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「だ、大丈夫に見え…ます? あ、サイトは?」
うっ、何だろう。乗物酔いを起こした気分だ。まだ少しクラクラする。サイトも結構辛そうだったよな?
「う、ん。もう少ししたら、何とか…立ち上がれる位には…レナは…ああ、大丈夫そうだね」
そうなんだよ。レナはしっかりと立っているし、何なら周りを見回す余裕もあるし。
「あ、はい。昔、遊園地でコーヒーカップの乗り物で鍛えましたから!」
え? 鍛えたの? コーヒーカップのハンドルを、ぐるぐる回しまくったんだね…? しかし何の修行なの、それ? 俺には解らないよ。
「それにしても。トーゴとサイトは魔力酔いしたかなー? 大丈夫か? どれどれー?」
なんて言いながら。心配してくれたヴァシルドさんは、もにゃもにゃと何か呟くと、右手人差し指上に淡い黄色の光の玉を出していて、俺の額と、サイトにも顔を上げて貰い、同じく額を人差し指で軽く突くと、光の玉は消えており、俺の魔力酔い? らしきものも治まっていた。多分サイトも治っているんじゃないかな?
「あれ? 何かスッキリしました。ヴァシルドさんが治してくれたんですよね? ありがとうございます」
「俺も、もう普通に立てるし、気分が悪いのも治ったよ。ありがとうございます、ヴァシルドさん」
サイトも回復したようで、俺達は彼に礼を言いながら、立ち上がって辺りを見回した。
まず、ドアは二箇所ある。(入口と出口で別れてるのか?)そして壁は明るすぎず暗すぎずな落ち着いた薄いグリーンをベースに細く白い縦線が入っており、その白線の中に小さく薄いピンク色の小花が描かれており、入口のドアと出口のドアの間には小さな暖炉があって、壁には数枚の絵画が飾られている。小鳥の絵や、花の絵等だ。それから部屋の中央に応接セットらしき、飴色で楕円形の木のテーブル一卓に、一人用の白い布張りのソファが六脚。(これは多分用意されていたのかな?)全体的に可愛らしい雰囲気の部屋だなと思った。
「あの、ヴァシルドさん、この部屋は一体? と言うか、ここは魔国のどこですか?」
そう尋ねてみる。
「ああ、ここは城ん中だ。あ、魔国のな。んで、この部屋は…何だぁ、ちっと見ない間に随分と可愛らしくなってんな?」
ま、俺の部屋じゃねぇし、いいか! と、呟いてから。
「この部屋はな、謁見の間に通される前に待たされる控え室だ。いやー、久々に入ったら可愛らしくなってっから驚いたぜー」
そう答えてくれて。ま、適当に座って待っていようぜ! との事だった。
「それじゃ、立ってても仕方ないし座らせて貰いますね」
ヴァシルドさんに続いて、空いているソファに座ると、もう最高の座り心地だった。(うわー。このソファ、めっちゃ最高じゃん。フッカフカだよ! これ欲しいわー)
「もうすぐ、魔王様と奥方様と会える手筈になってるからよ、茶と菓子でも食って待っていようぜ」
全員座ったのを確認したヴァシルドさんは、パチリと指を鳴らした。
すると、テーブル上に、七分目位まで琥珀色のお茶(と思わしき液体)が入ったシンプルな白いティーカップ四つの他に、プレーンとナッツ入り、ココア味かな? と言った感じのクッキーが並べられた皿が真ん中に現れた。ヴァシルドさん、優秀過ぎません? あ。そういや、上級魔族って言われてたな。
「わぁ! 魔法で出したんですか? ヴァシルドさん、凄いです! それに、とっても良い香りですし、美味しそうです!」
「空腹だったので、ありがたいです。こちらの世界に転移してから、何も口にしていなかったので」
そうだよなー、チャペイン側の茶とか、怪しすぎて飲めなかったもんな。あの様子じゃ、例え晩餐会とやらが開かれていたとしても、マトモなメシに有りつけたかどうか、な。
「へへっ、ここの食堂から取り寄せただけなんだけどよ、そんな褒められたら照れるぜ。ま、食ってくれや。味は保障するぜ」
取り寄せただけ、と言ってるけど…いや、本当に凄いな。どういう仕組みかは考えないでおこう。多分、説明されても解らないだろうし。そういうものかー、と思う事にする。
「では、ありがたく頂きます」
ヴァシルドさんが(食堂から取り寄せて)出してくれた、お茶とクッキーは、めっちゃ美味かったです。本当、こっち来てから飲まず食わずだったし有難いです。(いや、まあ数時間の話だから、大袈裟に聞こえるかもしれないけど。好きな時に飲めない、食べられないってのは結構キツイものがあると思うよ)
こうして、チャペイン国から脱出し、魔国へとやって来た(連れてきて貰ったと言うべきかな…)俺達は、魔王様と奥方様との謁見まで、有難く水分と食料の補給をさせて貰うのだった。
ここまでお読み下さりありがとうございます!!
次回はチャペイン側(ケイ達や第一王子側)の話になります。その次からはまた、トーゴ達側の話に戻ります。宜しくお願いします。
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