは?」

「俺はこれだな」


 僕は黒を主体に金の風の模様を模られた扇子を手に取り、前田くんはどうやら数多くの武将の家紋の扇子を選んだようだ。実に前田くんらしい。


「お、二人はそれ選んだん?」

「うわっ! って後ろから急に話しかけないでほしいな梨奈さん」


 後ろから身を乗り出し、手に持った扇子を見てくる梨奈さんに驚き、思わず後退る。梨奈さんはその様子に腹を押さえながらケラケラ笑う。


「そんなにびっくりすることなくない?」

「い、いや、いきなり声かけられたら驚くでしょ……」


 ふぅーっと自身の胸に手を当て深呼吸してどきどきと五月蝿い鼓動を落ち着かせる。


「……それで、梨奈さんたちも選んだの?」


 梨奈さんの手に握れている閉じた扇子に目を向ける。鮮やかな赤色が見える。


「あ、ウチのはね〜……これっ! どう? 可愛いでしょ」

「紅葉柄か〜なるほどね。うん。確かに可愛いし似合ってるね」

「あ、ほんとー? ありがとっ嶋山くんっ」


 ぴょんぴょんと跳ねるように喜び、前のめりでそう言われ、距離の近さに再度ドギマギする。


「あ、う、うん。喜んでくれたなら良かった。えと……それで沙美さんとあかりはどう?」

「私はこれ〜。どう?」


 バッと開いて見せてくるその扇子を見る。あかりが選んだのは鮮やかな薄紫色の紫陽花が一輪左端に描かれただけの非常にシンプルだが紙の色が鮮やかな淡い青色に相まって非常に似合っている。


「あかりらしいね」


 だから、素直に言う。らしいとはどういうことなのかとも思うけれど。


「えへへ〜でっしょ〜」


 扇子を閉じて両手で握り締めながらにへらっと咲うあかりに目を見張るくらい僕の目を奪う。


「ちょっと〜。わたしのはどーなのー?」

「あ、あぁ……ごめんごめん沙美さん」


 不満気だけどさして気にはしてないようだ。しかしジト目で手に持っている扇子で突っつかれる。すぐに謝罪してその扇子を見る。

 白い背景にまるで綺麗にばら撒かれた絵の具のように散りばめられた桜の花弁の扇子だった。僕は思わず目を見開いてしまう。

 意外だなと思ったからだ。沙美さんだったらてっきりもう少し派手目なモノを選ぶと思ったからだ。それこそ偏見というものだろう。僕は心の中で謝罪する。


「とても良いと思うよ」

「ほんと?」

「うん。ほんと」

「にっしし、ありがと恭弥くん」


 その後、皆で出し合いつつ購入しその店を後にする。他にもお店があり、(まさ)しく選り取り見取りといったものだろう。


「あ、似合うじゃん前田くん」

「やっぱりガタイが良いからそういうの似合うねぇ〜前田くん」

「そ、そうかぁ〜? こんなん初めて着たぞ」

「こういうのと合わせるってのもアリじゃない?」

「うんうん! アリだと思う」


 練り歩いている最中、沙美さんが目を向けたのは錦市場の通りから少し外れたとこにある古着屋だった。店の中は非常にお洒落で高校生の僕たちは場違いなのではないかと思う程。

 そんな中で今前田くんにデニムジャケットを試着させている。値段は、まぁ……うん。古着なのに結構するなと遠い目を向けそうになるけれど一着ならば買えるだろう……多分。


「そこまでお前らが言うなら……買うか」

「ま、迷いがないね前田くん」


 僕だったらその値段見たら勇み足になると言うのにさすがだ。


「こういうの一つは着てみたかったしな」

「なるほどねぇ」

「わ、これ良くない!?」

「あ、確かに良いかも〜」

「お洒落だしね!」


 そんなふうに女性陣たちで楽しんでいるのを横目に僕は僕で店内をまた一度見回す。所狭しと飾られている古着の多さに少なくとも圧倒されている。僕もそこまで服は多くない。

 お洒落とか無縁過ぎるしそこまで興味が無いものでもあったからだ。けれど前田くんの言うように一着程度なら持っていても良いのかもしれない。そんなふうに思いながら店内をゆったり巡る。


「あ、これ良いな」

「んね、きょーやに合ってるかも」


 いつの間にやらそばに来ていたのか分からないあかりが僕の手に取っていたパンツを見ながら頷いていた。


「あと、こういうのも良いんじゃない?」

「んー? ふむふむ。色が違うんだね。全然持ってないの多いなぁ」

「ふふっ。確かにこういうの履いたとこ見たことないかも」

「ははっ。だね」


 互いに部屋を行き来しているためあかりは僕の持っている服を何気に把握している。だいぶ前に僕なりにお洒落には気を使うようにはなったけれどそれでも服が少ないとあかりに言われていたのを思い出す。

 何も、ここで買わなくても良いのだけれど、こういったお洒落な古着屋で物色し琴線に触れるものがあれば買うというのも乙なものだろう。


「ね、それは似合うと思う?」

「ん〜……どうだろ。多分履いてみないとわかんなくない?」

「確かに。試着室あるみたいだし履いてみるね」

「ん、良いの?」

「うん。もしきみのお眼鏡に適うならそっち買うよ」

「そっか。じゃあ、そうしてもらお〜かな」


 あかりの手に持っているパンツを片手に試着室に入る。そこから少しして試着室から出る。


「上、制服のままだけどどう?」

「あ、良いじゃん良いじゃんっ」


 あかりの声色と顔から鑑みればどうやら彼女たち風に言うならアリらしい。であればこれを買おう。


「おっけ〜じゃあこれ買おうかな」


 サイズも丁度良かったしと思いながら再度試着室に引っ込み、着直してから出る。そしてそれから少ししてから僕と前田くんで折半しつつ──結局のところ僕と前田くんだけ購入した──店を出る。時間まで目一杯再度錦市場を散策し尽くした。



「ねね、きょーや」

「ん〜? なーにあかり」

「楽しい?」

「ん。とっても」


 嘘ではなく、本心の笑顔で答える。僕の横で腰の後ろで手を組んで少し前屈みのあかりは笑ったまま続けた。


「もっと思い出作ってこーね」

「うん。そうだね」


 2人顔を見合わせて笑う。そんな初めてだらけの修学旅行だった。

ここの古着屋行ってみたすぎる。

ちなみにここのお店あるんだって知ったのは原田龍二さんのYouTubeチャンネルでの動画なんですよね。とてもオシャレな店内でほんとにいつか行ってみたいですね

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