気づいてしまった想い
あれから一ヶ月、城の卸しは無くなったがお店にお客さんが絶えず来るので店の経営は安定している。
コハクも仕事を少しずつ覚えてきた。厳つい外見から始めは怖がられていたが、次第に馴染み、カウンターで対応もできるようになった。
「らっしゃい!ばーさん今日はどうしたんだ?」
「リウマチの薬が欲しくてね。」
「カレン、リウマチの薬だって」
「はーい!今用意するわ」
「カレン、今度は熱覚まし。ちっせぇ子供だ」
「年齢と体重を聞いてメモとっておいて。あとは私が対応するわ。」
「俺字がかけねー…」
「今度教えるわ。裏から赤い瓶を取ってきてくれる?」
「おう!」
コハクは口は悪いが元気よく対応してくれるのでお店にも活気が出る。
見た目も良いので最近はコハク目当ての女性客も増えてきた。
知り合いも出来たようで、休み時間や休みの日は街に遊びに行くようになる。女の子とデートも楽しんでるようでなによりである。
(このまま良いお嫁さんが見つかるといいわね)
そう思うのだが何やら心の中がモヤモヤとする。
(まさか…認めたくないけど私はコハクが好きなのかもしれない。
なんでよりによってあんな生活能力ゼロの男に惹かれてしまうんだろう…
もっと堅実で、真面目な人を好きになった方が絶対に幸せになれるのに。)
カラン♪と扉の開く音がする
「いらっしゃいませ。あ、リュート久しぶり。」
「カレン久しぶり。
あの…城の卸しの事、ごめんね。僕には何も出来なくて」
「いいのよ!正直腹は立つけど、お客さんは沢山来るし。コハクも人気が出てきて女性客も増えたから」
「あいつは?」
「今休み時間だから女の子とデートに行ったわよ。」
「ふーーん。そうなんだ。見た目通りチャラチャラしてるんだね。カレンの家に転がり込んで、適当にお金もらって、遊び歩いて…ヒモ男にしか思えないんだけど」
「確かに……バイトというよりヒモ寄りね。
でも言いつけは守るし、働く時はしっかり働いてくれるのよ。」
カレンはコハクを思い出し胸がときめく。
「…ねぇ、まさかとは思うけど。アイツのこと好きなの??」
「…………え??…たぶん…そう…なのかも…?」
「嘘だろ!?」
「本当に何でだろう…頭では分かっているんだけどね」
「頼むからやめて。カレン、僕と一緒になろうよ」
リュートに両手を握られる。彼の緊張と真剣さが伝わってきてドキドキする。
その時コハクが帰ってきた。私たちはそっと手を離す。
コハクは不機嫌そうな顔をしている。
「コハクおかえり。どうしたの?女の子に振られちゃった?」
「うるせー!お前にかんけーねーだろ!!」
「おい、そんな言い方無いだろう」
「私が余計な事言ったのがいけなかったの。」
(この機嫌の悪さは振られたわね。)少し安堵する自分が卑しい者に思えた。
「僕は帰るけど、彼の違う住処を探しておくよ。」
「え??」
「だってこんなの辛すぎるだろ。」
「……ごめん、リュート。それでも一緒に居たいの。」
大きなため息をつきリュートは帰っていった。
(自分でもおかしい事は分かってるけど止められない。)
「ねぇ、コハク。さっきは余計な事言ってごめんなさい」
「…俺も、大きい声出して悪かった。」
「あのね、今日は満月なの
満月にしか咲かない特別な花、月光花って言うんだけどそれを採りに行きたいんだ。コハク一緒に来てくれない?」
「あぁ、いいぜ。」