檻の中
次の日から店を開けた。
「カレンちゃん泥棒入ったんだって!?街の噂だけどね、みんなフィッシャー家の仕業だって言ってるわ。ほらあの家のポーション評判悪いでしょ?きっと作り方を知りたかったのよ!」
御婦人は警備隊の人と同じことを話す。それ程、街で噂になっているのだろう。
「そんな噂があるんですね。犯人が早く捕まるといいんですが」
「ディアス様もいい男だったのにあの家のお嬢様と結婚してから変わっちゃったみたいで、ほんと残念。」
ハンドクリームを購入された御婦人には化粧水の試供品を付けて渡した。
「こちら美容効果の高い花のエキスを抽出して作りました。肌に合うか腕の内側など目立たない場所で試してから使ってみて下さい。朝と夜洗顔後に付けると良いですよ」
「あら!ありがとう。」
数日後、化粧水の評判は上々で購入希望者が増えたので、数量限定だが販売を開始する。
「ふふふ。これで新しい道具を買えるし、窓ガラスも買い替えるわよ!」
未だに板張りの窓、部屋が暗くなるので早く窓を付けたい。
「カレンは逞しいな。
…なぁ、俺魔素が足りなくなってきて、今日補充しに行ってもいいか?」
「いいわよ。お茶用意して待ってるわね。」
「頼むわ!また花見つけたら摘んできてやるよ!」
「楽しみにしてるね♪」
前の聖虹花は押し花にして栞を作り、使っている。
押し花にしてもなお虹色に煌めいていてお気に入りだ。
…私は臆病で、コハクとの今の関係が壊れるのが怖くて、未だに気持ちを伝えられず、またコハクの気持ちも確認出来ずにいる。
平和な日常がいつまでも続く保証は無いのに。
お店にお客さんが少なくなるお昼頃。お店の看板をクローズにし、そろそろご飯をと思い立った瞬間、後ろから猿ぐつわを噛ませられる。手も拘束され腹部を殴られて私は気を失った。
ーーーーーーーーー
気がつくと縛られたまま牢屋にいた
(この状況は…どう考えてもヤバい。)
「おい起きたぞ!」
知らない男たちが牢の中に入ってくる
「お前、無事に帰りたければポーションの作り方を話せ!!何か特別なことしてんだろ!!
」
(ここはフィッシャー家かしらね)
「特別なことなんてしていないわ。他の薬師と同じように作ってるだけよ」
「とぼけるな!」
顔を殴られる。口の中が切れて血の味がする
「とぼけてないわ。あなたたちがどうやって作ってるか知らないし、私の作り方との違いなんて分からないもの。私は師匠から教えられた通りに作っているだけよ。」
「お前のとこの作り方と同じようにやっててもできねーんだよ。なんか隠してんだろ!!」
「あなた達が泥棒だったのね。あの本の通りなら本当に心当たりがないわ…最後の呪いまで本には書いてあるのだから。」
「あくまでシラをきるつもりか。もっと痛い目見ねぇと分からないようだな」
「そんな…」
その後も暴行されカレンは痛みで気を失った。
どのくらい時間が経っただろうか。意識が戻りかけてきた時声が聞こえた
「まだ吐かないわけ?あんた達ちゃんとやったの!?」
「お嬢様、ほらこの通り痛めつけたんですが本当に分からないようで…」
「まだ足りないんじゃないかしら?」
「シャルロット、痛めつけるだけじゃダメだよ」
「ディアス。何か良案がありまして?」
ほら!起きろ!
バシャッと水をかけられ髪の毛を掴まれ体を起こされる。
「ディアス…さま…?」
(顔色が悪くて独特な匂いがする。ディアス様もあの薬を…?てことは街の若者に薬をばら撒いてるのはフィッシャー家かも…)
「カレンちゃん久しぶりだね。」
以前とは違い歪んだ笑顔を見せる
「ちゃんと言わないと、君の幼馴染を寒い辺境の地へ左遷しようかな。彼もともと体弱いんだろ?あんな場所の勤務になったら…どうなるかなぁ??」
「リュートは関係ないでしょう。それに…私もあの本に書いてあることしか本当に分からないんです。あとは…大変言いにくのですが、薬師の腕が悪いんじゃ。」
「うちを馬鹿になさるの!?」
逆上したシャルロットはカレンの足をナイフで刺す。
「あああああっ!!!」
「もう良いです、あなたたちその娘好きにしていいわ。使い終わったら娼館に送るから。」
「そんな…」
(辱めを受けるくらいなら、あの薬を使おう。生きて帰れる保証は無いけど。
こんな事になるならコハクに思いを伝えれば良かった。)
「ラッキー!好きにしていいってよ♪上玉だしいい体してるぞ!おい、縄を解いて服を脱がせろ!」
縄を解かれた瞬間、カレンは男に思い切り頭突きを喰らわし股間を蹴り上げる。ナイフで刺された足に激痛が走る
カレンは首にかけていた薬袋から丸薬を取り出し飲み込んだ。
「いってぇ…この女!!!」
「いま何か飲んだぞ!」