泥棒
家に着くと窓が割られ家の中が荒らされている。金品と魔石、薬師の本数十冊、おまけに道具一式全て無くなっていた。
「なにこれ…泥棒?」
コハクから貰った聖虹花も床に落ち無惨に踏み潰されている。カレンはお花を大事に拾いもう一度花瓶に挿した。
「ひでぇな…どういう事だよ」
「泥棒に入られたみたいね。今から警備隊のところへ被害届けを出しに行くわ」
「俺も行くぜ。」
「…ありがとう」
涙ぐんでいると頭をぽんぽん撫でられた。
警備隊のいる場所は繁華街の中心にある。
夜の繁華街は酔っ払いや夜遊びする者で溢れている。
「ようコハク。夜出歩いてるの珍しーじゃん。」
「デューク。店が泥棒に入られて、これから被害届け出し行くんだ。」
「マジ!?泥棒とかやべえな」
「コハクー♪昼間は楽しかったねっ!
…あら?薬屋の真面目ちゃんじゃない。この子昔っから勉強ばっかりで全然外で遊ばないのに。夜遊び覚えちゃったの?」
「エミリア、やめろよ。
カレンちゃんだよね?俺昔から君のファンでさ。やっぱ近くで見ても超美人だしおっぱいもでかいなぁ。
今度一緒に遊んでよ。楽しいこといっぱい教えてあげるから。」
「教えて頂かなくて結構です」
「つれないなー。そこがまたそそるんだけど。」
「感じわるっ!小さい頃から勉強ばっかで、大きくなったら仕事一筋。あんたの人生つまんないね。それで泥棒に入られてんの?ほんとついてなさすぎてウケるんだけど」
「お前らいい加減に…」
「人の不幸が楽しいの?残念な人達ね。
あら?この臭い、あなた達悪ーいお薬使ってるのね。良いカモにされる人生は楽しいかしら?
その薬使い続けると心も体もボロボロになるけど。どうぞお幸せにね。」
カレンはそう言い残し颯爽と立ち去る。
コハクはカレンについてくる。
「コハク、あなたがどんなお友達と付き合おうと自由だけど…変な薬には手を出しちゃダメよ。」
「アイツらとはもう会わねーよ。カレンにあんなひどい態度取るなんて。許せねー。」
「ねぇ、さっき殴ろうとしたでしょ?」
「あ?そりゃムカついたからな!」
「あんなの…殴ったら負けよ。殴る価値も無いんだから。」
静かに怒るカレンはとても怖く、カレンを怒らせちゃダメだとコハクは心に誓った。
警備隊に被害届を出しその日は帰宅する。
「本も道具も無くなっちまったけど、店大丈夫なのか?」
「道具は倉庫にまだあるわ。本の内容は全部覚えてるから問題ないの。」
「ぜ、全部?あの厚い本を何十冊もか??」
「師匠はとても厳しい人でね、さっきも話に出たけど、私は勉強が忙しくて外で遊ぶ事は許されなかったのよ。」
「な…なんだよそれ!酷い奴だな!!
」
「師匠を悪く言わないで。そのおかげで今私は仕事ができて生きていけるんだから。」
「で、でも…俺がその時にいたらお前を連れ出してた」
「へ?」
「連れ出して、一緒に鬼ごっことかかくれんぼとかして遊ぶ!」
「…なにそれっ!コハクって面白いね。」
「ついでに師匠も一発殴っとくか!」
「暴力はやめなさいよ!」
(コハクと一緒にいると嫌な事があっても忘れられる。コハクは凄いなぁ…)
その日部屋の窓が破られてしまったのでカレンの部屋にコハクのベッドを運び入れて眠る。
ベッドは極限まで離して間にパーテーションを置くが変に同じ部屋で寝ることにドキドキしてしまう。
ドキドキしたけどとても疲れていてすぐに眠れた。疲れていて本当に良かった。