脱出からの隣国へ 〜スローライフ、はじめます?〜
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「そんじゃ、ちょっと仲間に“連絡”するから待っててくれ」
そう言うとヴァシルドさんは、何やらボソボソと詠唱し、手のひらの上に淡い水色の光の玉を出した。おお、通信系の魔法かな? 格好良いな。あっ、繋がったのかな? 『お、ラルル? オレオレー! なんだよ、お前誰? とか冷てぇなー! オレだよ、オレ!』と話し出した。おお、何か詐欺師っぽいな?
そんなヴァシルドさんは仲間の人(魔族?)との会話を始めたので、待っている間、俺達も話をしながら待つ事にした。あれ? そう言えば何か忘れていないか…? あれ、何だったかな? 思い出せない。まあ、後で思い出すか?
「何て言いますか…驚いたり悲しんだりしている場合じゃない位、目まぐるしい速さで状況が変わって行きますね?」
首を傾げて苦笑する前嶋さん。
「確かに、そうだね。でも、今はその位で丁度良いのかも知れないよ。きっと、色々と安定してきたら、今考えないようにしている事とか、後で嫌でも向き合わなければならない時が来るんだろうし」
前嶋さんの言葉に頷き、少しだけ寂しそうな声色で続けて、ほんの少し口角を上げている藤堂君。
「まあ、今はこの流れに身を任せるとしましょうってね。魔国には魔王…様の異世界人の奥方様や、他の転移者も居るみたいだし、色々話が聞けたら良いよね…って、あっ。そう言えば!」
そして…ある事を思い出した俺。
「うん? どうかした、高宮君」
「いや、あのさ。俺ヴァシルドさんに自己紹介していないな、という事を思い出したんだけどね?」
二人の顔を見ると――…
「あっ、そう言えばしていないな」
「していませんでしたね…」
…――だよね。みんな、忘れていたよね。そんな状況でも無かったしなー。
「とりあえず。ヴァシルドさんの通話? が終わったら自己紹介しておこうか。それから、前嶋さん、藤堂くん。俺の事はトーゴでいいよ。そっちの方が呼びやすいだろうし」
と、二人に言えば。
「でしたら、私の事もレナと呼んで下さい」
「じゃ俺も、サイトって呼んで。ま、俺の名前を知っているとなると違和感を感じるかもしれないけどな。改めて宜しくな、トーゴ、レナ」
「こちらこそ、宜しく。レナ、サイト…ははっ、確かに違和感あるかも」
「ふふっ、宜しくお願いします。トーゴさん、サイトさん」
こうして名前で呼びあう事になった。(ちなみにレナが敬語なのは普段からの話し方らしいので、気にしないで欲しいとの事だ)
「おう! お前達、待たせたな! ところでよー、今更だが俺、お前達の名前知らねぇんだわ。教えてくれるか?」
通話? を終えたヴァシルドさんも気づいた…『いやー、名前位ちゃんと聞いておけって、ラルルに怒られちまったよ! あ、ラルルってのは俺達の仲間な!』…訳では無かった。あまり小さな事にこだわらない人なのかもしれない。(あれ? これって小さな事なのか?)
「すみません、ヴァシルドさん。俺達、気が付かなくて。俺はトーゴです。高宮トーゴ。宜しくお願いします」
「私も失礼しました。私の名前は、前嶋レナです。宜しくお願いします」
「俺は藤堂サイトです。名前、名乗っていなくてすみません。うっかりしていました」
三人で名を名乗ると、ヴァシルドさんは『おう! 宜しくな!』そう言い、ニッと人懐こそうな笑みを浮かべると、俺達の頭を順番にワシワシと撫で回した。
そして、それに満足すると『よっしゃ、んじゃ魔国へ行くぞ!』と、再び何か短い呪文のような言葉を唱えると共に俺達全員の足元に円状の光が発生し、眩しさに目を瞑った瞬間。身体がブワッと浮いた様な気がした後。
「ぐっ!?」
グン! と強い力で引き上げられるような感覚に思わず歯を食いしばってしまっていた。
何だろう、エレベーターで上に上がる時に感じるアレがフワン…て感じなら、今のはその何倍ものグワン! と言うような感じだった。
あー…駄目だ、何かクラクラして立っていられないし、上手く説明出来ないぞ、コレ。
「おーい、着いたぞー? ありゃ。大丈夫か、お前達?」
あ。サイトも片膝付いて俯いてるし、レナは――…あれ? 割と平気そう。三半規管が強いのかな?
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