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グリフィンクエスト~2人は勇者~  作者: 大石次郎


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チュートリアル? 前編

 まんまチュートリアル回の前編です!

ガスマスクを被った小柄な人物は両手で持った大型プライヤーで莉子に襲い掛かった。呼吸を合わせる莉子。


「えいっ!」


身を逸らすのと同時に小柄な人物の腕に蹴りを当てて弾く莉子。相手は体勢を崩したが、まだ大型プライヤーを落としていない。


「当たれっ!」


床を這いずって真っ黒になりながら拾った錆びたレンチを小柄な人物の腹に投げ付ける歩夢。身体をくの字に折り曲げる小柄な人物。プライヤーを持つ手がゆるんでいる。


「チェストぉっ!!」


飛び込む様に接近し、莉子は小柄な人物の胸部に拳を打ち込んだ。プライヤーを手放し、小部屋のガラクタの山に吹っ飛ぶ小柄な人物。


「莉子っ! コレで止めだっ。頭をぱしゃーんって割ってやれっ」


歩夢は這いずって拾った錆びたトンカチを莉子に渡した。据わった目でトンカチを見詰める莉子。


「わかった、歩夢っ。わたし、アイツの頭をぱしゃーんって・・」


「待った待ったっ! どんだけ凶暴なのっ、この子達っ?! 何、ぱしゃーんってっ」


慌ててガスマスクを取る小柄な人物。褐色の肌で少し尖った耳にピアスをしていたが、莉子と歩夢と大して変わらない年頃に見える少女だった。


「??っ 子供だ・・」


「女の子だよ?」


少女は埃を払って起き上がったが、元々薄汚れた格好をしていたから埃の煙まみれになってケホケホと噎せていた。


「ぶっ飛ばされる前に、さすがに1週間風呂も洗濯もスルーしてるとヤバいね。・・よし、スペルマジック・クリアエア」


少女が唱えると煌めくそよ風が少女を包み、衣服や身体の汚れを浄化した。


「何それぇ?」


「魔法??」


戸惑う莉子と歩夢。


「ニヒヒっ。そう、魔法なんだなぁ。あとちゃんと言葉変換されてるよね? あたし、もう日本語怪しくなってきたんだよ・・。というか、痛たたっ」


腹と胸を抑えて顔をしかめる謎の少女。


「あ、大丈夫? ・・いやっ、貴女がバーンってきたんでしょ?!」


「そうだっ。油断するなっ! お前、謝って理由を言えよっ。それからここどこだ? 俺達どーなってるんだ?!」


「へいへい、あたしが悪ぅございました。・・スペルマジック・ヒールライト」


謎の少女は淡い光に包まれると落ち着いた顔になり、顔を上げ、ニッと笑った。


「回復したのか?」


「凄ぉ、ゲームみたい」


謎の少女は芝居掛かってコホン、と軽く咳払いをした。


「簡潔に説明するから最後まで聞いてね? まず、あたしはチカゲ・トバーイエ。チカゲが名前でトバーイエが名字ね。さっき攻撃したのは、あんた達があんまり普通のお子ちゃまで2時間はスヤスヤ眠ってたから、この子らどれくらい対応できんのかな? ちょっと見てやろう、て思ったわけ。まだ話終わらないからね?」


莉子と歩夢の抗議したそうな気配を素早く牽制するチカゲ。


「で、ここはアマラシアていう名前の別の世界。わかる? 何か人形みたいなヤツにいきなりボーンっ! って飛ばされたでしょ? それそれ、その時、この世界に来たんだよ。勇者の使命を押し付けられる為にね」


探る様な挑む様な眼差しを2人に向けるチカゲ。不自由な足でどうにか床に座る形を取った歩夢とまだトンカチを構えていた莉子は顔を見合わせた。


「ちょいちょい勇者がどうだか、て言われるけど、何だ? 魔王倒せ、とかそういうヤツか?」


「さっき、グラングリフィンって子にも言われた」


「グラングリフィンに会ったの?!」


驚くチカゲ。


「何か、眩しい所に眩しい子がいて、まだ産まれてない、まだ早い、って」


「そっか・・こっちに来る途中で、霊体か何かでグラングリフィンの意識と接触したんだね。なる程、お子ちゃまでもやっぱ勇者か」


考え込むチカゲ。


「だからそのグラングリフィンとか勇者って何だよ。教えろよ、お前っ」


「あん? お前じゃないっ。チカゲって名乗ったろチビっ!」


「チビじゃないっ、歩夢だっ! 与田歩夢っ。チカゲもチビだろっ!」


「ああんっ? チビじゃねぇよっ、チビ歩夢っ!」


「お前がチビっ!」


「ああん?!」


「んだよぉっ?!」


未だトンカチを構えている莉子を挟んで罵り合うチカゲと歩夢に困惑する莉子。取り敢えず手放さないがトンカチは下ろすことにした。


「喧嘩しないで2人とも。チカゲちゃんももう少し詳しく話して」


「ちゃん、付けられちゃったよ。まぁいいわ。どこまで話したっけ? ・・勇者、ってのはこの世界の神様から祝福されて何かしら使命を与えられた者のこと。そこの小っこいの、が魔王倒すとか何とか言ってたけど、そんなハードな使命ばっかりでもないわ。まぁわざわざ勇者呼ぶくらいだから楽な使命も無いけど・・・」


「要はお前らの神様が俺達に何か仕事させたいってことか? リトル・チカゲ?」


「うわっ、コイツ、いちいち言い返してくるわっ。まぁ、よくないけど、話進まないから話すわ。・・そういうことね! 詳しい使命の内容は後で神様に直接聞いて。グラングリフィンのこともっ」


「わたし達、この後、神様に会うんだ・・」


「いきなり児童を誘拐する様なヤツだからたぶん、ヤバいヤツだ。気を付けよう莉子」


「うん」


「・・ヤバいヤツ認定されちゃったよ、神様。まぁしょうがないか。取り敢えず、スペルマジック・クリアエア」


チカゲは浄化の風の魔法を床を這いずって真っ黒になっていた歩夢に掛けて小綺麗にした。


「おおっ? ・・まぁ、ありがと。うん? いやお前が襲ってきたからだぞ? というか俺の車椅子は?」


「はいはい、あたしが悪いあたしが悪い。車椅子は改造しといたよ。来いっ! カニーラ3号っ!」


チカゲが命じると、小部屋の片隅で沈黙していた蟹の様な形のロボットが機動して莉子と歩夢達の方にワシワシと近付いてきた。


「何だぁっ??」


「まだ戦うのっ?」


「ニヒヒっ。変形っ!」


チカゲがニヤリとしつつ命じると、蟹ロボットはひっくり返って形を変え、鋏と多数の多間接アームを持つ車椅子に変形した。


「おおおっ?! 改造し過ぎだろっ、俺の車椅子っ!」


「カッコいい」


「いや、莉子。こんなゴテゴテしいの・・おわっ?」


蟹車椅子のアームがひょいっと歩夢を掴んで蟹車椅子に座らせた。


「軽量化しているのとこの世界の魔法的なアレで重さを誤魔化して元の重さと変わってない。リムでも漕げるよ?」


「マジか?」


歩夢は言われるまま、半信半疑でまだ付いていたハンドリムで蟹車椅子を漕いでみた。問題無く進む蟹車椅子。


「おおーっ! ・・普通っ!!」


「だろっ? ニヒヒっ」


「よかったね歩夢」


「よくはないよ。元の世界に戻ったらどうすんだコレ?」


「帰る時は戻してやるよ。つまんないけど」


「車椅子に面白さ求めてないっ」


「・・帰れるの? わたし達」


真面目な顔で問う莉子。


「ああ、帰れるよ。早くて2ヶ月。遅くて3ヶ月ってとこだね。勿論、失敗したら死ぬけどね?」


「ええ~?」


「そんな・・」


チカゲは小さくため息を吐いた。


「勇者の使命を押し付けられる、って言ったろ? はい、あたしの説明タイムはおしまいっ! じゃ、こっからが本番でね、そこの装置・・ん?」


莉子のトンカチを持つ右手の拳に目を止めるチカゲ。皮が少し擦り剥け、赤くなっていた。莉子も見られたことに気付いた。


「あ、コレ。さっきパンチした時のヤツだ。拳サポとかバンテージしてないから」


「素手でちょっと殴っただけで痛んじゃうか・・やっぱ勇者でも普通の人間の子供の身体じゃ厳しいよね。スペルマジック・ヒールライト」


柔らかな光が莉子の全身を包んだ。拳の怪我と、本気で蹴った拍子に少し痛めていた足の痛みが癒え、今日1日の疲労まで消えた。


「チカゲちゃん、ほんと凄いね。この魔法」


「やり過ぎると回復依存になるし、実は水分や栄養も消費してるから万能でもないんだよ」


「うん?」


戸惑った側から莉子のお腹が鳴った。


「ああ~、お腹空くのほんとだったぁ」


「俺達のランドセルは? 俺、クッキー持ってた」


「荷物はここに無いよ。この世界に持ち出して問題無さそうなのは後で渡せる。ダメなのは元の世界に帰る時に返すよ。取り敢えずコレ食べときな」


チカゲは近くの引き出しから小振りな林檎を取り出して莉子に投げ渡した。


「やったっ」


全く疑わずすぐに林檎を齧る莉子。


「っ?! 酸っぱぁ~っ!!!」


涙目になる莉子。


「ニヒヒっ。天界名物、超酸っぱい栄養満点林檎だよっ? よし、2人ともちょっとこっち来な。大丈夫っ! もうプライヤーで挟んだりしないからっ。よーしよしよしっ、おいでおいでっ」


野良猫の餌付けでもするように手招きして舌をチッチッチッと鳴らして、最初にイジっていた2つの大きな宝石を嵌め込んだ装置の方に誘うチカゲ。

莉子と歩夢は露骨に怪しんだが、他に仕方が無いので、装置に近付いた。


「じゃ~んっ! 種族変換機ぃ~っ!!!」


「ん?? 何だよ?」


「シュゾクヘンカンキ?」


「これは、この世界の人型種族に変身できる装置。人間の子供のままだと、め~~~~っちゃっ、手加減してるあたしに勝つのもやっとだろ? まぁ言っても、勇者だから、もうちょっと時間があれば人間の子供のままでも強くなれるけど、今回のミッションは時間が無いんだわ」


「変身って、人間に戻れるのか?」


「帰る時には戻れるよ? 実際パワーが出せるコスプレみたいなもんだと思ってちょうだいよ」


「どんなのに変身できるの?」


「ん~っ」


チカゲは装置を色々イジって確認した。


「ミッションの内容と、さっきの感じも考慮すると・・まぁ、普通のお子ちゃまだし、安全第一だよねぇ。コレとコレかなぁ?」


コード付きのタブレット端末の様な物を2人に差し出すチカゲ。そこには兎型の獣人と肌の所々が岩の様になった人間が3種族ずつ映し出されていた。


「ワーラビットとストーンマン?」


「強いのかコレ?」


「鍛練抜きだと人間より相当強いよ。種族としての特性もはっきりしてる。あんた達は砂漠でミッションに挑むことになるから、素で砂漠の環境に対応できるとかなり楽になるよ?」


「砂漠なんだ」


「わたし、鳥取砂丘行ったことある」


チカゲは苦笑した。


「鳥取砂丘ね・・。とにかく歩夢がストーンマンで、あんたは・・」


「わたし莉子っ! 上谷莉子っ」


「莉子。あんたはワーラビットがいいと思う」


「兎かぁ」


「チカゲ、3種の違いは?」


「ストーンマンは身体の硬い金剛種、電撃が使える雷石種、バランス型の原種の3種類。ストーンマンは基本的に身体が硬くて傷付いても自力で再生する力がある。その足はそれで定着しちゃってるから治らないけどね」


「ま、そんなもんか。どーしよっかなぁ?」


案外、気楽な調子で選び始める歩夢。


「兎の3種類は?」


「ワーラビットは砂漠に適応した砂海種、闇の力に対抗できる銀毛種、すんごいパワーがあるスデゴロ種の3種類だよ。ワーラビットはどれも動きが素早くて身軽で生命力が強いんだ」


「へぇ、銀毛種可愛いなぁ」


何らかのお洒落アイテムを選ぶノリになっている莉子。


「ストーンマンで一番生き残りそうなのはどれだと思う?」


「特性は地味だけど原種かな? あんたたぶん雷の属性持ちだから雷石種が一番合ってるけど、属性が偏り過ぎると思う。金剛種は頑丈だけどどっちかといったら物理戦向きの種族だし、あんたは魔法使いタイプでもあるみたいだから、微妙かも?」


歩夢はしばし、考え込んだ。


「・・・よしっ! 原種のストーンマンにしてくれっ」


「おっけー。莉子は?」


「銀毛種が可愛いけど、砂漠に行くんでしょ?」


「まぁね。断っても、自力で元の世界に帰るのは相当キツいと思う・・」


莉子は顔をしかめた。


「うぇっ、最悪っ。神様に会ったら、わたし文句言うよ? ・・でも、わかった。砂海種にしとくよ。スデゴロ種は可愛くないしっ」


「わかった。砂海種ね。2人とも手堅いのいったね」


チカゲは端末を引っ込め、またガチャガチャと装置をイジりだした。と、装置の2つの宝石の前に大人サイズの手型のある台座が1つずつ迫り出してきた。


「手型大きいけど、そこに片手を置いて。あ、待って、台座の位置高いね。歩夢はカニーラ3号は椅子の位置上げられるから自分でやって、莉子は踏み台持ってくるわ。あれどこやったかな・・」


チカゲがガラクタの山から踏み台を探し始め、歩夢は蟹車椅子の操作法がわからず四苦八苦しだした。

手持ち無沙汰になった莉子はまだ持ってるトンカチで軽く素振りしたりした。


「わたし、背伸びしたら届きそうだよ?」


「こっちは上げ方はわかった。下げ方わかんないけど・・」


蟹車椅子の座席の下は蛇腹になっていて、歩夢は天井すれすれまで持ち上げられて首を曲げていた。そうこうしている内に、チカゲが踏み台を見付けた。


「あったあった。・・何やってんのあんた? 矢印が下になってるボタンだよ。莉子もトンカチ振り回すのやめな、2人共、保育園じゃないんだよ」


「はーい」


「あ、これか。矢印小っちゃ過ぎるっ」


莉子はチカゲが置いた台に乗り、歩夢は座席をちょうどいい高さに合わせ直した。


「台座に手を置いたら、一気に行くからねっ」


「緊張するな・・」


「中学生になったら文化祭でメイド喫茶やりたかったけど、まさか兎人間になっちゃうなんてね」


2人は台座にそれぞれ片手を置いた。


「スイッチオンっ!」


チカゲは装置のレバーを下ろした。


パシュゥウウウーーーンッ!!!


2つの宝石と台座が激しく光り、莉子と歩夢に衝撃が走った。


「うぉおおおーーーっ?!!」


「ふぁああーーーっ!! 歩夢、大丈夫ぅーっ?!!」


七色の光が2人を包み、歩夢の肌は灰色に、髪は青く変わり、肌の所々は岩の様に変わった。

莉子は全身を栗色の獣毛が覆いシルエットが少し丸くなり、頭の側面の毛で覆われた耳がやや上にズレて長く伸び、鼻は黒い兎の鼻に近い形に変わり、穿いていたチノパンの臀部上辺を突き破って尻尾が生え、手足に肉球ができ、特に足は大きくなって靴を破裂させてしまった。


「おおおっ? 石みたいだけど柔らかい?? 何か体温低いな・・」


「靴とチノパンがっ! というか耳と鼻が凄い、何か・・この部屋油臭いっ! 機械の音うるさいっ」


歩夢は新しい身体に興味津々だったが、莉子は耳を押えてしゃがみ込んでしまった。

装置の方は起動が止まると宝石が砕け散ってしまった。


「あ~、やっぱ勇者が使うと全部もってかれてすぐ壊れちゃうのね・・ま、いっか。莉子、聴覚が鋭過ぎるのは、耳当て作ってあげる。有り物ですぐできるから。尻尾がある獣人用の着替えも後で持ってくるわ」


「早くお願いっ! 頭痛いっ」


「わかったわかった。歩夢は、ストーンマンは動かないでいるとわりとすぐ身体が石になって固まっちゃうから。足のリハビリはその身体でもちゃんとしないとヤバいよ?」


「え~? 結局リハビリかよぉ?」


戸惑う2人を他所に、


「さて、耳当て耳当て。確か、漂着物のSONYのヤツとパナソニックのヤツがこの辺に・・」


チカゲは楽し気に、再びガラクタの山の捜索を始めた。

 今回、種族チェンジと基本的な現状はあくを何とか終えました。次回はクラス決定したりする予定です!

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