二度あることは三度ある
カレンは家に帰り扉を勢いよく開けた。
「コハク!!」
コハクはまだ傷が痛むのか横になっている。
「あなた、伯爵家のお嬢様を攫おうとしたんだって?」
「あ?はくしゃく?なんだそれ?」
「とにかく、女の子を無理矢理連れて行こうとしたのよね?それは犯罪なのよ!騎士団に行ったら怪我人だらけ。あんたの話題で持ちきりよ!」
「約束したんだよ。魔石いっぱい持ってきたら俺と結婚してくれるって言うから。それなのに騎士の奴らに邪魔されて会えなかった。
てか俺話題?有名人かな?やったぜ!」
「悪い方の有名人よ。ここにコハクがいる事がバレたら私も危ないの。治療費だけ置いて出て行ってくれない?」
「チッお前も俺を邪魔者扱いか。…言われなくても出てくわ!もう来ねーよ!」
コハクは魔石を全部置き、乱暴にドアを開けて出て行った。
(怒らせちゃった…こんなにいっぱい魔石貰いすぎなんだけど…どうしよう……。)
ーーーーーー
数日後、またいつもの場所でコハクが行き倒れている。
二度あることは三度ある。とはよく言ったものだ。
「もう来ないって言ったのに。息は…してるわね。」
いつも通りポーションを飲ませて傷の手当てをする。
「あ……またお前のところ来ちゃったな…ポーションありがとう。じゃあな」
「まって!」
「何だよ?」
「…この間は追い出しちゃってごめんなさい。
コハクが見られたのは魔物の姿の時なのよね?人間になってる姿は見られていないのよね?」
「あぁ。そういえばそうだな。あの女俺の魔物の姿を見ても驚かなくてよ!優しくて可愛くて…。」
「惚気はいいから。行く当てがないならうちに来ない?ちょうどお店の手伝い募集してるの。」
「……いいのか?」
「何度も行き倒れられても困るしね。」
「実は困ってたんだ。カレンありがとな!」
コハクはニカッと無邪気に笑う。
「なぁ、お前は一人でここに住んでるのか?」
「えぇ、一年前までは薬師の師匠と二人暮らしだったんだけどね。師匠が亡くなってからは一人よ。
…コハクは魔族なの?」
「俺は…狼の獣人と人間のハーフだ。でも他のやつと毛の色が違うからいつも仲間外れでよ、居場所も無いから里を出てきてやった。
人間の町に来たけどこっちでも皆邪魔者扱いするし、嫌な目でジロジロ見られてな。俺の居場所なんてどこにもねーんだよ。」
「うーーん…髪の色が珍しいからジロジロ見られるのもあるけど。
多分常識が無いから嫌な目で見られるのよ。」
「あ?じょうしき??」
「人間の街には仲良く暮らすためのルールがあるのよ。人に気軽に魔石を見せるのもダメなのよ!魔石は魔法が使えるようになるとっても希少な物なんだから。明日買い物がてらルールを教えてあげるわ」
「買い物か!?いいな!!」
「ちょっと、勉強しに行くんだからね!」