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第17話 ファンタジック


「なぁ、コレでいいん?二割とか五割とかそんなレベルじゃないよね?」


 自治区の外れに工房を構えてた親方は、自治区のトップの一人だったのだ(ばばーん)

 むしろ自治区の外縁は特権階級が義務と権利をもって開発をも担っていたとか寝耳ミミズでしたよ。

 んでもってドワーフ自治区の秘奥中の秘である隠された坑道最奥に工房を構える事になったんだけど、ね。


「“手に負えない技術は負の遺産になる”…技術供与は段階を踏んでってのが教科書通り(セオリー)だよね?」


 ジト目でザッキーを薮睨みする、俺ちゃんだって技術至上主義(テックイズム)の信者なのだ。

 原始的とはいえ永久機関も組み込んだ多重積層魔導複合炉とか軽く10世代くらいブッ飛ばしたシロモノを据え付けてらっしゃいますの事よ?

 そりゃあね?一月くらいゴーレムダンジョン通いでしたよ?素人感覚でも単純な魔導制御炉作るには求められるドロップ多いなー、けど単純炉って単気筒エンジンみたいに結構大きくなるしなー。とか思ってた時期が俺ちゃんにもありましたよ。


「ゴーレムコアをベースに自律作業機体(アンドレイバー)量産して文明侵食は最低限にして、隔離した秘密基地で宇宙進出ってシナリオだったっしょ?」


「サエキさんもそんなにアツくならないでよwww “技術と対する時は常に理性的であれ”…俺も技術至上主義(テックイズム)は嗜んでおりますよっとね」


「サエキさんが危惧してる事はよく分かります…別に無責任にドワーフ達に技術を押し付けるつもりはありませんよ?むしろ試金石ですよ。少なくとも技術至上主義(テックイズム)の理念は理解してると見ました、そして原始的な永久機関ってのは、むしろメンテナンスとパフォーマンス維持が難しいものなんです。この複合炉は良くも悪くも永久機関をキーにして動く様にデザインされてます。」


 なるほど…道理で随分イビツな複合炉に仕上げた筈だ。


「だとしても、この世界では超技術なのは変わらないんじゃね?」


「サエキさんwww」


 パイセンが肩を叩きながら草を生やす。流石の一級草栽培家だ。


「「テンプレとは中々出会えてないけど、ここは夢に手が届く世界(ファンタジー)なんだから」www」


「少なくとも彼等は、この程度の夢に届くだけの位置にいますよ」


 うわー、ザッキーのイケメンスマイルとかレア過ぎるわー、むしろ俺ちゃんがそのスマイル担当したいわー。


 溜め息を吐きながら拳を突き出すと無言で拳を合わせてくる変態二人。

 お前らのイケメンムーブはここまでだからな!



 ――――――――



「それなりに懐は深いですが、ある程度以上の品質を求めるとピーキーな炉です。連結してる低温炉は別制御なので、まずは各パラメーターが閾値を超えない運用をお願いします。メンテナンスガイドはこちらで起動します、コピーは一度の再生で消失しますけど基本的に持ち出し禁止でお願いします。炉の習作は第三区画までのシミュレータ及び工作場で制作キットが準備されてます。」


 ザッキーさんがイキイキしてはるw

 あれは絶対にサブスペの設定資料集暗記してるヤツだわ。

 クッソ恐ろしい事にサブスペの設定資料集にはネジの一本の説明から始まってオートメーション工場なら車一台とか飛行機一機組み上げられるくらいの工程管理とか記載してあったとか…オソロシア。

 俺ちゃんが暇さえあればトレモに勤しんでるのと同じくらいミューラー号から転送された不思議機械をイジり倒してたからなー。

 しかも不思議機械のデータ持ち込んでトレモをシミュレータとして活用してたとか、もう、ね。

 シレッと「ちょっと我々がいた世界とは物理法則が違いますねぇ」とか言ってんの、控えめに言って変態よな。



 ――――――――



 ゴーレムダンジョンの最奥、アダマンタイト・ゴーレムがボスとして鎮座する聖域に踏み込むと、物言わぬ構造物が仮初めの命を吹き込まれた感謝を示すかの様に、それはプログラム通りの所作だったのかも知れないが、剣を構え騎士の礼を示す。


 やけに滑らかな足運びは、さぞ名のある流派の体捌きの模倣なのだろうか…継ぎ目のない流麗な剣舞は至極合理的に標的を追い詰める事だろう。

 相手が高度なCQC使いでなければ、の話であるが。

 一頻り即興のダンスを楽しんだパイセンはゴーレムの虚を衝き、しかし踏み込まず大きく距離を取る。


「何処の流派だか知らないけど随分お堅い剣術だ、倒す事より重心の維持と剣を手の内に残す事を最優先してるわwww今のままだと、おもっくそ長期戦になるからサエキさん頼むわwww」


 珍しく少し悔しそうなパイセン。

 

「りょ」


 間合いが入れ替わった俺ちゃんに構え直すゴーレム。

 軽く腰を落としタメを作ると飛び道具を警戒したのか剣先を下げた独特の防御の構えを見せる。


「すまないが…これが“シン・サエキバースト”だ!」


 力の奔流が圧縮から解放される瞬間、テレポートが発動!

 死角からの攻撃に反射的に放たれた剣の軌跡は、確かな気配を掴みつつも空を斬る。

 そう、更なる進化を遂げたサエキバーストは衝撃波のみがテレポートアウトしてくる。

 後頭部から突き抜けた衝撃波は繊細な身体コントロールを奪う。

 崩れた体勢を立て直す為の強い踏み込みを許さぬ様に顎下から再度衝撃波が衝き上げる。

 まだ充分な強度を保った装甲を抜けてくる、一度ならぬ衝撃波に頭部にある運動統制コアが制御を失う。



 ────サエキボール・ミーティア────



 多重エネルギー弾がコメカミに食い込み、対衝撃運動が出来ない頸椎が負荷に耐えきれず破壊される。


 理不尽な攻撃に疑問を示すかの様に傾いた首が戻らない…類稀な剣技を支えていたボディバランスが崩れた今、最早勝負は決した。


 超必殺技“サエキボール・ミーティア”


 まーぶっちゃけ多段ヒットするサエキボールである。


「おうおうwww上から下からチートバーストからのミーティアとか絶対殺すマンすぐるwww」


「チートバースト言うなしw」


「じゃあバグバーストですか?」


「なおさらやめい!w」



 

 なんとも緊張感の無いダンジョン踏破があったものである。



 


 

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